第1464話 誘導サイトの作成の進捗


 eスポーツ部に関わると面倒な事になるけど……まぁ今回は顧問の喜多山先生が出てきたから、流石にこれ以上面倒な事にはならないだろ。

 あ、そういや相沢さんがグループメッセージを作ろうとした理由が名目だったってのは……もう掘り返すだけで面倒な予感しかしないし、別にいいか。……あの妙なポンコツ感を考えると、それほど大した理由でもない気がする。


「それにしても、暑いな……」


 完全に梅雨明けして、本格的に夏到来かー。あー、もう早く家に帰ってしまいたい。ん? 隣に自転車が……って、晴香か。自転車から降りて、隣を歩き始めたな。


「兄貴? 今、帰りなの?」

「ん? あー、ちょっとeスポーツ部の関係でちょっとなー」

「また何かあったの!?」

「いや、昨日の俺への過剰な敵意の件で、直樹が報告入れててなー。そっちの高校の顧問から、こっちの高校の顧問へ苦情が入ってたっぽい」

「そうなんだ!? ……それ、大丈夫なの!?」

「……大丈夫なように、昨日の件は水に流すように押し切られた。まぁその分、お灸は据えられてたけど」

「おぉ! って、そういう意味じゃないのさー!?」

「……ん? そういう意味じゃないって、どういう意味だ?」


 他にどんな意味が――


「どういう意味って……同じ共同体になるのに、喧嘩とかにならないですか!?」

「あー、そういやそうか!?」


 よく考えなくても、直樹と相沢さんは同じ共同体に所属する事になるんだし、そこで問題が起こる可能性も……あるのか? いや、あの相沢さんの反応だと全然平気そうな気もする……。


「うん、まぁそこは大丈夫だろ」

「そんなに楽観視していいの!?」

「大丈夫、大丈夫。それで問題になったとしても、追い出すなら相沢さんやeスポーツ部の連中の方だから!」

「それ、全然大丈夫じゃないのさー!?」


 いやー、俺としては我慢しなきゃいけないと思って呑み込んだ部分だけど、今日の顧問からの説教を理由にあれこれ言ってくるなら、排除する正当な理由が出来るもんな! まぁうちの高校のeスポーツ部の連中がモンエボを始めるかどうかは知らんけど。


「俺の方はいいから、ラックさんの方はどうだったんだ? 今朝、早かっただろ?」

「うん! 手抜きだって話だけど、もう大体は出来てたのさー! スクショを撮ってきたから……はい、これ!」

「もう出来てるのか!? あー、確かに出来てる……」


 テンプレートを使うとか聞いてたけど、なんかどこかのゲームの公式サイトみたいな出来なんだけど!? 昨日、リアルで打ち合わせだけみたいな話じゃなかった!? なんでもう出来てんの!?

 というか、『ナチュラルポート』も凝ってたけど、これが手抜きでの作りか!? ……どことなく、雰囲気も似てるような? メインで作るのがレナさんだと言ってたし、大量のスクショを載せつつも、各群集の特徴を紹介したり、eスポーツ勢向けの共同体の発足についての説明も書いてるね。この出来、流石!


「それ、『ナチュラルポート』のトップを改造して作ったんだってー! 今朝、レナさんから送られてきたって、ラックが言ってた!」

「やっぱりレナさんが作ったやつか。これ、もしかして実際のは色々動く?」

「動いてたよー! スクショもだけど、ページをスクロールする度に文章が流れるように出てくるのさー!」

「……なるほど」


 『モンエボの絶景景色百選』の方はシンプルさを売りにしたような作りだけど、『ナチュラルポート』はゲームの公式サイトみたいに動きのある派手さが目を引く作りなんだよな。

 これ、モンエボを舞台にした対人戦の特設ページみたいな構成になってるな。まだちょいちょい空欄になってるとこはあるけど、未確定な内容は載せられてないって感じかも?


「兄貴から見て、これはどうですか!?」

「……とてもじゃないが、昨日の今日で出来たものとは思えないなー。これを今朝には用意してたって……レナさん、徹夜してねぇ?」

「その通りなのです! まぁそれでも問題ないんだってー!」

「……なるほど」


 そういやレナさんはマンションを持ってるとか言ってたし……不労所得での金持ちか!? うん、そうだって本人も言ってた気がする。

 でも、これはお金で買ったものでもなく、レナさん自身が作ったものって認識でいいんだろうね。……普通にこれはプロレベルなのでは?


「空欄になってる場所は……あー、各群集の共同体名とか、そこからのコメント的なやつか」

「そこは今日、聞いて仕上げるそうなのです! ちなみに、素材のスクショはレナさんとラック、それと赤のサファリ同盟から提供だそうです!」

「素材としては一級品だな、そのメンバーのだと!?」


 eスポーツ勢を例のサイトから誘導してくる目的のサイトではあるけども、質が雲泥の差だな!? というか、eスポーツ勢向けな理由もガッツリ書いてるけど……。


「……これ、気合い入れ過ぎじゃね? 大型アップデートに向けての、公式特設サイトだと思われても不思議じゃないだろ」

「それは私も思ったのさー! ラックの感想もそうだったよー!」

「だから、意見を求められて朝から呼ばれたのか?」

「うん! ……正直、出して大丈夫だと思いますか?」

「あー、まぁ別に質が高いだけで、悪い事は何も書かれてないしなぁ……。公式の仕業だと勘違いされる方が、むしろ都合はいいか?」

「それは思ったけど、後々で問題になりませんか!?」

「別にスクショの利用は自由なんだし、公式的にも悪い内容じゃないはずだし……多分、大丈夫だろ」


 スクショで静止画として見てるから微妙に違いはあるんだろうけど、勝手に使ったらいけない類いの物を使ってる様子はないもんな。これで運営がどうこう言ってくる事はないと思うけど……。


「……ただまぁ、これはあれだな」

「何か問題ありますか!?」

「いやー、普通にeスポーツ勢以外の新規も釣れそうな予感? オンライン版になって対人戦の要素が強く出るようになってるし、そういうのが好きな人まで釣れそうだなーって?」

「はっ!? 確かにそうなのさー!?」

「まぁそれが悪いって訳じゃないけど……純粋にゲームとして競い合いたい場合は、大型アップデートでの新規サーバーの追加の情報を入れておいた方がいいんじゃね?」


 その方がeスポーツ勢以外の人が興味を持った時には親切な内容になる気がする。『再現クエスト』とやらで過去のイベントも出来るようにはなるって話だけど、その辺はまだ内容が未知数だしね。

 既存のプレイヤーの影響を受けずに1からやりたいって人は、新規サーバーで始める方がいいだろ。eスポーツ勢と新規勢が一気に入ってくると、俺らの方まで混乱しそうだし!


「……なんだか、このサイトの対象範囲が広がってないですか?」

「ここまでの出来のものが、丸一日も経たずに出来てくるとか予想もしてなかったしなー。あと、この各群集の自己紹介的なコーナー、結構危ないかも?」

「……はっ!? 新規さんの獲得合戦のコーナーになりそう!?」

「そうそう、そういう感じ」


 eスポーツ勢の流入の仕方をコントロールする為のサイトではあるけど、間違いなくそれとは関係ない人の目にも触れる事にはなる。というか、そうなるようにしなければ、このサイトの存在意義はない。

 だから、必然的に新規勢になり得る人達の目にも留まる事になるから……対戦する事の魅力をメインに押し出しているこの作りは、それぞれの群集の強化に直結するだろ。


「それ、ラックに伝えとくのさー! レナさんに、その辺の調整をお願いしておくのです!」

「ほいよっと」


 そうやって話している間に、我が家へと到着。調整とは簡単に言うけど……目立たないと意味がないし、目立てば目立つ程、eスポーツ勢以外への目にも届く事になるからなぁ。

 ここから質を下げる意味がないから、そもそも各群集の自己紹介コーナーを削るような調整になる? いや、それをするよりは、各自で勧誘文を上手く考える方がいいかもな。


「晴香、先にログインしとくからなー!」

「はーい!」


 まぁあれこれ考えても、最終決定権は俺にはない。見せられて作りかけのサイトのスクショを見て、思った事をそのまま言っただけ。とはいえ、状況次第ではまた他の群集に出向く事もあるかもね。


「……そういや、直樹は今日はどうすんだ?」


 すっかり返事をするのを忘れていたけど……返事ついでに聞いとこ。えーと、返事は……『まぁ今回のはそう大きなトラブルにはなりそうにないけど、アイルさんが滅茶苦茶な事を言い出したら報告よろしく! ところで、今日はログインするのか?』くらいでいいか。という事で、送信!


 さて、とりあえず汗を拭ってから部屋着に着替えて、続きをやって……って、もう返事がきたな!?


「随分と早いけど……えーと、『無茶な事を言い出す可能性があんのかよ! 夜には少しログインするかもしれんが、俺の事は気にしなくていいぜ。これから部活だから、しばらく返事は出来ん』か」


 まぁ帰宅部の俺とは違って、これから部活なら長々と話してる場合でもないよなー。作りたての直樹のカンガルーは一緒に動くには限度もあるし、気にしなくていいのは素直にありがたい。昨日、全然自分の育成が出来てないしなー。

 それにしても、大会予選の前日に他のゲームをしてる余裕があるとは……流石だな! 


「……あー、そうか。明日が大会なんだよな」


 俺自身が無縁な部分だからつい失念してしまうけど……うちの高校のeスポーツ部の連中こそ、今日があの状態で大丈夫か? いや、別にすぐに負けてしまったところでどうでもいいけどさ。

 あ、そういや予選……観戦がネットで可能かどうかの確認をしてない気がする!? ログインする前にそれを確認しとかないと!?



 ◇ ◇ ◇



 予選でもしっかりと配信で見てる事はすぐに分かったので、改めてログインに移った。そして、やってきました、いつものいったんのいるログイン場面!

 えーと、今の胴体部分は……『今日の夜、何かが起こる!』とだけ書いてある。うん、まだ具体的な内容は不明なままか。まぁそれは実際に始まるまで内緒って事なんだろうし、始まってのお楽しみって事でいいか。それはそうとして、ちょっとこれは聞いてみよう。


「いったん、ちょっと質問をいい?」

「はいはい〜。どんな質問かな〜?」

「外部にサイトを作って、人を集めるってのは運営的にはどういう認識になる?」

「えーと、規約違反にならない限り、特に禁止はしてない行為になるね〜。今、お問い合わせの多い、とあるサイトがあるけど、運営が見た限りでは違反行為には当たりません〜」

「……なるほど」


 お問い合わせが多い『とあるサイト』って、どう考えても例のeスポーツ勢への手引きが載ってるあのサイトの事だろうね。あれ、運営的に違反行為にはならないんだ?

 まぁ、サイトの胡散臭さや、裏に見え隠れする意図はともかく、あれ自体はモンエボに人を増やそうって内容でしかないもんなー。何かを貶めるような記載って、皆無だったしさ。

 いや、仮に問題があっても外部だと対応って出来るもんなの? うーん、分からん! よっぽど悪質でない限り、スルーされそうな気もする?


 まぁともかく、あれが運営として問題ないという判定なら、レナさんとラックさんが作ってくれているサイトも問題はない訳だ。誘導の方向性が違うだけで、やってる事そのものは同じだしね。


「そういうサイトを、他の人が別に作るのも問題はないって認識でいい?」

「うん、問題ないよ〜。ただし、特定の誰かを貶めるようなものだったり、公序良俗に反するようなものだったり、犯罪行為に繋がるようなものは、当たり前だけど禁止だからね〜」

「まぁ、そりゃそうだ」


 まぁその辺の心配の必要はないね! レナさんが作ったサイトには例のサイトを貶めるような記載は皆無だったし、そもそもあのサイトに言及すらしてなかったからね。

 被せて作ってるって意図は明白だけど、それは別に咎められるものでもないか。よし、いったんからこの確認が取れたのは大きいぞ! まぁもう既にレナさんかラックさんのどちらかが……いや、2人共が確認してそうではあるけどさ。


「おし、質問はそんなもんだなー。スクショの承諾はきてる?」

「はいはい〜。結構来てるから、承諾をお願いします〜」

「ほいよっと」


 目立つ事は多かったけど……俺自身が写ってるのはそう多くはない気もするんだが? って、本当に大量にある!? なんでこんなに……って、俺はほぼ端っこで見切れてるようなのばっかじゃん! アルのクジラの方がよっぽど写ってるし……うっわー、何気に赤の群集の人からもちょいちょいあるよ。

 うーん、流石にコイの群れを引き連れて動いたり、ベスタとリコリスさんとラジアータさんが対決してる様子とかあれば、こうもなるか。でも、ほぼ俺は写ってる意味なし!


「全部、承諾でいいや」

「はいはい〜。それじゃそう処理しておくね〜」


 特に俺が写ってる意味がないスクショばかりだし、あえて拒否する理由もないからね。どっちでもいいなら、許可でいいだろ!


「あと、今日のログインボーナスをどうぞ〜!」

「いったん、サンキュー! それじゃ、コケでログインを頼む!」

「はいはい〜! 今日も楽しんでいってね〜!」

「ほいよっと!」


 という事で、いつも通りにいったんに見送られてログイン開始! えーと、昨日はエンの近くでログアウトしたから、スタートはそこからだな。

 今日は昼の日だけど、夜までは特にこれといった用事はない。まぁ時間的にもうサヤとヨッシさんもログインしてるだろうし、まずは合流からだね。18時まで何をするかは、合流してから考えよう!

 

 

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