第1432話 コイの人達
まさか、羅刹の方で既に色々と決めた後だったとは……。てか、灰の群集の無所属支部って……また変な状況になってきたな!?
「ケイ、そっちの話は終わったかな?」
「あ、終わった、終わった! そっちに戻るわ!」
羅刹の声は聞こえていなかったにしても、PT会話で俺が話し終えたかどうかくらいは分かるよなー。詳しい内容はこれから話すとして、まずはみんなのとこに戻りますか!
「ケイさん、ケイさん! ギンさんも一緒に来ていいって事になりました!」
「あ、コイの人達は問題なかったんだな?」
「えぇ、そうなります。ただし、下手に他言はしないようにお願いしますよ?」
「分かっている。そう念押しされなくても、表立って動きまくってる人達じゃないってのは想像付くしな」
「まぁ詳しくは、直接話してからかー。オリガミさん、どこへ行けばいい?」
なんとなく想像は出来ているけど、絶対の確信がある訳じゃないからな。あの滝から少し離れた位置でオリガミさんが接触してきたのも、その辺が関係してそうな気がする。
「この先に滝があるのはご存知ですか?」
「知ってるぞ。その裏に、何やら隠し洞窟っぽいのがあるのもなー」
「……そこまでご存知でしたか。なるほど、それもケイさん達に接触しようとした理由かもしれませんね」
ふむふむ、オリガミさんのこの反応は……俺らがあの滝の奥に何かあるのを気付いてる事までは知らなかったっぽい? まぁ無理に暴く気もなくて、昨日はそのまま立ち去ったけど……それが今に繋がってる?
「では、そちらまで参りましょうか」
「はーい! あ、アルさんはその中には入れますか!?」
「……そうですね? 入り口だけは小型化してもらう必要はあるかもしれませんが、その時だけなので大丈夫でしょう」
「入り口だけだと? ……中は広いのか?」
「それは……まぁ見てのお楽しみという事で」
「だとさ、アル?」
「……ま、入れるならそれでも別にいいけどな。とりあえず進むか」
「滝に向けて出発なのさー!」
見てのお楽しみって事は、予想外の光景が広がってそうな予感! まぁ五里霧林での灰のサファリ同盟の新本拠地の状況を見れば、地下空間が広がっていても不思議じゃないしなー。
ともかく、今は昨日見た滝の部分まで進んでいこう。今の位置からなら大して距離はないし、少しすれば見えてくるだろ。
「ケイ、小型化ってのは……言葉の通りか?」
「あー、そういやそこもオフライン版にはなかった要素だっけ。もう少ししたら確実に必要になるみたいだから、その時の実物を見れば分かるぞ」
「おう、それは了解だ。……それにしても、思った以上にオフライン版から変わってるな。自由度、どれだけ上がってやがる?」
「まぁ何をするかにもよるんだけどね。サヤやハーレって、実はそれほどやってる事ってオフライン版とは変わらないんじゃない?」
「……あはは、確かにそれはそうかな?」
「私は色々と食べているのです!」
「作る方ならまだしも、食べる方で言われてもなー」
「でも、料理がガッツリ作れるのは、大きな変更点なのは間違いないのさー! カキ氷とか、オンライン版ならではだよ!?」
「カキ氷まであんのかよ!」
まぁギンの言いたい事は分かる! オフライン版じゃ、極一部の火のスキル持ちが木の実を焼く程度が限界だったんだ。
もう少し頑張って、特定のエリアを除けば地味に難易度が高い火への適応進化をさせても同程度。火加減なんてまともに出来なかったし、1人プレイだからそこまでやり込む理由がなかったってのも大きいしね。
「確か、カキ氷の大元はヨッシさんが出してきたという話でしたね」
「あ、そういえばそうかも? ハーレにねだられて、出来る手段を探した覚えがあるね」
「ふっふっふ! 私の要望のおかげで、カキ氷は誕生したのさー!」
「……そこは偉そうに言う事なのか?」
「うーん、流石に微妙な気がするかな?」
「結果オーライだから、それでいいのです!」
「……まぁ今更だし、別にいいか」
カキ氷がハーレさんの無茶振りから誕生したのは間違いないし、結果的には色々と便利なものになってるのも事実だしね。
「ん? オリガミさん、ちょっと質問」
「ケイさん、どうしましたか?」
「これから会うコイの人達って、ヨッシさんがカキ氷の発祥って事を知ってる?」
「えぇ、結構有名ですしね。雪山に中立地点が作られて、あそこで大々的に生産されるようになりましたし、それなりに料理関係の情報に触れていれば知らない人の方が少ないかと思いますよ」
「……なるほど」
確かヨッシさんが灰のサファリ同盟へ情報提供して、そこから広まったって流れだったはず。中立地点にはその灰のサファリ同盟の支部があるんだから、伝わってて当然ではあるよなー。だからこそ、逆に気になる。
「よくそのコイ集団から、今までヨッシさんへの接触がなかったな?」
「……え? あ、言われてみれば確かに?」
「ヨッシならケイとハーレがいない時に、よくミズキの森林で調理してるけど……それが関係してるのかな?」
「はっ!? 話しかける機会がなかったのかもしれないのさー!?」
うーん、その時間帯はよく分からん! 俺とハーレさんが晩飯を食ってる間の事だし……判断材料が微妙なんだよな。
「それ、シンプルに時間帯の都合じゃねぇか? そのコイの人らがケイ達と同じ時間帯での食事なら……何かキッカケでもない限り、すれ違い続けても不思議じゃねぇぞ?」
「あー! そりゃそうだ!」
モンエボ内で料理をガッツリやってるって人なら、リアルでも自分で料理をしていると考えるのは不自然ではない。作る時間も含めて考えれば、晩飯時は揃ってログインしてない時間帯って可能性は十分ある!
「えぇ、まさしくその通りですよ。ですが、急に私へ仲介を頼んできまして……ケイさん達、昨日、何かやりましたか? どうも、洞窟の件もご存知のようですし」
「あー、まぁこの先の『湖中の蛍林』までのんびり探索してる最中にハーレさんがコイの群れを見つけたり、滝の水を退けて隠してるっぽい洞窟の入り口を見つけたりはしたけど……」
「確実にそれが理由ですね!? なるほど、すぐ目の前まで来ておいて……完全にスルーされたのが逆にショックでしたか。人見知りは多い割に、妙に天邪鬼な部分もありますし、理由としては納得ですよ」
「やっぱり、昨日のあれが理由かー」
でも、オリガミさんから見て天邪鬼って……まぁコイの群れなんて目立つ事をしてるなら、何が何でも隠し通したいって訳ではないのかも?
「……聞いてて思ったんだが、なんでコイの群れなんだ? 意図的に種族を固めてるのか?」
「そこは当然の疑問ですね、アルマースさん。その説明は私からしてもいいのですけど、もう辿り着きましたし、本人達からお聞きになった方がいいのでは?」
「……それもそうだな。どうも、歓迎しているみたいだしな」
「ですよねー! あー、凄い数だな、これ」
昨日見た滝の手前まで来たけど、凄い数のコイが滝の下の川を泳いでいる。赤、青、緑、黄、茶……それに氷っぽい体表や毒々しい色合い、白や黒もいるし、木製っぽいのや、葉っぱが生えてるのとかもいるな!? 色が模様になって混ざり合ってるのもいるから、全属性どころか、複数属性持ちも結構いるっぽい。
ふむふむ、目立った色がなくて白い模様が出てるだけのコイの人もいるから魔法型だけって事もないようだね。……これ、何人いるんだ?
「おぉ!? カラフルなコイが大量なのさー!? おー! 滝登りしてる人もいるのです!」
「……これ、凄いかな!」
「凄いけど……オリガミさん、これって統率持ちの人もいる?」
「えぇ、いますよ。普段目撃されるコイの群れは、大体プレイヤーは2〜3人ですからね」
「あ、やっぱりそうなんだ」
ほほう? 同じ『統率』の特性を持っているヨッシさんだからこそ分かる部分もあったりするのかな? あー、よく見てみれば、露骨に動きが単調な個体もいるし、思いっきり統率個体って表示されて――
「歓迎するぜ! グリーズ・リベルテとそのリア友さん!」
そんな言葉を発しながら、滝の上から跳ね降りてくる……ってデカいな、この赤と白の模様が混ざったコイ!? というか、ちょっと待て!? そこでなんで進化演出が始まった!?
「……またやってるのですか。えぇと、今竜へと進化しているのが、今回の件で私に仲介を頼んできた共同体『まな板の上のコイの滝登り』のリーダーの『コイコク』さんです」
「ちょっと待った!? それ、なんか情報量が多いんだけど!?」
「……まぁそうでしょうね」
サラッと竜への進化とか言ったけど、コイにそんな条件が本当にあったのかよ!? ちょっと条件が特殊過ぎやしないか!?
「火属性と光属性を併せ持つ、紅白の竜とは俺の事! 『コイコク』、ここの参上!」
「まぁこのように少し変わり者ですけども、害はないのでスルーしておいて下さい。あぁ、この竜への進化は『変質進化』の一種との事ですよ。天然の滝を、コイで泳ぎ切れば一時的に進化するそうです。……実用性は皆無ですけどね」
「いきなり辛辣じゃねぇか!? オリガミさん!?」
「……たまたまケイさん達からの用事があったからこそ、仲介を引き受けただけですからね?」
なんというか、このコイコクさんはオリガミさんからの扱いが雑だ!? てか、この人、何気に情報量が色々と多いんだけど!?
竜へと一時的に進化する変質進化って何!? そんな特殊な進化条件での変質進化とか存在してたのかよ! ……ネタの一種じゃないか、それ? オリガミさんが実用性は皆無とか言い切るくらいだし――
「そもそも、本来なら同じ灰の群集同士なんですから、無所属の私の仲介は必要ないでしょう?」
「うぐっ!? それは確かにそうだけど――」
「という事で、私の役目は終わりましたのでこの辺で失礼しますよ」
「ちょ!? オリガミさん!? もう少しくらい――」
「知りませんよ。ケイさん、それに皆さんもこれで失礼しますね。私、ちょっと元々用事がありまして……」
「あ、そうだったのか! それはなんか悪い!」
「いえ、私としても伝えておくべき事は伝えられましたので。……あぁ、次は直接連絡出来るようにしておいてもらっても構いませんか? 今後、何かと連絡する事もあるかもしれませんし……」
「あ、それはこっちからも頼む!」
という事で、紅白模様の竜のコイコクさんと話をする前にオリガミさんとフレンド登録をしておこう。これで他の人に伝言を頼まなくても、直接連絡が取れるようになった! 俺だけでなく、みんなともフレンド登録してるっぽいね。
「さて、それでは失礼しますね」
「ほいよっと! それじゃまた!」
「ライブラリや他の誰かに何か動きがあれば、連絡させていただきます」
「助かる! 今日はありがとな!」
そこまで言って、オリガミさんは上空へと飛び上がり、あっという間にどこかへ飛んでいったな。なんか元々用事があったみたいなのを邪魔した形になってたのは……ちょっと悪い事をしちゃったかも? まぁ悪いと思うよりは、感謝を述べるべきとこか。
さて、オリガミさんは去っていったし、本格的にこのコイの集団と話していきますか。リーダーのコイコクさん……そういや『鯉こく』って料理がなかったっけ? 食べた事ないし、どういう料理かもパッと思い浮かばないけど……まぁそれはいいとして!
ふぅ、ここは一応、グリーズ・リベルテのリーダーの俺が話していくべきところか。
「えーと、初めましてでいいのか? コイコクさん、自己紹介をしていった方がいい?」
「そっちの事は知ってるから、それには及ばねぇ! あ、でも1人は知らないが……まぁ例のeスポーツ絡みの新規さんとは聞いてるから、問題はねぇな!」
「なら、俺らの自己紹介はいいとして……俺らはそっちの事を全然知らないんだけど、その辺の事も含めて用件を聞いてもいい? なんか俺らと提携したいって聞いてるんだけど……」
「お、おう! そうなるんだが……どっからどう説明したもんだ? あー、まぁとりあえずここだと一目に付くから、付いてきてくれ! 俺らの隠れ家に案内する!」
とか言いながら、竜の姿からコイの姿に戻って川の中へ落ちていった!? ……なるほど、完全に竜へと進化する訳じゃなくて、本当に一時的に姿を変えるだけなのか。ネタ感、更に増したなー。
「おう、こっちだ! こっち! この滝の裏に洞窟があって……って、昨日、すぐ側まで来てたから知ってるよな?」
「まぁなー。アル、小型化をよろしく」
「おう。『小型化』!」
「おわっ!?」
あ、しまった。ギンが急に小さくなったアルの変化に合わせ……いや、咄嗟に動いてしっかりと落ちないように木にしがみついてるな。流石の反射神経!
サヤは自前の竜で浮いてるし、俺も水のカーペットに乗り換えてるから問題ないな。ハーレさんとヨッシさんは、そもそも木の上だから元々問題ない。
「マジで小さくなるのか!? はぁー、こりゃまたすげぇな。なるほど、サイズまで可変で操作するとなれば……確かにこれに慣れれば相当な強化にはなるかもしれん。ちょっと仕様がオフライン版以上に、他のゲームよりぶっ飛び過ぎてる気もするが……だからこそ、替えが効かない訳か」
なんか分析してますなー。まぁモンエボの操作感が独特なのは間違いない。それが他のゲームの操作へ大きく影響してるのがびっくりだけど……今はその話は置いておこう。
「ギン、こっちに乗っていくか?」
「おう、助かるぜ、ケイ。……水に乗るってのも、妙な感覚だがな」
「水っぽいけど、微妙に性質が完全な水とは違うからなー。まぁゲームなんだし、その辺は気にしても仕方ないぞ?」
「……確かにそりゃそうだ」
魔法で生成したものは、天然物とは挙動が違うしなー。無から有を生み出してるんだし、深く考えるだけ無意味! 他のゲームだって、そんなもんだしね。
「それじゃ洞窟へ入っていくのさー!」
「どんな風になってるのかな?」
「ま、入ってみたら分かるだろ」
「……いきなり落下とかはしないよね?」
「多分、それは大丈夫じゃね?」
「ここから落ちるとかあんのか!?」
アルが浮いてるから落下自体は大丈夫だと思うけど、絶対にないとは言えないんだよなー。上に川が流れているんだから、どうやったって上には拡張出来ないだろうし……広げるとしたら下になるはず。
本当、どんな場所になってるんだろ? あ、そういや羅刹の話が出来てないけど……まぁ後でだな。とりあえず目の前の話を済ませないと、話しにくいしね。
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