第1469話 油の入手
牛乳の出所はすぐには分からないけど、とりあえず俺らの方から氷塊の作り方を伝えていった。まぁ手順自体は難しくないし、問題なく作れるはず?
「思った以上に簡単な手順だな!? そんなんでいけるのか!?」
「まぁ実物は見ての通りだしなー」
「……そりゃ違いねぇ。おし、とりあえずこの実物は灰のサファリ同盟の本拠地に置かせてもらうとして……戻してから試してみるか! 上手くいくようなら、氷室を一室丸々で作るのもありだな!」
「それは頑張ってみてくれ。あと、牛乳の情報を持ってる人との話もよろしく」
「おう、それは任せとけ! おっと、話を通すのはグリーズ・リベルテへでいいのか?」
「……あー、それはどうしよう?」
俺らが聞いても、多分、群集へと報告するだけになるよな? 夜からのイベントを放り出して、牛乳を手に入れに動くというのも……いや、何が始まるか次第ではあるか。
でも、今から予定は入れておきたくないし……19時までに済む確約があるなら俺らでもいいけど、そうじゃないならどこかに任せた方がいいか?
「……まとめの方には、牛乳の入手手段の記載はないね。情報を求めるってなってるよ?」
「あ、そういう状態か。コインさん、情報を仕入れられたら『まな板の上のコイの滝登り』から報告を上げてもらう事って可能?」
「……へ? え、俺らが報告を上げるって出来んの!?」
「いやいや、コインさん。群集に入ったんだから、誰でも報告は上げられるからな? まぁ名前が出るのが嫌なら、俺が代行してもいいけどな」
「マツタケさん、マジか!? あー、そうか。俺も今は灰の群集のメンバーだもんな。直接、自分達で報告って手段もあったのか! いやー、全然触れてきてない機能だから、そういう意識は皆無だったわ!」
コインさん、結構前に群集を抜けた人だな!? 無所属でいたって事を考えると……元赤の群集で、荒れてた時に抜けてそのままだった人なのかも?
「おし! ケイさん、俺らの方でその報告とやらはしてみるわ! 慣れる為にも、触れてない機能は有効に使っていかねぇとな!」
「おー、そうしてくれ」
「そうと決まれば、俺はこれを持っていくからよ! 氷塊、サンキューな! マツタケさん、新しい料理が出来たら、何か持ってくるからな!」
「そこは期待してるからな、コインさん!」
「おうよ! 『氷塊の操作』! おっしゃ、まずは設備の更新を最優先だな! 色々パワーアップしそうだし、思いっきりやっていくか!」
そうして俺らの作った氷塊を操作して、ネズミ姿のコインさんはあっという間に姿を消していった。あの白い体毛、多分だけど氷属性なんだろうね。まぁあのサイズの氷塊を運ぶなら、氷塊の操作の使用は必須か。
「どんな料理が出てくるか、今から楽しみなのさー!」
「うん、確かにそうかな!」
「あはは、それはそうだね。あ、ケイさん、氷塊の作り方はまとめにそれっぽいのはなかったから、報告を上げておいたよ」
「おっ、やってくれてたのか。ヨッシさん、サンキュー!」
「いえいえ、どういたしまして」
俺らの報告欄は、グリーズ・リベルテとしての報告欄だからね。メンバーの誰が報告しても問題ない! 後で確認してから、情報がなければやろうと思ってた事を先にしてくれたのは普通にありがたいしさ。
「あ、そうそう。情報がない理由は、多分だけど雪山から氷を切り出してきてるからみたいだね。氷室自体は、もう作ってるそうだよ」
「あ、そうなるのか!?」
ただ単に別ルートから入手手段があったから、不要なだけだったんだな。まぁそれでも何かの役には立つかもしれないし、報告しておいて損はないだろ!
「おっし、こっちの取り引きも完了させちまおうか。氷塊と油のトレードは、壺型の器に入れた油……3つってとこだな。悪いな、もうちょっと用意したかったんだが、今はまだこの量が限界でよ」
「まだ量産体制に移行中って話だもんなー」
これまで作っていた別のものを止める訳にもいかないだろうから、そう簡単に増やせられるものでもないよな。流通量は少ない中で、それでも確保してもらったのに感謝しないと!
「ヨッシ、それだけあれば足りますか!?」
「この壺型の器、多分2リットルくらいはあるから……6リットル? んー、でも揚げ物をどんどん作るには……マツタケさん、この油って使うと汚れる?」
「その辺はリアルと同じで汚れて駄目になるから、消耗品だそうだな」
「あ、やっぱりそうなんだ。まぁ1回で駄目になる訳じゃないし、1回で1リットルもは使わないから、そこそこ出来る量はあるね」
「おぉ! やったのさー!」
ふむふむ、具体的に使用量ってよく知らんけど……とりあえず足りないって事はないようだね。
「ヨッシ、試してみるのかな?」
「うん、折角手に入れたんだしね。初めは油を汚しにくいもので……マツタケさん、ジャガイモってある?」
「あー、料理の材料系はもうちょい離れたとこら辺になるぞ。この辺は完成系がメインだからな。ジャガイモ自体は普通にあるのは保証しとくぜ!」
「あ、食材自体は、もうちょいミズキから離れた位置になるんだね」
ふむふむ、並木の場所によって取り扱ってるアイテムを変えているという話だったっけ。食材系は、完成系の料理と戦闘での消費系のアイテムの中間くらいで取り扱いって感じか。
「ジャガイモで揚げ物……フライドポテトだー!?」
「正解。塩はあるし、シンプルではあるけど……ハーレ、好きでしょ?」
「うん! それなら、材料を仕入れに行くのさー!」
「あ、まだ油のトレードは終わってないから、待って! サヤ、ハーレを止めてて!」
「分かったかな!」
「あぅ!? 捕まったのさー!?」
慌てて駆け出していって、どうする気だよ、ハーレさん。いやまぁ、食べたがる気持ちが分からない訳じゃないけど、少しくらい待とうな?
「予め言っといてくれれば、俺の方でも確保は出来るんだが……あー、ヨッシさん達だとそれを頼む相手は桜花さんになるか?」
「あはは、まぁそうなるね。とりあえず桜花さんにフレンドコールをしてみて、在庫があるかを確認してから、もし無ければ探しに行く感じになるかも?」
「ま、馴染みの人のとこに行きたいとこではあるのは分かるぜ! ぶっちゃけ、俺もジャガイモの在庫が完全にない訳じゃないんだが……こりゃ馴染みの人向けのもんでな」
「全く無いとは思ってなかったけど、やっぱりそういう形で確保はしてるんだ?」
「そりゃな! 不動種で商人プレイをしてる人には、それぞれに馴染みがいるから、その辺は蔑ろにも出来ねぇからよ」
「あはは、確かにそれはそうだよね」
俺らで考えるなら、その馴染みの相手が桜花さんって事になるんだろうね。そりゃまぁ初見の人より、普段から交流がある人を優先するのは当然か。無制限にあるなら別だけど、量に制限があるなら尚更に……。
「おっし、これで取り引き完了だ! ま、食材アイテムは色々と見つかってるから、それらで試してみるといいだろうよ! 良い料理が出来りゃ、引き取るぜ?」
「んー、取り引き出来るほどの数は作れないかも?」
「わっはっは! まぁハーレさんの様子を見た感じ、そうなるわな!」
「ふっふっふ! 取り引きに出すくらいなら、私が食べ尽くす――」
「食べ尽くすな!」
「あぅ!? ケイさん、殴るのは酷いのさー!?」
「自信満々に言う事でもないからな!?」
料理として試食データに置き換わってるものって、基本的に性能は高いんだぞ!? それを無意味に食い尽くすのは断固、阻止しないと!
「そういえば、ジャガイモの効果ってどうなってるのかな?」
「生じゃ、効果なしだぜ? どう加工するかで、効果が変わってくるが……フライドポテトなら……ま、言うよりは自分達で見てみてくれや!」
「はーい! ヨッシ、早く桜花さんのとこへ行くのさー!」
「はいはい、分かったから急かさないで」
まったく、相変わらずの食欲だな、ハーレさんは! でも、アイテムとしてのフライドポテトの効果が気になるね? ……前にマツタケさんが見せてくれたような気もするけど、あの時は一気に色々と見たから、正確に覚えてないしなー。
◇ ◇ ◇
ハーレさんの急かしっぷりもあり、慌ただしい感じでマツタケさんとのトレードを終え、水のカーペットに乗って移動中。
油を入れた壺は、そのままインベントリの中に片付けられるのはいいね。ただ、揚げる時には別の器に移し替える必要はありそうだけど……それはどうやったもんだ? サヤに頼むか、俺の岩でやるか……まぁどうにでもなるか。
「ケイさん、早く! 早く!」
「ハーレさん、ちょっと急かし過ぎだぞ?」
「だって、急がないと18時に間に合わないのさー!? 火の確保や、場所も必要なんだよ!?」
「あー、まぁそれはそうだけど……」
自前で火を扱う手段は持ってないもんな、俺ら。火に関しては誰かに頼る必要が――
「ハーレ、今回は火の『純結晶』を使うからね。存在、忘れてない?」
「はっ!? そういえば、それがあったのさー!」
「あ、そういえば油が手に入ったら試しに使ってみるって話だったかな!」
うっかり俺も忘れてたけど、そういやそういう話もしてたっけ!? あー、火種なら昼の日の今なら俺が光の操作で起こせられるし、自前でどこでも試せる状態だったよ!?
「そういうつもりでいるんだけど……ケイさん、火種と鍋を支える岩の生成をお願い出来る? 桜花さんの隣で試そうかと思ってるんだけど……」
「ほいよっと! その辺は任せとけ!」
昇華のスキルが一時付与される『純結晶』の進化の軌跡、使った後に熟練度がどうなるかは未知数なままだもんな。使い捨てなのは勿体ないけど、どこかで試さなければいけない事でもある!
まぁもしかしたら、他の誰かが既に試したかもしれないけど……そこは気にしない! 自分達で実際に使ってみるのも、大事ではあるもんな。
「まぁその前に、材料を手に入れないとだけどね」
「はーい!」
「桜花さんのとこに、ジャガイモはあるかな?」
「まぁそれほど時間もかからないし、聞いてみるって事で!」
「無ければ、すぐに持ってる人の所へトレードしに行ってきます!」
「その時はよろしくね、ハーレ」
「うん!」
さてと、そんな話をしてる間に桜花さんの桜の木が見えてきたな。並木の端だから、本当に分かりやすいのはありがたい!
黒い龍の姿も見えるから、相変わらず風音さんも一緒にいる様子。そういや、今のeスポーツの流入から始まってる勢力の変化は、風音さんから見てどういう印象なんだろ? 元無所属としての見解も聞いて――
「とう! 『自己強化』『略:傘展開』! 桜花さーん!」
「「ハーレ!?」」
「……また、今日は随分とテンションが上がってるな」
思いっきり飛び降りて、広げたクラゲの傘で勢いを殺しつつ、綺麗に着地してから駆け抜けていったよ!? まだ17時半にもなってないのに、そこまで焦る必要もないんだけどな?
何か隠したい事がある時にもこういうテンションになったりするけど……今日のこれは、サヤが俺らの方へ遊びにくる事が決まった影響な気がする。あと、シンプルに油が手に入った事も含めてかも?
「ん? ハーレさん、慌ててどうしたよ?」
「……何か急ぎの……用事?」
「うん! ジャガイモの在庫はありますか!?」
「ジャガイモか? まぁあるにはあるが……なるほど、揚げ物用の油を手に入れてきたな?」
「そうなのさー! フライドポテトをこれから作るのです!」
ふぅ、先に飛び降りたハーレさんにようやく追いついた。まぁ別に速度を上げず、そのままの速度で移動しただけだけど。
「桜花さん、隣の空いてる場所も借りられるか? そこで火を起こしたいんだけど」
「それも問題ないが……ここでやるのか!?」
「まぁなー。何か燃やしていい薪とかない?」
その辺に倒木が大量に転がってたりもするけど……これは勝手に燃やしていいものか? 使っていいなら、火の確保は楽なんだけどな。
というか、この辺って前は普通にジャングルだった気がするんだけど……なんか開拓されてません? いや、開拓というよりは倒木置き場になってるって感じか?
「あー、その辺に放置になってる倒木なら使っていいぞ。特に誰かの所有物って訳でもないし、あちこち動いてる影響で、植わる為に引っこ抜いた木の処理が間に合ってないだけだからな」
「よし、ならその辺を使わせてもらうか。サヤ、薪割りを頼める?」
「任せてかな! ハーレ、最初の火を着けやすいように、枝を集めて!」
「はっ!? 確かにそれも必要なのさー!」
「……手伝うよ?」
「おぉ! 風音さん、お願いなのさー!」
さーて、どうやら風音さんも手伝ってくれるみたいだし、燃やし続ける為の燃料の確保はこれで……あれ?
「火の操作でやるなら、薪は特にいらないか?」
「あ、ケイさん、それは普通にいるよ」
「へ? そうなのか?」
「うん。どうも火の操作だけで焼いたら、上手く焼けても試食データには置き変わらないらしくてね? 基本的には操作してない火で焼いて、火力が強過ぎたり、逆に弱過ぎたりする場合に調整する為に火の操作を使う感じなんだって」
「あー、なるほど。火の操作は火加減の調整用か!」
そういうやり方があるのは、何気に知らなかった。あー、試食データへの置き換わりの発見が遅れたのって、もしかして最初は火の操作だけで焼いてたからとか? うん、その可能性は普通にありそうだ。
やっぱり、どうしても見落としていたり、知らずにいるままになってる部分って結構あるんだなー。全ての要素を網羅しようとするには、自由度が高過ぎるのかもね。普通にあるはずの道具が存在しないって部分も、より大きい影響な気もするよ。
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