第1448話 手段の決定
eスポーツ勢にも色々といるのは分かったし、普通にゲームをゲームとして楽しんでいるのを見下してくる層は、運営に対処してもらう方向で話は決定。
そういう問題を起こしそうではない、それぞれの群集の中に用意する共同体に乗っかってきそうな人達は、手段次第でなんとかなりそうではある。
問題は、その共同体のリーダーを誰がやるかだ。それぞれの群集で最低3つの共同体が必要なんだし……誰でもいいって訳じゃないから、相当厄介だぞ!?
「よーし! 灰の群集では、その役目はわたしが引き受けよっか!」
「え、レナさんがやるの!?」
ちょ!? まさかのレナさんが立候補!? いや、確かにどこの共同体にも所属してないし、まとめ役を行える人ではあるし……あー、でも教えるのは全然駄目だったような気もする? いや、そこは他の人の手を借りてもいいのか。
「およ? ハーレ、何か問題でもあった?」
「正直、ここで立候補してくるとは思わなかったのです!」
「あはは、流石にずーっとやり続ける気はないけどね。でも、半端な事をして失敗するのも嫌だしさ」
「確かにそれはそうなのさー!」
ふむふむ、まぁそれはその通りだな。eスポーツ勢の全体の強さは不明だけど、弱い人よりは強い人が多いのは間違いないし、良くも悪くも今回の件では向上心はあっての事だろうしね。
それを抑えて流れを誘導しようとしてるんだから、半端なやり方では簡単に失敗してしまう。だからこそのレナさんの立候補か。……あわよくば、そのまま灰の群集に取り込む気でいるような気もするね?
「……まぁレナがそれでいいなら、問題はないか。ラック、レナだけでは大変な時もあるだろうから、灰のサファリ同盟から補助を頼めるか?」
「うん、それは問題ないよ! 初心者講座は元々やってるんだし……あ、ギンさん、どういう部分が知りたいかってのは、教えてもらえる?」
「……あー、まぁそれは俺が実際に初心者講座を受けてみての話だな」
「あ、確かにそれはそうだね。んー、その辺は実際にやりながら聞いていく感じでいい?」
「あぁ、それで構わんぞ」
ふむふむ、ここでもギンがeスポーツ勢の貴重なサンプルになってくる……いや、ギンだけじゃ不足じゃね?
「ラックさん、待った! ギンはオフライン版の経験者だから、ガチの初心者とは別で考えた方がいい!」
「あ、そっか! オフライン版の経験の有無は大きいもんね。んー、オフライン版の経験者は、ほぼ初心者講座に来る事はないんだけど……eスポーツ勢だと元々のプレイヤースキルはある程度あるだろうから、勝手が違ってくる? あ、そもそも聞いてくる事自体があるのかが分かんない!? うー、馴染みがないから、どうやったらいいかがサッパリかも……」
……しまった。今のは必要な内容だとは思ったけど、予想外にラックさんが悩み始めてしまってる!? 困らせるつもりはなかったんだけど、そりゃ確かに困るよなー!?
「『自分で来たのだから、勝手に自分で覚えさせればいい』……と突き放したいところですが、まぁ誘導しようと狙う以上はそういう訳にもいきませんね。ギンさん、協力してもらえそうな方に心当たりはありませんか? 例えば、同じ部活の方ですとか……」
「あー、まぁ部活内で連れてこれそうなのはいるっちゃいるな。何人かは興味を示してたし、うちの部長や顧問も知ってるから……やり方によっちゃ、部費から夏休み中のプレイ料金も出せるかもしれん」
「……流石は部活動ですね。特訓になるのであれば、月額料金すら部費から出ますか」
「うっわ、マジか! 俺もそういう金を出してもらいてぇ!」
「フラム、今はそういう話ではありませんからね?」
「……へいへい。分かってるっての、水月!」
うるさいフラムだな、おい! でもまぁ全国まで行くようなeスポーツ部だからこそ、そういう事も出来るだろうね。
てか、そういう流れだと……夏合宿の舞台がモンエボになりそうな流れだな!? なんか不思議な話になってきたけど、そうなると灰のサファリ同盟が外部指導員?
「あー、色々と手段は考えられるが、流石に確約は出来ねぇな。ちょっとその辺は時間をもらっていいか?」
「えぇ、構いませんよ。今日はあくまで、基本方針を決めておきたいだけですし……私達の方も、レナさんのように即決は出来ませんので。赤の群集もそうでしょう?」
「……確かにな。ウィル、すぐに対応出来そうな人に心当たりはあるか?」
「……いや、いねぇな。最悪、『リバイバル』から誰かが出向する形でやるしかないかもしれん」
「やっぱりそうなるか……」
うーん、そりゃまぁ赤の群集も青の群集も、この場で即断出来るような内容ではないか。すぐに引き受けると言えたレナさんが特殊なだけだし……。
「そもそも、最初の共同体の結成はどうするのかな? 最低でも3人は必要だよね?」
「およ? あー、そういえばそっか。んー、灰の群集はわたしとギンさんでやるとしても……それでも1人足りない状態になっちゃうかー」
「あぅ!? 人数集めの問題もあったのさー!?」
うーん、サヤの言う通り、ここは冗談抜きで問題だな。移籍してきたばっかの人では結成メンバーに出来なかったはずだから、今無所属に流入してきている人を連れてくるのも難しいか。うーん、かといって完全な新規のeスポーツ勢には、伝手がなければ荷が重過ぎ――
「ケイ! 灰の群集ならアイルさんを入れたらいいんじゃね!?」
「……えー」
「すげぇ嫌そうだな!?」
「……実際、嫌だしなー」
フラムめ、何を言い出すかと思えば、あのアイルさんをこの重要な状況での役割とか任せたくないんだけど……。新規で立ち上げた部活の部長をしてるくらいの行動力はあるし、それなりにモンエボはやってる感じではあるし、おそらくオフライン版は未経験。でも、アイルさんだしなぁ……。
「あ、そっか。アイルさんもケイさんの同級生だったもんね。およ? そういえばあの時の仲裁は強引な部活の勧誘だと思ってたのを仲裁したんだし……なるほど、アイルさんもそっちの人か!」
あー、そういやアイルさんと揉めてた時、仲裁してくれたのってレナさんだったっけ。なんか妙なとこで縁が繋がってきたな!?
「んー、わたしとしてはフラムさんのその案はありな気がしてきたけど……ケイさん的には無し?」
「……レナさんは事情を知ってるんだし、俺が避けたい理由は分かるよな?」
「うん、まぁね。でも、まとめ役以外でeスポーツ関係者は下手に共同体の中に入れられないよ? 流石にそこはダイクを引っ張り込む気もないしさ」
「……まぁそりゃそうなんだけどさ」
てか、いつもはダイクさんの意思を無視して引っ張り回してるのに、今回の件ではそうはしないつもりなのか。……レナさん、思った以上に今回の件を警戒してる? あー、だからこそ、少なからず面識がある人の方がいいのか。
「……アイル……アイル? どこかで聞いた名前ですね? 斬雨、覚えはありませんか?」
「……どっかで聞いた覚えはあるが、パッと出てこねぇな?」
「ホホウ! アイルという方なら、競争クエストの最後の霧の森で、成長体や未成体の人達を率いていた方なので!」
「っ!? あの時の実行者でしたか! ……まさか、ケイさんの同級生だったとは!?」
あー、うん。そういう事もあったけど、それは俺と同級生である事は全く無関係だけどね! あ、そうだ。競争クエスト云々で思い出した。
「ジェイさん、ちょっと確認したいんだけど……スミって、実はeスポーツ勢だったりしない?」
「……スミがですか? いえ、リアルでの話を聞いた事はありませんが……何故、そのような疑問を?」
「夕方に色々と探ってた時、出てきた可能性でさ。……それこそ今名前が出たアイルさんみたいに、今回の一件より前から来てる人もいるんじゃないかなーと?」
「それ、わたしと話してたやつだね! eスポーツでもアマチュア勢もいるから、学生組が離れてた時に伸びてきてる人はそういう可能性がありそうだと睨んでるんだけどなー?」
「……確かに、可能性としてはありますね。スミは時々ログインしていない事もありますから……なるほど、その方向から初期メンバーを募るのもありですか」
既にモンエボに馴染んでいる人の中にeスポーツ勢の人がいれば、設立する共同体の初期メンバーになり得るよな!
アイルさんがその候補に挙がっているのは、俺的には非常に微妙な心境だけども! でも、完全に個人的な理由過ぎるから……レナさんが問題ないと判断するなら、俺が邪魔する訳にもいかないか。
「ルアーさん、ウィルさん、赤の群集にそのような人の心当たりはありますか? 今回の件は探り合いをする気はないので、青の群集には何人かは心当たりがあるとは言っておきますよ」
「……後から伸びてきた人達か。まぁそりゃそういう人は何人か心当たりはあるが……全員が全員、eスポーツ関係とは限らないだろ?」
「そうだとしても、当たってみる価値はあると思うぜ、ルアー? 場合によったら、新しく設立する共同体のリーダーも任せられるかもしれないしな」
「……あー、そういう利点もあるのか」
ふむふむ、なんだかんだでルアーやウィルさんにも心当たりはあるんだね。……スミみたいなのが、赤の群集にもいるのか。どういう人なのかは知らないけど、それは俺が直接遭遇してないだけなんだろうなー。
「あー、その設立する共同体のリーダーは、eスポーツ勢ではない人に限定してもらう事は可能か? これに関しては、ただの我が儘みたいなもんなんだが……」
「……ギンさん、それはどういう理由……いえ、同じeスポーツ勢だと揉める可能性があるからですか?」
「まぁそうなる。所属してるチームによっても違ってくるんだが……どうしても上下関係に厳しいチームもあるんでな」
うっわ、面倒くさ! あー、でもeスポーツは運動部に近い側面もあるだろうし、上下関係にうるさい部もあるのかも。アマチュア勢はその辺は緩い……かどうか、全然知らんわ! まぁ下手に内部でのトラブルが起きないようにするには、リーダーは無関係な方がいいのかもね。
「……理由は分かりました。ですが、そんな面倒事を上手く引き受けてくれる方がいるかどうかが問題ですね……。場合によっては、私自身がやる事も視野に入れた方がいいですか」
「おいおい、ジェイ? そりゃ、本気か?」
「幸い、私は共同体には所属していませんしね。それに、言い出しっぺが責任を丸投げというのは……無責任が過ぎるでしょう? 斬雨も一緒にどうです?」
「……あー、まぁそうなった時なら付き合ってやるよ!」
「えぇ、ではその時はお願いしますね」
ちょ!? 青の群集は、ジェイさんと斬雨さんが2人でリーダーをやる可能性があるのか!? いやまぁ不適格って事はないんだろうけど……なんか、思った以上に大事になってきてない?
「ウィルさん、必要となれば僕が出向こうかい?」
「……シュウさん、マジで言ってるのか? 赤のサファリ同盟はいいのか?」
「赤のサファリ同盟は弥生がリーダーだしね。弥生、任せても大丈夫だろう?」
「別に行動自体は一緒に出来るし、問題ないよ! むしろ、ライブラリさんの思惑通りに状況が動くのは避けないと!」
「……縁があるからこそ、見過ごせないんだな?」
「そういう事になるね。まぁ僕らが出ていくのも、観察対象として面白がっている可能性もあるけど……ここまでみんなが大々的に動くのなら、傍観者ではいられないさ」
「そういう事! レナも、思いっきり動くみたいだしねー!」
「およ? 弥生、わたしが動くのを気にしてるんだ?」
「だって、ファンサイトの件を持ち出してくるとは思ってなかったしさ。レナ、騒動の収拾よりも、eスポーツ勢にも楽しんでもらえるようにとか考えてるでしょ?」
「さーて、何の事かなー?」
レナさん、認めてはいないけど、地味にとんでもない事を考えてるっぽい!? 俺は変にトラブルが起きないようにって方向で考えてたけど……そっか、そうだよな。
動機はなんであれ、折角モンエボにやってきてるんだから……特訓の場としてだけでなく、普通にゲームとしても楽しんでもらいたいよな。別にeスポーツの特訓そのものを否定する気はないんだし、対立するんじゃなくて、良い形で共存出来るのが理想か。
「まだ色々と考える事はあるだろうが、とりあえずそれぞれの群集で必要になるリーダーは確保出来そうだな? これ以上は今この場で決める事は出来なさそうだが……」
「ベスタさんの言う通り、決められるのはここまでですね。今日のところは一旦お開きにして、ここから先は各群集で情報を集めてからで構いませんか?」
「あぁ、灰の群集はそれで構わん」
「赤の群集もそれでいい」
「それでは、これで解散としましょうか。スリム、赤の群集の皆さんのお見送りを。私と斬雨は、灰の群集の皆さんを送ってきますので」
「ホホウ! 了解なので!」
ふぅ……とりあえず、今決められる範囲の事は確定だね。まぁレナさんが灰の群集に出来るeスポーツ用の共同体のリーダーなのは確定だけど、赤の群集と青の群集はまだ変わる可能性はあるけどなー。
それでも目星は付いたし、一区切りだね! ここからは実際に共同体を設立する為のメンバー集めと、Webサイトの作成か。……俺の出来る事、もうあんまりないかもね?
「さて、それでは安全圏までお送りします」
「ほいよっと。それにしても……ジェイさん、意外と乗り気?」
「読めない動きは、ケイさんだけで十分ですからね」
「それ、どういう意味!?」
「そのままの意味です。今の混沌とした流れを制御出来る可能性があって、上手くいけば群集の強化にも繋がる可能性もあるのに、拒む理由がありますか?」
「……ですよねー」
うん、ジェイさんはやっぱりジェイさんだった。レナさんみたいにeスポーツ勢を楽しませたいとかじゃなく、純粋に青の群集の戦力として取り込む気だ!?
まぁそういう理由だからこそ、変な手抜きはしないだろうなー。変な悪影響が出ないようにする為に共同でのこの話を持ち掛けたけど……これって、どこの群集が1番eスポーツ勢を取り込んで強化に繋げるかって話になりかけてません? そこまで考える前に、とりあえず色んな準備を済ませないと駄目だけどさ。
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