第1489話 命名クエストの選択肢
新エリアでの命名クエストの発生条件を、推測ではあるけど、まとめへの報告完了! 完全踏破をしているとは書いたから、UFOや落下物の位置を探る手段を見つけたとは思うまい!
さーて、命名クエストの選択肢を選んでいきますか。今回の選択肢は『ブラキシュ河口域』と『ミックス・エスチュアリー』と『漂木林』と『ウワバミの口』の4つだけど……。
「『ウワバミの口』って……ここの川をヘビに見立てたネタ選択肢?」
「ん? あぁ、報告は終わったのか。まぁネタ枠ではあるんだろうが、比較的ネタからは離れてるんじゃねぇか?」
「アルさんの意見に賛成なのさー! ここ、かなり蛇行してるし、意外とありな選択肢なのです!」
「……えー」
いやまぁ理屈としては分かるんだけど……蛇行したヘビが海を飲み干すようなイメージになってるんだよな。うん、意図は分かる。でも、ヘビが苦手な俺としては遠慮願いたい選択肢!
「……ケイさん、何か『ウワバミの口』だと嫌な理由があるの?」
「あー、ぶっちゃけると……ヘビは苦手でなー」
「……そうなんだ?」
「え、意外!? ケイさんって苦手な種族がいたんだ!?」
「誰にでも苦手なものくらいあるだろう。そういうリコリスも、カエルが駄目だしな」
「ちょっとラジアータ!? なにをサラッと暴露してるの!?」
「これでお互い様だろう? 味方になった以上、そういう情報の共有は必須だぞ。咄嗟の判断に影響が出る部分になるし……折角だ。この機会に、苦手な生物がいる人は把握しておきたいんだが、構わないか?」
全然予想してなかった方向に話が転がったけど、確かにラジアータさんの言う通りではあるね。今後、一緒に動き機会も増える可能性もあるんだし、ここは話しておくのがいいかもなー。
それにしても……リコリスさん自身はトカゲなのに、カエルが苦手ときたか。いやまぁ、両生類と爬虫類って違いもあるし、全く同じ姿をしてる訳でもないからなー。俺が細長い生物が全て苦手って訳ではないのと同じような感覚なのかも?
「自己申告はしにくいだろうから、俺から説明するぞ。グリーズ・リベルテではケイがヘビ、サヤがクモ、ハーレさんがゴキブリが駄目だな。俺とヨッシさんは、特にそういった種族はない」
「……曼珠沙華では、私もゴキブリは苦手。リコリスは聞いての通り、カエルが苦手だよ。ラジアータは特に苦手なのはなかったよね?」
「あぁ、俺はどれでも平気だな」
「うー! サラッと人の苦手なものは暴露するのに、やり返す材料がないのが気に入らないー!」
悔しそうな様子のリコリスさんだけど……うん、その気持ちは分かる! 一方的にからかわれて、反撃の糸口がないのって嫌だよな!
「……俺や風音も、これは言った方がいいのか?」
「いや、十六夜さんと風音さんは別に無理に言う必要はないぞ。今のは……灰の群集へ入る際の約束に関わる内容ってだけだからな」
「……なるほどな。何か目的があっての、灰の群集への移籍だったか。アルマース達が後ろ盾という形になるから、その担保という話か?」
「ま、そんなところだ」
担保なのか、これ? でもまぁ、アルは曼珠沙華の3人を警戒するって立ち位置にしてたんだから、その一環って話ではあるんだろうなー。
「はい! 話が脱線し過ぎてる気がします!」
「あー、悪い、悪い。今は命名クエストだったな。ケイが戻ったら、選択肢の意味の話をするって言ってたし……脱線させたの、ケイじゃねぇか?」
「そういう話になってた事自体を知らないんだけど!?」
それを知ってたら、いきなり4つ目の選択肢に言及したりしないぞ!? てか、俺が報告してる間にそんな話になってたのか。
「ま、話は戻して……命名クエストの選択肢の内容を読み解いていくか。ケイ、いいよな?」
「まぁ俺もそれは聞く気だったし、問題ないぞー」
「なら、早速やっていくとして……一応、移動しながらにするぞ。止まっていても得もないからな」
「まぁそりゃそうだ」
フィールドボスのヤシの木の撃破の為に止まっていたけど、もう既に倒し終えたんだから、立ち止まっている理由はない。……ちょっと焼き過ぎて周囲の木々まで燃え尽きてるけど、まぁフィールドボス相手だと仕方ないよな!
「ちょっと思ったんだけど、落下物が燃えて火事になる可能性とかってあるの?」
「あー、どうなんだ?」
「分かりません!」
ヨッシさんのその疑問は、確かに謎かも? UFOが完全に墜落したら爆発して炎上するなんて事も考えられるし……これも探す為のヒントになり得るか?
「……それは『縁の下の力持ち』の方で、情報収集をしてみよう。澱んだ黄色い矢印の確認は出来たそうだから、どこかしらで目撃情報は出るはずだ」
「おっ、助かる! サンキュー、十六夜さん!」
「……そういう協力関係だからな。気にするな」
「いやいや、やってもらって当たり前って雰囲気にはしたくないからなー。協力関係なんだから、対等にだぞ!」
「……それもそうだな」
こういう時は信頼関係が大事なんだから、ありがたいと思った事にはお礼はちゃんと言っておかないとね! いやー、それにしても本当に情報収集をしてもらえるのは助かる!
「不要な内容でもないが、また脱線し掛かってるから話を戻すぞ」
「ほいよっと!」
この調子で脱線してたら、いつまで経っても命名クエストの選択肢の内容にならなさそうだしね。決して無駄話をしてる訳じゃないけど、時間制限もあるんだから、そっちを優先で!
「まずは1つ目の選択肢の『ブラキシュ河口域』だが……こりゃまぁ、単純に英語の『brackish water』が元だろうよ」
「えーと、どういう意味ですか!?」
「確か……汽水じゃなかったかな?」
「あぁ、そうなるな。『brackish』だけだと、『不快な』なんて意味もあるが、この場合は『塩気のある』という意味だろうよ」
「……なるほど」
確かにここの河口部分にはマングローブが植わってるくらいだし、汽水になってるんだろうなー。それがエリアの特徴として、名前の候補に出てきてるのか。……安直ではあるけど、意外と呼びやすい感じだし、これは候補としてありかも?
「それで2つ目の『ミックス・エスチュアリー』だが……こっちも『ブラキシュ河口域』と似たような、割と安直かつ、同じような内容だな。『エスチュアリー』ってのは、ここの河口みたいな地形の事で……言い換えれば『三角江』という名前になるな。汽水になるから、ミックスは淡水と海水が混ざるって意味合いだろう」
「あー、なんか聞いた覚えはあるような……?」
その辺、地理で習ったかも? まぁ正確に覚えてないから、合ってるかどうかの自信はないけども!
「……確か、そういう地形にマングローブがあるのが特徴だったはず? 何気に、ここの選択肢はマングローブと汽水推し?」
「おー! そうなんだ!?」
「……3番目の『漂木林』は、まさにマングローブそのものの事だしね」
3番目のそれ、読み方が分からなかったけど『ひるぎりん』って読むのかよ! 『ひょうぼくりん』じゃないのかー。うーん、どこかの地方での特殊読み?
「ケイ、それで正解だ。琉球地方で呼ばれる名称だからな」
「……ちなみに中国では『紅樹林』って呼ばれるよ」
「あー、なるほど」
マングローブの別名って、地域によって存在してるのか! いやー、全然知らなかった! てか、彼岸花さんも色々と詳しいっぽいな!?
「更に言えば、マングローブは木の種類ではないからな? 簡潔に言うが、海水でも育つ森の事だぞ」
「へ? え、マジで!?」
「おう、マジだ。マジ。さっき戦ったヤシの木も、マングローブの一種だ。それに『ヒルギ科』の木が多いからな」
「おぉ!? そうなんだ!?」
てっきり木の1種だと思ってたけど……マングローブって木の種類じゃなかったのか!? あー、でも植物の分類にはなってるはいるんだな。『ヒルギ科』の植物がどんなのかはよく知らないけど、あの根が独特なのがそれなのかも……って、あれ?
「それじゃ、今のアルの木もマングローブの1種って事か?」
「あー、まぁ特性『汽水』を持っているから、そういう事になるんだろうな」
「……なるほど」
マングローブ的な根とか思ってたけど、まさか『マングローブ』そのものだったとは!? そう考えると、マングローブになる場所にある植物系の種族は、海水への耐性を持ってるのかも? さっきのヤシの木がまさしくそうだったし……。
「……最後の……『ウワバミの口』も……川と海を……象徴にしてる?」
「海水が川の淡水と混ざり合ってるのが汽水だし、河口も開けているから、ヘビが口を広げて呑み込む光景に見立てているんだろうよ。ネタに見えて、意外と理に叶ってはいるぞ?」
「……説明を聞くと、そうっぽいなー」
うん、思った以上にちゃんとした理由があるような選択肢だった! ある意味、1〜3番の選択肢よりもしっかりと考えられてません!?
いや、でもヘビなんだよなぁ……。苦手生物フィルタを使ってデフォルメ化すればなんとかなるとはいえ、苦手意識があるのは間違いないし……好んで選びたい選択肢ではない!
「ふっふっふ! 決めたのです! 私は今回、『ウワバミの口』にするのさー!」
「……へぇ?」
「わー!? なんかケイさんが怖いのです!?」
「ケイ、待ったかな! 流石に、個人的な好みでそういうのは……どうかと思うよ?」
「うぐっ!?」
落ち着け、俺! 今のはサヤの言う通りだし、ハーレさんの選ぶ権利を俺が歪めさせるのは無しだ! 今回のは特にヘビそのものが出てきてる訳じゃないんだから……。
一瞬、ハーレさんにゴキブリに叩きつけられたのを思い出してイラッとしたのは事実だけど、それは理由にはならん!
「ハーレさん、今のはすまん……」
「うん、それでいいかな! ハーレも、少しは配慮しようかな?」
「……はーい」
ふぅ、危ない、危ない。本当に無意味な部分で冷静さを欠くところだった。ハーレさんも決して悪気があった訳じゃないんだろうしさ。
「さて、俺も『ウワバミの口』にしておくか。ケイ、文句は言わせねぇぞ?」
「……怒られたばっかなんだから、分かってるっての。あー、俺はどれにすっかなー?」
アルめ、わざわざハーレさんが負い目を感じないように被せて言ってきたな? まぁさっきの反応は全面的に俺が悪いし……本当、サヤはよく止めてくれた!
それはともかく……今回はどれにしたもんだろ? うーん、ヘビは心境的に選びたくはないから、他の3つから選ぶとして……。
「私は語感的に『ブラキシュ河口域』にしようかな?」
「呼びやすい感じではあるよね。私もそれにしようっと」
「……呼びやすさは……大事! ……これにする」
ふむふむ、そういう基準で選ぶのもありか。確かに呼びやすい地名なエリア名にはなってるし、馴染みそうではあるもんなー。
「よし、決めた! 俺も『ブラキシュ河口域』で!」
「ケイも同じ選択肢かな!」
「まぁそうなるなー」
なんだかサヤが嬉しそうだし、今回の命名クエストの選択肢はこれでいこう! ……まぁ最終的にはこの場にいるプレイヤーでの多数決で決まるから、望んだ通りになるかは分からないけどさ。
てか、今回は結構な人が入ってきてるし、投票数は多いんじゃね!? あ、さっき俺らが戦ってた場所に人が集まってる!?
「……さっきの戦闘は、UFOの撃墜とでも勘違いされたか?」
「……それはあるかも? 派手に燃やしたのは、間違いないし」
「あー、そういう誤解もあり得るのか……」
周りの人からヤシの木の王冠マークが見えてたとは思えないから、俺らが立ち止まって何か盛大に暴れてたって認識だけになるはずだしね。まとめに上げた報告を見ればフィールドボスと戦ってたのは分かるだろうけど、俺らが落下物を回収し終えた跡地だと思われても仕方ないか。
「んー、選択肢、どれにしよっかなー? 彼岸花、ラジアータ、どれにするの?」
「……私は『漂木林』にする。沖縄は好き」
「ま、選ぶ基準は人それぞれだな。俺は『ウワバミの口』にするか」
「わー!? 意外とあっさり決めちゃってる!? 命名クエスト、殆ど参加した事ないから、決めようとすると悩むねー!?」
ん? 曼珠沙華の3人って、あんまり命名クエストには参加してないのか? あー、競争クエストにはまともに参加してないだろうし、他のエリアの命名クエストに参加出来るかは運任せだし、そういう事もあるのかも?
「リコリスさん、殆ど命名クエストに参加した事がないなら、決定になるまではこのエリアに留まるか?」
「え、ケイさん、いいの!?」
「まぁその間に、UFOが出てくる可能性もあるしなー。時間的にも、それでも22時前だしね」
「ふふーん! ご配慮、ありがと!」
「いえいえ、どういたまして」
折角、自分達が最後の条件達成を引いた命名クエストなんだ。結果が出るまで、この河口域に残っているのも悪くないだろ!
「みんなもそれでいいか?」
「ま、どっちにしても完全踏破をしているように見せるなら、離れられない状況でもあるしな。別に問題ねぇよ」
「そうなのさー! それに、命名クエストの結果は気になるのです!」
「明日は土曜だし、時間的にも大丈夫かな?」
「まぁあんまり遅くなり過ぎない程度にはしないとだけどね。明日の午前中は、別の用事もあるしさ」
「あ、そういやそうか」
そうだった、そうだった。明日はeスポーツの予選を見る予定にしてたんだった。
「……何か……あるの?」
「ケイ達4人は、明日はリアルで用事があってな。時間的にはどうなる?」
「あー、ハーレさん、その辺はどうする?」
ぶっちゃけ、明日見るのは予選だけだし……全てを観戦するのは現実的ではないんだよなー。フルダイブの制限時間も考慮する必要もあるから――
「午前中だけにしとくのさー! 雰囲気を知りたいだけだし!」
「あ、それくらいでいいんだ?」
「うん! 詳しくは後で決めるのさー!」
「その方が良さそうかな?」
「だなー」
事情を知らない人も結構いるんだから、この話題は程々なところで切り上げとこう。
「……明日は、昼以降で協力して動くのか?」
「あー、全員が揃わなくても、ログインしてる人でやってくれてもいいぞ?」
「……それもそうだな。その場にいる人で考えてやっていくか」
別に俺らが不在だからって、バラバラで動く必要は無し! 時間が合う人同士で一緒に動けばいいし、個別に集めた情報を集まれた時に集約するのもありだよなー!
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