第1444話 共同での対抗策
ラックさんの思いついた、ライブラリの起こした件への対抗策である、外部サイトでの行動の誘導。それに青の群集が乗ってきた!
今すぐに実行が可能な手段ではないけど、だからこそ早い段階で協力を得られるかどうかをハッキリさせるのが大事だしね。
「その話、赤の群集には……まだですよね? 私がフレンドコールしたタイミングがタイミングですし」
「丁度、俺からフレンドコールしようとしてたタイミングだしなー。まぁ赤の群集には、今ベスタが連絡してくれているとこだぞ」
「……先ほど『任せた』と言っていたのは、その件ですか?」
「そうなるなー!」
てか、しっかりと俺とベスタの会話は聞いてたんだな。まぁ俺の声はそのままフレンドコールで筒抜けなんだし、そんな状況なら俺でも聞いておくけどさ。
「……ふむ、すぐに動ける話でもなさそうですね? 詳細を決めるのは、後日、改めてという事になりますか?」
「まぁそうなるんだけど……都合って大丈夫?」
「……現時点では何とも言えませんね。明日の夜からは何かあるようですし、その内容次第でしょうか」
「ですよねー!」
うーん、今日はなんか色々と振り回されっぱなしでろくに何も出来てないけど、何もイベントがない日だったから問題なかった部分もあるもんな。
でも、明日の夜には何かあると公式から告知されている! ……それを放り出して、対策会議ってのも色々と台無しですよねー。
「ケイさん、今日のこれからは時間は大丈夫ですか? もし大丈夫なのであれば、共通認識くらいは今日のうちに作っておきたいのですが……」
「あー、ちょい待って。俺だけじゃ決めかねる内容だから、ちょっと確認してくる。あ、その場合って、どこで集まる?」
「……理由が理由ですし、青の群集の占有のサバンナエリアの出入り許可を出しましょうか」
「あ、そういう形か! 了解っと!」
新エリア側の占有エリアなら、占有してないエリアでも安全圏という近い場所はあるからね。占有してる群集から許可さえ出るなら、集まりやすい場所だよな!
「ベスタ、赤の群集の方はどんな感じ?」
「……あぁ、すまん。ウィル、少しケイが呼んでいるから待っていてくれ。赤の群集は、ウィルから了承は得られたぞ。ただ、明日の夜からの事で懸念が出ているが……そっちもか?」
「まぁなー。この後、青の群集のサバンナに立ち入り許可を出すから、そこで話せないかってさ」
「……なるほど。今日中に、軽くでいいから決めておきたい訳だな?」
「そうなるなー。ちょっとウィルさんに都合を聞いてもらえない?」
「あぁ、それは聞いておこう。……待たせたな、ウィル。1つ確認なんだが――」
よし、とりあえずこれで少し待ち……でもないな。聞くべき相手は他にもいるし、PTから抜いておかなくてセーフ!
「ギン、聞こえるか?」
「ん? ケイ、どうした?」
「今日、23時までなら大丈夫だよな?」
「まぁ最悪、日付が変わるまでなら大丈夫だが……何か必要な事でも出来たか?」
「そんなとこ! ラックさんにも伝えておいて欲しいんだけど、さっきの案は赤の群集と青の群集の両方が乗ってきた。その上で、明日からイベントがあるから、今のうちに話しておきたいって内容!」
「……ほう? 明日から、イベントがあるのか!」
「……そこに食いつくのはいいんだけど、ラックさんに伝言を頼めない?」
「あぁ、悪い、悪い! ラックさん、ケイから伝言だ! どうもサイトの件、他の群集が今日のうちに話したいらしいぜ? おう、おう。あー、ケイ、話すのはいいが、場所はどこだって?」
「場所は、青の群集のサバンナって言えば伝わる!」
「……青の群集のサバンナだな? なんつーか、微妙に気になる言い方……あー、ケイがそう言ってたぜ? なんか、妙にテンション上がってねぇか!?」
ん? ラックさん、テンション上がってるんだ? あー、そうか。他の群集の占有エリアに入る機会って、早々ないもんな。サファリ系プレイヤーのラックさんなら、ルストさん程ではなくても、それなりに関心がある――
「ケイさん、ケイさん! 青の群集のサバンナに入れるの!?」
「……ハーレさんも食いついてくるんかい! まぁジェイさんが立ち入り許可を出してくれるみたいだけど……そこまでテンションが上がる事か?」
「上がる事なのです! 灰のサファリ同盟で、これだけ魔改造してるんだよ!?」
「あー……」
なるほど、青の群集も同じような事をしていても不思議じゃない訳か。いや、それ以上の何かを仕込んでいても不思議じゃないし、見る価値自体は確かにある。あるけど……絶対に、それが見える位置には連れていかないだろ!
……あ、逆か。どこかを意図的に避ける様子があれば、そこに何かが隠れている可能性も――
「……立ち入りは許可しますが、長々と偵察はさせませんからね?」
「……ですよねー」
思いっきり釘を刺されてるんですけど……まぁ本来の目的から外れてしまったら意味がないもんな! うん、その辺は自重で!
「ケイ、俺もラックさんも時間的には問題ねぇ! そう伝えといてくれ!」
「ほいよっと。みんなは、時間は大丈夫か?」
「もう今日はこの件だけで終わりそうだが、まぁ1日くらいはそれでもいいだろ」
「明日からのイベントに備えて、今日の内に出来る事は終わらせるかな!」
「コイコクさんの方の話は大体済んだ……というか、特に大きな調整は必要なさそうだし、こっちは大丈夫だよ」
「そういう事なのです!」
「ほいよっと!」
コイコクさん達に必要な件の調整が終わったというよりは、ジェイさんからの提案で不要になったって部分が大きそうだよな。ベスタがウィルさんと話している中で、トレード維持の話も進めてくれたんだろうね。
「ケイ、ウィルの方も問題ないそうだ。むしろ、早い方がいいと言ってるくらいだぞ」
「おし、赤の群集も問題なしだな! ジェイさん、すぐにでも行けそうだぞ」
「了解しました。それでは、灰の群集と赤の群集のそれぞれの安全圏の前でお待ち下さい。案内役を送りますので、そこから合流としましょう。人数は……まぁ極端に多過ぎなければ、何名でも構いませんよ」
「ほいよっと。ベスタ、ウィルさんに伝言を頼む。案内役が来るから、安全圏の前で待機しててくれだと。人数は、多過ぎなければ特に制限もなし」
「あぁ、了解だ。ウィル、常識の範囲内なら人数に制限なし、その上でサバンナの安全圏で案内役が来るまで待機だ。構わないな? ……よし、問題ないそうだ」
「了解! それじゃ、フレンドコールを切ってすぐに向かうわ!」
「えぇ、了解しました。お待ちしておりますよ」
という事で、フレンドコールはここまで! ふぅ、複数の群集との話し合いが必要な時のこの連絡、すげぇ面倒くさい! まぁ仕様上、フレンドコールは1対1でしか話せないんだから仕方ないけどさー。
「さてと……サバンナに向かうとして、ベスタはどうする?」
「……一応、一緒に行っておくか。ラックだけに行かせると、誰が作るかが明白だからな」
「あー、それは確かに……」
「そういう事だから、レナも来い」
「うん、まぁそれはそうだろうねー!」
「って、レナさん!? いつの間に!?」
「およ? 結構前からいたけど、気付いてなかったんだ? まぁフレンドコール中だったし、仕方ないかも?」
「……ですよねー」
普通にアルの木の上から飛び降りてきたレナさんだけど、地面にいたベスタに向かって話してたら、そりゃ見落とすって! 関係なさそうな会話は、ほぼ聞き流してたし!
って、そんな誰に言ってるかも分からん言い訳はどうでもいいや。ベスタの言う通り、誰がオフライン版のファンサイトの管理人なのかを特定出来ないようにする処置は必要なのは間違いないしね。
片方は確定情報じゃないけど、2人いるって事にもなりそうな状況でもあるけども! ラックさんもレナさんも、2人ともが重要な立ち位置になりそうだな。まぁそれはそれでいいとして……。
「ギン、そっちへ迎えに行った方がいいか?」
「いや、問題ねぇな。ラックさんが案内してくれるそうだから、現地で合流って事になりそうだ」
「……なるほど。それじゃ、現地で合流で!」
「おう!」
ラックさんと富岳さんが一緒にいるんだから、まぁ初めて行く場所になっても問題ないか。結構な大人数にはなるけど……極端に多過ぎるって程でもないだろ。
えーと、コイコクさんは……あれ? 姿が見えない……あ、灰のサファリ同盟の人達とトンネルの奥に入っていく様子が見えたし、そっちはもう俺らの手から離れたっぽいな。うん、まぁそれはよかったかな?
「ベスタさん、連結PTは組んでおく?」
「いや、今回は必要ないだろう。内緒話には使えんしな」
「あ、それはそうかも。内緒話をする時は、情報共有板辺り?」
「まぁそうなる。幸い、匿名が匿名になってないメンバーが多いしな」
「……あー、確かに」
俺もレナさんもベスタも、ほぼ意味がない状態だもんなー。うん、このメンバーで限っていえば、特に支障はないか。
サヤ達に表に出せない疑問があれば、共同体のチャットで言ってもらえれば、俺が代表で聞けばいいしね。まぁそこまでの疑問が出るとも思えないけどさ。
「とりあえず、移動しねぇか? ここで長々と話してても仕方ないだろ」
「だなー。おし! それじゃ灰の群集のサバンナへ……サバンナって、どこから転移だっけ?」
「……確か、草原エリアだったかな?」
「あ、そっか。占有エリアじゃないから、どこからでも転移出来る訳じゃないもんね」
「それは仕方ないのです! まずは草原エリアに向かうのさー」
「って事で、アル、よろしく!」
「ま、いつもの事か。ベスタさんとレナさんも乗っていくか?」
「そうだな。そうさせてもらうか」
「もちろん! まぁもう乗ってるけど!」
手早くベスタが乗ってきたし、既にレナさんも乗っている状態。いつの間にやらミズキから少し離れているけど、まぁそれほど時間はかからないだろ。
「それじゃ、草原エリアに向けて出発!」
「「「「おー!」」」」
今回の件は共通の問題に協力して対処しようって話だから変に探り合いは発生しないとは思うけど……どうなる事やら?
◇ ◇ ◇
<『始まりの草原・灰の群集エリア3』から『ワンドステップ・灰の群集の安全圏』に移動しました>
草原エリアを経由して、サバンナの安全圏までやってきたけど……ザッと見た感じでは、荒野よりは草花があるけど、土の割合の方が多めの殺風景な草原だな。ふむ、あんまり面白味はない様子?
それに、ここのエリア名は『ワンドステップ』ねぇ? これ、どういう意味だ? いまいちよく分からないし、こういう時は……。
「アル、エリア名の解説をよろしく!」
「いきなりぶん投げてくるな!? あー、でもこりゃ……どういう意味合いだ? ワンドをそのまま考えるなら……杖か? でも、ステップとどう繋がる? 歩調とか足取りじゃ……妙な意味合いになるよな?」
「……昇降口の踏み台は、どう考えても違うよね? 段階の意味かな?」
「サヤさん、アルマースさん、ここのは多分その『step』じゃないよ? 草原での意味の『steppe』だね」
「そっちか、レナさん! そうなると……ワンドは何かの比喩か?」
「何かの比喩……あっ! ここって、バオバブの木が植ってるって話じゃなかった?」
「あっ! ヨッシ、多分それかな! バオバブの木を杖に見立ててる可能性がありそう!」
「……なるほど、杖の植わる草原って意味合いか。ケイ、これでいいか?」
「バッチリだな!」
いやー、ちょっと手の込んだエリア名になってますなー。何気にここのサバンナって来た事はないけど……どういう光景なのか、気になってきた。エリア名の由来になるような独特な景色なんだろうね。
「よーし、到着! ここが最新のエリアね!」
「へぇ? こりゃまた随分と殺風景……うおっ!? 骨だけの……カエルだな? オンライン版にはスケルトンとかいるのかよ!」
「その手の種族は、割と最近出てきたばかりだけどな」
おー、ギン達も来たみたいだね。富岳さんは来るかどうかが分からなかったけど、どうやら一緒に来たみたいですなー。
ここの妨害ボスは、骨だけのカエルだったか。スケルトンとだけは聞いてた気がするけど、種族までは知らなかったよ。まぁそのうち機会があれば、ここのボスも倒さないと――
「……なぁ、ケイ?」
「どうかしたか、ギン?」
「なんか、どんどん大事になってねぇか?」
「まぁ間違いなくなってるな」
「その割には平然としてるな!?」
「別に初めて会う面子でもないしなー。駆け引きが不要そうな分だけ、いつもより気楽だけど?」
「……色々聞いたが、想像以上に無茶苦茶やってんな、おい」
「そう言われても、どうしろと……」
色々とやってる自覚はあるけど、その時に必要な事をしただけの話だしね。それに今回の件は俺が発端じゃないし、変な事にならないように対策を講じてるだけであって……。
「あまり時間に余裕があるとは言えんから、雑談は後にしろ。手早く合流するぞ」
「ほいよっと! ギン、しっかりと案は出してもらうぞ!」
「分かってるっての! その為にここまで来てるんだからな!」
このメンバーの中では明らかにギンだけが浮く事にはなるけど……それも必要あっての事だしね。まぁギンは人見知りはしないし、特に心配は必要ないだろ!
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