第1421話 中途半端な時間


 なんだか流れで今週末のeスポーツの予選大会をみんなで見ることになったけど……まぁそれが実現可能かどうかは後で確認するとして……。


「……これから、どうする? ぶっちゃけ、ほぼ何もする時間がないけど……」

「わー!? もう17時半を過ぎてるのさー!?」

「……もう30分も経たずに、晩御飯でログアウトかな」

「あはは、まぁ今日はみんな遅かったもんね」

「だよなー」


 それぞれに用事があって遅くなったのはどうしようもないし、仕方ない部分ではある。まぁ俺とハーレさんは、その用がきっかけで色々影響が出てるけど……決して悪い内容でもないしな。


「時間も時間だし、ケイとハーレの今日の話を対戦の話を聞かせてかな!」

「あ、それは私も聞きたいかも! ケイさんって、他のゲームだとどんな戦い方をするの?」

「ふっふっふ! 多分、聞いたらサヤもヨッシも驚くのさー!」

「まぁそれでもいいけど……流石に場所を変えない? ぶっちゃけ、そろそろ岩の操作の時間が厳しい」

「……え? あ、この岩、通常発動だったのかな!?」

「ハーレさんを捕まえる為に展開したから、移動操作制御じゃ意味なかったしな」

「はっ!? そういえば捕まったままなのさー!?」

「……あはは、そのまま話しちゃってたね。それなら、とりあえずミズキの森林にでも行く? 群雄の密林が占有エリアになった後、あそこがどうなってるかも気になるしさ」

「あー、確かに? なら、そっちに移動だな。戦闘の話は、ミズキの森林の様子を確認しながらでいいだろ」

「「「おー!」」」


 残り20分ちょっとあれば、ミズキの森林の今の様子を見て回るには十分だろ。占有エリアが増えたんだから、何かしらの変化があってもおかしくはないけど……実際に見てみないと分からないしなー。他に何かをするにも半端過ぎる時間だし、丁度いい内容か。



 ◇ ◇ ◇



 ササっとミズキの森林まで転移して、移動操作制御Ⅱでの水のカーペットにみんなを乗せ替えて、話をしながら散策中。


「……ケイさん、FPSゲームなのに銃を使わないんだ?」

「それは……どうなのかな?」

「いやいや、全く使わない訳じゃないからな!? ただ、相手の動きを見た感じだと、それが有効そうな手段だっただけであって――」

「正直、私が1番銃を使ってた気がするのです!」

「それはまぁ、否定は出来ないけども!」


 でも、実際に作戦としてそれが成立してたからこそ、ああやって勝ててた訳で! 対戦なんだし、ルール違反はしてないし、そこは問題ないぞ!?


「でも、結構リアルな銃撃戦とは違う感じのゲームかな? タイトル自体は聞いたことあるけど……」

「元々、ゲーセンで置いてたやつだしなー。移植版が出たのも今年だし……」


 確かその発売は1月か2月くらいだった気がする? その時期だと、どう考えてもサヤ達は高校の受験時期だから、ゲームをやってる場合じゃないよな。ハーレさんとヨッシさんに至っては、引っ越し絡みで落ち込みまくってた時期だろうしさ。


「やってみたら、意外と楽しかったのさー! ホラーでゾンビを撃つのとはまた違った感じなのです!」

「……私は、銃撃メインのゲームは苦手かも?」

「ん? ヨッシさんはそうなのか?」

「……どうも、人をそのまま撃つのが抵抗あってね」

「あー、そういうのが苦手って人はいるもんな。ヨッシさんはそのタイプか」

「うん、そんな感じ」


 フルダイブ式のゲームが主流に移って、その辺のリアリティが増してるからこそ……忌避感を覚える人っているからね。それが決して悪い訳じゃないし、ある意味では当然な反応だよなー。


「ヨッシ、モンエボでは大丈夫なのかな? 普通に戦ってるけど……」

「あ、うん。そこは全然平気。多分、私は人の見た目だと駄目みたい?」

「はっ!? それ、超越体に進化した時、大丈夫なの!?」

「……え? あ、そういえばどうなんだろ? 全然気にしてなかったけど……」


 あー、そうか。モンエボでもいずれは超越体まで辿り着いて、人化するのは確定だもんな。そうなれば人の姿同士での戦いになるだろうし……そうなると、ヨッシさんが戦線離脱の可能性が出てきた?

 オフライン版だと、人化する超越体に辿り着くのはプレイヤーのみだし、他の敵は完全体止まりで……一応プレイヤーのLvに合わせて強化も入るけど、進化はしないんだよな。うーん、正直、オンライン版でその辺がどうなるかはさっぱり分からん!


「まぁその時になったら考えるよ。意外と平気になる可能性もあるしね?」

「まだまだ先だろうし、心配するには早いかな?」

「だなー。今考えて、どうにかなるもんでもないか」

「確かにそれはそうなのです!」


 気にならないかと言えば……気になるのが実情だけど、それでどうにかなる訳じゃないからなー。そもそも超越体の設定が、オフライン版と全く同じとも限らないしね。


「根本的に、俺の場合……コケとロブスターのどっち共が人化するのか? みんなも、おかしな事にならねぇ?」

「はっ!? 複数枠の扱いがどうなるかが謎なのです!?」

「……別々に人化するのかな? でも、人型の2人セットはそれはそれでおかしいし……」

「……割と謎かも?」


 うーん、冗談抜きでオンライン版固有の仕様の部分だから判断しかねるぞ!? オフライン版だと1人の精神生命体が複数の肉体を持っていたって事になるんだろうけど、あれはオフラインだからこそだろうしなー。同時に複数の種族が使えるオンライン版だと、謎過ぎる!

 オンラインゲームなんだから超越体になったからって、それでゲームクリアにはならないだろうし……。進化階位としては今は『成熟体』だけど、その上に『完全体』と『超越体』の2段階。意外と段階は少なく感じるけど、オフライン版同様に進化階位が上がれば上がるほど、上限Lvも上がってきてるし……。


「まぁまだまだ先の話だし、今考えても分からん!」

「あはは、まぁそれもそうかな!」


 ぶっちゃけ、これ以上は考えても無意味だな。未知の状況過ぎて、推測しようにも情報が足りなさ過ぎるわ!


「そういや、サヤはFPSってどうなんだ? あー、銃撃戦メインで!」


 FPSって言っても、一人称でのシューティングゲームだからなー。ある意味、魔法砲撃を使った状態の竜なら、モンエボだってFPSと言えなくもない! ……それで言えば、俺のロブスターもか。


「……うーん、やってみた事がないから、何とも言えないかな?」

「あ、そもそもやった事がないのか」

「サヤ! サヤ! そういう時は、嫌いな人の顔を重ねて撃つのが爽快なのです! 今日はそれでやってたもん!」

「……え、そうなのかな?」

「それはそれで、どうなんだ?」


 ハーレさんが言おうとしてる事も分からなくはないし、ストレス発散にもなりそうではあるけど……そういうやり方は性格が歪みそうだぞ? まぁガチの戦争を題材にして血飛沫が出るヤツは、18歳以上の年齢制限とかあるけどさ。

 旧来型のゲームだったらどうとでも買えたけど、フルダイブ式だと保護者の認証が絶対に必要なんだよな。うん、そういう意味ではサヤがやった事がないというのも不思議ではないか。


「というか、ハーレさんでもそんなに嫌いな相手っているのか?」

「もちろんいるのさー! ヨッシにちょっかいをかけてきた、あいつは大っ嫌いなのです!」

「……あはは、あれは私より、ハーレの方が嫌ってるんだよね」

「……なるほど」


 『相沢さんの弟』だという部分だけが嘘だったっていう、例のヤツか。ヨッシさんも『あれ』扱いだし、本当に嫌われてるっぽいですなー。うん、ハーレさんが嫌うのは納得かも。


「……嫌いな人か。……そうやったら、スッキリするのかな?」


 なんかポツリと呟く小さなサヤの声が聞こえたけど……サヤが嫌いな人って、まぁあれだろうなー。人間、誰でも嫌いな人の1人や2人は存在してるか。

 俺だって2度と関わりたくない相手はいるんだし……って、流石にこの話題は変に続けない方がよさそうな気がするし、話題転換で!


「それにしても……ミズキの森林の様子は大差ないな」

「あ、それは私も思ったかな!」

「モンスターズ・サバイバルの人達、湖の畔で作業してたしね」

「薪割りコーナーも健在だったのです!」

「だよなー。精々、ちょっと特訓場所が空き気味なくらい?」

「……特訓だけなら、新エリアに行く必要もないからかな?」

「そんなとこな気がします!」

「まぁミズキの森林じゃ駄目になった理由がある訳じゃないもんね。夏休みになって、新規さんが増えたら分からないけどさ」

「ですよねー」


 少し考えてみたら、この様子は容易に想像は出来たんだろうけどね。まぁ実際にこうして森の上から見て回るのが1番実感はしやすいし、時間も中途半端過ぎたから、今回はこれでいい。


「そういえば、ケイはなんで銃を使わないのに、銃撃戦のFPSをやってたのかな?」

「いや、使う時は使うから!? ただまぁ……あのゲームだからってのはあるなー。リアル寄りの、ガチの銃撃戦のやつはちょっと苦手なんだよ……」

「え、それって、どういう事かな?」

「どっちかというと、現実離れしてる動作が出来るゲームの方が得意でさ。リアル寄りは、リアルの挙動に引っ張られて……なんかやりにくい」


 なんでもありなゲームじゃなくて、リアル挙動準拠のシミュレーションに近くなると途端に対戦で勝てなくなるんだよな。直樹はその辺のゲームでも強かったけど……。

 フルダイブ型のゲームでのキャラの挙動って、超人的な無茶な動きが出来るか、リアル準拠の動きしか出来ないか、2パターンに分かれるもんなー。俺が得意……というか、好きなのは前者の超人的な動きが出来る方。


「……現実から離れれば離れるほど、得意になるのかな?」

「まぁそんな感じ。というか、モンエボで強い人って大体そうじゃね?」

「あ、確かにそれはそうかな! ……でも、あんまり離れ過ぎた挙動は苦手かな?」

「超人プレイは爽快なのさー! 現実では不可能な動きこそ、楽しみなのです!」

「その中でも、サヤの場合は魔法使い系が苦手で、剣士系が得意みたいな感じなのかもね? ケイさんは逆に魔法使い系が得意なのかも?」

「……そうなのかな? そういう得手不得手は、あんまり気にした事はないかも?」

「別に遊んでるだけだし、好きなようにやれば問題ないぞ!」

「あはは、確かにそれもそうかな!」


 eスポーツみたいに競技としてやるなら得手不得手の把握は重要だろうけど、普通に遊ぶ分にはそんなのは関係ない! 自由なスタイルで、好きに遊べばいいだけだ!


「はい! 逆にリアル寄りのゲームで、ちょっとみんなで遊んでみたい気もします!」

「……まぁ夏休みに入れば出来なくもないけど、何のゲームをやるんだ? リアル寄りって言っても、色々あるぞ?」

「リアル寄りで思いつくゲーム……ガッツリな銃撃戦のゲームとか、レースゲームとか、あとはシミュレーションゲームとかかな?」

「シミュレーションゲームは対戦も協力もしにくいから、除外じゃない?」

「あ、確かにそれはそうかな」

「まぁものにもよるけどなー」


 経営シミュレーションとかなら1人プレイのみが多いだろうけど、戦国や三国志なんかのシミュレーションならオンラインプレイに対応してたのも発売してたはず。あー、中にはオフライン版からアップデートでオンライン対応ってのもあったっけ?


「はい! レースゲームをやりたいです! リアルな車を運転するやつ!」

「あー、その手のレースゲームか……」


 地味にそういうのってやった事ないんだけど……ああいうのって、普通の車を運転するのとほぼ変わらないとは聞くよなー。そういや、フルダイブでその辺が発展し過ぎて、リアルの車のレースが危機みたいな話も聞いた覚えがある気がする。


「……普通の車の運転と変わらないって聞くけど、その辺はどうなのかな?」

「普通の車を運転した事がないので、分かりません!」

「そもそも、まだ免許が取れる年齢になってないしね?」

「……バイクなら取ろうと思えば取れるか? いや、でも単純に必要ないしなー」

「それはケイさんだけなのさー! 私達はまだ15歳なのです!」

「あ、そういやそうか」


 前にみんなの誕生日を聞いたけど、まだ誰も過ぎてないもんな。えーと、ハーレさんが3月3日のひな祭りなのは昔から知ってるけど……。


「確か誕生日は……サヤが9月16日で、ヨッシさんが7月26日だっけ?」

「っ!? ケイ、覚えてたのかな!?」

「まぁなー」


 ヨッシさんの誕生日はハーレさんが旅行に行くので覚えてたし、サヤの誕生日だけ忘れてたとかだと流石に話題に出せんわ! ……割とその辺は忘れる方だけど、我ながらよく覚えてたな?


「はい! ケイさん、夏休みにバイクの免許を取りませんか!?」

「……いや、バイクで遠出とかしないから、単純にいらないぞ?」

「えー!?」

「そんな風に不満がられても、どうしろと!? そもそもアルバイトも入れたのに、無茶を言うな!」


 そもそも免許を取るにも、バイク自体を買うのにも金が必要なのに、特に必要としてない状況でやる気にはなれんわ! 車の免許なら取れるようになったら取りたいけど、それはどんなに早くても来年の話だし!


「それなら、バイクのレースゲームでオンラインプレイが可能なやつを探しておくのです!」

「……まぁ別にいいけど、そんなのあったっけ?」

「ふっふっふ! オフライン版のやつなら、色んな乗り物全部入りってのがあったのさー! 確かそれがアップデートでオンライン対応になってたはずなのです!」

「へぇ?」


 自分ではやらないジャンルだからピンとこないけど……まぁハーレさんには心当たりがあるみたいだし……。


「って、ちょい待った!? 単純にレースゲームをしたくて、話題を誘導してねぇ!?」

「それは気のせいなのさー!」

「絶対嘘だろ!? 無意味なのを分かってて言ってるのもあった気がするんだが!?」

「それも含めて、気のせいなのさー!」


 気のせいで全て済ませる気か!? あー、でもまぁちょっとレースゲームに付き合うくらいは別にいいか。流石にガッツリとやり込むつもりもないし……って、それだとソフト代が惜しいな!?

 いや、でもオフラインからのオンラインへのアップデート対応のソフトなら発売自体は古めか? あー、それなら安くなってる可能性も――


「あっ、ごめん! 18時になってたし、ここでログアウトかな!」

「あ、少し過ぎちゃってるね。急いでログアウトしないと!」

「わー!? 本当なのさー!?」

「もう過ぎてたのか!? 悪い! ちょっと脱線させ過ぎた!」

「ううん、これくらいは大丈夫かな! それじゃ、また後で!」

「晩御飯、食べてくるね!」

「ほいよっと!」

「ヨッシ、サヤ、いってらっしゃーい!」


 とりあえずこれで、サヤとヨッシさんは一旦ログアウト。……何をするにも中途半端な時間は過ぎて、ハーレさんと2人になったか。さて、俺らの晩飯まで1時間、何をしたもんだ?

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