第1465話 みんなと合流


 さーて、今日もログインしてきた! 昨日、彼岸花さん達3人組……あー、曼珠沙華になったんだっけ。まぁ移籍直後のメンバーだけじゃ共同体の結成は出来ないから、新入り期間は終わってから正式に共同体として発足する――


「あ、ケイ! ……遅かったかな?」

「おっす、サヤ。あー、ちょっと色々あったもんでなー」


 ハーレさんと帰りが被ってしまうくらいだったし、サヤの方が先にログインしてる状態だったか。隣にヨッシさんもいるし……あれ? ハーレさんも既にいる?


「ケイさん、先に行ってるって言ってたのに、なんで私より遅いの!?」

「あー……」


 eスポーツの大会の予選がネット経由で見られるかどうかの確認を忘れてたから、それを調べてた分だけ遅くなってたかも。……しまったな、妙に心配させた可能性があるか?


「ケイさん、何かあったの? またトラブルになってるみたいな事をハーレが言ってたけど……」

「遅れた理由はそこじゃないから大丈夫だ。あー、とりあえずちょっと場所を変えない? 端の方とはいえ、エンの近くで長居するのもあれだしさ」

「……それもそうかな? それじゃ、灰のサファリ同盟の本拠地へ移動かな?」

「……へ? え、何か用事があるのか?」

「うん! さっきの件、ラックに直接話に行く事になりました! レナさんももういるって話だったから!」

「あー、なるほど」


 既にレナさんもラックさんもログインしてるなら、下手にリアルの方で連絡をするよりは、こっちで話した方が早いか。そういう予定になるって事は……。


「サヤとヨッシさん、作りかけの例のサイトはもう見た?」

「うん、お昼休みに見せてもらったかな!」

「凄いよね、昨日の今日であの出来ってさ。あ、でも、その話はここでは大々的にはしない方がいいかも?」

「あ、それもそうだな……」


 リアルであれを見られる接点があるというのは、あんまり大々的に知られていいものでもないか。まぁ特別、もの凄く困るって事態にはならないとは思うけど……避けた方がいいのは間違いないしね。


「おし、それじゃ移動しますか!」

「「「おー!」」」


 という事で、ログイン早々だけども、灰のサファリ同盟の本拠地へ移動開始! レナさんが一緒にいるなら、放課後にあった出来事も伝えておきますかねー。アイルさんの事ではあるし、ギンも関わってるから、レナさんが無関係とも言えないしさー。


<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅱ』を発動します>  行動値 127/127 → 125/125(上限値使用:2)


 今日は昼の日だから、夜目は不要! 快晴で木漏れ日が落ちてくる中、水のカーペットの展開も完了!


「あっ!?」

「……どうした、ハーレさん?」


 水のカーペットに飛び乗りながらのその反応……何か問題でもあったか? いつも通りに展開しているはずだけど……。


「ログインボーナス、貰うのを忘れてたのさー!」

「……あ、俺もだな」

「あはは、それならまた忘れないうちにそっちからだね」

「余ってるとはいえ、勿体ないかな」

「ですよねー!」

「はーい!」


 この余りまくりの進化ポイントだけど、自分以外の強化の為に消費する事もあるからなー。貰っておいて損はないし、足りないなんて状態になる方が困るしね。


<ケイが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>

<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>

<ケイ2ndが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>

<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>


 という事で、ササっと入手完了! その間にサヤとヨッシさんも水のカーペットに乗り終えたし、出発しますかね!


「ふと思ったけど、あんまり進化ポイントが3種類ある意味を実感しないのです?」

「……あ、それは思ってたかも?」

「確かに、今の使い方って分かれてる意味は、あまりないかな?」

「分けたものの、運営も扱いに困ってたりしてなー。提供する際、全部同じ扱いになってたりするしさ」


 前々から俺も思ってはいたけど、ハーレさんが思いっきり口に出したな! 多少、進化やスキルの取得で必要量の変化はあるとはいえ……こうも全体的に余ってくると、本当に分かれている意味ってないよな。

 でも、無用な要素は廃止になってたりもするから、統合せずにまだ分かれているのには……何か意味があったりする? うーん、分からん!


「まぁその辺は考えても分からんし、とりあえず今は移動で!」

「「「おー!」」」


 何かまだ知らない要素があるのなら、まぁそのうち判明するだろ! どの進化ポイントも1000は超えてるけど……本当、余ってますなー。


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『五里霧林』に移動しました>


 脱線も程々に、魔改造中の灰のサファリ同盟の本拠地のある五里霧林へ転移完了! いやー、競争クエストの頃は凄い霧だったけど、今は水場の多いただの森ですなー。まぁ湖のど真ん中に植わっているミズキは普通じゃないけど。


「あ、みんな! こっち、こっち!」

「ケイさん、あっちなのです!」

「ほいよっと!」


 湖の畔で呼びかけてきているラックさんの姿を確認したから、そこまで飛んでいく! ん? ラックさんのいる横に……なんか大きな穴が出来て、スロープみたいなの通路になってる!? ここ、地下への入り口か!?


「ラック、お待たせなのさー!」

「そんなに待ってはないけどね。それじゃみんな、着いてきて! 話が出来る場所に案内するから」

「はーい!」

「……なんか凄い事になってるね?」

「聞いてた以上に、魔改造されてるかな!?」


 あ、そういやサヤとヨッシさんはここを見に来てないのか。俺が見たのは18時台でハーレさんと来た時だもんなー。

 さて、とりあえず水のカーペットから降りて地面に着地! ……かなり硬くなってる地面だけど、これは踏み固めた感じか? まだレンガになってる訳じゃないけど……あ、ついでだから聞いとこ。


「ラックさん、レンガってもう出来た?」

「一応、試作品は成功した感じだよ。ただ、ここから量産に移るのが大変かも? 土から成形して、乾燥させて、そこから焼かなきゃだし……その上で数が凄い量になりそうだからさー」

「まぁそりゃそうだよなー」


 この地下トンネルの本拠地の壁や天井や床をレンガで補強していくのなら、どれだけ大量に作ればいいかが不明だしな。かなり長期的な計画になりそう?


「まぁレンガが作れるのは分かったから、今は他の焼き物の方に動いてるって感じになるよ。いつまでも、詰め合わせに使われた土器頼りも嫌だしね」

「あー、なるほど」


 レンガであれこれするのは時間がかかるのが分かりきってるから、それ以外にも試したい事を優先していく――


「おぉ、ケイさん達じゃねぇか! 昨日ぶりだな!」

「……コイコクさんか? あー、そういや2ndのサルがメインって言ってたっけ!」

「おう、そうだぜ!」


 一瞬真っ黒なサルの姿で戸惑ったけど、名前をよく見れば『コイコク2nd』って表示されてるもんな。いや、待て。それ自体はいいんだけど……何故ここで遭遇する!?


「コイコクさん、ここで何してるのー!?」

「そりゃあれだ! 俺ら『まな板の上にコイの滝登り』は灰のサファリ同盟の本拠地の一部を間借りする事になってな! 実際にどの辺のスペースを借りるか、物色中なんだよ!」

「おぉ!? そうなんだ!?」

「そんでまぁ、赤の群集の安全圏の前と、青の群集の前の安全圏の前に出張所も作ってな? そこでこれまで通りのトレードをやろうって話にもなってるんだぜ!」

「あー、なるほど。てか、随分と馴染むのが早いな!?」

「わっはっは! ここ、意外と居心地が良くてな! すぐ近くに転移出来る場所と、生け簀になってる水場があるのも大きいぜ?」

「……まぁ確かに、立地としては悪くはないかも?」

「馴染めたみたいなら、よかったかな?」

「おう! そうなったのもケイさん達のお陰だし、感謝してるぜ! おっと、それじゃそろそろ俺は行くからな!」

「ほいよっと! 頑張ってくれ、コイコクさん!」

「おうよ! さーて、どの辺がいいか……。まだ中の拡張は可能だって話だし、他の湖へ繋がるルートを開拓して、そこで大々的にレンガの竈を作るか? 間借りするっつっても、入り口付近を大々的に占拠はまずいしな……。おし、とりあえず近くの湖へ行ってみて――」


 なんというか……本当に馴染むの、早いな!? 人見知り集団で移籍するのも、灰のサファリ同盟と話すのも躊躇っていたとは到底思えないんだけど!?


 ふぅ……思わぬ遭遇だったけど、意識を切り替えて歩き始めたラックさんに着いていこう。実際にガッツリと中へ入ると……昼間とは思えない暗さだな。あちこちで灯り用の火はあるけど、それでも相当暗い……。まぁ地下トンネルだし、仕方ないか。


「ケイさん、私からもお礼は言わせてね。ありがと」

「……へ? なんでラックさんからお礼?」

「あはは、共同体『まな板の上のコイの滝登り』って、思った以上に情報を持っててさ。かなりの量のレシピをもらっちゃって? 再現性に問題ないのばかりだから、灰のサファリ同盟としては大助かりなんだよね。流石にパンが出てきたのは驚いちゃったしさ」

「マジか!?」


 再現性があるって事は、灰のサファリ同盟で作る事も可能って事か。てか、パンはまだ出来てないって聞いてたけど……それがあるのは大きいな!?


「え、ラックさん、パンが作れるようになったの?」

「コイコクさん達、天然酵母の作成に成功してたみたいでさ。それを分けてもらったから、作れるようにはなったよ。まぁその分、出来たばかりのレンガを使って作った専用の竈が欲しいって要望も出てるんだけどね。他にも土器の鍋やピザ窯や、まぁ他にも色々と?」

「……あはは、確かにそれは欲しがりそうかも?」


 馴染むどころか、普通に取り引きしてんじゃん!? レシピを提供する代わりに、調理道具を求めてくるのは……まぁ料理をする集団らしいけどさ。


「まぁ私もそれほどガッツリと内容を聞いた訳じゃないから、その辺は担当の部門に任せちゃってるけど……あ、こっちね」

「はーい! ……なんか何度か曲がったけど、これは迷いそうなのです?」

「あはは、万が一にでもここが再戦エリアになった時、敵を迷わせようとかって計画も上がってるからね。……自分達が迷いそうになってるから、頓挫するかもだけど?」

「大変そうなのさー!?」


 途中から細い道を何度も曲がってると思ったら、そういう思惑があったんかい! いや、でもこれは冗談抜きで迷いそうだな? 


「そういう場所だからこそ、内緒話には丁度いいんだけどね。ケイさん、レナさんに何か話があるんでしょ?」

「まぁそうだけど……ハーレさんから聞いた?」

「っ!? 私、まだ何も言ってないよ!?」

「あはは、これの情報源はギンさんだよ。ケイさんの面倒事を片付けるけど、その影響が多少はあるかもしれないって、わざわざ教室まで来てたんだからさ」

「えっ!? そんな事あったの!?」

「そりゃ、ハーレが帰った後だしね」

「あ、それなら知らなくて当然なのさー!?」

「……分かった上でやってたのか、ギンめ!」


 下手すりゃうちのeスポーツ部との関係性が滅茶苦茶になるリスクがあるのに……まったく、そういう悪役は引き受けなくていいっての。俺が直接、苦情を言いに行くので済んだ話でもあったのにさ。


「ケイさんのとこのeスポーツ部に恨まれる可能性があるとは言ってたけど……その辺は大丈夫? アイルさん、逆恨みとかなかった?」

「まぁそれはなかったけど……また変な事態にならなきゃいいんだけどなぁ……」

「その微妙な反応、何かあったのかな!?」

「……なんか今度は、eスポーツ部の連中に、俺とアイルさんが付き合ってて別れたみたいな誤解が発生してる? いや、途中で放置して帰った方、どうなったか知らんけど……」

「何がどうしたら、そういう事態になるのかな!?」

「さぁ? 俺にもよく分からん?」


 いや、本当に何をどうすりゃ、またそんなややこしい疑惑が出てくるのやら? 


「なんだか愉快な事になってる気がするのさー!?」

「こら、ハーレ! 面白がってる場合でもないでしょ!」

「あぅ……それもそうでした……」


 まぁ無関係の立場からなら、愉快な状況ではありそうだけど……巻き込まれてる張本人としてはまるで笑えん!


「……ねぇ、ケイ。アイルさんとは、本当に距離を取った方がよくないかな?」

「アルバイトが一緒じゃなきゃ、そうしたいとこなんだがな……」


 それさえなければ、完全にスルーしてしまえばいいんだけど……流石にスーパーの店長さんを筆頭に、アルバイト先で迷惑をかけたくはない。最低限、まともに会話する程度にはしておかないと……。


「あ、みんな、来たね! およ? ケイさん、どうかしたの? ラックさんから何か話があるかもって聞いてたけど……問題発生? アイルさんをメンバーに入れたの、やっぱりマズかった?」

「あー、まぁとりあえずその辺の説明からか」


 辿り着いた先の空洞でレナさんが待ってたね。さーて、みんなに話した内容も大雑把過ぎるし、具体的にギンが何をして、うちの高校のeスポーツ部に何があったかを説明しないとなー。

 その最後でのアイルさんのやらかしで、微妙に変な流れが出来ている事も含めて……あの最後の一言がなけりゃ、割と心配はいらなさそうだけどな!? 本当、フラムより厄介な状況を作り出してくれるな、アイルさんは!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る