第1487話 フィールドボスのヤシの木
共同体『縁の下の力持ち』との協力関係を結んで、これから本格的に動き出そうってタイミングでフィールドボスのヤシの木が登場とはね! でもまぁ、まだエリア名が変わっていないこの河口域エリアで、フィールドボスの存在は無視出来ない!
という事で、王冠マークのあるヤシの木をこれから仕留めていきますか! ……そういや前に逃げ切ったここで出たフィールドボスもヤシの木じゃなかったっけ? あー、あれは撃破したって話だし、黒の暴走種だから別個体かも。まぁいいや、とりあえずこれからだ!
<行動値を5消費して『識別Lv5』を発動します> 行動値 122/127
『豪傑不動激投ヤシ』Lv17
種族:黒の暴走種(不動激投種)
進化階位:成熟体・黒の暴走種
属性:樹
特性:豪傑、不動、投擲、堅牢
識別内容は……うっわ、シンプルな構成ではあるけど、これは面倒そうだな!?
「……『魔法砲撃』『並列制御』『アースウォール』『アースウォール』! ……ヤシの実……飛んでき過ぎ?」
「ケイさん! 風音さんが妙に狙われてるのさー!」
「どうもそうっぽいな!」
俺が識別してる間に、風音さんへ向けて次々とヤシの実が投げ放たれている。まぁアースプロテクションで盾を作って、上手く凌いでるけど……純粋な飛行種族を優先的に狙ってくるパターンか?
パッと見では枝をしならせて投げてるから『枝の操作』っぽい気もするけど……応用スキルにしては、流石に頻度が多過ぎるな。特性に『投擲』がある事を考えれば、それに類する固有スキルと考えた方がいいかも? あー、とりあえず分析の前に識別内容を伝えよう。
「識別内容を伝えるぞ! 『豪傑不動激投ヤシ』でLv17! 属性は『樹』、特性は『豪傑』『不動』『投擲』『堅牢』の4つ! 構成としてはシンプルだけど、耐久性は高いぞ!」
「……不動種は硬いし、『堅牢』まであれば尚更硬いね」
「……物理型? ……このヤシの実の攻撃……固有の投擲スキル?」
「多分なー! ヨッシさん、とりあえず普通の溶解毒を試してみてくれ!」
「了解! 溶解毒で『ポイズンインパクト』!」
特に何も強化をせずに使った毒魔法で……どうだ? あー、実を投げるのを止めて、地面から生やした根で防御してくるか。
まぁ根自体も一部ではあるからそれなりにHPは削れているけど、元の耐久性が高い上に、防御はされてるから有効打という程ではないな。駄目になって切り捨てる前提での、根での防御――
「はっ!? また襲ってくるのさー!?」
「……妙に……狙われる?」
ふむふむ、俺らはスルーで執拗に風音さんを襲っていってるな。このヤシの木にとって、ヨッシさんの毒よりも、風音さんの方が脅威なのか? 動けない不動種にとって、純粋な飛行種族が……いや、もしかしてこっちか?
「風音さん! ハーレさんに火魔法を渡しながら回避に専念してくれ! ハーレさんは魔法弾で変換して、火魔法を投げつけろ!」
「はっ!? 了解なのさー! 『魔力集中』『魔法弾』! 風音さん!」
「……うん! ……これを使って! 『ファイアインパクト』!」
「うん! これでいっくのさー! 『狙撃』!」
「あっ!? 毒よりも、かなり防御が早いかな!?」
「……攻撃が……激しくなった」
「わっ!? 本当なのさー!?」
なるほど、なるほど。このヤシの木が警戒してるのは、飛行種族ではなく、火魔法の方か。そりゃまぁ火も植物系種族の天敵の1つだしな。
でも、所持属性じゃなくても狙ってくるとはね。うーん、どの属性の魔法を持ってるか、察知されてる? いや、飛行種族という要素も狙われる要因なのかも。不動種にとって、遠距離からの魔法は痛いはずだしさ。同じ理由でヨッシさんも狙われそうだけど、シンプルに一緒に動いている人数も影響してるのかも。
ともかく、火が付いた根は慌てて地面に擦り付けるようにして消火してたし、明確な弱点は魔法の火だと考えてよさそうだね。……動けない不動種だし、火で燃やすのはあんまり『堅牢』は関係ないからこそか。
「……ケイさん、風音さんの火魔法を中心に攻めるの?」
「あー、まぁそれでもいいんだけど……ここまで風音さん以外をスルーされると、色々したくなってくるよな」
「確かにそうだよねー! 無視してるんじゃ……って、わっ!? 『アースウォール』!」
「油断し過ぎだ、リコリス!」
「防いだんだからいいじゃん!」
なるほど、応用スキルでなくても、『爆散投擲』みたいに破裂する実なんて攻撃はあるのか。今のは風音さんを狙った攻撃の破片の流れ弾が飛んできただけだけど……それなりに広範囲になる攻撃も持ってるんだな。
「風音さんに負担がかかり過ぎだから、火をメインにはせずにいく! ハーレさん、風音さんへの攻撃の迎撃は任せる! 風音は逃げに徹して、引き付けておいてくれ!」
「了解です! 風音さん、一緒に頑張るのさー!」
「……うん! ……速度を……上げるよ。『自己強化』『共生指示:登録1』『操作属性付与』!」
「おぉ! 風の付与なのさー! 『散弾投擲』! 狙わせないのです!」
よし、ハーレさんなら風音さんの高速移動にも難なく合わせていけそうだな。2人が引き付けている間に、攻める方向性決めていきますかね。
「とりあえず黒の刻印で『低下』を刻みたいけど……誰か、セットしてる人っている?」
サヤは多分、この間の俺との模擬戦でセットを変えてるんだよな。クマと竜、どっちのをかは分からないけど――
「それなら俺が登録している」
「はいはーい! 私もあるよー!」
「ラジアータさんとリコリスさんが持ってるんだな。よし、なら2人のどちらかが『低下』を刻んで魔法防御を下げるとして……アル、海水で根元を覆えるか?」
「それくらいは簡単だが……ヤシの木はリアルで海水……というか、耐塩性が強いし、海水は効果があるかは分からんぞ?」
「あー、確かにそういうイメージはあるかも……」
くっ! 植物系種族での基本的な弱点になる海水だけど、ヤシの木は種族固有のもので海水に強い可能性もあるのか。下手すれば、風音さんが燃やした時に火を消す手伝いに使われかねないかも……。
「今回は俺とアル、それに十六夜さんとリコリスさんも水の使用は無しで!」
「えぇ!? 一番得意なところを封じられるの!?」
「……我慢しろ、リコリス。不動種相手に、水属性は分が悪い」
「そりゃそうだけど……」
「リコリスさんは、黒の刻印を刻むのに専念してくれ。それも大事なとこだしな」
「……分かったよ。まぁそれが大事なのは間違いないしさー」
よし、とりあえずリコリスさんの役割はそれでいい。どう見ても物理型の敵だから、攻める手段は魔法に絞った方がいいんだろうけど……それだけじゃ防がれやすいし、駄目だよな。
「アル、防御に使ってくる根の動きを止められるか?」
「根で巻きつけば多少は抑えられるだろうが……流石に格上のフィールドボス相手だと力負けする可能性はあるぞ?」
「拘束し切れなくても十分! 振り解く方向だけ制限してくれ」
「そりゃいいが……なるほど、地面に何か仕掛ける気だな?」
「正解! ヨッシさん、最大限に毒性を強化した毒の罠を設置してくれ。火を地面で擦って消そうとしたら、当たるような位置の地面に! 確かそんな毒魔法があったよな?」
「あ、うん、あるね。トキシシティ・ブーストと白の刻印の増幅で強化して、溶解毒の『ポイズンマイン』を3ヶ所設置すればいい?」
「そうそう、それ! それで頼む!」
その魔法は、地面に設置するタイプの罠だったはず。根を地面に擦り付けるって動きをするなら、その地面に仕込みをしてやろうじゃん!
「おー! いいね、それ! 毒魔法って、そんなのあったんだ!」
「凶悪そうな魔法だな? そうなると……アルマースさんが抑えている間に、俺かリコリスが『低下』の刻印を刻めばいいか?」
「そうそう、そういう感じ!」
あえて根で防御して、それ以上の影響を受けないように立ち回っているのが、このヤシの木の防御パターンっぽいからね。防御手段自体は、構成的に物理型だから樹木魔法での『ルートウォール』ではないはず? 多分、根の操作での防御か、それに準じる物理スキル辺りか。
「私はどうすればいいかな?」
「あー、サヤには……俺の攻撃の手伝いをしてもらうか」
「え、何をやるのかな?」
「光の操作でヤシの木に着火するから、風の操作で空気を送り込んで燃え上がらせてくれ」
「っ!? ……エゲツない事を考えてたかな!?」
「いやー、使えるもんは何でも使わないとな!」
もう明確に火が苦手って動きをしてるんだから、そこを狙わない理由はどこにもない! 人数もいるんだし、多方面から攻撃を仕掛けるまで!
「彼岸花さんと十六夜さんは、過剰に燃え広がるのを防いでもらっていいか? 場合によっては火の着いたヤシの実を投げるとかもあるかもしれないしさ」
「……うん、任せて。周囲が火事にならないように、気を付けておくね」
「……あぁ、任せておけ」
彼岸花さんはあんまり戦闘が得意ではないという話だから、今回はこれでいい。まだ曼珠沙華の3人の実力を把握し切れてないから思いっきり暴れてみてもらいたいとこだけど……不動種が相手じゃ、ちょっと特殊過ぎるからなー。
「『散弾投擲』! ケイさん、作戦が決まったら急いでー! 攻撃が苛烈なのさー!?」
「……次から……次へと!?」
「あんまり余裕がなさそうだな!? あー、十六夜さんと彼岸花さん、少し予定を変更! 風音さんへの攻撃を遮ってくれ! 風音さん、その間に『フレイムランス』を準備出来るか!? 可能なら、白の刻印で強化して!」
「……いけるよ。……『白の刻印:増幅』『フレイムランス』!」
「……その間、防御は受け持つ! 『アイスクリエイト』『氷の操作』!」
「……交互にいくぞ。『アースクリエイト』『土の操作』!」
おー、風音さんに向かって投げ放たれるヤシの実を氷や土で包む感じで止めているね。
ふむふむ、彼岸花さんは面と向かって敵と対峙するのが苦手なだけで、戦闘そのものがさっぱりダメって訳ではなさそうかも? 操作精度は十六夜さんに匹敵するくらいに非常に高いし、こういう形でなら活かせられるのか。
「おぉ!? 十六夜さんも彼岸花さんも、凄いのさー!? でも、抜けてくるのもあるのです!? 『散弾投擲』『散弾投擲』『散弾投擲』!」
あー、包み込んで動きを止めてはいるけど、爆発して破片を撒き散らす場合だと防ぎにくいっぽいね。でも、そっちはハーレさんが対処してくれている状態だから、問題はなさそうだ。
てか、複数の槍状に凝縮させた炎を見てから、このヤシの木の攻撃が激しくなってんな!? 実は投げてすぐに復活してるし、何気に魔力集中も発動してるみたいだし……いや、それはいい!
「アル、さっきの作戦は風音さんの攻撃に合わせろ! ヨッシさん、今のうちに下準備! 俺も風音さんのタイミングに合わせて攻撃を仕掛ける!」
「了解だ!」
「了解! 『白の刻印:増幅』『トキシシティ・ブースト』『ポイズンマイン』!」
何気に実戦では初めて使う気がする『ポイズンマイン』だけど、少し距離を取った3ヶ所の地面に設置が出来た。これ、確かLv8の毒魔法だっけ? 罠というだけあって、設置時点では特に反応してこないのは大きいね。
「風音さん、凝縮が終わったら俺らがいる側で防御するように攻撃してくれ!」
「……分かった! ……もうすぐ……溜め終わる!」
応用魔法スキルは溜めに時間がかかるし、攻撃を受けたらキャンセルにもなるけど……その辺はハーレさんと彼岸花さんがフォローしてくれてるからね。この感じなら、大技を叩き込むのは出来そう――
「……いくよ! ……フレイムランス……射出!」
「根が出たな! アル!」
「おうよ! 『根の操作』!」
「ラジアータ、今回は私が行くから!」
「ふん、勝手にしろ」
「そうしますよーだ! 『黒の刻印:低下』!」
防御に展開された多数の根を、アルの根が縛りに行くと同時に、リコリスさんがアルの根に乗って接近か!? あー、まぁサイズ的にもタイミング的にも、それが最適なのかも?
しっかりと黒の刻印の『低下』が刻まれたし、これで魔法攻撃への耐性は下がったけど……フレイムランスが当たる前にそれをするって早いな!?
「ふふーん! 折角だから、フレイムランスに間に合わせてやったよ!」
「リコリスさん、ナイス! でも、そこは離れてくれ!」
「もちろんですとも! 自分が燃えないって分かってても、すぐ側にはいたくないし!」
「ぐっ!? すげぇ力で暴れてくるな!?」
「アル! ちゃんと振り解かれる方向が誘導しろよ!」
「分かっちゃいるが、簡単に言ってくれるな!?」
炎の槍が防御する根に突き刺さり、燃え広がっている状態。リコリスさんの素早い動きでフレイムランスへ『低下』の効果が盛大に効いてるのが大きいな。今ので、HP2割くらい削れたぞ。
それをアルが必死に留めているので更に削れているし……これ、先に根が燃え尽きるって可能性も出てきたか? となれば……。
「風音さん、追撃チャンスだ! ファイアクラスターを叩き込め!」
「……うん! ……『ファイアクラスター』!」
こういう時は、立ててた作戦に拘るんじゃなくて、臨機応変に動くところ! アルと根で争ってる間は、他のスキルは使えないもんなー!
<行動値を19消費して『光の操作Lv3』を発動します> 行動値 108/127
そんでもって、無作為に上から落ちてくる大量の火球と共に、俺も攻撃だ! 太陽光を収束させて……よし、ヤシの木の葉に着火!
「っ! 根が操作から外れたか! おらよ!」
「あ、溶解毒も入ったのさー!」
「ナイス、アル!」
おー、慌ててスキルを解除して他の根でファイアクラスターを防ごうとはしてるけど、防ぎ切れずに葉っぱや幹も燃え出してるね。アルもしっかりと溶解毒を仕込んだ地面に根を叩きつけてるし、かなり優勢になってきたな!
「サヤ、風を思いっきり送れ!」
「任せてかな! 『略:風の操作』!」
火の勢いを強める為の風だから、操作自体に精密さは必要ない。さぁ、どんどん燃え上がれ! この火を消す手段が、あるものならやってみろ!
「……これ、エゲツないね」
「これくらい、いいんじゃない? フィールドボス相手に、加減も出来ないでしょ!」
「今回はリコリスに同意だな。とことん弱点を突くのは、良い戦法だろうよ。彼岸花は、戦闘で攻撃を躊躇い過ぎだ」
「……それは、そうだけど……」
んー、どうも彼岸花さん的にはこういう戦い方は好きじゃないっぽい? うーん、これはちょっと難ありか? 技術的な面ではなく、精神的な面で。
なんだかこの様子で負けず嫌いなのは、ちょっと違和感があるな? もしかして何か理由があったり……まぁそれを考えるのは、ヤシの木を倒してからにしようか。
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