第1460話 派手な登場


 なんか全然予想してなかった方向に話が進んだけど、もう派手に目立って加入なんてコイコクさん達のでやってしまってるんだし、気にするだけ無駄だな!

 てか、情報の拡散と動きの速さを考えると、みんなノリノリで動いてるよね!? なんというか、こういう動きも灰の群集らしいな!?


「ケイ、もう森林深部に入るかな!」

「私達は、どうしていればいいの?」

「特等席で観戦ですか!?」

「あー、俺らが邪魔になってもいけないから、水はアルより上に展開する! アル、高度は出来るだけ下げといてくれ!」

「了解だ! そうじゃねぇと、見えにくいだろうしよ」


 さーて、やると決まった以上は、全力でやるまでだ! ベスタに1撃を入れた方が勝ちなんだし、リコリスさんとラジアータさんの勝負での流れ弾が出ないように必死で防ぐぞ!


<行動値10と魔力値20消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 116/126(上限値使用:1): 魔力値 294/314


 大量の水を、上空で生成開始! ……並列制御で二重にしようかと思ったけど、この量の水を重ねずに生成出来る気がしなかった! その辺、要練習かもなー。


<行動値を2消費して『水の操作Lv10』を発動します>  行動値 115/126(上限値使用:1)


 とりあえず今は1つの操作にしておくけど……これで守り切れればいいんだけどな。操作時間って同じ連結PTだろうが、何か負荷がかかれば容赦なく減っていくからなぁ……。保ってくれよ、エンの元まで!

 とにかく、中が空洞になるように操作して……あー、水量が減る訳じゃないから、超巨大なシャボン玉みたいになってきた。いや、もうこれって――


「おぉ! 朝焼けに浮かぶ、透明な飛行船なのさー!」

「……なるほど、俺のクジラが乗船部分か」

「そんな感じだよなー」


 思い浮かびかけた例えを、先にハーレさんに言われてしまった。てか、もう時間が時間だから少しずつ明るくなってきて……これ、サファリ系プレイヤーの人達が喜んで撮りにきてそう!?


「ケイ、俺ら3人が中に入るまでは、反発力は抑えておいてくれ。その後は、足場に使える程度の反発力で頼む」

「ほいよっと」


 どう考えても、ベスタは俺の水を足場にして縦横無尽に動き回るつもりだね。……これ、本当に俺の水の操作で耐えられる?

 いやいや、俺の水の操作はLv10だから! それでどうにもならないとか、もうどうしようもないから! うん、大丈夫なはず!


「……もし解除になっても、その時は私が流れ弾を防ぐよ」

「あー、頼んだ、彼岸花さん」

「……任せて」


 不安に思ってるのが筒抜けになってたのか……また声に出てた可能性もあるけど、まぁそこは気にしない! 彼岸花さんの氷の操作もLv10に至っているんだし、ガッツリとした戦闘じゃなければ頼れるはず!

 ……あれ? そういや、何も気にせず普通にここまで来たけど、妨害ボスってどうなってんの? 


「それじゃ、森林深部に突入なのさー!」


<『ハイルング高原』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>


 ちょ!? 確認する間もなく、そのまま入っちゃった!? あー、でも誰も何も言ってないし、普通に通れたなら既に討伐済みだったか。まぁ無所属と言っても出入りが出来ない訳じゃないし、機会はいくらでもあっただろうしね。


「それでは、対戦を始めるぞ」

「すぐに勝っちゃったらごめんね! よっと!」

「ふん、それはこちらの台詞だ!」


 普通に素通りして俺の水の中の空洞へ入っていったし、特に心配はいらなかったか。さーて、それじゃ足場になるように反発力を高めて――


「先手必勝! 『アクアクリエイト』『水の操作』!」

「おぉ!? ケイさんの作った水の中で、更に大量の水が作られたのさー!?」

「あ、ラジアータさんが呑まれたかな!?」

「ベスタさんは……簡単に避けてるね」


 ちょ!? いきなり俺の水のへと負担が大きな手段で……いや、俺の水には触れてないな? ふむふむ、俺の操作している水の動きに合わせて、全く動きが重ならないように浮かせてるのか。何気に凄い精度で動かしてくるな、リコリスさん!


「あー! ラジアータ、人のを使って勝手に泳ぐんじゃない!」

「知るか。嫌なら、軽々と避けられているこの水を消せば済む話だろ」

「ぐぬぬ! 簡単に避けてくれちゃってさー! なら、これでどう!」

「ほう? 水球の分割か。だが、その程度が当たるとでも? 『コケ渡り』!」

「えっ!? わっ!? 後ろ!?」


 うっわー、リコリスさんがデカい水の塊を6分割して、空洞を埋めるように配置していったのは凄い。凄いけど、その表面を水切りさせつつ、俺の水の反発力も利用して、リコリスさんの真後ろまで移動するベスタもとんでもないな!?

 どこに用意してたんだよ、その移動用の石! しかもオオカミの脚で弾き飛ばして、その移動精度はとんでもないな。


「俺からの攻撃は、無いとは言っていないぞ? 『連閃』!」

「ちょ!? 待っ……『並列制御』『アクアエンチャント』『アクアウォール』!」

「いい囮、ナイスアシストだ。『並列制御』『エレクトロインパクト』『エレクトロインパクト』!」

「ほう? 『コケ渡り』!」

「あー! 人の防御を勝手に電気を流すのに使うなー!?」


 へぇ、リコリスさんが展開した防御に電気を流しつつ、その回避先に前もって衝撃魔法を放つとはね。普段の連携はこんな感じなんだろうけど……今は勝手に使われるって認識になるのか。まぁ確かにそういう感じだしなー。

 てか、ラジアータさんは普通に岩で自分を固めて空中を飛んでるから、俺の飛行鎧と同じ運用方法か。リコリスさんは小さな水球の上に乗ってる状態だから、俺の水のカーペットに近い運用ですなー。


「というか、ベスタさんの移動、ズルくない!? 瞬間移動だよ、あれ!」

「今のは当てたと思ったんだがな……。インベントリの中から小石を出して、弾き飛ばしての回避……いや、応用スキルの使用中にそれは出来ないはず。今、一体どうやった?」

「終わった後でなら答えるが、今は答えられる訳はないな!」

「わっ!? ここから攻めてくる!? でも、それなら『並列制御』『アクアクリエイト』『アクアクリエイト』『並列制御』『水の操作』『水の操作』!」


 おー、今度は小粒な水の弾を並列制御で大量にか。規則性なくバラバラに操作してるし、かなりの操作精度だけど……しれっと回避しまくって距離を詰めるベスタが相変わらずとんでもない!?


「へっ!? え、もう距離を詰め――」

「これで、1撃だ」

「うっそ!? わっ!?」

「……何が1撃を入れろだ。逆に入れてきてるじゃねぇか」

「俺からは手出ししないとは言っていないからな。リコリス、操作精度は申し分ないが……自身の防御が甘いな。懐に入られるのは苦手か?」

「ぐぬぬ!? 普段なら、こんなに簡単に懐には入れないっての!」


 おー、悔しそうにしてますなー。うん、悔しいのは分かるけど、小さな尻尾とはいえ、それで俺の水を叩くのはやめて? さっき、ベスタに吹っ飛ばされたのも合わせて、そこそこ操作時間は削られてるから!?

 この広い空洞を作りつつ、アルの移動速度に合わせて動かすの、結構大変なんだからさー!? 空だからまだいいけどデカ過ぎて、全体を正確に把握し切れてないんだよ!


「さて、ラジアータは攻めてこなくていいのか? 時間切れは、そう遠くはないぞ?」

「移動のカラクリが分からないと、攻めたところで行動値の無駄だ。目に見えて分かるように応用スキルの発動をして、その上で先ほどの空中での挙動……。単に空中を移動する手段を考えれば『飛翔疾走』か、足場を作る移動操作制御だが……どちらにしても、スキルの発動中には使えん」

「ほう? 俺の動きの分析からか」


 ふむふむ、まぁ動きのカラクリが分からなければ、そりゃあの瞬間移動で回避するのは難しいよな。それにしても……ベスタ、面白い手段を考えるね?


「ケイさん、アルさん、ベスタさんが何をやってるか、分かりますか!?」

「あー、まぁなんとなくの予想は出来てるぞ」

「……サラッと、とんでもないことを言うな、ケイ。俺にはサッパリなんだが?」

「まぁ絶対に当たってるとは限らないんだけど……そもそも、この状態で言う訳にもいかないんでなー」

「はっ!? 確かにそうなのです!?」

「……あはは、ラジアータさんに答えを教える事になっちゃうもんね」

「それは、対戦中にはアウトかな?」

「ま、確かにそれはやったら駄目な事か」

「そうそう、そうなんだよなー」


 多分だけど、これはベスタが『連閃』と『半自動制御』を並列制御で使ってる。インベントリから取り出した小石を足場にして駆けながら、『半自動制御』に登録してある『増殖』と『コケ渡り』を待機状態にしてるんじゃないかな?

 それで、一気に移動が必要な時に使用してると見た! おそらく、登録数はそれほど多くはないな? 多過ぎると次の手に移る時には邪魔になるだろうしさ。


「……もう分かってるのか、コケの人は。いや、元々知っていたか?」

「いや、この手段を誰かに教えた事はない。今、この場で見破ってきたんだろう。ラジアータ、これがケイの強みだ」

「……なるほど、確かに咄嗟の分析力や判断力の高さは驚異的だな」


 いやー、それほどでも? って、なんか俺の話題になってない!? 


「手の内をこうもあっさりと分析されるのは、味方であれば頼もしいか。リコリス、一時休戦だ。連携しないと、ベスタさんの相手は厳しいようだしな」

「ありゃ? もう音を上げちゃうんだ?」

「……冗談を言っているつもりはないんだが?」

「……分かってる。それじゃ、思いっきり追跡で! 『並列制御』『アクアクリエイト』『アクアクリエイト』『並列制御』『水の操作』『水の操作』!」

「よし、いくぞ! 『魔法砲撃』『並列制御』『エレクトロクラスター』『エレクトロクラスター』!」


 思いっきり上へ1発のエレクトロクラスターを打ち上げつつ、もう片方は魔法砲撃にして撃ち放ってる!? そこにさっきと同じような大量の水の球も合わせて動かしてるけど……ちょ!? え、そういう使い方!?


「ほう? エレクトロクラスターの無差別攻撃を、水の操作に流して攻撃か。その回避先をヤドカリのハサミで、攻撃誘導とはな」

「っ!? 水を駆け上がってる! ラジアータ、上!」

「いいや、上じゃない! 下だ!」

「あ、また瞬間移動!?」

「……ほう? 狙いを読んだか」


 ちょ!? リコリスさんがラジアータさんの無差別でのエレクトロクラスターを水の操作で方向誘導したものの、ベスタに躱されたのが直撃したり、ベスタが俺の水を駆け上がってたりで、俺への負荷が半端ないんだけど!?


 てか、俺の水へ電気が流れてる間はベスタは空中に逃れてるし、リコリスさんが上だと判断した後にコケ渡りで下に降りてきてるのや、それに合わせてラジアータさんが魔法砲撃にしたエレクトロクラスターを撃ち放ちまくってくるのがとんでもないな!? これ、小さくバチバチッって電気が弾けるような目印が付くんだね。


「ちっ、軽々と躱すな!?」

「この程度の範囲で、大技を使った誘導は狙い過ぎだ。舞台自体が動いている事の考慮も、少し甘い」

「っ!? ラジアータ、急がないともうエンが見えてきてる!」

「分かっている! 最後のこの一撃で、決めるぞ! リコリス、広げろ!」

「了解!」


 おわっ!? 12個の水球が、それぞれが長い棒みたいに伸びた!? あ、その水のどの先にも、ラジアータが目印として放ちまくった電気へと繋がって……へぇ、これは面白い使い方だな。


「食らえ!」

「いっけー!」

「……避ける事を想定し過ぎだな。止まった場合も考えろ」

「なっ!?」

「え、空振り!?」


 あ、うん。ベスタの周囲に水が蜘蛛の巣のように張り巡らされた状態だったけど……動きを止めたら、そのまま素通りしてしまっているよ。今の悪くはないけど、回避前提にし過ぎ!?


「……時間切れ。リコリス、ラジアータ、そこまで」

「わー!? 最後の、焦っちゃったー!? 移動の相対位置を合わせるのに、少し気を取られ過ぎちゃった!?」

「いや、回避するものだと決め付け過ぎていたのは、ベスタさんの言う通りの落ち度だ……。くっ、連携しても届かないのか!?」


 うーん、今回のはどう考えても相手が悪かっただけとしか思えないんだけど……。あー、でも弥生さんとシュウさんへのリベンジを狙ってるなら、ベスタに1撃を入れられるくらいじゃないと厳しいのか。

 いや、決して動きが悪かった訳じゃないしなー。色々と制限付きでもあるから、これが実戦の結果とも言えないんだけど……。


「……ケイさん、今のベスタさんの瞬間移動……『半自動制御』? インベントリから取り出した小石に、増殖でコケを増やしてた?」

「ん? あー、多分だけど『増殖』と『コケ渡り』を3つくらい交互でセットして、『連閃』と並列制御で使って、必要な時に待機状態にしてたのを実行してたんだと思うぞ。ベスタ、合ってる?」

「あぁ、それで正解だ。……彼岸花は気付いたのか?」

「……うん、今さっき。ケイさんほどは、早くはないけど……」


 おー、彼岸花さんはどういう事をしてたか、気付いたんだな! まぁ自分達が戦ってる最中ではなかったから、リコリスさんやラジアータさんと同列に語るべきではないんだけど……それでもナイスだね!


「えー!? そんな手段、ありなの!?」

「……後から発動じゃなく、『半自動制御』で発動したまま待機状態にしておいたのか。確かにそれなら可能だが……あの動きをしながら思考操作でだと? ちっ、思っていた以上の実力か……」


 あー、うん。リコリスさんもラジアータさんも、思いっきり悔しそうな状態ですなー。まぁ気持ちは分からなくもないけど……もうエンの目の前まで来てるし、盛大に注目を浴びてる状態だから、水の操作を解除してもいいですかねー?

 途中から、周囲を飛んで見物してる人達が大量にいたから、今の状況は落ち着かないんだよなー!


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