第1466話 これからの予定
とりあえず、今日の放課後の出来事をレナさんを筆頭に、この場にいる全員に話していく。……本来ならリアル情報をこうやって喋るべきじゃないんだろうけど、事情が事情だしなー。少なからず今後に影響してくるんだから、不要な個人情報だけは出来るだけ避けつつ、なんとか話し終えた!
「……あらら、アイルさんが余計な事を言っちゃった感じかー。うーん、顧問の先生の動きが妙な気がするだけど……なんか伏せてる情報はない?」
「あー、まぁ流石にそこは個人情報に言い過ぎになるから、勘弁して……」
「およ? 配慮しなきゃいけない内容って事に……まぁ深掘りはやめとこっか」
「そうしてくれると助かる……」
顧問の先生がアイルさんの姉だという事は伏せて話したけど、まぁ確かに普通の教師と生徒の関係性でのやり取りじゃないもんな。特に最後の方……。
「……ケイ、災難だったかな?」
「もう、いい加減にしてくれって気分だよ……。eスポーツ部が怒られて、それを水に流して終わりだと思ったのに……」
「んー、まぁその様子なら、ギンさんとアイルさんが揉めるって事態にはならなさそうだけど……ケイさんの心労が心配になってくるね。わたしから、アイルさんにガツンと説教をしとこうか? どうも無自覚でのやらかしが多いみたいだしさ」
「っ!? レナさんが説教してくれるのか!?」
「ふふーん、こういう時は任せなさい! 一応、わたしがリーダーになる共同体のメンバーにもなるんだし、迂闊な発言の危険性について実体験を交えて、お説教といきましょう!」
「実体験ってのが気になるけど……してもらえるなら、それは頼みたい!」
「うん、頼まれたよ!」
レナさんに負担をかける形にはなるけど、俺じゃ何をやっても多分無意味だからな。実体験を交えてってのは、本当に気になるけど……下手に聞かない方がいい気もするね。
やっぱり、このeスポーツ勢の受け皿になる共同体の設立メンバーにアイルさんを選んだのって失敗じゃね!? まだ結成もしてないのに、既にトラブル発生とかさ!
「えっと、ギンさんは夜には顔を出してくれるとは聞いてるんだけど……今の話を聞く限り、アイルさんも夜にはログインしてくるつもりって認識でいいの?」
「……多分? なんで俺に挨拶したかは謎だけど……」
「そこ、本当に謎だよね!? 別にケイさん達はいつも灰のサファリ同盟に顔を出す訳じゃないのに……」
ラックさんが疑問に思うのは当然だよなー。俺だって、理由がさっぱり分からないしさ! その一言が無意味に余計な状況を生み出しているんだから、本当にタチが悪いな!?
「……なんだか、夏休みのアルバイトが不安になってきたのです!?」
「あー、分かる。ギンはともかく、アイルさんと一緒ってすごい不安……」
「……あはは、まぁハーレもケイさんも、頑張って?」
「2人とも、ファイトかな!」
普通にアルバイトをするだけなのに、なんでこんな警戒をしなければならない!? あー、アルバイトさえ一緒じゃなければ、完全スルーにしてしまえるのに!
「まぁやるしかないからなぁ……。とりあえず、これ以上変な噂の発生は止まってくれ!」
「ケイさん! 私は妹じゃなくて、完全に他人のフリをしていいですか!?」
「……してもいいけど、すぐバレると思うぞ? 主婦ネットワークと、母親ネットワークを舐めるなよ? 割と親から筒抜けだぞ!」
「はっ!? ……それは、確かにあるのです!?」
「あ、それは分かるかな! どこに行っても、どこどこの娘さんが……とかで知られてるやつ!」
「そうそう、そういうやつ!」
それがあるから、おそらく俺とハーレさんは即座に兄妹だってのはバレるだろ。まぁそこは隠すような事でもないから、特に心配はしてないんだけど――
「んー、今になってケイさんが嫌がってた理由を実感してきたかも。アイルさんって、地味にトラブルメーカー?」
「あー、そうかも?」
「なら、尚更しっかりとここで絞り上げておかないと駄目だね。思いっきり釘を刺しておかないと、また何かやらかしそうだし」
「……うん、まぁそれは否定出来ないかも……」
実の姉からも、同じ部活の部員からも、ポンコツ認定を受けてるくらいだし……アイルさんは、本質的にトラブルメーカーなのはほぼ確実ですよねー!
「まぁアイルさんの事は分かった! でも、本題はそっちじゃないよね?」
「あ、そうそう! 本題は例のサイトの方なんだけど……色々とハーレ達から意見は出てるみたいでね?」
「ケイさんが、eスポーツ勢以外からの流入にも繋がるって認識なのさー!」
「およ? あ、そっか。対人戦を煽るような書き方にしたから、それはあるかも? んー、でも問題ない範囲じゃない?」
「まぁそれ自体は問題ないけど、そこから入ってくる人って完全な新規層になるだろうから、大型アップデートで新規サーバーが追加になる点も書いといた方がいいかと思ってさ? ほら、俺らの後追いじゃなくて、同じラインからスタートが出来るじゃん?」
ハーレさんには作りかけのサイトのスクショを見ながら言った事ではあるけど、改めて製作者のレナさんに伝えておこう! これでいい落とし所を作れればいいんだけど……。
「……それはそうだね。んー、それなら、eスポーツとは関係ない新規さん向けのページも作って……これ、ラックさんの得意分野じゃない?」
「あ、それはそうかも? えっと、灰のサファリ同盟の初心者講座をベースにして、公式サイトで公開されてる範囲の情報を引用させてもらう形で……」
「んー、流石に引用の量が多そうだし、直接公式にリンクを飛ばしちゃうのは?」
「あ、それでもいけるかも? 公式サイトに載ってるヘルプにも合わせて、重要な項目のピックアップしつつ、簡易的な解説を入れながら、参照先として公式サイトへリンクを貼って……うん、この方向ならいけるかも!」
「それじゃ、文章の方は任せていい? それを受け取ったら、レイアウト調整はわたしがやるから」
「うん、了解!」
なんというか……オンライン版の初心者向けサイトが出来ようとしてる? あー、新規さん向けに分かりやすいようにするなら、そういう方向にもなるのか。
「ねぇ、それって他の群集にとってお得になるんじゃないかな?」
「そこもケイさんが危惧してたのさー!」
「およ? 他の群集……あ、普通の新規さんが入ってくるなら、そりゃそうだよね!? ごめん、eスポーツ勢の事に集中した状態で徹夜で作ってたから、その視点は抜けてたかも! あらら、あれじゃ新規勢の取り込み合戦にもなっちゃうね……。んー、ラックさん、各群集の自己紹介欄は消した方がいいかも?」
「うーん、でも群集の特色は知ってた方が選びやすいだろうし……他の群集から苦情が出てきたりしない?」
「まだ他の群集の人には見せてないから、今のうちに消しちゃえば大丈夫ではあるよ? あ、でもジェイさん辺りからそういう欄が欲しいって要望は出てくるかも?」
「……制限をかけてサンプル品は見てもらう事にはするけど、それは言ってきそうだよね。もう逆に、1ページ丸々、そのまま用意しちゃう? それで、灰の群集の部分にサイト作成者の所属群集って書いちゃおう!」
「およ? ラックさん、いいね、それ! 元々持ってたサイトの知名度は利用する気はなかったけど、今回は新たに作るんだから、それくらいの報酬は貰ってもいいかもね?」
「そうだよね! うん、そうしよう!」
なんか、新規勢の獲得合戦になるのを危惧してたら、逆にそれを利用して灰の群集に人を呼び込む方向にしてきた!? ……うん、まぁ嘘はどこにもないし、アリな手段か。
「いや、でもそれってジェイさんやウィルさんが色々と言ってこないか!?」
「そこはほら、ケイさんにお任せで! もしくはベスタさん!」
「ケイさん、お願いね?」
「ちょ!? 相手するの、俺なの!?」
「だって、ケイさんなら実績あるし? わたしとラックさん、それに案を出してるギンさんも灰の群集だからさー。ほら、今も問題点をケイさんが洗い出してるんだし、これだけ条件が揃えば、ケイさんなら凌ぎ切れるでしょ?」
「いやまぁ、それはそうだけど!?」
そもそも1ページずつ、それぞれの群集に自己紹介が割り当てられるなら、条件そのものはそれで同等。その中で、今回のサイトの制作実績を省けという方が、よっぽど無茶な要求ではある。
それでも尚、嫌だと言うのなら……それこそ、灰の群集だけの紹介ページにするって手段だって……。いや、待て待て待て。それは流石に揉める原因だし、共同で受け入れ体制を作る事自体が破綻しかねないか。無理を言えば不利益しかないのは、ジェイさんやウィルさんなら分かるだろうから、意外と問題はない?
「……他の群集に紹介文を考えるように伝えるの、俺の役目?」
「およ? 別にそういうつもりはないんだけど……あ、そっか。ジェイさんやウィルさんに伝えたら、その場でやり合う事になっちゃうか! んー、ならルアーさんとジャックさんに伝えよう! その後、何か言ってきたら、ケイさんかベスタさんにバトンタッチで!」
「レナさんが伝えた時点で、それを言ってくれれば早くない? 多分、無駄にやり合うのは避けそうな気はするしさ」
「んー、確かにそれはそうかも? 押し切れない相手に変わるって分かってたら、無理しては来ないかもねー」
そもそもレナさんが伝えるなら、その時点で無茶な物言いは避ける気がするけどね。レナさんだって、強引に意見を押し通せるような相手でもないし……。
「さてと! 問題点と修正方向は見えたし、続きを作ってこよっかな!」
「明日は時間が取れないし、私も今日は手伝わないとね!」
「あ、これからすぐに作るのか?」
「うん、まぁそうなるねー!」
「レナさん、徹夜じゃなかったのかな? 無理してない?」
「大丈夫、大丈夫! 昼間に仮眠は取ってるし、これは急ぎだしねー! それじゃラックさん、リアルの方でね! 他の群集に伝えるのは、修正案を反映させてからにしよ?」
「うん、分かった! 準備出来たら、メッセージを送るね」
「了解。それじゃケイさん達、またねー! 夜にはイベントしに戻ってくるから!」
「ほいよっと! サイト作り、任せた!」
「任せときなさい!」
そう言いながら、レナさんはログアウトしていった。うーん、なんか予想外に凄い方向性へ変わってきた? いや、でも範囲が広い方が、色々と有効ではあるもんな。多分、この方向性で問題ないはず!
「ケイさん、問題点の指摘をありがとね」
「どういたしまして。でも、サヤ達からは俺みたいな意見って出てなかったのか?」
「実は、詳しく内容までは読めてなかったかな」
「へ? え、なんでまた? 一緒に昼を食べてるんじゃ?」
「ふっふっふ! 軽く見た後で別件が入って、有耶無耶になってました!」
「……別件ねぇ?」
ハーレさんがサイトの全部を見てないって事はないんだろうけど、この場合は単純に気付かなかったという可能性はあるか。でも、サヤなら俺が気にした点に気付かなかったとは思えないから、その別件の方が重要……重要そうな別件? あ、もしかして――
「お盆に私がおばあちゃんの家に行くんだけど、それにサヤが着いてくる事になってね?」
「そっちに遊びに行く事になったかな!」
あ、やっぱりその件か! なるほど、確かにサイトの確認が吹っ飛んでもおかしくない内容ではあるよなー! そっか、そっか。前に母さんから聞いてたけど、正式にサヤが遊びに来るのが決定したのか。
「……あれ? 思ったほど、ケイさんが驚いてないのです?」
「いやいや、驚いてるから!? サヤがこっちに来るとはなー!」
危ない、危ない! 俺だけ前からその可能性を聞いてたとは、流石に言えないしな! それが知られたら……あれ? どうなるんだ? 別に怒られはしないだろうけど……なんか変な空気にはなりそうだから、知られない方がいいのは確実だろ! って事で、話題を逸らす!
「となると、サヤとラックさんもリアルで初対面とか出来るのか?」
「あ、うん! それはどこか1日、遊びに行く予定にしてるかな!」
「その日だけは、アルバイトはお休みにさせてもらうのさー! シフトは絶対に入れないのです!」
「……なるほど」
8月はアルバイトをする事にはなってるとはいえ、ハーレさんにとってはそれが最優先だよな。
「ケイにも……会えるかな?」
「あー、まぁバイトのシフト次第?」
折角来るのなら、ラックさんとは別口で一緒に遊ぶのも悪くはない気もするけど……流石にお盆のシフトがどうなるかは、今からだと分からんぞ?
「ヨッシ、ヨッシ! どこかの日で、私の家でバーベキューをやるのです! お父さんには話しておくのさー!」
「あ、それもいいかもね? ケイさん、お邪魔してもいい?」
「おー、いいぞ。別に断る理由もないしな」
「やったー!」
「っ!」
ん? ハーレさんが喜んでるのはまだしも、サヤが力強く手を握ったのはなんでだ?
「金魚、生き残ってるのを見てみたいかな! 池自体も見てみたいし!」
「……うん! はっ!? それなら明るい時間の方がいい気がします!?」
「全滅した訳じゃないもんね。私も久々に見たいかも?」
「残ってるのは、元気にしてるよー!」
あー、なるほど。何かと話題になった、我が家の池と金魚が見たいのか。サヤは寂しがり屋な部分もあるし、あれが共通の話題になるのは嬉しいのかもね。
「あ、それってあの池の元になったっていう、ハーレの家の池の話だよね? 私もちょっと見てみたいかも?」
「それならラックも来るのさー!」
「え、いいの? なら、私も参加しよっかな?」
おー、何気に会った事はないラックさんのリアルの姿とご対面にもなりそうですな。……なんか、オフ会みたいになってきてない?
「そして、ケイさんはギンさんを連れてくるのです!」
「へ? ギンも呼ぶのか? 別に嫌とは言わないだろうけど……まぁ日程が決まったら言ってくれ。ただ、どう考えても昼間は無理だからな?」
「それは分かってるのさー!」
まぁ昼間はサヤとヨッシさんとラックさんとハーレさんの4人で遊んできて、夜に我が家の庭でバーベキューってのでもいいのかもね。それなら、バイトとの兼ね合いがあってもどうにかなるはず。
「さてと、あんまりレナさんを待たせてられないから、私はそろそろ行くね! ハーレ、ここから自分で出られる?」
「大丈夫なのさー! いざとなれば、その辺の人に聞くのです!」
「あはは、まぁそれでもいけるよね。それじゃみんな、またね!」
「サイト作成、頑張ってくれ!」
「うん! 出来るだけ早く仕上げないと!」
そうしてラックさんもログアウトしていった。さーて、現在時刻は……あと少しで17時ってとこか。1時間くらいしかないけど、ここからどうしたもんかな?
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