第1488話 ヤシの木を仕留めて
UFOとその落下物を探している間に遭遇した、フィールドボスのヤシの木との戦闘中! 盛大に火を着けて、絶賛大炎上中だな!
「さーて、このまま燃え尽きてくれればありがたいんだけど……」
「……それほど甘くはなさそうだぞ、ケイ」
「みたいだなー」
十六夜さんの言うように、大人しく焼かれてくれる訳はなさそうだ。根で火を消すのは諦めて、水分吸収でのHP回復に切り替えたっぽい。
ちっ、フィールドボスともなると、通常の個体よりもHPの回復量が多いな。火での継続ダメージよりも、水分吸収での回復速度の方が上回って……あー、火自体も弱まってきてるしな。
「ケイ、どうするのかな? このまま追撃?」
「回復し切られても困るし……風音さん、今度は魔法砲撃でファイアクラスターを頼む。サヤは継続して、風を送り続けてくれ。燃えてる状態は可能な限り維持するぞ!」
「……うん! ……『魔法砲撃』『ファイアクラスター』!」
「分かったかな!」
魔法の火はもうとっくに消えている状態なのは……まぁ魔法産のものは長持ちしないって性質だし、仕方ない。でも、天然の火なら魔法産ほどの威力はなくとも維持出来る!
その火を維持しながら、回復を上回るだけの攻撃を叩き込むのみ!
「ヨッシさん、ハーレさんと合流して風音さんの上から毒を魔法弾にして投げていってくれ」
「了解!」
「はーい!」
執拗に風音さんを攻撃していた状態も止まっているし、今なら合流して攻勢を強めても大丈夫だろ。というか、ここまで回復行動に専念してくるとは思わなかったな?
「……アル、不動種の幹より上の部分に着いた火を消す事って、自力で可能?」
「水を生成出来れば可能だろうが……それをしてこないって事は、手段として持ってないんだろうよ。枝の操作を使ったとしても、動かせる範囲には限度があるからな」
「やっぱりそうなるよなー。よし、予定変更! アル、地面から根本部分まで海水で覆ってくれ! ラジアータさんは電気魔法を流す準備を!」
「おう、了解だ! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「海水に電気を伝導させての攻撃だな? 電気魔法はどれでいけばいい?」
「あー、エレクトロウィークンって、伝導は可能?」
「……海水では試してみた事はないな? 少しやってみるか。『エレクトロウィークン』!」
Lv9のウィークン系の魔法なら、その属性への耐性を大幅に下げられるけど、その範囲は自分を中心にした狭い範囲ではある。これを海水で広げられたとすれば……おっ、ラジアータさんを覆うように展開した黄色い膜が、アルの生成した海水の表面を覆うように広がってる!
よし、この感じなら成功だな! あ、でもこの魔法の使用中って他のスキルは使えなかったはず?
「ほう? ただの水では出来なかったはずだが、海水だと可能なようだな」
「そうっぽいなー。よし、それじゃ一旦解除してから、並列制御を使ってエレクトロクラスターも撃ちまくってくれ!」
「なるほど、無差別攻撃の全てを繋げて、弱体化まで含めるとはな。その策は了解だ! 『並列制御』『エレクトロウィークン』『エレクトロクラスター』!」
「おぉー! 壮観だね、これ!」
「……これもエゲツない攻撃」
風音さんが魔法砲撃にしたファイアクラスターで火の粉で撃ち放つマーキングをするのと並行して、アルの広げた海水を伝って、無差別に落ちている電撃が全てヤシの木のHPを削っていく。消耗は激しいだろうけど……その分だけ、威力は高い!
「ふっふっふ! どんどん削っていくのさー! 『狙撃』! 次、いくのです! 『魔法弾』!」
「回復され切ったたら困るしね! 『ポイズンインパクト』!」
「燃えてない幹を狙っていくのさー! 『狙撃』!」
葉っぱは盛大に燃えているけど、幹までは燃え広がってない状態だしね。正確に言えば、燃え落ちた部分が水分吸収で回復されて、再生してるだけではあるけど……まぁ溶解毒が当たった事で、再び駄目になってきてるしな。
HPが回復すれば、傷んだ部分も再生するのは当たり前の仕様。そうじゃなきゃ、もうとっくに葉っぱも実も燃え尽きてるよなー!
着実に俺らの与えるダメージが回復を上回ってきたし、ここらで一気に決める! というか、この消耗具合での長期戦は無理! ヤシの木にも行動値の限界はあるだろうけど、フィールドボスを倒すのが目的じゃないんだし、さっさと仕留めて探索に戻る!
「十六夜さんとリコリスさんは、岩で尖った槍を生成! 俺も含めて、3人で一気にぶっ刺すぞ! 狙いは溶解毒で表皮がめくれた幹で!」
「……いいだろう。『アースクリエイト』『岩の操作』!」
「ふふーん! 岩の操作の精度比べといこうじゃない! 『アースクリエイト』『岩の操作』!」
比べるとかそういう意図はないんだけど……まぁそれならそれで別にいいや。
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 126/127 : 魔力値 311/314
<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』を発動します> 行動値 108/127
さーて、俺も攻撃用の岩を生成して……って、十六夜さんはシンプルな円錐形の岩にしてるけど、リコリスさんはなんで三叉の槍!?
いや、確かに槍とは言ったけど……その生成は器用だな!? ちょっと真似して……そのまま同じだと面白くないし、こうしてしてみるか。
「この形状、難しいな!?」
「……何故、ケイはハルバードにしている? 無理にリコリスに合わせて、変な形状にする必要もないだろう」
「いやー、ちょっとやってみたかった? でも、正直これなら柄の部分はいらないなー」
「突くのが目的なんだから、それじゃ意味ないよねー! 私の三叉槍の方が実用的!」
「……そこで張り合っても、意味はないと思うよ?」
「いいの、いいの! こういうところで実力を見せておかないとね! ……ただでさえ、属性被りになってるんだし!」
あ、リコリスさん、まだその部分は気にしてたんだ? でもまぁ、細かい生成が得意そうだってのは確かに分かる!
「……ともかく、やるぞ。このままだと、風音のマーキングの方が先に終わる」
「おっと、それは急いでやっちゃわないとだね! 役目なしはごめんだし!」
「だなー。十六夜さんは一番上、リコリスさんは一番下で! 俺はその真ん中の部分を突き刺す!」
「……あぁ、了解だ」
「いっくよー!」
ハーレさんが何ヶ所も溶解毒で駄目にした場所があるけど、再生が間に合わず目立っている部分はその3ヶ所!
「おまけだ! 『エレクトロエンチャント』!」
「やるじゃん、ラジアータ!」
「ナイス、付与魔法!」
「……良いタイミングだ」
叩き込もうとした瞬間に雷属性の付与とはね! これで土属性のダメージが通りやすくなる! 折れろや、このヤシの木の不動種!
「硬っ!? あー、やっぱり『堅牢』があるだけ、耐久性はあるか!」
「でも、ダメージはしっかり入れたもんね!」
「……それぞれで1割ずつといったところか。残り2割なら、悪くはないだろうよ」
「ま、それもそうか。風音さん、トドメは任せた!」
「……任された! ……ファイアクラスター……全弾……当たって!」
「その前にもう一発、おまけだ! 『黒の刻印:低下』!」
おっと、いつの間にやら距離を詰めてたラジアータさんが黒の刻印を刻んだね。そこに上空から大量の火が迫って……凄い勢いでHPが削られていき……ヤシのHPが尽きて、ポリゴンとなって砕け散っていった。
ふぅ、前回よりも人数は多いし、育ってもいるから比較的楽だったね。不動種だから動き回らなかったのと、弱点を攻められる状態だったのもいい方向になってたか。
<ケイがLv12に上がりました。各種ステータスが上昇します>
<Lvアップにより、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndがLv12に上がりました。各種ステータスが上昇します>
<Lvアップにより、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<『瘴気珠』を1個獲得しました>
よし、かなりの経験値が入ってきてレベルアップ! 昨日は全然育成が出来なかったし、こうして上がってくれると嬉しいもんですなー。
ここのエリアでの討伐称号は……前回、ワニのフィールドボスを倒した時に得てるから、今回は特に無――
<命名クエスト『命名せよ:名も無き未開の河口域』の開催中です>
<本クエストは現在該当エリアに滞在中のプレイヤーが対象になります>
<以下の選択肢より、30分以内に好きなものを選んでください。一番多かった選択肢が新しいエリア名となります>
【命名候補】
1:ブラキシュ河口域
2:ミックス・エスチュアリー
3:漂木林
4:ウワバミの口
おっ、出たな、命名クエスト! ……相変わらず、ネタっぽい選択肢が混ざってくるよな!?
まぁ選択肢自体は置いておいて……特にこれまでと表記上の違いはないし、発生条件に変化はない?
「なぁ、アル? これ、発生条件は今まで通りって考えていいと思う?」
「……断言は出来ないが、目に見えて違う要素も見つからなかったしな。とりあえずは同じと考えてもいいんじゃねぇか?」
「やっぱり、そういう判断になるよなー」
明確に違う部分が見えないのなら、これまで通りの法則性だと考える方が理に適っているか。そうだと考えれば……命名クエストを手早く進めるのが、例の新しく始まったという無所属の乱入クエストを阻止する手段になるの――
「……腑に落ちんな」
「ん? 十六夜さん、何か気になるのか?」
「……少しだがな。この命名クエスト、発生が遅過ぎる」
「へ? え、それはどういう意味?」
「……考えてもみろ。ここは、占有エリアのすぐ横だぞ? それも最初に成熟体のフィールドボスの出現の確認と撃破がされた場所で、再出現まで試した場所だ。そんな場所で何故、こんなに命名クエストが発生するまでに時間がかかる?」
「そりゃ……まだフィールドボスの誕生に必要な『瘴気珠』の数が少ないからとか?」
「あー、ケイさん、それはもう解消されてるぞ。まだ格上になるパターンの方が多いから勝率はそれほど高くはないが、フィールドボス戦はもう普通に行われているからな」
「はい!?」
サラッと桜花さんからとんでもない情報が出てきたんだけど!? ここでのフィールドボスの誕生は、もう普通に出来るようになってたの!?
「それじゃ、今倒したフィールドボスって、ここでの討伐の何体目なのかな!?」
「わー!? もしかして、倒すべき数が増えまくってるの!?」
「もしくは、天然での発生の個体の限定されてるとか?」
「あー、どっちもありそうかも? アル、その辺は知らなかった?」
「……悪い、完全に初耳だった。だが、そういう状況だったなら……条件自体が厳しくなっている可能性はあるな」
「……なるほど」
アルだってなんでも情報を網羅出来ている訳じゃないんだし、ここでもうフィールドボス戦が出来るようになってたのは知らなかったんだな。
でも、よく考えたら『城塞ガメ』の再戦で『瘴気珠』が落ちるって話は出てたし、フィールドボスの誕生に必要なだけの強化も出来るようにはなってたんだから、そうなってても不思議でもなんでもなかったよ。
「……もしかして、完全踏破をしようとしたから、見落としていた自然発生の個体を見つけられた?」
「あ、それありそう! 彼岸花、それが正解な気がするよ!」
「エリア内で決められた数の撃破ではなく、自然発生の個体の全撃破か。……可能性はあるかもしれんな」
「あー、そういう可能性もあるのか……」
確かに完全踏破をしようとしたからこそ、このヤシの木と遭遇した訳だしなー。サファリ系プレイヤーの人だからって、全てのエリアを完全踏破までは出来てないだろうし、高Lv帯になるこの辺のエリアなら尚更に厳しいはず。
そういう要素を考えれば、今の今まで見落とされていた可能性は否定出来ない。不動種となれば近寄らないと駄目だから偶然の遭遇の可能性は下がるし、遠目では普通のヤシの木と見間違いそうなくらいだったしなー。
彼岸花さんのこの見解、本当に正解なのかも? うーん、この辺の情報は報告に上げておくべきか? うん、その方がいいかも! 乱入クエストの件が無ければ現状のイベントの最中では報告する気はしないんだけど、そうも言ってられない気がする!
「アル、ちょっと俺はその可能性を報告してくるわ!」
「そりゃいいが……今、情報共有板は機能してるのか?」
「……あっ! 機能してない気がするし、まとめに報告を上げるだけにしとくか……」
「そうしとけ。今の程度なら、それだけで十分な内容だろうしな」
「ですよねー!」
ぶっちゃけ、確証がある情報じゃなくて、ただの推測でしかないしなー。他の新エリアでの命名クエストの発生状況と比較しないと、正確な事は分からないしね。
てか、早く命名クエストの選択もしてしまいたいし、そういう意味でも簡単な報告で済ますのでいいか。
【ステータス】
名前:ケイ
種族:同調激魔ゴケ
所属:灰の群集
レベル 11 → 12
進化階位:成熟体・同調激魔種
属性:水、土
特性:複合適応、同調、魔力強化、魔法耐性、属性強化
群体数 356/11900 → 356/12150
魔力値 314/314 → 314/318
行動値 115/127 → 115/129
攻撃 119 → 121
防御 203 → 206
俊敏 146 → 148
知識 344 → 350
器用 404 → 412
魔力 505 → 514
名前:ケイ2nd
種族:同調激強ロブスター
所属:灰の群集
レベル 11 → 12
進化階位:成熟体・同調激強種
属性:なし
特性:打撃、斬撃、強靭、堅牢、同調
HP 16100/16550 → 16550/17000
魔力値 150/150 → 150/152
行動値 117/117 → 117/119
攻撃 496 → 504
防御 456 → 464
俊敏 388 → 395
知識 114 → 116
器用 153 → 156
魔力 76 → 77
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