第1428話 合流しての自己紹介
直樹……ゲーム内での名前は『ギンノケン』だけど、アル達とは初対面だから、まずはその辺からだな。とりあえず、草原エリアの群集拠点種のユカリから離れて、話をしやすいように移動!
「……へぇ? ケイ、随分と有名人みたいじゃねぇか。こりゃ、ガチで敵対した方が面白かったか? ……確か移籍ってのもあったな?」
「いやいや、そこで敵対を本気で狙わないでくれね!?」
「悪い、悪い。今のは冗談だ」
「冗談に聞こえないんだけど!?」
本気でやろうと思えば出来そうなのが、本気で困るんだけど!
「てか、それより前に話す事があるからな!?」
「……それもそうだな。俺はケイの……あー、今は普通に友人でいいのか?」
「まぁギンに関しては、普通に友達で問題ないぞ」
「……その言い方だと、友人って認識だと問題がある奴がいそうだが……」
うん、まぁそこは本当に友達認定するには微妙な相手がいるからなー。フラムとか、フラムとか、フラムとか……あ、一応モンエボ内って括りならアイルさんもか。
「まぁそういう事で、俺はケイのリアルでの友人の『ギンノケン』だ。名前の後半部分の『ノケン』は名前被り回避のやつだから、『ギン』って呼んでくれ」
「了解なのさー! 『ギン』さん、こっちでもよろしくなのです!」
「その声……『ハーレ』さんがケイの妹か。こっちこそ、よろしくな!」
あ、そうか。放課後にやった対戦の時の音声、今の音声と全く同じだからすぐに分かるのか。音声処理はVR機器の基本機能だから、ゲームが違っても意図的に変えない限りは変わらない部分だしね。
「……まぁ色々な事情を聞く前に、自己紹介からだな。俺はアルマース。見ての通り、木とクジラをやっている」
「アルさんだけは、このPTで年の離れた社会人なのさー!」
「そうなのか? それはまた意外な……」
「ま、ケイとは初期に色々とあってな? 妙な縁で固定PTになったが……年上って部分は気にしなくていい。それで偉ぶるつもりはないからな」
「おっ、そう言ってくれるとやりやすくて助かるぜ! 今日はよろしくな、アルマースさん!」
「……正直、何がなんだか、今の状況はろくに分かってないがな」
「あー、ケイから事情はどの程度伝わってるんだ?」
「今日、ケイとは会ったばかりだ。eスポーツ勢の流入でモンエボ内で色々なゴタゴタがあるのと、それに関係するケイの知り合いが来るって事くらいしか知らないな」
「ほぼ伝わってないな、それ!? おい、ケイ!? 事前に伝えるくらいはしといてくれよ!」
「アルのリアルでの連絡先は知らないんだから、仕方ないだろ!? 根本的に手段がなかったんだよ!」
「……え、マジで?」
「マジだ!」
ハーレさんが軽く説明してくれてるだろうけど、それだって短時間だから大して伝わってないはず。急な話の展開なんだから、説明しとけって方が無茶だっての!
「あー、連絡先を教えてないのは俺の都合でな。このPT、リアルで接点がないのは俺だけなんだよ」
「……なるほど、アルマースさんの都合か。まぁ絶対に連絡先を教えないといけない訳じゃないし、そういうスタンスの人もいるよな。となると、他の2人はケイとリアルで接点があるのか?」
「えっと、私はハーレの幼馴染の『ヨッシ』って言います。今年の春に家の都合で引っ越しちゃって……」
「ほほう? ハーレさんの幼馴染……ん? もしかすると俺は会った事があるか? 前にケイの家の近くに行った時に、それっぽい子を見た覚えがあるぞ?」
「……いつのどのタイミングかは知らんけど、同じ地元だから会ってても不思議じゃないぞ」
「なるほどな」
ヨッシさんの方も見た事があるかもって言ってたんだし、逆パターンも十分考えられる。まぁ流石に今年の春以降ではないだろうけどさ。
「あー、そうなるとサヤさんは、ハーレさんかヨッシさんのリア友か?」
「うん、正解かな! ヨッシの方だよ」
「やっぱりか!」
ん? サヤ、意外と普通に話してるな? アイルさんの時とは違って、変な敵意もないっぽいけど……あー、ギンの場合は俺が普通に友達として認識した上で紹介してるからか。アイルさんは俺自身が警戒しまくってたしなー。
「なるほど、そうなると……アルマースさん、ケイのお目付け役は大変だったろ」
「おいこら! いきなり何言ってんだよ!?」
「前にも増して突拍子もない戦法に磨きがかかってんだ! どうせ、モンエボ内でもなんかやらかしての知名度だろうが!」
「うぐっ!?」
「……まぁ否定は出来ないな。なぁ、『ビックリ情報箱』?」
「アル!? ここでそれを出す必要って――」
「へぇ? やっぱりやらかしてんのか、ケイ」
「くっ!?」
最近は完全に鳴りを潜めてる不本意なあだ名だけど、そういう風に呼ばれてた時期があったのは事実だし……って、事実であっても、ここでそれを暴露する必要ありましたかねー!?
「……アル、地味になんか怒ってる?」
「別に怒っちゃいねぇよ。ログイン早々に、eスポーツ勢の乱入やら、インクアイリーが黒幕の可能性やら、それ以外にも何かいる可能性やら、それに関係する情報を持ってそうなオリガミさんとの待ち合わせやら、他にも色々ある上で……ケイがリアル友人を連れてくるとかなったらな? いくらなんでも、矢継ぎ早に情報が多過ぎて処理し切れなくなって、苛立っても仕方ないだろ」
「やっぱり怒ってるんじゃん!?」
「まぁ否定はせん」
「ですよねー!?」
俺だってそれだけの情報量を次々と出されたら、少なからず困惑するわ! うん、先に説明しておく時間がなかったとはいえ、ちょっと手順が悪過ぎた気はする……。
「あー、すまん。一部……というか大半は俺のせいだな」
「いや、いいとこ半分程度だな。ギンさんは、インクアイリーなんてのは知らないだろう?」
「まぁそうだが……そりゃ、どこかのギルド名か何かか?」
「モンエボでは『ギルド』じゃなくて、『共同体』なのさー! インクアイリーは共同体の名前……なんですか?」
「そういう機能にモンエボの固有の名称があるのは分かったが……何故、そこで疑問系になる? ケイ、どういう事だ?」
「……インクアイリーは、色々ややこしいもんでなー。どこから説明したものやら……」
赤の群集にあった共同体である『インクアイリー』の名称で呼んでいるだけであって、実態は随分と共同体とはかけ離れてるもんな。それに、そもそもどういう事をしてきた集団で、今何を狙ってるかってのもややこしい部分ではあるし……。
「とりあえず、先にPTを組んでボスを倒さないかな? 先に進めないし……」
「あ、それもそうか! アル、既にPTは組んでる?」
「あぁ、そういやそっちがまだだったか。ほれよ!」
「サンキュー!」
<ケイ様がPTに加入しました>
ふぅ、まぁ色々説明していくには時間が必要だし、それは湖中の蛍林に辿り着くまでに話していけばいいか。その為にも、移動を邪魔するボスの撃破は必須! って、あれ?
「……ギン? アル、PT申請はしてねぇの?」
「いや、するにはしたが……何か問題あったか?」
「あぁ、悪い。パワーレベリングになる気がしてな……。これ、PTに入るのは必須か?」
「あー、その心配か」
ギンもモンエボを本格的にやるなら、最初の最初からパワーレベリングは避けたいんだろうけど……ここだけは避けようがないよな。
「初期エリアから出るには、ボスの撃破が必須なのさー!」
「という事だから、そこの分だけはパワーレベリングになるのは勘弁な! それが嫌なら、ギンを置いていくしかないぞ」
「……今回の件を知ってる可能性がある人と会うって言ってたな。ま、それなら仕方ねぇか」
<ギンノケン様がPTに加入しました>
こればっかりは仕様の都合だから、どうしようもないしね。まぁそれでもそれ以外では戦闘する気はないし、そこまで極端なパワーレベリングにはならないだろ。
「初戦がボスとは思ってなかったが、俺でも倒せる相手か? ボスって、真下で歩いてるあのヒマワリだよな?」
「まぁそうだけど……あれ、成長体だぞ?」
「あー、進化階位が上なのかよ。そりゃダメージ自体が通らねぇから無理じゃねぇか」
「そういう事だな」
ギンもオフライン版はやってるから、進化階位が違えば相手にならない事は承知済みなのは話が早くて助かる。オリガミさんとの待ち合わせもあるし、そんなに時間はかけてられないしさ。
「そういやケイ達の進化階位は何になるんだ? てか、オフライン版との差異はどうだ?」
「俺らは成熟体だなー。進化階位については、今のところは特にオフライン版と大きな差異はなし。まぁ2キャラ同時運用が出来るのが、一番大きな違いかも?」
「なるほど、上位層で成熟体か。2キャラ同時運用は、どのタイミングで可能になる?」
「……えっと、色々と気になるのは分かるけど、それはボスを倒してからにしない? ほら、オリガミさんを待たせちゃ駄目だしさ?」
「おっと、悪い。今は移動が優先だったな」
「だなー。さてと、それじゃサクッと仕留めますか!」
「任せるぜ、ケイ!」
昨日も瞬殺した移動ヒマワリだけど……折角だし、オンライン版ならではの大技でも見せてやるか。どう考えてもオーバーキルにはなるけど、オフライン版との規模の違いを見せてやる!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値2消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 123/124(上限値使用:3): 魔力値 311/314
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値2消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 121/124(上限値使用:3): 魔力値 308/314
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
<『昇華魔法:ウォーターフォール』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/314
特に周回PTもいないかったので、即座に水で押し潰す! オフライン版でも大規模な破壊が出来るスキルは存在したけど、成熟体でここまでの規模のは無かったもんな!
<ケイが成長体・瘴気強化種を討伐しました>
<成長体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>
<ケイ2ndが成長体・瘴気強化種を討伐しました>
<成長体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>
おし、瞬殺完了! 進化の軌跡は落ちなかったけど……まぁ成長体用のってもういらないしなー。夏休みになって新規さんが増えてきたら、こういうボスの周回PTも復活するのかね?
そういや、eスポーツでの流入勢ってボス戦の撃破ってどうしてるんだろ? んー、プレイが下手な人は少ないだろうし、自力で突破くらいはしてるか?
「こりゃまた、ド派手なスキルだな。オンライン版では正式に魔法が実装されたって話だったが、この滝がそれか?」
「まぁなー! 魔法の中でも最大級の威力を発揮する――」
「ケイ、その手のレクチャーは他の機会にしてくれ。最低限、オリガミさんと会う前に、そこまでの経緯を聞いておきたいしな」
「……ですよねー。ギン、そういう事だから仕様周りの話はまた今度な!」
「ま、俺が無茶言って連れていってもらってるんだし、その辺は当然だな。てか、俺もモンエボ内での動きが知りたいし、そっちを優先してくれや」
「ほいよっと」
今の状況で最優先すべき内容は、eスポーツ勢を煽って引き入れている黒幕についての事だよな。オリガミさんに接触するのも、その情報を得る為のもの!
「あ、悪い。これだけは教えてくれ。『夜目』はどうやりゃ使えるようになる?」
「はっ! そういえば、それは必須なのさー!?」
「『夜目』なら、1時間経てば自然に手に入るかな!」
「……なるほど、時間経過が条件か」
そういやキャラを作りたての時は、夜目って使えないんだった!? んー、時間的にオリガミさんの元に辿り着く頃には入手になってるかな? まぁ無くても、移動には支障もないだろ!
「さて、そろそろ色々と事情を、ケイの口から説明してもらおうか」
「……ほいよー」
オリガミさんと接触するだけでも色々と急な話ではあるのに、ギンまで連れてきたんだから……まぁ説明は必要ですよねー! 夕方にある程度の話はしてたサヤとヨッシさんでも、十分な説明が出来てるとは言えない状況だしな。
「……これ、どこから話したもんだ?」
「今日の最初からだ! 何がどうして、アイルさん相手と他のゲームで対戦なんて話になっている?」
「あー、そこからか。それ、ギンとハーレさんが原因でな」
「はっ!? 私達のせいになってるのです!?」
「……あながち間違っちゃいないが、アイルってのは誰だ?」
「えーと、本名は流石に出せないけど……戦ったeスポーツ部の部長さん!」
「あの人か!? あー、そういやケイがやってるゲームまで追いかけてって言ってたっけな。……もしかして、そのまま居付いてんの?」
「……色々と厄介な人かな!」
「ちょ、サヤさんに敵視されてんのか!? おい、ケイ? 何があったんだよ?」
「そこは脱線になるから、今は気にすんな!」
「お、おう……。話を戻すと……まぁ俺がケイとハーレさんを巻き込んだのは間違いないぜ。最初はケイに敵対するって思わせて、eスポーツ勢が流入してるって内情を探ってもらおうと思ったんだがよ? ケイにその思惑を見抜かれたから、今みたいな形にしてもらって同行させてもらっている感じだな」
「え、そういう流れだったのかな!?」
「あ、だから味方として一緒に来るって話になったんだ?」
「警戒してた相手を連れてくる事になった理由は、そこか! 意味が分からなかったんだが……ケイ、いいように使われたな?」
「……まぁ否定し切れないんだよなー」
初めは敵に実力者が加入するかもって事で焦ってたのに、そりゃその当人を連れてくるって話になってたら困惑するよね!? ハーレさん、そこまで詳しい説明をしてる時間がなかったのか。
うん、これは本当にしっかり説明をしておかないと! アルが苛立ってた部分って、そういうチグハグな状況が混ざってるからっぽい気がしてきたし!
<『始まりの草原・灰の群集エリア3』から『日向の牧地』に移動しました>
おし、ウォーターフォールの効果が切れたし、とりあえずエリアの移動完了! さて、放課後からさっきまでの流れを説明していきますか。
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