第1476話 まずは情報収集から
連休になる週末のイベントが始まったけど、いきなり予想外の展開になってきている。くっ、まさかこのタイミングで機械人に関係する何かっぽいのが出てくるとは思わなかった!
いや、でもまだそうと決まった訳じゃないか。もしかすると、それっぽく見えただけの、普通の種族なのかもしれないし……。その辺、桜花さんのとこまでの移動中に確認しとくか。
「サヤ、ハーレさん、あのUFOの正確な姿は見えた? ぶっちゃけ、俺は墜落し始めるまで正確な距離感すら掴みかねたんだけど……」
「カメレオンみたいな擬態に近い感じだったけど、円盤状だったかな?」
「サイズはアルさんのクジラの半分くらいの大きさはあったのさー! 骨の竜に攻撃された時、一瞬だけど金属みたいな光沢も見えたです!」
「あー、やっぱりその辺は見間違いって訳でもないんだな……」
サヤとハーレさんがこう言うなら、もう見た目に関しては疑う余地はないだろう。他にある可能性としては……プレイヤーがそういうように偽装した? いや、それだと最初にどうやって現れたかが問題か……。
「てか、ハーレさんはどうして気付いた?」
「最初に、何か光が見えたのさー! その出所を追ったら、上にあったの!」
「……そういや、光ってたな? ありゃ、何の光だ?」
「それは分かりません! でも、あっちの森の中を照らしてたのさー!」
「UFOから出る、森の中を照らす光か……」
完全に今までのモンエボで出てくる敵とは別物と考えた方がよさそうだし、その状況はどういう内容が考えられる……?
「UFOといえば、連れ去られるとかもあるよね?」
「あ、そういうのはあるよね。UFOから伸びてきた光に捕まえられるってイメージ、見た事あるし」
「あー、あるある! なんだっけ、あれ?」
「名前が出てこないのさー!? 確か、何かのゲームで聞いた覚えはあるのに!?」
うん、俺も呼び方があった気がするけど、覚えてないな? SFのゲームやアニメとかで、転送装置みたいな役目はあるやつだけど……こういう時はアルの知識頼りだな!
「……いや、全員で俺を見られても分からんぞ?」
「おー、珍しい事もあるもんだ?」
「俺だって、なんでも知ってる訳じゃないからな。というか、宇宙人の連れ去りネタって、そう最近でもないだろ?」
「いやいや、そうでもないって! 確か、そういう題材のゲームがあったしな!」
自分でやった覚えはないけど、宇宙人側でプレイして連れ去った生物を改造して侵略するなんてモチーフのゲームが一時期話題になってたんだよなー!
如何にその惑星上の生物に気付かれずに、乗っ取りを終えるかってゲーム! フルダイブじゃなくて、旧式のタイプのゲーム機でのやつ! ……俺が小学生の頃だから、やってみたくても年齢制限や金銭面で出来なかったんだよな。あれ? でもなんでそんなに話題になってたんだっけ?
「あぁ、そういやそんなのもあったか。フルダイブ方式に移行し始めの頃に、従来式のゲーム機の最後の方に出たやつだな」
「そうそう、それ!」
「改造された生物の最終的な見た目が、大手の有名タイトルのデザインをパクってるって話題になってたか。良くも悪くも、それで目立って流行ったんだったな」
「……え? そんな流行り方だっけ?」
あー、言われてみればそういう事もあったような気もする? うーん、流石に小学生の頃だから、ちょっと記憶が怪しい……。
「ま、それ自体は特に今の話題とは関係ないし……桜花さんのとこに辿り着いたぞ」
「だなー。特に意味ない話題だし、本題に移していきますか」
というか、何気に桜花さんと風音さんがいるから、UFOを追いかけていった間にログインしてたんだろうなー。倒木の撤去の報酬の件はまだ聞けてないし、ここで会えたのはよかった――
「ケイさん! なんか妙に騒がしいが、何かあったのか!?」
「ついさっき、イベント絡みっぽいのが出現したとこ! 俺らも正確な事は分かってないけど、これから情報収集をするよ」
「……なるほど、ここに出現したから、この騒ぎか」
色んな人が右往左往してる状態だから、そりゃログインしたばかりで状況が分かってなければ混乱もするよなー。実際に見てた俺らでも、いまいち見たもの以上の情報は得られてないし……。
「UFOが出たって、マジか!?」
「何が飛んでたのか、よく分からないらしいけどな……」
「よく分からないなら、マジで未確認飛行物体で合ってね?」
「あー、まぁ確かにそうかも?」
「正体が確認出来たら、UFOじゃないしな」
「そこの言葉は、気にする必要あんの?」
「ねぇなー。誰か、具体的な正体って分からね?」
「骨の竜が出たってよ? 撃墜したの、そいつらしい」
「……それ、どういう状況? 変質進化した無所属勢でも出てきたか? 確か、新しい乱入クエストが発生してて、転移してこれるんだよな?」
「分からん! いくつかのPTが確認しにすぐ上空に上がった……って、その1つがそこに来てるじゃん!?」
「あ、グリーズ・リベルテか!」
「何か情報を掴んでるかもしれないぞ!」
「いやいや、お前ら!? 無理矢理に聞き出すのは無しだからな!」
「なら、連結PTで協力要請だ!」
「あ、その手があったか!」
「なっ!?」
混乱の真っ只中、桜花さんのすぐ側に着陸! ……でも、こりゃ呑気にその辺に降りて情報収集って訳にもいかなさそうだな!? てか、強引な連結PTの申請とか、絶対に受けないぞ!
「桜花さん! 樹洞の中を借りてもいいか!?」
「ん? あー、囲まれる前に避難しとけ! 『樹洞展開』!」
「助かる! アル!」
「分かってる!」
ふぅ……大慌てで桜花さんの樹洞の中に入って、群がってくる前に避難完了。……良くも悪くも俺らって知名度が高いし、目立つ行動を直前にやってたら、こうもなるか。
「……私達もよく分かってないのに、捕まったら大変そうかな」
「普段、あまり馴染みがなさそうな人達だったし……この前のサヤとケイさんの対決の時を思い出すね」
「並木で色んなエリアから、大勢の人が集まってる弊害なのです……」
さっきの光景、情報に飢えてる状態なんだろうなー。桜花さんがログインしてて、本当に助かった! ログインしたてで誰も樹洞の中にいない状態だったからこそ、即座に逃げ込めたんだしね。
「おいこら、てめぇら! 追いかけ回すんじゃねぇよ! 宝探しが趣旨のイベントで、他人から情報を聞き出そうとしてんじゃねぇ! どこでも出るって話なんだから、自分らで探しに行け! ほれ、散った、散った! これ以上続けるようなら、並木でブラックリストを作って出禁にするぞ! 少し前に同じような事をやらかしたばっかなのを忘れんな!」
ふぅ、どうやら外の人達は桜花さんが追い払ってくれているっぽいね。……この不動種の並木、出禁にされたら凄く困りそう? だからこそ、抑止力として機能するんだろうね。
「……よし、離れていったな」
「助かる、桜花さん!」
「この程度、お安いこった。外で睨みを利かせてくれてる風音さんもいるしな」
「あ、風音さんも追い払ってくれたのか。ありがとうって伝えといてくれ!」
「いや、風音さんを中に入れるから、直接言ってやってくれ。入れるのは問題ないよな?」
「風音さんなら、問題ないのです!」
「だなー!」
「よしきた。風音さん、中に入ってくれ。『樹洞展開』!」
俺らが入ってすぐに閉じていた樹洞の入り口が再び開いて、そこから風音さんが入ってきて、すぐにまた入り口が閉じていった。この状態だと、これからの方針が決まるまでは下手に樹洞から出れないな……。
「……みんな……大丈夫?」
「桜花さんと風音さんのおかげでなー。ありがとな、風音さん」
「……どういたしまして」
さーて、これで気兼ねなく情報収集が出来る……と言いたいけど、さっき桜花さんが言ってた事も決して間違いではないんだよな。
今回のイベント自体は宝探しみたいな捜索系だし、同じ群集の人すらもライバルになるタイプの代物だ。ただ、その対象が予想外の方向から出てきたのが問題であって……まぁだからこそ、さっきの状況が発生したんだろうけどさ。
「……情報共有板を見ているが、有力な情報は上がってはいない様子だな。普段なら情報を出しそうな人もチラホラいるが、根本的にまだ遭遇出来てないそうだ」
「あー、そういう状態か。それなら、先んじて情報を出すメリットはあるかもなー」
少なくとも、何を探すべきかくらいの情報は出してもいいかもしれない。その代わりと言ったらなんだけど、何を落としていったか……それが知りたいね。その内容次第では……今回は同じ群集の人相手であっても秘匿を考えた方がいいかも?
「はい! ここであるだけの情報を出して、流れを変えるのもありだと思います!」
「それには賛成かな! 追われまくるのも面倒だし……」
「あはは、確かにそれはそうかも?」
「まぁそうなるか。おし、情報共有板で分かってるだけの情報を出して、何が得られるかの情報を引っ張り出すか!」
「それがいいかもしれんな。少なからず情報を持ってるって事は、一旦クリアにしておいた方がいいだろうよ」
他にも俺らと同様に動いていた人達はいるけど……おそらく、あの時の中では俺らが一番有名だ。流石にさっきみたいな事態が何度も起こるとも思えないけど、動きやすい状況に変える手段としてはあり! というか、そうしないと身動きが取れん!
さーて、そうと決まれば情報共有板に顔を出そう。そこからどうするかは、まぁその時に考えようか。
オオカミ : 無理強いで状況を聞き出そうとはするな! あまり酷い事態が確認出来たら、流石に通報も考えないといけなくなるからな!
ヘビ : 一ヶ所、派手にやってたって聞いたぞ! マジで並木にブラックリストを作る流れになっても知らんぞ!
キツネ : ……すみませんでした!
クマ : わ、悪気はなかったんだ!? つい、あそこなら情報を持ってる可能性があるって……。
オオカミ : どこの誰が相手だろうが、それは言い訳にしかならないのは分かるな?
クマ : ……その通りです。すみませんでした!
草花 : おー、おっかねぇ!? まぁ気持ちは分からなくもないが、焦んなよ! イベント、始まったばかりだしよ!
クマ : ……はい。
キツネ : 分かりました!
あ、ベスタがさっきの件を思いっきり説教中だったよ。まぁそりゃ灰の群集のリーダーとしては、流石にそういう事を言わなきゃいけない状態ではあるよな。
木 : それにしても……まさかUFOとはなー。
ネズミ : 灰のサファリ同盟の人の大勢が五里霧林に行ってるから、群雄の密林での目撃が少なくなるとは予想外……。
リス : うーん、灰のサファリ同盟としても、そこまで不思議なものが登場してくるとは予想してなくて……。初心者講座の一環で探索しようかと計画を練ってたんだけど……この内容は予想外過ぎ!
イノシシ : UFOが出たとか、骨の竜が出たとか……情報はあっても伝聞情報ばっかってのがな……。
クラゲ : 十九時からイベントは始まってるんだし、どこかで遭遇してる人もいるとは思うんだが……情報がなさ過ぎるのが痛い……。
ふむふむ、思った以上に情報がないっぽいね? 俺らが持ってる情報って大したものでもないんだけど、それでも無いよりはマシそうだ。
コケ : その辺の目撃情報、俺らの方から出すよ。その代わり、誰か落下物の中身を知ってたら教えてくれ。
木5 : 流石に無条件で開示は、今回は勘弁だからな。
リス2 : 囲まれかけたし、それくらいは要求するのです!
オオカミ : コケの人達か。……それでいいんだな? 情報の独占をしようと思えば、可能ではあるぞ?
コケ : 追いかけ回されても困るし、そういうのを回避する為の情報開示でもあるからなー!
リス : あはは、まぁそれは妥当な要求かもね。
草花 : 目撃情報を伝える代わりに、何が入手出来るかの情報か! これ、俺らは漁夫の利じゃね?
イノシシ : ちょ!? それを言っちゃう!?
クマ : 追いかけ回すって……あー、そういう風に思われるのか!?
オオカミ : そりゃ当然の反応だろう。だからこそ、ブラックリストなんて話が出てくる。
キツネ : コケの人達……さっきはすまなかった!
クマ : すみませんでした!
あー、まぁ半ば勢いだけで動いてしまったとこもあるんだろうけど……どう思われるかまで、ちゃんと考えてはなかったんだな。でもまぁ、悪気がないのは分かってても、しっかりと釘は刺しておかないと、また同じような事が発生しかねないからね。
コケ : 次は、実力行使で切り抜けさせてもらうからな。
草花 : わっはっは! まぁそうされても、文句は言えねぇよな!
ヘビ : コケの人の実力行使、本当に切り抜けられそうだからなー。敵に回すと、容赦ないし……。
タチウオ : 隣のエリアくらいまでは、軽く吹っ飛ばされそうであるな!
キツネ : 肝に銘じておきます!
クマ : ……同じく、気を付けます!
なんか過剰に怯えられてる気もするんだけど……まぁ自分達が吹っ飛んで離れるか、周囲を吹っ飛ばすかの二択だから、そこまで間違ってもないか。吹っ飛ばすというよりは、押し流すって形になりそうだけど……。
コケ : まぁその件はそれでいいとして、とりあえず情報は話すからなー。落下物の中身に関しては……今すぐ情報があるとも限らないし、後で教えてもらうのでもいいや。見つけた人が報告してくれれば、それでいいって事で!
草花 : おっ、そりゃありがたい! おし、そういう事なら漁夫の利狙いじゃなく、真面目に探して報告しねぇとな!
オオカミ : あぁ、見つけ次第、報告させてもらう。
カンガルー : おっと、ログインしたばっかだが、色々と良いタイミングだったか?
リス : 本当に良いタイミングかも? 灰のサファリ同盟の中で誰か拾ってないか、聞いてくるね!
ライオン : 確か、さっきのは並木の中に落ちたんだったな? その周囲で情報を出せる人がいないか、呼びかけてくるか。
オオカミ : それはいいが……ライオンの人、無理強いはするなよ?
ライオン : それは承知している。コケの人、報告を頼む。
コケ : ほいよっと! それじゃまず、俺らのPTが見た光景から――
さーて、とりあえず見たままに事を率直に伝えつつ、その上で俺らが推測している事も話していきますか! どういう反応が返ってくるかも気になるしね。
話した後に落下物の内容を誰かが教えてくれるとありがたいけど……そこはどうなる事やら? まぁ今の時点で誰も伝えてくれなくても、誰かしらが教えてくれるだろ。聞きっぱなしな人ばかりじゃないのは、分かりきってる事だもんね。
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