第1456話 移籍を進める為に
アルが表面上……いや、実際に警戒もしてる気はする? まぁともかく、彼岸花さん達の事を警戒していると明言した上で、灰の群集への移籍が決定した。
「……って、ちょい待った。今は無所属だけど……元灰の群集で、再加入に制限がかかったりとかは……?」
「……私達は3人とも、結構前から無所属。だから、大丈夫」
「あ、そうなのか」
流石に今のは無用な心配だったか。まぁインクアイリーがどこの群集に所属してるか謎な部分だったけど、元灰の群集なら、いくらなんでもこんな形で加入をしに来たりはしないよね。
「参考までに、少し聞いていいかな?」
「……リアルの個人情報以外なら、答えられる範囲なら答えるよ」
「あはは、流石にそこは聞く気はないかな。えっと、彼岸花さん達はいつから無所属なの?」
「……赤の群集で騒動があった後、移籍が可能になってすぐだよ」
「え、そんなに前なのかな!? てっきり、赤の群集の共同体としてのインクアイリーが抜けた時かと思ったんだけど……」
「わっはっは! そう思われるのも無理はねぇが、俺らとしてもあの状況は居心地悪くてよ? それに……赤のサファリ同盟が表に出ていった中、仲良く一緒にって訳にもいかねぇだろ?」
「ちょい待った! 弥生さんとシュウさんへのリベンジをしに、モンエボを始めたんじゃ?」
なんだかこの言い方だと、赤のサファリ同盟が表に出る前からプレイしてたって事になるよな? え、でも『彼岸花』に関する名前自体がリベンジの為に名付けたみたいな事を言ってたし……どういう流れ?
「あー、それ? 赤のサファリ同盟が、モンエボの『ナチュラルポート』の馴染みの人で設立されてるからだよ。だから、オンライン版にいる可能性は高いと思って、ずーっと機会を狙ってたんだよねー! ……それをライブラリにいいように利用されたのは気に入らないけど!」
「……これも言っておくね。今回のライブラリの企みは潰す!」
「ライブラリとは直接の絡みがほぼなかったから、実感として甘く考えてたんだが……まさかあんな形でインクアイリーを放置するとは想定外過ぎてな」
「人伝てに伝言してきたけど、何が『乱入クエストでなら、弥生さんやシュウさんと戦う機会を作れますよ』だー! 最初の作戦より大規模に予定を狂わせて、他の連中が勝手に悪名持ちや無所属を唆しまくってくれちゃってさ! あんなの、彼岸花の計画にはなかったっての!」
「あー、そうなのか……」
どうも、この3人はあの競争クエストでの乱入の混乱状態を作り出したのには関わってない? あれ? 冗談抜きで、誰がどういう形で主導権を握って動いてたんだ?
「ほう? それは随分と興味深い内容だな。今の内部分裂で主導権を狙っている集団が複数いるとは聞いているが……その集団の素性は聞けるか?」
「……全員を把握してる訳じゃないけど、知ってる範囲でよければ出来るよ」
「なら、加入を済ませた後にその辺の話を聞かせてもらおうか」
おー、いいな、その情報! ベスタがそういう情報を逃す訳がないよな。内部の有力者だったからこそ、味方になる事で聞ける情報だしね。
「その為にもまずは仕留める必要があるが……結局、どこにリスポーン位置を設定している?」
「……ネス湖の下の『湖底森』だね」
いつかの、Lv上げをしに行ったあそこか!? 確か不動種がメインで木の分身体で襲ってくる場所だったよな。あと、地味に水浸しになってる場所でもあった気がする。へぇ、あんなとこにリスポーン位置を設定してるとはね。
「あそこか。……随分とまた、変わった場所に設置しているな? 便利な場所でもないだろうに……」
「Lv上げが目的の人か、スクショを撮るのが目的の人しか来ないからね! それも何度も繰り返してくる事は少ないから! あんまり目立ちたくないって人は、そういう場所にリスポーン位置を設定して、拠点代わりにしてたりするよ」
「彼岸花の2ndの不動種をそこに植えていてな。時々場所を変えはするが、まぁそこが俺らの拠点という訳だ」
「なるほど、そういう事か。木を隠すには森の中……とはいえ、森自体が変わり種の場所を選んだ訳か」
「……そうなるね」
これ、今まで俺らが行った事ある場所でも、色々と探してみれば誰かのリスポーン位置や植えてる不動種が見つかったりするのかも? いやまぁ、探してどうすんだって話だけど……。
「それで、リコリスとラジアータは彼岸花の2ndの不動種にリスポーン位置があるのは分かったが……彼岸花自身はどこだ? その近くにあるのか?」
「……うん。すぐ隣ではないけど、同じマップ内にはあるよ」
「了解だ。アルマース、悪いがネス湖まで迎えに行ってもらえないか? 俺も同行するが、乗せられるプレイヤーがいる方が移動が楽だからな」
「事情が事情だし、俺は構わんが……ケイ達はどうだ? もう23時を過ぎたぞ?」
「あー、マジだ……」
もういつも終わりにする時間帯になってきた!? 夕方も根本的に全員が遅れて大した事は出来てないし、eスポーツ勢の関係を探ったり、ギンを迎えに行ったり、オリガミさんと話しに行ったり、それがコイコクさん達と仲介だったり、コイコクさん達を灰の群集に迎え入れる方向で動いたり……何もしてない訳じゃないけど、自分達の育成、何一つ出来てねぇ!
「はい! ケイさん、迎えにいくまではやりませんか! ここで中途半端にするのは嫌なのさー!」
「……まぁそれもそうだよな」
今はまだ23時を少し過ぎた程度だ。成熟体の移動速度なら、ネス湖までの往復にそれほど時間はかからないはず。日付が変わるまでには、何とか終わるだろ!
「サヤとヨッシも、それでいいか? 多分、行き来だけならそんなに時間はかからないと思うけど……」
「問題ないかな! アルだけに押しつけられないよ!」
「私もサヤに同意だね。無責任は嫌だしさ」
「おし、なら決定だな。それじゃサクッと仕留めて、迎えに行きますか」
「……ありがとう」
「どういたしましてだな!」
こうして彼岸花さんにお礼を言われるのは何とも不思議な気分ですなー。まぁベスタだけに責任を負わせないと決めた以上、23時を過ぎた程度でアルとベスタの2人だけに迎えを任せる気もしないしね。
「話はまとまったな。ケイ、彼岸花とリコリスの2人を手早く仕留めてしまえ。俺はラジアータをやる」
「ほいよっと!」
「おっと、俺は別枠か?」
「その方が手っ取り早いだろう。ケイのコケと違って、守る為にヤドカリの殻の内側に入れたコケが本体ならな」
「……ま、それもそうだな。今は出しておくが……基本的には内緒で頼むぜ?」
「ふん、隠す気自体、皆無なクセによく言う」
「わっはっは! この程度の事には、簡単に引っ掛かっちゃくれねぇか!」
そういや、競争クエストの時に戦った時もわざわざコケを見せてきてたもんなー。弱点を隠す為だと不自然な行動だし、守るにしても教える理由は皆無。
それをわざわざ教える理由なんてのは、弱点を教える事でそこに意識を向けさせる心理戦だろうね。なんなら、見せたコケ自体がフェイクなんて可能性もあるのかも?
「普段はコケの核は奥の奥に隠しちゃいるが……今はそんな真似はしてねぇ。サクッと頼むぜ」
「では、やるぞ」
「先に行って待ってるぞ、彼岸花、リコリス」
「はーい! すぐ行くからねー!」
「……うん」
ベスタがラジアータさんのヤドカリの表面に移動させたコケを削り落とせば、あっという間にポリゴンとなって砕け散っていった。支配種と同調種の最大の弱点なんだよな、この倒され方。まぁそれ相応の性能にはなってるけどさ。
それはそれとして……俺がやるべき事をやっていきますか!
<行動値10と魔力値20消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 116/126(上限値使用:1): 魔力値 294/314
水流の操作にしようか悩んだけど、ちょっと思いついた事があるから、それをやってみよう。
<行動値を2消費して『水の操作Lv10』を発動します> 行動値 115/126(上限値使用:1)
さーて、大量の水で包み込んで――
「……ごふっ!」
「ケイさん? 彼岸花は窒息で死ぬけど、私は水属性持ちだから、無理だよ?」
「あー、分かってる。ちょっと思いっきり振るけど、そこは勢いを付ける為だから勘弁な」
「……え? 空洞?」
「わっ!? え、何!?」
「おらよっと!」
「「っ!?」」
彼岸花さんとリコリスさんを巨大な水の塊の中に作り出した空洞の中に入れて、その周囲の水の反発力を高めて、中で跳ねさせまくる!
「わっ!? わっ!? わわっ!? これ!? こんな使い方!? するの!?」
「……あれ? 上……どっち? どんどん……速くなって……位置が……分からない?」
わっはっは! サヤと対戦した時に使った手段を、そのまま攻撃に転用! この2人の反応を見てると、サヤが自分の勢いに転化しようとしてたのってかなり無茶な挙動だったんだな。
「さてと、結構な勢いになってきたし、そろそろトドメに行くぞ」
という事で、真上に方向を誘導してから、最後に強烈な跳ね返りで加速させて……水の操作を解除して、2人を地面へ叩きつける! まぁ前回の時と同じ、元湖のこの場所でってのは、何とも微妙な因果ですなー。
「……っ!? この速度から、落下ダメージ!?」
「あはは、同じ水使いなのに、発想で負けちゃってるねー! でもまぁ、だからこそ面白――」
リコリスさんが最後まで言い切る前に、地面に激突してHPは全て消し飛んだ。今の手段、攻撃として使えそうだね。でも、本気で対処する気があれば、あの程度は破られるからなー。
「今のは、サヤと対戦していた時のヤツだな?」
「アル、正解! でも、剥奪されれば意味ないし、アブソーブ・アクアでも吸収は出来るからなー。ぶっちゃけ、実用性は微妙かも……」
「いや、そうでもないだろ。あの速度で跳ねられまくって、平然と対処出来る相手は限られてくる……いや、ベスタさんなら、更にそれを利用するか?」
「……そうだな。敵と混ぜて放り込んでくれるとありがたいかもしれん。意識を2方向に散らした上で、自身の加速に活かせられそうだからな」
「あー、なるほど。そういう使い方か!」
確かにベスタやサヤくらいの力量なら、それは十分可能だよな。相手にとっては、完全に不利でしかない水のリングが完成する?
「まぁ、そういう話は移動しながらだ。一応、俺の方でPTは組んでおいたから正確な合流場所は移動しながら決めていくぞ」
「PTって、いつの間に!? え……なんでその状態で、ベスタがラジアータさんを倒せてんの?」
「ケイ達が相談している間にだ。倒した件についてはラジアータだけPTから外していただけの話だし、向こうで合流はするからな」
「あー、なるほど」
そりゃまぁアルの警戒云々の話はあったけど、その間にPTを組んでたのか。俺らが聞いてなかっただけで、ベスタはもうどこへ迎えにいけばいいかを既に聞いてたのかも?
「いや、単純に上手く黎明の地に戻れたかの確認の為だが……まぁ結果的には、迎えに行く状況としては都合がよくなったな」
「……そういう狙いかー」
また思いっきり声に出てたけど……ギンが言うには、これは不具合だって話だったよな! 今日、ログアウトしたら、その辺のフィードバックを忘れずに送っとこう! ……その後、どうりゃいいのかはよく分からんけど!
「彼岸花、そちらはどうだ? ちゃんと黎明の地で復活は出来たか?」
さてと、ベスタが彼岸花さん達の現状を確認中だから、この間に俺らも出来る事をやっていきますか!
「アル、今のうちに移動しちまうぞ!」
「だな。ベスタさん、乗ってくれ。まずはミズキのとこまで移動する」
「あぁ、任せる。……いや、今のはこっちの話だ。問題なく全員がそっちで復活出来たんだな? なら、とりあえずそっちの3人で合流して、ネス湖の湖畔まで――」
サッとベスタも跳び乗ったし、俺らは元々アルに乗ったままだから、これですぐにでも出発は出来る――
「送迎船『アルマース号』、出船なのさー!」
「……一応、これは送迎になるのかな?」
「迎えに行って、送り届けるんだし、まぁそうかも?」
「まぁ送迎は送迎か。予想外の相手ではあるけどな」
「だよなー。まさか、あの3人を迎えに行くなんて事になるとは思ってなかったぞ」
そもそも今日は、予想外の事態が多過ぎる! 全然、キャラの育成は出来てないけど、それ以外の部分が大きく動き過ぎだから!
まぁとりあえず移動が始まったから、このままネス湖まで移動していくとして……。
「今日だけで、コイコクさん達と彼岸花さん達が灰の群集入りで、羅刹達も区切りが付いたら加入って……状況が変わり過ぎじゃね?」
「……ケイのリア友が来たのも想定外だな。結局、レナさんが立ち上げる共同体に入るって事になったが……グリーズ・リベルテに新メンバーの加入ってのは、考えなくてよくなったのか?」
「あー、それは……どうなんだ?」
ギンがこんなにあっという間に他の共同体への加入が決まるとは思ってなかったんだけど……そうなったからには、もう俺らのとこへの加入は考えなくてもいい?
「……ギンさんがどうかは置いておいて、新規メンバーについては考えておいてもいいんじゃないかな?」
「今後、そういう人が他にも出てくる可能性もあるし、相談はしておいた方がいいかもね」
「なので、言ってた通り、考える時間を下さい!」
「ほいよっと。まぁ時間は勝手に出来た感じだし、急がず考えてくれー」
「はーい!」
実際にギン以外に新規メンバーが入る可能性は、今のところ皆無な気はするけど……何かのキッカケでそういう機会が出てくるかもしれないしな。
今回は俺の友達だったけど、サヤ達に共通の友達が新たに出来る可能性もあるし、アルが連れてくる可能性だってある。そういう時にどうするかは、考えておいて損はないだろ。
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