第1479話 目的地を決めて
さて、とりあえず今回のイベントで一緒に協力して動くメンバーは決まった。メンバーは、俺ら『グリーズ・リベルテ』の5人、移籍してきたばかりの『曼珠沙華』の3人、桜花さんと風音さん……そして紅焔さん達『飛翔連隊』の5人で、合計15人か。
連結PTの最大人数が18人だから3枠ほど空いてるけど……まぁ絶対に埋める必要がある訳じゃないし、そこは問題ないだろ。場合によっては、ソロで動いている誰かを入れるのもありだけど……まぁ基本はこのメンバーでいい。
「俺らとケイさん達は基本は別行動で、何かあれば連絡を取り合う感じでいいか?」
「まぁ二手に分かれた方が、大勢で動くよりはやりやすいし、その方向性でいいとして……問題は俺らと紅焔さん達、それぞれがどこに向かうかだな……」
ソラさんが対人戦はしないんだし、そこが協力していく前提条件になるのは当然の事。ただ、どこに向かうかは……冗談抜きで決めるのが難しいな!?
「……私達は、赤の群集と行動範囲が重なる場所がいい」
「お宝の奪い合い、上等ってね!」
「あわよくば、弥生さんとシュウさんと遭遇したいところだな」
「まぁ曼珠沙華の3人はそうなるよなー。そういう基準で考えるなら……赤の群集の初期エリアの近くか、占有エリアの近く?」
「流石に初期エリアの近くは避けないかな? 多分、どこの群集も新規さんや、まだ育ち切ってない人がいるだろうし……」
「下手に激戦に巻き込むのは、向こうが避ける気がします!」
「確かに弥生さんは特に避けそうだよね」
「あー、確かにそれもそうか……」
そもそも弥生さん……というか、シュウさんが大暴れしてBANされた件のきっかけには新規プレイヤーが絡んでるんだから、そういう巻き込み方はしたがらない可能性は高い。
「……それなら、狙うは黎明地じゃなくて、こっちの新地域?」
「弥生さんが誰と行動してるかだよねー。シュウさんが一緒にいるのは間違いないとしても、他にも誰が一緒にいるんだろ?」
「……分からん。オンライン版でのモンエボの弥生さん達の交友関係を正しくが把握している訳ではないしな……。赤のサファリ同盟には、ここで増えたメンバーも多いとも聞く」
完全に曼珠沙華の3人は、宝探しよりも弥生さん達と遭遇する事を狙いに考えてるな!? まぁ第一目標なんだからそれ自体を駄目とは言わないけど……それだけしか頭にないのも少し困るな。ここは明確に――
「……目的……自分達だけのを……押し付けないで」
「……あ、それもそうだね。えっと、風音さん? そこはごめんなさい」
「あー、うん! 同行すると言っても、私達の都合だけじゃ駄目だよね! 今のはごめん!」
「今のはすまなかった。確かに一緒に動く以上は、そこは配慮すべきところだな」
「……分かってくれれば……それでいい」
ふぅ、風音さんが、言っておくべきだと思った事を容赦無くバッサリと言ってくれたのはありがたいね。曼珠沙華の3人も、無理に自分達の意見を押し通そうとはしないようだし……普通に俺から注意すればよかったかも。まぁもう遅いけど。
「ま、折り合いをつけるとすれば……俺らはこっちの新エリアの方で探すってのでいいんじゃねぇか? 何処を狙ってくるかは読みにくいが、入手確率を上げるなら……他の人の進出の少ない高難易度なエリアの可能性もあるだろ。弥生さん達も、それを狙ってくる可能性はあるぞ?」
「んー、まぁ弥生さん達なら、それが出来るもんなー。方向性としてはありかも?」
シンプルに俺らもその方がUFOからの落下物を見つけやすいだろうしね。……戦闘がちょっと激しいものになる可能性は高いけど、まぁお互いの動きを確認するのにもいい機会なのかも?
「具体的にどこの新エリアを探索するかは後で考えるとして、新エリア側で探索する事自体に異議がある人はいる?」
昨日はサッパリ育成にならなかったんだし、ここで育成も兼ねて進みたいって気持ちもあるんだけど……特に誰も反対はなしっぽいね?
「おし! ケイさん達が新エリアの方を探索するなら、俺らは『黎明の地』へ行くか! 戦闘は出来るだけ回避しつつ、人の少ない方向を目指すのでどうよ?」
「僕はそれで賛成! ソラもそれならやりやすいでしょ!」
「……確かにそうだね。でも、僕の都合に合わせていいのかい?」
「今更、何を言っているんですか、ソラ。対人戦の時は仲間外れにしてしまっているのですから、こういう時は遠慮せずにお願いしますよ?」
「そうだぞ、ソラ。別に俺らは戦闘狂って訳でもないんだから、避けたところで問題はない」
「……そういう事なら、甘えさせてもらおうかい」
「おう、それでいいんだぜ!」
少し前にあった競争イベントでもソラさんは非参戦だったんだろうなー。だからこそ『飛翔連隊』としての動き方は、ソラさんに配慮したものになるか。そこは俺らが口を出す内容じゃないし、決して悪い決め方でもないよね。
「ケイさん、俺らの方はそういう感じなるけど、問題ないよな?」
「問題ないぞー!」
「おし、なら決定だ!」
俺らの方はともかく、紅焔さん達、飛翔連隊は『黎明の地』を探索する事に決まったね。全く対人戦が発生しないとは限らないけど、そのリスクを減らす為の選択肢となれば、こういう形になるか。
ただ、懸念事項がない訳じゃないけど……これは他の人達に向けての内容だな。
「紅焔さん、もし可能だったらでいいんだけど……格下狩りをするようなのを見つけたら、群集の方に報告を上げといてくれない? 流石にそれは看過したらマズいだろうしさ」
「あー、確かにそういう連中が出てくる可能性はあるな! おし、報告は了解だ! あー、それだと……ソラ、場合によっちゃ俺らだけでも暴れるぜ?」
「まぁそこは任せるよ。見てみぬフリは、紅焔も僕自身も苦手だしね」
あ、群集の方で対応出来るようにと思ったんだけど……普通に思いっきり戦う気だ!? ソラさん、そこは嫌がるところじゃないんだね。
そういう変な事態が起きないのが一番だけど、『黎明の地』へ行く飛翔連隊が睨みを利かせているという状況が出来るだけで、それなりに抑止力にはなるはず。……今回、群集でどこに誰が行くって相談出来ないのが痛い部分だしなー。
「ライル、カステラ、辛子! 格下狩りなんてろくでもねぇ動きをしてる奴がいたら、俺らで成敗するつもりでいろよ!」
「eスポーツ勢の流入やインクアイリーの崩壊で、今は色々と不安定な状態ではありますしね。……もし騒動に遭遇したら、相応の報いは受けさせましょうか」
「それはそうだね! 僕らで抑えに回ろうじゃん!」
「間違っても、俺らが他の人達を萎縮させないには気を付けないといけないがな。まぁ紅焔は、そういう立ち振る舞いとは無縁か」
「わっはっは! 確かに辛子の言う通りだな!」
紅焔さんの場合、周囲をビビらせるよりも、ドラゴンの姿を見せつける感じで動きそうだしね。まぁ実力は伴っているから、こういう機会に格下相手をいびるような小物に負ける事はまずないだろ。
「さてと……紅焔さん達は決まったし、次は俺らが行く場所を決めますか」
「どこから出発するかが問題だな。占有エリアから妨害ボスを避けて進むか、どこかの安全圏エリアから妨害ボスを倒して進むか……まずはここを決めるのでどうだ?」
「……賛成! ……どこから……進むかは……大事!」
「……そうだね。アルマースさんの意見に賛成」
風音さんと彼岸花さんもアルの意見に同意してるし、他のみんなも頷いている。まぁこっちの新エリアを進んでいくなら、どこをスタート地点にしていくかは大事だよな。
「ケイさん、俺らは俺らでスタート地点を話し合ってくるぜ!」
「ほいよっと! ここからもう別行動を開始だな」
「そういう事だな! 自分のとこのPT会話以外は基本スルーするから、用事がある時は名前を呼んでくれ!」
「了解っと。桜花さん、もし呼んでるのにスルーしてしまってる状態だったら、フレンドコールでも鳴らしてくれ!」
「おし、そこは俺の出番か。任せておけ!」
「頼んだ!」
桜花さんは普段通りの取り引きをしながらでも、俺らのサポートに回ってくれるのがありがたいよね。場合によっては、未回収の落下物の情報が入ってくる可能性もあるんだし……逆にそういう情報を流していくのもありか?
「桜花さん、俺ら全員が回収済みになった場所の情報を、取り引きに来た流してもらうのは可能? まぁ残ってたらの場合だけど」
「ん? まぁそりゃ可能だが……なるほど、俺は落下物の発見場所の情報交換をやればいいんだな?」
「そうそう、そういう感じ! それなら、直接的な協力関係でない人とも協力出来るだろ?」
「確かにな。無作為に情報をばら撒くのはデメリットが多いから出来ないだろうが、ピンポイントで情報交換ってのは悪くない。よし、それは引き受けよう! 俺だからこそ、出来る事だしな」
「助かる!」
よし、これで別の情報源もゲット! 必ずしも紅焔さん達の見つけた場所に俺らが回収に行けるとは限らないし、逆に俺らが見つけたのを紅焔さん達が回収に来れるとも限らないから、状況次第ではその情報を流すのもありだろう。
その分だけ、他の人達が見つけた落下物を回収出来る可能性も上がってくる! 具体的にどの程度あるかは、実際にやってみるまで分からないけど――
「ケイ、桜花さんの分はどうするのかな? 不動種じゃ、取りに来れないよね?」
「おっと、そういや俺自身は回収は無理か!」
「それなら……拾ったもので使わなさそうなトレード可能なアイテムを桜花さんに渡すのでどう? 具体的な内容が分からないのがアレだけど……」
「俺はそれで構わんが……みんながどうするか次第だな?」
桜花さんは今の条件で了承してくれたけど……さて、みんなはどういう反応になる? これですんなり決まってくれるとありがたいんだけど……。
「……それでいいよ。リコリス、ラジアータ、いいよね?」
「問題なーし! むしろ、『それでいいの?』って思っちゃうんだけど?」
「不動種がメインの商人なら、トレード可能なアイテムほど重要だろう。具体的に何が手に入るか分からなくとも、この人数分での不要物となれば、悪い話ではないぞ。あくまで俺らにとって不要なだけで、全く価値がない訳ではないからな」
「あ、それもそっか! 不動種は在庫があってこそだもんねー!」
よし、曼珠沙華のメンバーからは了承は得られたし、サヤ達は頷いているから問題ないな。紅焔さん達は……あ、自分達の話し合いに入ってて、既にこっちの話をスルーしてる様子? しまったな、今のは話す順番を間違えたか。
「紅焔さん、紅焔さん! ちょっといいですか!?」
「ん? ハーレさん、何かまだ話があったか?」
「桜花さんの報酬の話なのです! 拾ったアイテム、不要分でトレードが可能な分を桜花さんに渡すって案が出てるけど、どうですか!?」
「おっと!? そういや、桜花さんのが決まってなかったか! あー、それでいいぜ! いいよな?」
ソラさん達は……全員頷いているから、問題なさそうだね。ふぅ、手早くハーレさんが説明をしてくれて助かった!
「おし、それで問題ないぜ、ハーレさん! あー、他にもまだ何かあったら、今のうちに頼む!」
「えっと……あ、桜花さんが発見情報をここで色んな人と交換してくれるので、近場で拾いに行けるものが出るかもしれないのさー!」
「おっ、そりゃいいな! 桜花さん、やるじゃねぇか!」
「発案はケイさんだがな。良い情報が手に入れば伝えるから、気に留めておいてくれ」
「おう、了解だ!」
「伝達事項はこれくらいです!」
「おう! サンキューな、ハーレさん!」
「どういたしましてー!」
ある意味、これからの探索時での予行演習になった感じかも? 俺らも別行動になる紅焔さん達の会話をずっと把握し続ける状況には出来ないし、今みたいに要点をまとめて呼びかけるって事はありそうだしね。
「さてと、それじゃ改めて、俺らが向かう場所を決めるとして……出発する場所から決めるか。正直、他の群集の占有エリアの近くはリスクが高そうだし、人も多そうだから避けたいんだけど、どう思う?」
「ケイに同意だ。単純に人が多いし、他の群集の占有エリアとなれば……無意に戦闘が増える可能性も高いしな」
「……不要な……戦闘は……避けるべき?」
「……時間のロスは、間違うなく出るよね。出来れば、早い段階で先に進みたいかも?」
「それなら、『群雄の密林』か『五里霧林』から進むのがよさそうかな?」
「安全圏からだと、妨害ボスの撃破の順番待ちもあるかも?」
「んー、順番待ちは避けたいねー。ここの北から、サクッと抜けちゃうのは?」
「ふむ、それもありかもしれんな」
「ここの北の河口域には既に行った事があるし、手始めに探すのはありな気がします!」
「……行った事、あるんだ?」
「うん! フィールドボスとも戦ったのさー!」
確かに群雄の密林の北側にある『名も無き未開の河口域』には2回ほど進出した事はある。河口のその先の『名も無き未開の海岸』も行った事があるんだし、手始めに探る場所としては悪くないか。
このイベント自体が今日だけって訳ではなさそうだし……そもそも、十分過ぎるほど難易度が易しい場所ではないもんな。狙う場所としても、決して悪くはない。
「よし! それじゃ最初に行くのは、群雄の密林の北側の『名も無き未開の河口域』で決定! 成熟体のフィールドボスも出てくるから、気を緩めるなよ!」
「「「「おー!」」」」
「……楽しみ!」
「……成熟体のフィールドボス、出てくるんだ?」
「いいじゃん、フィールドボス! 丁度いいLv上げにもなりそうかも!」
「少なくとも、退屈するような場所ではなさそうだな」
さーて、向かう場所も決まったし、連結PTを組んでから出発といきますか! 曼珠沙華の3人と風音さんがいるんだから、本当にフィールドボス戦になったとしても前よりは楽なはず!
てか、途中で命名クエストでも発生してくれないもんかね? 例の無所属で発生してるっていう乱入クエスト、命名クエストが終わってない場所へ転移が出来るってのは気になるしさー。
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