第1482話 落下物の入手
新イベントでの探索を開始して早々に、思わぬ遭遇もあったけど……よく考えたら、今回はルストさんもガッツリとイベントに参加してるんだね。まぁ対人戦でなければ今までも参加はしてたし、それほど不思議でもないか。
「さぁ、皆さん、こちらです!」
「あ、ルストさん、ちょい待った! 赤のサファリ同盟の人は回収を終えたって言ってたけど……もうその場にはいない?」
「もういませんので、お気になさらずに! 今回は共同体の中で競争してますので、回収を終えたらあっという間にどこかへ行ってしまいましたよ! まぁソロだったり、PTだったり、皆さん、マイペースですけども!」
「……なるほど、それなら問題ないか」
ルストさんがマイペースって言うのはどうかと思うけどなー。てか、赤のサファリ同盟の中で競い合ってるってのも意外だけど……って、あれ? さっき、弥生さんとシュウさんは情報収集で動いてるって言ってたような? どうも、内容が食い違ってるような……?
「はい! 弥生さんとシュウさんは、競争には加わってないんですか!?」
「えぇ、そうなりますね! 概要を把握した時点で、判定役として留まっている感じになります! というか、急いでもらっても構いませんでしょうか? 私も次を探しに行きたいので、あまり時間はかけられないのですが……」
「あ、すまん! わざわざ教えてくれるのに、邪魔しちゃ悪いな!」
「いえいえ、もう私達には不要ですからね! それでは、こちらです!」
もう見つけて用済みになってるルストさんからすれば、俺らに教えるなんて事はメリット皆無なはずだけど……まぁその辺を気にしないのが、ルストさんらしさでもあるか。
「あ、ガラスの容器みたいなのが見えてきたかな!」
「おぉ! 思ったよりも小さいのです!?」
「……あんまり数はなさそうだね?」
「みたいだな? とりあえず降りるぞ」
「ほいよっと。でも、これは人数分はなさそうだな……」
「……仕方ない……気もする」
「ですよねー!」
自分達で見つけた訳じゃないし、既に回収済みで残ったのをおこぼれで貰うだけなんだから、文句を言える状況ではない。でもまぁ、ここで実物がどういう物なのかを見れるのは大きいね。探すべき物の見た目が分かるのは、探す上で良いヒントになるしさ。
おし、とりあえず落下物の目の前まで移動完了! 上から見た通り、4つしかないけど……この辺の草花が何かに押し潰されたようになってるから、元はもう少し個数があったっぽいな。
まぁそれは既に回収済みなんだろうけど……落下した跡は思ったほど大規模ではなさそうだ。近くの木の枝が、少し折れてる程度? いや、これはこれで目印にはなるか。
「それでは私はこれにて失礼しますね! 皆さん、ご健闘をお祈りしておきます!」
「ルストさん、サンキューな!」
「いえいえ、どういたしまして! あ、もし余ったのがあったとしても、私への連絡は不要ですので! 競争しているのですから、自力でやらないと意味ありませんからね!」
「ほいよっと!」
余った分が出たらルストさんに教えようかと思ったけど、それはいらないって釘を刺されてしまった。……いつかの機会に、ルストさんへのお礼も考えなきゃね。
てか、あっという間に見えなくなったし……相変わらずの移動の速さだな。根の操作がLv10になってるとか言ってたし、これまでよりも更に精度が上がってるんだろうなー。
まぁそれはいいとして、今は落下物の方を確認して――
「これ、思ったよりも小さいな?」
「だなー」
肝心の落下物は……曇りガラスみたいになってて、中身が見えないのは聞いていた通りか。まぁ中身が見えたら報酬のランダム性が失われるっていうのもありそうだね。
サイズ的には、俺のロブスターのハサミよりも小さいくらいで、簡単に持ち上げられそうな程度。円柱状っていうのが、地味に予想外だった部分だな? 紅焔さん、形状は意図的に伏せて……いや、俺らへの説明もなかったから、単に忘れてただけかも?
「……数は4つ。どういう風に分ける?」
「とりあえず、所属が違うので1個ずつにしたら? 私達が1つ、ケイさん達が1つ、風音さんが1つでさ! その中で1番微妙だったとこが、もう1個でどう?」
「それが無難なとこか。よし、リコリスさんの案を採用で!」
「いぇーい! やったね!」
一緒に行動してるとは言っても、変にどこかに数が偏れば揉める原因にもなりかねないからね。ここで揉めても嫌だし、分け方としては問題ないだろ。
「……なんだか……人数に対して……不公正に……ならない?」
「あー、風音さんはそう思うか……」
うーん、まぁその気持ちも分からなくもないんだけど……。
「風音さん、人数に応じて取り分を増やす場合はケイさん達が有利になり過ぎるからな? この状況ならグループに1つが、1番揉めないぞ」
「……桜花、そういうもの?」
「おう、そういうもんだ! リコリスさんの提案、悪くねぇよ」
「ふふーん! そうでしょうとも!」
「……それなら……分かった」
ふぅ、桜花さんの言葉でなんとか風音さんも納得してくれたみたいだね。人数が均一でない以上、完全に公平な分配は難しいんだし、妥協出来るところは妥協しないとなー。
商人プレイをしている桜花さんの言葉……いや、風音さんの場合、桜花さんであるという事が重要なだけで、商人云々はあんまり関係なさそう。まぁ納得してくれたなら、それでいいや。
「さーて、それじゃ1個は私が――」
「待て、リコリス。いつ、誰が取るかを決めた?」
「えー、それは発案者の報酬って事でよくない?」
「……よくない。私達の割り当て分、誰が取るかは決めてない。勝手に進めないで」
「そういう事だ。トレード不可なアイテムも出てくるのなら、慎重に誰が取るかを考えるべきだろう」
「何が出てくるかも分からないのに、皮算用しても仕方なくない!?」
「……それはそうだけど、納得は必要」
「じゃあ、どうやって決めるのさ!?」
「そこから話し合う必要があるな」
「……そうするしかないね」
「めんどくさいんだけど!?」
うん、まぁ曼珠沙華の3人の誰が取るかは、そっちで考えてもらうとしようか。変に俺らが口を出しても、ややこしい事になりそうだし……。
「俺らは……ケイが取るのでいいか」
「賛成なのさー!」
「むしろ、それ以外の選択肢はないかな?」
「あはは、確かにそうかも?」
「へ? え、良いのか? スキル強化の種とか出る可能性はあるんだぞ?」
俺らは俺らで誰が取るかを話し合う必要があるかと思ったら、あっさりと俺が取るって話になってるんだけど!? え、そんなに簡単に決めていいのか!?
「別に構わねぇよ。スキル強化の種なら俺はまだ結構使ってなくて温存状態だし、何が出たとしてもケイが1番有効活用するだろうしな」
「皮算用になるけど、ケイが持ってるのが1番かな! 手札が1番多いの、ケイだし!」
「まぁハズレならハズレで、トレード可能ならどうとでもなるしね」
「トレードが可能な食べ物が出たら、ヨッシに渡して下さい!」
判断基準、そういう内容か!? あー、まぁスキル強化の種が手に入ると皮算用するなら土の操作をLv10にしたかったりするし、ここはお言葉に甘えますかね。
「おし、それなら俺が拾わせてもらうぞ」
「……一緒に……拾う」
「ほいよっと」
という事で、アルのクジラの背から降りて、ガラス状の円柱に触れてみよう。この手のは多分、触れればそれで取得になるはず。
「おわっ!? あ、持ったら砕けるのか」
なるほど、なるほど。そういう演出になって――
<『進化の輝石・火』を1個獲得しました>
あー、そういうパターンもあるのか。いや、でもこれって微妙……。トレード不可なやつだし、火属性って俺とは相性が悪いしなー。使う事、あるのか?
「……『空白の称号』……だった。……ケイさんは?」
「こっちは使い捨てじゃない、火属性の進化の輝石だな。自分で使うか微妙なとこだけど……トレード不可だし……」
くっ! いきなり大当たりを引き当てるなんて展開にはならなかったか。あー、風音さんが引き当てた『空白の称号』の方が、俺的には当たりな気がする。
「おぉ! 進化の輝石が出るんだ!?」
「ケイ、ロブスターに使うのはどうだ? 同調の場合、片方だけの進化だろ?」
「まぁそりゃそうだけど……一時付与のスキルLvじゃなー。あ、そういやヨッシさん、火の純結晶での付与スキルのLvってどうなってた?」
なんかバタバタしてたから、夕方にその確認を忘れてた気がする。丁度いいタイミングだから、今確認してしまおうっと。
「あ、そういえば忘れてた。えっと……あ、スキルLvは6にはなってないから、予想通り、純結晶での付与スキルは熟練度の蓄積はないみたいだね」
「やっぱりかー。なら、尚更、火の進化の輝石は微妙だな……」
物としては決して悪くないんだけど、今の段階だと一時付与のスキルLv3じゃ実用性に乏しい……。せめて、昇華相当のスキルLvじゃないと厳しいよね。
「ねぇ、純結晶って何?」
「……それならまとめに書いてあった。属性の進化の軌跡、昇華相当のスキルLvで付与されるそうだよ」
「え、そんなのあるの!? 面白いね、それ!」
「確かに興味深くはあるな。昇華相当のLvのスキルを、一時的にでも使えるのか」
「……ここで引いたら、面白い!」
「確かにねー! それじゃ、早いもの勝ちで取っちゃおう!」
「っ!? リコリス、待て!」
「……言ってすぐは、ズルい!」
「ふふーん! もう遅い!」
今の流れでいきなり駆け出して取るのは、本当にズルい気がするけど……まぁもう落下物に触れて、砕け散ったんだから手遅れですよねー。
「えーと……ここで『刻印石』って、ハズレじゃん!? 普通に手に入るんだけど!?」
「……残念」
「変な真似をするからだ」
「それ、関係ないと思うけど!?」
まぁ刻印石はトレード可能だし、刻印系スキルの再設定に使ったりするし、成熟体用の進化の軌跡の結晶に上位変換する素材としても使えるから、決してハズレではないよなー。成熟体の敵を倒せば、確率は低めとはいえ普通に落とすんだしさ。
「……これ……誰が1番……微妙?」
「……『刻印石』も『空白の称号』も、今後で使い道はいくらでもあるから、使いそうにない『進化の輝石・火』かも?」
「あー、そうなるのか。となると、残り1個はグリーズ・リベルテが貰っていい?」
「……いいよ」
「……私もいいけど、リコリス、ラジアータ、いい?」
「まー、内容的にそうなるよねー。使わないトレード不可が、ある意味1番のハズレだしさ」
「使うにしても、熟練度稼ぎが必要となればな……。俺もそれで構わん」
「それじゃ、遠慮なく!」
さーて、4個のうち3個は入手して、アイテムに変わったけど……残り1個は何になるのやら? てか、1ヶ所で2個は取れないんだから、2個目は俺が拾うのは不可能だよな。
「今回は俺はパスするから、誰かが拾ってくれ」
「え、ケイ、いいのかな?」
「1ヶ所で1個までなんだから、拾いようがないしなー。それに……毎回全員分あるとは限らないから、そういう時に全員が1回ずつ引くまでは俺は遠慮しとく」
「……あはは、まぁ確かにその気持ちは分かるかも」
「ま、それもそうだな。俺は最後で構わんから、サヤ達の中で決めてくれ」
「はい! それなら私が引きたいです!」
「うん、どうぞかな!」
「ハーレだと、何か食べ物でも引き当てるそうだね?」
「そうなって欲しいのさー!」
割とあっさり決まったけど……さて、一体何を引き当てるのやら? というか、これって食べ物は出てくるもんなのか?
「それじゃいくよー! えい!」
風音さんの上に乗ってたハーレさんが飛び降りて、円柱状の落下物に触れて、演出で砕け散っていく。さて、これで何が出てくる?
「おぉ! 『進化の軌跡・火の純結晶』が出てきたのさー! これはヨッシにプレゼントなのです!」
「え、今日使ったのが出てきたの?」
「ちょっと意外な方向かな!?」
「ま、使った分が補充出来たならいいんじゃねぇか?」
「てか、何気にまだレアアイテムだよな、それ!」
「えっへん! そうなのです!」
まだまだ量産出来る状態になってないのに、まさかの今日使った純結晶の入手になるとは思わなかった。でも、これは結構当たりな部類だな。
「これ、何がどう出るか、全然予想が出来ないな?」
「確かに……。あ、そういや……紅焔さん達、聞こえるか!?」
「ん? ケイさん、どうしたよ?」
「いや、紅焔さんとソラさんが手に入れた物は分かったけど、ライルさんとカステラさんと辛子さんはどうだったんだろうって思ってさ?」
何気に聞いてなかった部分だけど、何が手に入るかっていうのはもっと情報があってもいい――
「あぁ、その件ですか。申し訳ないのですが、紅焔とソラ以外は入手出来ていないんですよ」
「僕らも手に入れたかったんだけど、沢山の人が群がっててさー!」
「それに巻き込まれる前に手に入れられたのが、紅焔とソラでな。待ち合わせの最中で、微妙に位置が違っていたっていうのも要因だ」
「あー、なるほど。全員が手に入れてた訳じゃなかったのか」
ソラさんが強引に大勢の中に突っ込んでいくとも思えないから、ソラさんがいた場所に偶然落ちてきたって感じかな? 紅焔さんは……まぁそれを見て強引に突っ込んで入手してそうな気もする。
「わっはっは! まぁそういう流れだな!」
「今回のイベント、運要素は間違いなく強いね。入手出来たとしても、何が出るかは運任せみたいだし……紅焔はかなりの強運だと思うよ」
「まぁ1発でスキル強化の種を引き当てたのは、かなりの強運だよな」
「この調子で、何個も手に入りゃいいんだが……まぁそこまで甘くはねぇだろうなー!」
「だろうなー」
イベント期間がどの程度なのかがまだ未知数だけど、1個でもスキル強化の種が手に入れば相当な強運な気がする。まぁ運任せの要素が強いとしても、回数を増やせばそれだけ入手機会も増えるはず!
「さてと、次は自力で見つけていきますか!」
「「「「おー!」」」」
問題は……さっき入手した分がいつから存在してたのかと、同じエリアでの出現が何度もあるかどうかだけど……その辺、さっぱり分からないんだよなー。
落下した痕跡は少なからず残っているみたいだから、それを目安に探していくしかないか。劇的に良いアイテムが手に入った訳じゃないけど、まぁ実物が見れたのは良い成果だよね。
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