第1480話 探索、開始!


 今回の緊急クエストでは明確な探索場所の指定はなかったけども、探す対象の場所は決定! 俺ら『グリーズ・リベルテ』と『曼珠沙華』と風音さんは、ここの北にある『名も無き未開の河口域』から探索を始めていこう!


「ケイ、ハーレさん、ほらよ!」

「おー! そういえば、まだPTに入ってなかったのさー!」

「アル、サンキュー!」


<ケイ様がPTに加入しました>

<ハーレ様がPTに加入しました>


 出発する前に、PT……というか、連結PTにしておくべきだな。


「紅焔さん、そっちの話は一旦中断にしてくれ! サクッと連結PTを組んでおくから」

「ん? あ、それもそうだな! こっちもどこからスタートするかは決まったし、そりゃやっとかないとな!」


 おっ、紅焔さん達もどこからスタートするかは決まったんだな。まぁその辺は連結PTを組んでから聞いてみるとして……問題は風音さんと桜花さんをどうするかだ。桜花さんは移動しないんだから、どのPTでも問題ないとして……問題は風音さんか。

 うーん、俺らのPTの方が無難か? でも、魔法を見たがってたんだし、彼岸花さん達のPTでもあり? あー、連携の都合もあるだろうし……回避行動に繋がりそうなこれは聞いておくか。


「彼岸花さんとリコリスさんって、どっちも種族的に『危機察知』を持ってるって認識でいい?」

「……うん、その認識で問題ないよ」

「私らの中で持ってないの、ラジアータだけだからね!」

「そこで俺を引き合いに出す意味、あったか?」

「え、ケイさんが確認したいんじゃないかなーって?」

「いや、大体の予想は出来ていただろう!」

「あはは、気にしない、気にしない!」


 えーと、まぁラジアータさんは持ってないような気はしたのは事実だけど……特にそれでどうこういうつもりもなかったんだけど……いや、こういう関係性が通常っぽいから、ここは慣れていくしかないな。


「……ケイさん、今のは大事な確認?」

「まぁ確認と言えば確認だな。風音さんを俺らのPTに入れるか、彼岸花さん達のPTに入れるかで悩んでさ」

「……私達と一緒に動いて大丈夫かという確認?」

「回避行動に直結する部分だからなー。3人での連携が乱れるとかがあるなら、避けておいた方がいいかなーと?」

「あ、それは分けておいてくれた方が助かるかも! 他の人との連携、あんまりした事ないしさ!」

「初対面ともなれば、尚更にそうだな。馴染みがあるケイさん達と一緒の方が、風音さんも動きやすいだろう」

「まぁそりゃそうだよなー。風音さん、そういう理由で俺らのPTの方になるけど、問題ない? 桜花さんは人数的に、彼岸花さん達のPTに入ってもらう事になるけどさ」

「……問題……ないよ? ……一緒に動くのは……変わらないし!」

「俺もそれで構わんぜ」

「おし、ならそれで決定で! アル、風音さんへのPT申請と、連結申請をよろしく!」

「おうよ。ほれ、風音さん」

「……ありがとう」


<風音様がPTに加入しました>


 よし、とりあえずこれで俺らのPTはフルメンバーになったから――


<彼岸花様のPTと連結しました>

<紅焔様のPTと連結しました>


 うん、すぐに連結PTも組み終わったね。桜花さんも既に彼岸花さん達のPTに入った状態になってるから、これで準備は完了!


「おっし! それじゃ俺ら『飛翔連隊』は、森林深部から『封熱の霊峰』方面に向かって進んでいくぜ!」

「おー!? あっち方向にしたんだ!」

「『グラナータ灼熱洞』を狙ってみようって話になってね。まぁ人の流れを見ながら、予定変更はあるかもしれないけどさ」

「あそこはLv上げの場所としては人気ですが、適正Lvを過ぎた人からの人気は一気に減りますからね」


 ふむふむ、確かに俺らもLv上げを終えてからあそこに出向いた事はないもんなー。特に用事がなければ、適応が必須になる場所でもあるし、何度も向かうような場所ではないというのは大きいかも?

 ただ、まぁ同じ事を考える人はそれなりにいそうだから……状況次第でどうとでも進む方向を変える可能性もありそうだけどね。


「ま、何はともあれ、それぞれに向かう場所は決定だな? それなら、協力してお宝確保を開始だ! 俺はここでしっかりと情報を仕入れるから、頼んだぜ!」

「もちろんだ、桜花さん! レアアイテム、確保するぞ!」

「「「「おー!」」」」

「……頑張る!」

「……移籍した翌日から、気合が入るね!」

「ふふーん! 実力を示していかなきゃね!」

「腕が鳴るというものだな」

「俺らは俺らで、他のプレイヤーとの戦闘は避けつつ、墜落したUFO狙いでいくぞ!」

「可能そうなら、私達で墜落させるのもありですか?」

「あ、ライルのその案、それもいいかもしれないね」

「え、転移されて逃げられるんじゃ……?」

「カステラ、それはやってみねぇと分からねぇぜ? 意外と、上手くいくかもしれん」

「まぁやるだけやってみようぜ! そもそも見つけなきゃ始まんねぇしな!」


 それはまさしく紅焔さんの言う通り。UFOそのものにしろ、落下物にしろ、結局は見つけなきゃ意味がないからなー。そういう意味では、各群集のサファリ同盟が強そうなイベントではあるよね。



 ◇ ◇ ◇



 用意が済んだので桜花さんの樹洞から出てみたけど、流石に囲まれているなんて事はなかった。でも、誰も彼もが慌ただしい様子だなー。

 とりあえず『飛翔連隊』と風音さんは自前で飛んで、それ以外はアルのクジラの背に乗って森の上まで移動!


「くっそ! これ、どこ行きゃいいんだ!?」

「灰のサファリ同盟は、今回は初心者以外お断りってのは痛い!?」

「野良PTでも組んで、探索するか?」

「大きな共同体は、もう探索に動き出してるっぽい!」

「ぎゃー!? いつもは頼りになるのに、今回は強敵じゃねぇか!?」

「あそこはどうなってんだ!? ソロ向けの共同体……なんだっけ、名前!?」

「『縁の下の力持ち』だったら、バラバラに動くけど情報共有はするって話だぞ?」

「ちょ!? え、マジで!?」

「あそこ、ソロプレイヤーの互助会だからなー。普段はそうでもないけど、こういう時には強い……」

「一番割を食ってるの、小規模な共同体か!?」

「いや、野良PTばっかでやってる共同体に所属してないプレイヤーじゃね? 小規模な共同体は、馴染み同士で連携して動くっぽいし……」


 なんか色々と聞こえてくるけど……ごちゃごちゃ言ってる人達同士で野良PTか連結PTでも作ればよくね? 下手に騒いでいるより、早く行動した方がいいと思うけど……。

 あっ、そうか。普段はそういう仕切りを他の人達に任せてるから、仕切る人との協力関係が保てない今回だとこういう事態が起きるんだね。うん、まぁそこまで面倒は見れないし、自分達でなんとかしてくれ!


「紅焔さん、何かあったら連絡で! 俺らはこのまま、北のエリア切り替えに向かう!」

「おうよ! 俺らはミズキから森林深部まで転移だな!」


 という事で、ここで紅焔さん達と別行動開始!


「アル、風音さん、北へ進んでくれ」

「それはいいが……速度はどうする? 飛ばしていくか?」

「いや、速度は抑えめでいこう。サヤ、ハーレさん、何か違和感があればすぐに報告をよろしく! UFOは素直に姿を見せてくれる訳じゃなさそうだし、要警戒で!」

「はーい!」

「任せてかな!」


 こういう時、観察力のある2人は頼りになるよね。UFOの方を見つけられれば、それこそ墜落を狙っていける可能性もあるんだし――


「ねぇ、ケイさん? UFOを見つける方法って、目視だけ?」

「現状ではそうするしかなさそうだけど……ヨッシさん、何か気になる部分でもあったか?」

「気になるというか……それだと、サファリ系プレイヤーの人が有利過ぎるんじゃない? 擬態を素で見破れる観察力が必須は、流石に厳しいよ」

「あー、確かに……。となると、明確に分かるやすい目安がどこかにあるかもなー」

「それを探す……としても、結局はUFOを見つけなきゃ、その基準すら分からんぞ?」

「ですよねー!」


 誰が見ても、一目で分かるような要素があったとしても……結局はその状態のUFOを見つけなければ意味はない。マップに表示でもされない限り、流石に厳しい気がする? ん? マップに表示?


「紅焔さん、ダメ元で聞くんだけど……UFOの現在地を指し示すレーダーみたいなアイテムとか拾えてない?」

「無茶言うな、ケイさん!? そんなのを持ってたら、既に言ってるっての!」

「あー、実は拾ってましたとか、そう都合のいい展開はないか……」

「そりゃそうだっての! まぁもしかすると、出る可能性もあるかもしれんけどな。流石に今のままじゃ、目印も何もねぇしよ」

「だよなー」


 可能性は否定しないけど、流石に既に持っていたりはしないんだね。うーん、ともかく今は闇雲にでも探していくしかないか。


「……冷気で索敵は出来るよ?」

「あー、競争イベントで霧に偽装してたあれか。……あれ、そこらの雑魚敵まで引きつける可能性は?」

「……上空に絞れば、地上の敵は大丈夫。範囲はかなり広くいけるよ」

「だろうなー」


 霧に偽装した冷気には苦戦を強いられたんだし、その有用性は身を持って知っている。でもまぁ、UFO探しの手段として使うのは無しだな。


「……使うのは、乗り気じゃない?」

「いや、状況次第では使ってもらうけど……探す為じゃなくて、邪魔する為に使ってもらう方がいいかも?」

「……他の……プレイヤーへの……妨害? ……見つける……邪魔は……させられる?」

「風音さん、正解! サヤかハーレさんが目視で確認して、周囲に他のプレイヤーがいた時に妨害用で使う。場合によっては、そのままUFOの足止めや、俺らの姿を隠したりにも使うかもなー」

「……確かに、それはいけるかも?」


 敵として対峙した時には脅威だったけど、味方として運用出来るならいい手段だよね。あの時は霧への偽装だったけど、そもそも姿を隠すという役目はそのまま有効だしさ。


「なんか、エゲツない手段が増えた気がするのです!?」

「……あはは、まぁそれもケイらしいかな?」

「味方になったんだし、別にいいと思うけどね」

「ねぇ、ラジアータ? 彼岸花だけ、いきなり活躍しそうなんだけど?」

「一番手札を知られているのだから、その差は仕方あるまい。それに……いや、これは止めておこうか」

「いやいや、そこまで言って止めるのは無しでしょ! 怒んないから、最後まで言いなよ!」

「なら言わせてもらうが……リコリスはケイさんと属性被りをしているから、出番はそう回ってこないだろう?」

「あー!? そういう事を言っちゃうんだ!? ……確かにそうだけど! あれ!? 私、一番存在価値がなかったりするの!?」


 ちょ!? ラジアータさん、何を言ってくれてんの!? 属性被りをしてるのは事実だし、確かに同じ属性なら自分で済ませちゃいそうだけど……いや、本当にどうしよう?

 俺とリコリスさんが2人同時に大量の水を使わなきゃいけない時って、あったりする? いやいや、状況次第ではそういう機会もあるはず! ……多分!


「……昇華魔法が……多めに……撃てるのは……大きいよ?」

「っ!? そうでしょう、そうでしょう! 風音さん、分かってるね! ほら、ラジアータ! 私にだって、存在価値はあるんだよ!」

「誰も、存在価値がないとまでは言っていないが?」

「うるさいなー! ほら、もうすぐエリアの切り替えだから、気合を入れていくよ! 何にしても、まずはUFOを見つけるところから!」

「言えと言ったのは、リコリスだがな?」

「……余計な話はそれくらいで。エリア、切り替わるよ」


 慣れたような彼岸花さんの言葉で、リコリスさんとラジアータさんは静かになっていく。今みたいなやり取りはいつもの事なんだろうし、そこからの切り替えも早いんだな。


<『群雄の密林』から『名も無き未開の河口域』に移動しました>


 さて、エリアが切り替わったけど……こっちのエリアの様子はどうだ? 今日は昼の日だし、晴れてもいるから見通しはいいはずだけど……。


「あー、それなりに人がいるか……」

「そりゃそうだろうよ。ここのLv帯は高めとはいえ、もう俺らはほぼ適正Lvだからな。昨日1日、全然育成が出来なかったのを加味して考えれば……ここに進出してくる人がそれなりにいるには、当然ではあるぞ?」

「ですよねー!」


 劇的に相手が強かったのは、まだ俺らのLvが今よりも低かった時だからこそだしなー。まぁここより先の『名も無き未開の海岸』まで行けば、流石に厳しめにはなってくるだろうけどさ。


「とりあえず、このまま北へ進んで『名も無き未開の海岸』まで行ってみるか。その間にUFOが出てくるかもしれないし、もう既に落下物がある可能性もあるしなー」

「ふっふっふ! 見落とさないように、しっかりと観察していくのです!」

「そうするかな! あ、ハーレ、距離を離し過ぎないて程度に手分けをするのはどう?」

「それ、ありなのさー! ケイさん、私は風音さんに乗って、少し離れていいですか!?」

「すぐ戻ってこれる範囲でならいいぞ。風音さん、任せていいか?」

「……大丈夫。……任せて!」

「なら、頼んだ!」


 ちょっとした角度の違いとかでも死角は出来るだから、合流が容易な範囲での手分けは問題ない。問題ないどころか、効率は良くなるよな。

 クマのサヤが乗るより、リスのハーレさんが乗る方が、風音さん的にも負担は軽いだろうしさ。ドラゴンライダーのリス……いや、それは何か違う気がする?


「ふっふっふ! 風音さん、行くのです!」

「……うん!」


 まぁUFOが見つかってない段階で他のプレイヤーとの戦闘になる可能性は低いし、今はこれで――


「……ケイさん、私達も同じようにしてもいい?」

「ん? まぁそれはいいけど……彼岸花さん達って、観察力はどんなもん?」

「はいはーい! 私、そんじょそこらのサファリ系プレイヤーよりも観察力には自信はあるよ!」

「観察力はあるのに、相手の力量を甘く見る癖が問題だがな」

「今、それは関係ないでしょ!?」

「あぁ、そうだな。ずっと続いている問題だからな」

「なにおう!?」


 またやってるけど……この流れは慣れてしまわないとね。まぁラジアータさんもリコリスさんに観察力がないとは言っていないし、彼岸花さんがこうやって提案してきているなら――


「……役割自体には問題ないよ」

「だろうなー。なら、そっちは任せた」

「……うん。行くよ、リコリス、ラジアータ」

「移動は任せるぞ、リコリス」

「言われなくても分かってますよーだ!」


 シレっと無発声で岩を生成して足場を作っていくんだから、こういう言い合いをしててもちゃんと連携は出来てるんだよな。これも喧嘩するほど仲が良いっていいものなのかもね。

 さーて、それほど距離は取ってないとはいえ、3方向に分かれての探索になったけど……何か見つかってくれるかな? ここってさっきUFOが出た隣のエリアだし、どうなんだろ? 墜落の最中に転移した様子があるから、どうとも判断し難いんだよなー。

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