第1439話 草原エリアへ向かって
コイコクさん達がコイに切り替えて、色とりどりの様子で川を泳いでいる。全員の移動の準備が出来たみたいだし、俺の方も準備していきますか!
<行動値10と魔力値20消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 116/126(上限値使用:1): 魔力値 294/314
水のカーペットは待ってる間に解除しておいたから、これで通常発動を開始! アルのクジラや木の、更に上空で生成!
<行動値を2消費して『水の操作Lv10』を発動します> 行動値 115/126(上限値使用:1)
生成した水が落ちてくる前に、大量の水を制御! ……相変わらず、凄まじい量の水だな。
まぁそれはいいとして……これ、灰の群集以外の人が入っても大丈夫なのか? 静止させた水そのものでは火属性以外にはダメージ判定は出ないし、コイばかりだから窒息にもならない……って、ちょっと待った。
「コイコクさん、確か火属性って言ってたよな? 水の中って、大丈夫なのか?」
「あー、プレイヤーの誰かの判定が入ってない天然の水ならギリギリセーフだな! 他の群集の人が生成した水や操作した水はアウトだぜ! まぁケイさんの場合は同じ群集だから、セーフだけどよ!」
「……なるほど、そういう判定か。まぁ大丈夫ならいいけど……魚として、その状態ってどうなんだ?」
「わっはっは! まぁメインで使ってる種族じゃねぇしな、このコイ!」
「……へ? え、でも1stの表記だよな?」
「元の1stは消して、2ndだったコイが1stにズレただけなんだよ! メインは2ndのサルだぜ?」
「あー、なるほど。そういう流れか!」
そういや、2ndを作ってからなら1stは消せるって仕様もあったな。その時に順番が変わるともなってたっけ。名前が名前だから、てっきりメインがコイなのかと思ったけど、まさかのパターンだったね。
「って、俺の事はいいよな!? あんまり時間かけても仕方ねぇし、準備が出来次第、出発しようぜ!」
「それもそうだなー。次々と水の中に入って盛大に泳いでるし……全員が入ったら出発するか」
なんかちょいちょい竜が混ざってるのは、そこの滝を登ってから飛び込んでた人が結構いたからだろうね。どう意味があるのか全く分からない変質進化だけど……思いっきり活用はしてますなー。
てか、ハーレさんが思いっきりスクショを撮りまくってるね。流石はサファリ系プレイヤー。この光景を撮り逃す訳がないか。
「……見た感じ、灰の群集以外の人でもダメージはないっぽいな」
「ケイ、殺すなよ?」
「誰が殺すか!?」
なんでこれから味方になるって人達を殺さないといけないんだよ!? 極端に中で暴れるような事をしない限り、そう簡単に死ぬ訳も――
「おわっ!? やっぱり駄目だ! こりゃ、俺は死ぬ!?」
「うへぇ、俺もダメじゃん! 死ぬ、死ぬ!」
「……くっそ! 」
なんか続々と水から飛び出てくる人達がいるんだけど……赤の群集だったり、青の群集だったり、無所属だったりする赤いコイの人達か。それも他の人に比べると小さいように見えるし……。
「……コイコクさん、今出てきたのって、まだ育成が不十分な火属性の人?」
「おう、そうなるな! やっぱり火属性との相性は最悪か……。コイに赤は映えるから、欲しい色合いではあるんだが……何か対策とかねぇか?」
「……対策ねぇ?」
うーん、種族として持っている色から変えるとなると、属性を持つのが順当な手段だよな。水の中が基本的な生存圏になる魚系の種族と、火属性が相性が悪いのはどうしようもない気がするけど……。
「はい! 薄っすらと表面を、自分の水で覆うのはどうですか!?」
「あー、自前の水で覆って、他の水を触れさせないって手段か。確かにそれはありかも?」
「ほほう! そりゃ、全然考えてなかった方向性だな! 別に火属性を持ってるからって水魔法が使えない訳じゃねぇし、自分のなら被ダメの発生は絶対にないしな! ハーレさん、そのアイデア、使わせてもらうぜ!」
「ふっふっふ! 存分に活用してくれていいのです!」
思いっきり自慢げにしてるけど……まぁ今のは純粋に良い案ではあるしなー。
「あ、自前でなくても同じPTにいる人に覆ってもらえばいけるか? 青いコイの人もいるから、水魔法持ちはいるよな?」
「っ! それもありか! おし、水属性持ちと火属性持ちでペアを組め! 味方の水で覆って、水からのダメージを防ぐぞ!」
「そういう手段もありか!?」
「……流石は、『ビックリ情報箱』の異名を持つだけはあるのか! 発想が違うな!」
「いやいや、ちょっと待て!? 今回のは俺が考えた内容じゃないんだけど……って、聞いてないな!?」
くっ! 関係ない人は自由に泳ぎ回ってるし、関係ある人はPTの編成を始めてるし……完全にスルーじゃん!? ちょっとマイペース過ぎる集団じゃない!? 今の、少しアレンジを加えたのは俺だけど、元は完全にハーレさんの発案なんだけど!?
「ケイ、ドンマイかな? 気にせず、移動していこ?」
「……そうするか」
人見知りというより、人との交流での距離感にちょっと問題ありって集団な気もしてきたけど……気にするだけ疲れるだけな気がしてきた。悪意はないのが分かるだけに、なんとも反応に困るわ!
◇ ◇ ◇
少し待てば、コイコクさん達の全てのコイが俺の水の中へと収まって、優雅に泳いでいる。
完全に水を静止させるよりは、泳ぐ向きに合わせて緩やかな流れを作った方が負担がない感じだから、そう調整しておいた。まぁそのままでも特に操作時間には問題なさそうだったけど、そこは俺の気分の問題で!
「それじゃ、出発するぞ」
「おう! 草原エリアまで行くぞ、野郎ども!」
「「「「「「おう!」」」」」」
さーて、俺らは随分前からアルのクジラの上で待機してたし、ようやく本格的に移動が出来る!
「えっと、えっと!? 貨物船『アルマース号』、出船なのさー!」
「貨物船は、違う気がするかな?」
「ハーレ、思い付かないなら無理に言わなくてもいいからね?」
「あぅ!? ダメ出しされたのさー!?」
何かとアルを船に見立てたがるハーレさんだけど、今回の貨物船は何か違う気がするのはサヤに同意。そもそも、運んでるのはアルじゃなく俺だし……まぁこの状況に最適な呼び名ってのもない気はするけどさ。
ともかく、今は草原エリアに向けて出発だな! アルがそこそこ速度を出してるから、その速度に合わせて大量の水も動かして――
「なんつーか、ケイ達は仲がいいんだな?」
「そりゃ、サービス開始してから固定PTを組んでりゃなー」
「まぁそれもあるんだろうが……随分と反応が違うじゃねぇか?」
「……なんで小声? てか、何と比較しての話?」
「あれだ、あれ。ケイのとこのeスポーツの部長への対応との比較だ」
「あー、そういう比較? ……どっちかというと、あっちが変な事になってるだけだぞ?」
「いやいや、それを差し引いてもだ! 正直、ケイが女子高生3人と固定PTを組んでるのが意外でな?」
「おいこら、待て!? ギン、それってどういう意味だ!?」
というか、そもそも何の話だ!? 妹のハーレさんは除外するとしても、俺がサヤやヨッシさんと仲良くしてるのがおかしいとでも――
「どういうも何も、中学卒業する頃には露骨に女子から距離を取ってたじゃねぇか? それがこの状態だと、気にはなるぜ?」
「……あー」
くっそ、身に覚えがあるから否定し切れない!? ゲームをしてる間はそんなのは意識してなかったつもりだけど……久々に会ったギンからすれば、そういう感想になっても仕方ないのか。
「……ケイ、そんな状態だったのかな?」
「意識して避けてたつもりはないけど……まぁギンからそう見えてたのなら、そうだったのかもなー」
中学卒業から高校に入って、その辺が変わった覚えは特にないしなー。うーん、そう考えてみると……サヤとの初対面の時に転ばせたのって、俺にとっても警戒心が抜けた一因だったのかも……って、そういう話はいらん! なんか妙に気恥ずかしくなってきたし!
「そういう話はいいから、移動を急ぐぞ!」
「いやいや、移動中は暇だし、色々と質問させてくれや。特にケイがやらかした事とかよ? それぞれに知り合った経緯とかも色々と面白――」
「ギン、突き落としていい?」
「おわっ!? 危ねぇな!? 言いながら、水をぶっ放してくんなよ!?」
「ちっ、避けやがったか!」
死角から追加生成で狙ったのに、こうもまぁあっさりと躱すかよ!? 雑に狙ったとはいえ……いや、水量が多過ぎるし、視界に入ってからでもギンなら避けられるか。
それにしても……わざと煽って俺が攻撃するように誘導しやがったな! 俺が微妙に嫌がるとこを絶妙に狙ってきてるし、どの程度の動きが出来るのかを確かめる気か!?
「今のケイさんの追加生成を、避けるの!?」
「……ビックリかな!?」
「ん? あぁ、今のはケイを煽ってみただけだから、攻撃の予想はしてたぜ。……予想しててギリギリだとも思わなかったが、今のは追加生成つってたよな? 今みたいな芸当も出来るようになってる訳か」
「ケイ、手の平の上で踊らされてないか?」
「こういう部分があるから、ギンが敵に回るのを警戒してたんだよ!」
ゲーセンでコンビでやってたんだから、お互いに手の内は把握している。いやまぁ、流石に中学の時とは違ってる部分もあるだろうけど……。
「……そういう方向で来るなら、俺も考えがあるぞ?」
「ほう? どうする気だ? 俺のリアルを知ってるやつはこっちにはいないから、その手の情報暴露は効かないぜ?」
「いやー、短気を起こして色々と今日の状況を壊しかけてくれたよなー? ハーレさん、よく聞いとけよ」
「え、私!?」
「っ!? そうか、後輩!?」
「ギンって、割と短気なとこがあってな? 例えば――」
「ケイ、待て! それは悪かったって――」
「そっちが掘り返すなら、こっちも色々と掘り返すまでだ! えーと、特に印象的な短気で暴れた件と言えば、年下の小学生相手に――」
「待て、待て、待て!? 人の黒歴史を暴いてくるんじゃねぇよ!?」
「やり始めたの、ギンだよな?」
「ぐっ!? あー、分かった、分かった! 俺の負けだ! ケイが何をしたかを探るのはしねぇよ!」
「ならば、よし!」
おっし、俺の勝ち! 流石にこれから夏休みでのアルバイト仲間になる後輩の前ともなれば、黒歴史の暴露はダメージになるだろ! 追加で、ラックさんへも伝わる可能性もあるしな!
「はい! 正直、ケイさんがした事を避けての説明は無理だと思います!」
「……灰の群集の今の雰囲気とかの話題は、間違いなくケイさんの事は避けられないよね」
「色々あったし、どう考えても無理かな?」
「確かに、それは間違いないな」
「……おい、ケイ? この場合、俺はどうするのが正解だ? 何も知らずにってのも嫌なんだが……?」
「うぐっ!? それは……」
俺の話題を避けて、これまでの色々な話をするって……うん、どう考えても無理ですよねー!? 俺の話を聞かないように徹底するなら、何も聞くなとしか言いようがない……?
「ケイさんが関わってる大きな話っていうと、大岩騒動が有名だよな? 他にも昇華の存在やら――」
「わー!? コイコクさん、待て待て待て!?」
「おわっ!? 急に流れが早くなった!?」
「わっ!? おい、当たってくるな!?」
「そんな事を言われても、いきなり流れが乱れたんだから仕方ないだろ!?」
「ぎゃー!? 落ちるー!?」
「くっ! 急いで『空中浮遊』に切り替えろ!」
げっ!? ちょっと取り乱したせいで、思いっきり水の流れが乱れてしまってる!? 地味に他の人と当たってダメージが発生したり、水の中から落ちてる人がいるし、大急ぎで元の状態に戻さないと!
「……ふぅ、助かった」
「あ、追加生成で包まれたのか」
「いきなりビックリするな!?」
「コイコク! ケイさんを驚かすんじゃねぇよ!」
「わ、悪い! え、今の俺のせいなの……?」
あー、うん。コイコクさんのせいよりは、俺のせいですよねー。はぁ、これはもう避けようがないし、仕方ないか……。あ、でもその前に、これは言っておかないと!
「水を乱して悪かった! ちょっと操作が乱れたもんで……」
「死人は出てないし、気にすんな!」
「ちょっとダメージを受けた程度だしな!」
「灰の群集に入るなら、今のうちから慣れとかないとな!」
「そりゃ確かにな!」
うーん、この反応は素直にありがたいと受け止めてもいいものなのか? いやでも、実際に灰の群集ではよくある事だし……その辺の説明も含めて、ここはもう耐えるしかないか。
「ギン、もう好きに色々聞いちまっていいよ。ただし、草原エリアに到着するまでだからな!」
「……半ば自棄で言ってる気がするが、その諦めになるレベルで色々やらかしてるのか。あー、ケイから許可も出たし、特に影響が大きい部分から教えて貰えねぇか?」
「そうだな。1番影響が大きいとなると、やっぱり大岩騒動か?」
「あれは、間違いなく伝えておくべき内容なのさー!」
「……あはは、まぁ色々とビックリしたかな?」
「色々なとこに伝わってるもんね」
「ほほう? かなりの影響がありそうだが、具体的にはどんな内容なんだ?」
あー、もうここから先は心を無にして、操作だけに集中しよう! なんだかんだで話しながら結構進んでて、あと少しで『日向の牧地』までは戻るし、そんなに長い時間にはならないはず!
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