第1420話 気になる情報の内容


 さて、何かeスポーツ関係での情報がないかとレナさんに事情は話してみたけど……何か知ってるか? てか、リアルの情報を伏せて伝えるの、難しいな!?

 出来るだけ個人名や直樹がどの程度まで大会で進んだかとか、そうなった経緯のアルバイト絡みとか、そういう話は伏せて話したけど……それでも中学の頃の友達で、eスポーツ部の人という要素は隠せなかったよ。

 でもまぁ、レナさんならどれだけ顔は広くても、不用意に個人情報をばら撒く事はほぼ確実にない。そういう絶対的な信頼は出来るもんな。その分だけ、この件で何か知ってても教えてもらえない可能性もあるけど……。


「およ? あー、モンエボが他のゲームの操作性向上に役立つって噂があったんだ? 最近、その手の情報は確認してなかったけど……その手の話は、一応オフライン版からあるにはあったねー」

「え、オフライン版の時からあったのか!?」


 レナさんがその噂を知らなかったってのはちょっと意外だな!? あー、でも何もかもの情報を知り尽くしてるってのは無理か。というか、オフライン版からそういう話題があったのは初耳?


「うん、一応ねー。でもまぁ、なんだかんだでモンエボが妙に人気が出たとは言っても、それでもゲームとしてはマイナー寄りだしさ。その頃の噂は、ほぼ実態はないようなもんだったよ」

「……なるほど」

「そもそもオフライン版は1人用のゲームなんだから、本当に意味があるなら情報をばら撒く方が愚策なんだよね。その頃のeスポーツって本格的にフルダイブには移行してなくて、影響も限定的だったしさ」

「あー、そうなるのか」


 確かに、オフライン版のモンエボが出たのは中学生の頃だもんな。あの頃はまだフルダイブに対応出来るネットワークの整備が追いついてなくて、それこそ今日やってきたあのゲーセンでやってたようなゲームみたいなのしか対戦は出来なかった。

 eスポーツに興味がなかったから詳しくはないんだけど……単純にオフライン版の頃は、フルダイブでのeスポーツの競技人口が少なかったんだろうなー。今はフルダイブへ大々的に切り替わってきて、色々と状況が違うって事か。……俺の高校にeスポーツ部がなかったのも、今出来ているのも、そういう流れの一環なのかもね。


「それで、そういう人達が流入してるかどうか、わたしに心当たりがあるかどうかって確認でいいの?」

「そうそう、それが知りたくてさ。場合によっては交渉材料になり得るし?」

「んー、心当たり自体はあるんだけど……その希望には応えられないかも?」

「……というと?」

「心当たりってのが、無所属なんだよね。他のとこと全然交流しない、小規模な集団が増えてきてるって話はあってさ」

「え、マジか!? てか、無所属!?」


 どこかの群集……もしくはどの群集にもいるのかと思ったら、まさかのそこ!? あー、直樹と違って純粋に操作精度だけを求めてて、群集の要素が邪魔になってるのか?

 俺が直樹を味方に引き入れる為にライバルとなる存在を探そうとしたけど、そもそもそういう敵味方にならないように無所属って手段もあり得る? でも、そうなると……この噂自体、そこそこモンエボをやってる人が広めてません!? やってない人が無所属を狙って始めるとか、出来る?


「一応、それぞれの群集でも、そういう少人数の共同体も増えてるのは知ってるんだけど……ほら、ケイさん達みたいにリアルでの知り合いが集まって出来てる共同体なんていくらでもあるじゃない?」

「まぁそりゃそうだよな。……それと比較した上でも、無所属が目立つくらいな状況?」

「うん、そういう状況。集団になってる割に他のプレイヤーと接点を持とうとしないってのが、妙な感じはしてたんだけどね。ただ、全然交流がないから……絶対にそうとも言い切れないのは勘弁してね? 流石にリアルでの素性の確認とか出来ないからさ」

「ですよねー。でもまぁ、情報は助かった!」

「いえいえ、どういたしまして! ……それにしても、ケイさんがここまで警戒する程の友達かー。本気で敵に回られると、かなり厄介かも……」


 そこは……なんというか、すみません! くっそ、直樹の狙いが最初から分かってたら、他にも何か打つ手もあったかもしれないのに! これも全て、そんな機会を作った相沢さんが……って、そういう風に人のせいにするのはやめとこ。

 それより今は……根本的に対策のしようがないな!? 晴香を生贄にってのは本気でやる気じゃないから、冗談でも交渉材料に出すのは躊躇いがあるし……。


「およ? ケイさん、ちょっと聞くけど……友達との対戦になるのは嫌なの? 友達とは言ってるけど、実は苦手な人だったりする?」

「あー、別にそういう訳じゃないんだけど……」

「だったら、気にする必要もないんじゃない? わたしだって、立場上で競争クエスト中に敵対してる人って沢山いるけど、特に問題ないよ?」

「あ、そう言われるとそうか!」

「そうそう! 険悪な仲で、輪を乱しまくるような無茶な人でないなら、そう邪険に扱う必要はなーし! むしろ、正面から叩き潰すつもりやってこー!」

「……ははっ、そういう考え方もありか!」


 こりゃレナさんにフレンドコールをして正解だったかも。レナさん、赤のサファリ同盟やインクアイリー、他にも状況次第で多分敵対する相手は多いもんな。だからといって、おかしな状態には……インクアイリーに関しては色々あったけど、あれは特殊事例だろ!


「まぁわたしもちょっとeスポーツでのモンエボの噂関係は調べとくよ! もしかしたら、競争クエストの時のインクアイリーの動きに何か関係あるかもしれないしね?」

「え、そっちまで繋がってくんの!?」

「時期的に可能性の完全排除は難しいかなー? 赤の群集の共同体としてのインクアイリーと、それ以外の繋ぎ役とかやってた可能性はあるかもね」

「あー、なるほど……」


 そもそも俺もレナさんも今日までそんな噂があるなんて事すら知らなかったんだから、いつからそういう動きがあったかは……はっきりとは分からないか。


「これ、わたしの勝手な憶測なんだけど、青の群集のスミさん辺りは関係してそうな気もするよ?」

「……へ? え、でもスミは学生組ではないと思うけど……」


 少なくテスト期間中にあったっていう、停滞期間で伸びてきた人は除外してもいい気が――


「ケイさん、ちょっと思い違いがあるよ?」

「……へ? え、どこをどういう風に思い違いをして……って、あー!? そうか、別に学生組に限定される事じゃないのか!?」

「そうそう、そういう事! プロや学生の大会が目立つけど、アマチュアでも大会自体はあったはずだからねー。……プロはまぁ流石に専用で何か別のものを専属で用意して特訓しそうだけど、アマチュア部門の団体とかなら普通にあり得るね! 個人なら、本人から言われない限り気付きようもないしさ」

「……ですよねー!」


 ぶっちゃけ、そうなると特に直樹の事を気にする必要もない気がしてきたぞ? 直樹は学生の大会で全国まで行ったけど……あえて言うなら、そこ止まり。それ以上の人までやってきてる可能性があるのなら、結果的にお互い潰し合うんじゃ?


「まぁそういう事だから、ケイさんはあんまり気にしすぎないようにねー! 用事があるからそろそろ切るけど、大丈夫?」

「問題なし! 情報ありがとな、レナさん!」

「どういたしまして!」


 ふぅ、なんだか予想の斜め上を行ったような気もするけど、ある意味それでスッキリはしたかもな。うん、考え過ぎもよくないってのが結論!


「ケイ、レナさんはなんて言ってたかな? 無所属とか聞こえたけど……」

「無所属に、他のプレイヤーとは交流しないそれっぽい集団をいくつか観測してるんだとさ」

「え、そうなのかな!?」

「あ、そっか。無所属なら、ライバルと味方関係になりようがないもんね」

「おぉ!? 確かにそうなのです!」

「……ケイ、その友達を無所属に追いやるのかな?」

「あー、そういう手もあったか!」


 他の群集も敵に回して、戦って鍛え放題って名目で誘導するというのも……いや、これはリスクが高いな!?


「サヤ、流石にそれはやめとく。俺への敵対を宣言してるんだし、下手すればこの前の競争クエストでのインクアイリーの再来になりかねない……」

「っ!? それは……厄介かな!?」

「冗談抜きで厄介な事になりすぎる……。それと、レナさんの見立てだと……インクアイリーの動きにも関わってたかもしれないとさ。無所属だけでなく、俺らがテスト期間中に伸びてきた人も、そういう関係の人かもしれないとも言ってた。学生組じゃなくて、eスポーツをやってるアマチュア勢の可能性だってさ」

「っ!? ……スミさんの名前が挙がってたのは、そういう事かな!」

「あ、そっか。部活だけじゃないもんね、eスポーツ」

「個人戦もあるし、色々な可能性がありそうなのさー!?」

「って事だから、あんまり気にし過ぎるなって言われたよ。まぁぶっちゃけ、既にその影響下になってるなら、今更焦ったところで意味ないしなー」

「確かに、それはそうかな?」

「……噂になってるくらいなんだし、その大元の情報を発信した人もいるはずだしね。今気付いただけで、特に意味はないのかも?」

「はっ!? それなら気にしなくてもいいですか!?」

「まぁそれはアイツ次第か……」


 俺のプレイヤー名の『ケイ』はバレてるとはいえ、色々と既に浸透している状況なら、思い通りの結果にならない可能性は高い。少し様子を見つつ、状況次第で対応を考えるのでいい気もして……。


「……って、ちょっと待てよ? もしかして、テスト期間中に灰の群集が他の群集との差を埋められたのって……その辺が関係してる!?」

「あ、順当に考えたら、その可能性はありそうかな!」

「可能性はありそうだけど……確認のしようがないんじゃない?」

「気にするだけ無駄なのさー!」

「まぁそれもそうか……」


 確認する手段がないんだから、気にするだけ無意味ですよねー。そういう意味合いも含めて、レナさんからの『気にするな』なのかもな。……考えてもドツボに嵌るだけで、解決策は見つかりそうにもないしね。

 よく考えたら、灰の群集にいるアイルさんだってその中の1人で、競争クエストで明確に影響を与えてたんだしなー。成功と失敗の両方があるだろうし、他にも色々あったと考えた上で……結論はこれだな!


「おし、この話題はもう終了! あとはもう、なるようになれだ!」

「それで決定なのさー!」

「……ハーレへの勧誘は、どうなるのかな?」

「それは、後でお断りしておくのです!」

「これは言っておくけど、無理に私達に合わせる必要はないからね? ハーレ、そういうとこで無理しそうだし……」

「そうだぞー。即座に断らなかったんだし……パニクったのもあるだろうけど、完全に無しとも思ってないだろ?」

「あぅ!?」


 やっぱり、こういう反応が返ってくるって事は図星か。はっきりとヨッシさんが言ったけど、本心を隠そうとするのは阻止しとかないとな。明確にそういう兆候が見えてるなら、尚更に!

 直樹も流石に即戦力として求めてはいないだろうし、すぐに結論を出せとも言ってなかったしな。じっくりとハーレさんが考えた上で出す結論なら、特に文句はないさ。モンエボ自体が特訓になるのなら、こうやって一緒に動いているのもいいんだろうしね。


「……週末、ちょっと予選を見てみてもいいですか?」

「ん? あー、そういや今週末ってなってたな。……会場、どこになってたっけ? それなら俺も一緒に――」

「あ、それはオンラインで見るのでいいのさー! 流石に会場まで行く度胸はないのです!?」

「なら、オンラインで見る……そもそも、見れるのか……?」


 本戦ならともかく、予選から見れるかどうかは……正直、分からん! 後でちょっとその辺を確認しときますか。


「……ねぇ、ケイ? それ、私も一緒に見ていいかな?」

「ん? あぁ、VR空間を使って一緒に見ようって感じか? まぁ俺はそれでもいいけど……」

「あ、それならみんなに手料理を披露しよっか。あんまり長時間は出来てないんだけど、色々と作ってみるからさ」

「おぉ!? ヨッシの手料理なのさー!」


 あー、そういや前に料理用のVR空間の機能拡張をしたって話してたっけな。……意外と悪くない提案か?


「あ、でもアルさんの都合次第なのさー! 流石に予選の全部を見る気はないのです!」

「その辺は、まぁ夜にアルと合流してからの相談だな。三連休、ずっと空いてるとも限らないし……」

「それでいいのさー!」


 アルは……多分、誘っても来ないだろうね。むしろ、『俺の事は気にせず、好きにやっていいぞ』とか言いそう。まぁそれに全面的に甘える気はないけど……本当にアルの都合次第だな。

 あとは、週末に開催予定のイベントの内容にもよるし……3連休だと、3日連続で12時間以上のフルダイブの制限に引っかからないように気を付けねば! あー、でもあれって普通に作るVR空間とも合算だっけ?


「いけそうなら、ヨッシの家でVR空間を作って、そこに集まる感じかな?」

「その方がいいかもね。私が招待したなら、2時間分くらいはログイン制限を延長出来るしさ」

「へ? え、そんな事が出来るのか!?」

「うん、1人に対して1月で2時間までって上限ではあるんだけどね。招待出来るようにって感じの機能だよ。まだ1回も使ってないから、みんなの分は大丈夫」


 ほほう? そんなフルダイブの制約を緩める手段があるとは知らなかった! 流石は公的機関から正式に出る追加認証が必要な、追加機能って事なんだろうね。


「まぁとりあえず、後で予選が見れるかは確認しとく。見れなきゃ意味ないしなー」

「あはは、確かにそれはそうかな! ケイ、確認はお願いね!」

「ほいよっと!」

「ハーレ、何か食べたいものはある? 折角の機会だし、思いっきり作っちゃうよ?」

「あぅ!? 何にするか、悩むのさー!?」


 具体的に今週末がどうなるかはまだ分からないけど、なんだか楽しい週末になりそうだな。ははっ、まぁたまにはこういうのも良いだろ!


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