第1475話 新たなイベント、開始!
なんだか妙に調子が狂う晩飯の後のあれこれだったけど、話自体は済んだので自室へと戻ってきた。
これから台所自体を大掃除するって理由で、今日の食器洗いが免除になったのはありがたい。それにしても……。
「なんか母さん、楽しんでねぇ?」
父さんの理不尽な疑いもそうだけど……母さんは終始笑ってた気がする。まぁ単純に晴香が嬉しそうにしてたからって理由もありそうだけど……。
あー、それとは関係なく、新しい食洗機が遂に明日設置だから、妙に機嫌がいいってのもある? なんだかんだで晴香の料理関係が壊滅だった理由も判明したし、今度のは早々壊れる事はないだろうし……。
それに、明日は俺の部屋にも遂に鍵が付く! 取り付けの間、自室に居られないのは……まぁ仕方ないな。客間を使えるんだから、そっちで……そうか。サヤ達は来たら、泊まる部屋でもあるんだな。
1人くらいなら晴香の部屋でもいけるだろうけど、流石に2人以上となると厳しいしね。まぁまだ具体的にどうなるか、確定ではないけどさ。
「……あ、そういや直樹も呼べとか言ってたっけ?」
うーん、でも今からすぐに伝えなくても問題ないか。まだ1ヶ月くらいは先の話だし、どこかのタイミングで直接会った時に話せばいいや。
「さてと、それじゃ謎のイベント、やっていくか!」
色々とこれからの予定があるけど、今は目の前の事からやっていこう! いったんのところで、どういうイベントが開催になったかは分かるかな? もう開始になってる可能性もあるし、急ぎますか!
◇ ◇ ◇
VR機器を頭に被り、ベッドで横になってフルダイブを開始! いつも通り、いったんのいるログイン場面へとやってきた。
さーて、今の胴体部分にはどう書かれてる? えーと、『緊急クエスト【謎の飛行物の落とし物】が開催! 各地に落ちた、何かを探せ!』……か。ふむふむ、探索系のイベントっぽいね?
「いったん、この『謎の飛行物』って、何?」
「謎は謎だね〜! その正体は、分かりません〜!」
「分からないのかよ!」
いや、この言い方は謎である事に意味があるのか? うーん、何かの種族が擬態でもして、あちこちを飛び回ってる?
あ、もしかして徘徊種か!? 格上の徘徊種が何かを落として、それを集めていくイベントなのかも? 正直、これは教えてくれそうな気がしないけど、駄目元で聞いてみよ。
「各地に落ちた『何か』って、何?」
「それは自分の目で確かめてみて下さい〜!」
「やっぱりそうなるよなー」
うん、そうだと思った。具体的に何を探すのかすら不明な、探索系のイベントときたか。
うーん、そもそも見つけるもの自体が決まっていないって可能性もあるのかも? それこそ、何かの入れ物に入ってて、中身はランダムとか? もしそうだとしたら、宝探し感がかなり強いかもな。
「これ、対象範囲は?」
「行ける場所なら、どこでも可能性はあるよ〜!」
「あー、どこでもありなのか」
特にエリアの指定がないのなら、どこに行っても問題はないっぽいね。人が多く集まる場所だと競争率は高そうだから、あえて人が少ない場所を狙ってみるのも……って、ちょっと待った?
「え、どこでもって事は『常闇の洞窟』とかを筆頭に、地下空間もあり?」
「そういう場合もあるかもね〜?」
「マジか!?」
うっわ、地下空間もありとなると、水中や海中もありっぽいな!? どこでもあり過ぎて、逆にどこへ行けばいいのか困りそうなんだけど!?
てか、どこでもありって……本当に何が飛んでるんだ? 徘徊種の可能性は高そうだけど、黒の異形種って可能性もある? 無所属で乱入クエストが発生してるんだし、そこ関連したイベントになってる可能性も……。
「あー、とりあえずログインを頼む! コケの方で!」
「はいはい〜! 夜も楽しんでいってね〜」
「おうよ!」
俺だけで考えていても仕方ないし、もう既に始まってるみたいだし、今はともかくみんなと合流を最優先! 最低限、聞いておきべき事は聞いたけど……これ、内容によっては群集のみんなが味方とも限らないよな? 下手すりゃ、アイテム争奪戦のライバルかも!
◇ ◇ ◇
ログインすれば、群雄の密林で植わっている桜花さんのすぐ近く。パッと見える位置にアルのクジラが見えるし、サヤとヨッシさんの姿もある。そして、積まれていた倒木の様子は欠片も残っておらず、色んな人が薪割りをしている最中だった。
……あれ? 探し物をしに動いて、ここには人が少ないかと思ったんだけど……そうでもないっぽい?
「あ、ケイ! ハーレも来たかな!」
「お待たせなのさー!」
「今日は同時だったんだ? 珍しいね」
「食洗機の取り付けが明日だから、それに向けて台所の大掃除って事で、俺は追い出された」
「あ、そうなんだ?」
「その分、早く来れたなら結果オーライかな?」
「だなー。ところで、アルは……情報収集中?」
俺やハーレさんが来たのには気付いた様子だけど、何も言ってこないのは……他に集中している事があるからの可能性が高い!
「ん? あぁ、来てたか、ケイ」
「イベントは宝探しっぽいけど、何か情報はあった?」
「いや、特にこれといった情報は出てないぞ。宝探しなら、下手に情報を出さない可能性も高いけどな」
「……やっぱりかー。ここに人が集まってる理由は?」
「それなら、単なる暇つぶしだな。割る薪が大量にあるから、メンバーが全員揃うまでここで待ってるだけっぽいぜ」
「あー、そういう……」
よく見てみれば、3人組や4人組を結構見かけるから、一緒に探索に行く人が揃うのを待ってる感じはする。
「ところで、ケイ? 桜花さんから聞いたけど、ちょーっとやり過ぎじゃないかな?」
「私達、する事があんまり残ってなかったよ」
「まぁお陰で実戦でまともに使えそうにはなったぞ、ウォーターカッター! って、そういや桜花さんと風音さんはいないのか?」
「……まぁ癖があるみたいだから、練習になったならよかったかな?」
「ちなみに、桜花さんと風音さんならご飯を食べに行ったよ。イベントの内容を確認してから離れたかったんだって」
「あー、なるほど!」
まぁ俺らがログアウトしたすぐ後くらいにイベントの開始だっただろうから、タイミング的にそういう感じにもなるか。
「はい! 今回のイベント、演出は特になしですか!?」
「今のところ、特にこれといった演出はないな。そもそも謎の飛行物が何かすら、目撃情報が出ていない状態だ。これ、本当にもう始まってるのか?」
「そこを疑うような状態なのかよ!?」
いや、でも謎の飛行物って言い方をするのなら……何かしら、目撃情報があってもよさそうなものだよな? あー、露骨に分かるように何かを落としていくのかも?
「……まずは飛んでる何かの捜索かな?」
「闇雲に落とした物を探しても、見つかる気はしないしね……」
「だなー。とりあえず、どこか適当に飛んで、怪しいのを探してみるか」
「そうするのさー! 問題はどこに行くかなのです!」
こういう内容なら、ギンも一緒に動くのもあり? いや、でも俺らがギンをあちこち引っ張り回すのも良くないか。
多分、灰のサファリ同盟辺りが初心者向けに、適正Lvの場所での捜索隊で結成しそうだしね。地理案内をしながら、実戦を交えて宝探しをやりそうだ。
「……なぁ、ケイ? なんで『飛行物』なんだ?」
「ん? そりゃ、飛行してる種族でもいるからなんじゃ?」
「いや、そういう意味じゃねぇよ。なんで今まで、表記はカタカナの『モノ』だったのが、今回に限って漢字で『物』なのかって疑問だ」
「言われてみれば、それは変……だよな?」
確かにこれまで、『者』で良さそうな表記の部分は『モノ』になっていた。称号は特にそれが顕著に現れる部分だけど……今回は『物』の表記になってるのは、気になるかも?
「……ただの誤植って可能性はないのかな?」
「ちょいちょい、細かい誤植の修正はあるもんね。それに今回は『飛行物』なんだし、読みは『もの』じゃないから……気にし過ぎじゃない?」
うーん、アルの疑問も分かるんだけど、サヤとヨッシさんの言っている可能性も十分あり得る。今まで、そういうミスが無かったという訳じゃないから、言葉1つだけで何かの意図を汲み取るのは――
「っ!? サヤ、上なのさー!」
「……え? あ、何か、飛んでるかな!?」
「え、どこ?」
「……何か光ってねぇか?」
「上空に何か……いるっぽいな?」
あれ、なんだ? 太陽の眩しさに隠れて分かりにくいけど、アルが言ってるようにあれ自体が光ってるのか? 発光を使っている、何かの種族……?
いや、それにしては妙だな? なんというか、光の操作で光を森の方へ収束してるような……。くそ、何かがいるのは分かるけど、その姿がハッキリとは捉えられん!
「UFOなのさー!?」
「……未確認飛行物体という意味では、間違ってはないかな?」
「あはは、まぁ確かにそうだね。発見報酬が出ないし……残滓か瘴気強化種?」
「もしくは黒の異形種か……それ以外の何かだな」
「それ以外の何かって……」
どうもアルは『物』の表記が気になってるっぽいけど、その表記が当てはまるような要素は……って、待て!? いないと思ったけど、普通にいるじゃん!?
「あの何か、もしかして『機械人』由来の何かか!? アルの読み、意外と当たってるかもしれないぞ!」
「そうかもな。みんな、乗れ! とりあえず、上空まで上がるぞ!」
「ほいよっと!」
「わー!? 機械人って、私が予想してたやつなのさー!?」
「本当にUFOなのかな!?」
「その可能性は出てきたね」
未確認飛行物体としてじゃなく、宇宙船という意味でのUFOか! まぁクオーツの生みの親として存在は出てきてたんだから、どこかで本格的に出てきてもおかしくはない。
とはいえ、大型アップデート前のちょっとしたイベントでそれっぽいのが出てくるとは思いもしなかったよ! いや、まだ確定した訳じゃないし、まずは光ってる何かを確認しに行くのが優先!
「全員、乗り終わったな!? 落ちるなよ! 『自己強化』『高速遊泳』!」
「アルさん、いっけー!」
「あ、他のみんなも考えてる事は同じみたいかな!?」
「みんな、上空に上がっていってるね」
「まぁそりゃそうだろうなー!」
俺らはハーレさんに言われて存在に気付いたけど、その時に周囲へ声は伝わってただろうしね。くっ、今考えたら小声で話すべきだったんだろうけど、今更もう遅いし……。
「UFOが出たぞ!」
「ちっ! 徘徊種が何かを落としていくって予想してたのに、こんなのありか!?」
「ともかく、あれを撃墜するぞ!」
「まだ遠い! 早く近付け!」
「くっそ! 小さく見えるから、まだかなり距離があるのか!?」
「ただ小さい可能性もある! ともかく、進め!」
他のPTの声がチラホラ届いてくるけど、まぁそういう反応になるよな。てか、異常に距離感が掴みにくいんだけど……小さいのが近くにあるのか、大きいのが遠くにあるのか、本当にどっちだ!?
「っ!? 瘴気の渦かな!?」
「ちょ、え、ここでそれが出てくる!?」
「ちっ! 無所属勢の乱入か!?」
待て、待て、待て!? いくらなんでも、そんなピンポイントで出現とかありか!? どんな人が……って、ちょっと待てや!?
「っ!? あれ、無所属勢じゃなさそうかな!?」
「骨の……竜だよね? もしかして、黒の異形種?」
くっ、比較対象が出てきて分かったけど、あのUFOはデカいとか小さいとかじゃなく、骨の竜の姿が少し歪んで見えるから……カメレオン的な擬態での迷彩?
これ、光学迷彩って事か!? だから、異常に全体像が掴みにくいのか!?
「あー!? UFOが撃ち落とされたのさー!?」
「墜落し始めて……あ、消えたな?」
「なんか、転移して消えた感じだけど……」
え、黒の異形種がUFOを撃ち落としていくって、ありなの? 墜落し始めて少し光学迷彩が乱れたっぽいUFO、そこまで大きくはなかったな? アルのクジラより小さいくらいかも?
てか、そのUFOから破片らしきものが下に落ちていったっぽいんだけど……もしかして、今回探すものって今のやつか!? だったら、そっちに急がないと!
「アル! UFOが落とした物の方へ行け!」
「分かってる! ちっ! 並木の真ん中とか、初めっから人が多いじゃねぇか!?」
「上から何か落ちてきたら、そりゃ集まるのさー!?」
「……今のは、何を落としたのかな?」
「実際に見てみないと分からなさそうだけど……そもそも手に入れられるかが怪しいね」
「ですよねー! アル、急げ!」
「分かってるが、限度もあるんだよ!」
くっ!? 一旦、上空に上がろうとしてしまったのが仇となってしまったか!? もう既に落下地点には人が集まってるし、そもそも並木の中へ落ちていったんだから、今から確保するのは難しいかも……。
「はっ!? そういえば、あの骨の竜はどこに行ったの!?」
「……え? あ、いつの間にか消えてるかな!?」
しまった!? 完全に墜落していくUFOに気を取られて、墜落させた骨の竜の行方を追うのを忘れてた!? あー、くっそ! 色々と想定外だったから、完全に初動をミスった!?
「……こりゃ、無理に行っても無駄だな。止まるぞ」
「まぁ仕方ないな。なぁ、アル? 今の内容、情報共有板に出てくると思う?」
「……目撃者も多いし、気になる人は多いだろうからな。可能性はあるだろうよ」
「だよなー。そっちから情報収集をしてみるか」
「それもそうだな。他の場所で出現してるのは秘匿されてる可能性も高いが、ここでの目撃情報は期待出来そうだ」
「おし、それじゃ桜花さんのとこまで戻るぞ! まずは情報収集から!」
「了解だ!」
「何が拾えてるのか、分かればいいんだけどね」
「そもそも、あのUFOは何しに現れてたのかな!?」
「はっ!? もしかして、次の共闘イベントの前兆だったりしますか!?」
「……その可能性、否定出来ないんだよなー」
「そりゃ確かにな。機械人だけじゃなく、黒の異形種まで絡んでくる可能性も出てきてるだろうよ」
ぶっちゃけ、可能性としてはどっちも考えてたけど、まさか両方とも同時にとは思わなかったわ! いや、でもまだ具体的な事は何も分かってないし……前兆がこのイベントなのだとすれば、何も分からないまま終わる可能性もあるのかも?
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