第1416話 別のゲームでの対戦 中


<カウントダウン、開始>


 ラウンド2が開始となり、対戦エリアへと再び送られる。ラウンド毎にエリアが変わる訳じゃないから、今回もまた荒廃した都市だな。


「さて、ちょっとはまともに銃も使ってみるか」


 直樹のプレイスキルの高さと、晴香の思った以上のスナイパーへの適正もあって、俺はほぼ銃を使わずに終わらせた1ラウンド目だけど……その印象が大きく残ってるだろうから、今度はそれを上手く使おう。

 まぁどの銃が手に入るか次第だけど『エレメント』が多めに手に入れば、また手榴弾やら設置型の爆弾として使うのもありだよなー。消耗が激しいとはいえ、銃とは別に持てる武器ではあるんだし……まぁ下手に使えば自滅もあるけど。


「ん? あー、そういう動きも状況次第で出来るか?」


 明確に動きが良くなってる実感も、その要因となっているものも把握は出来た。ならば、それを意識的に使うのもありだよな。まぁ実行出来る状況が整えばの話だけど……。


<対戦開始:ラウンド2>


 さて、2ラウンド目が始まったし、音声は……いっそ、こうしてみるか。オンラインでの野良対戦なら大概なマナー違反だけど、部活への勧誘を断った件で敵視してきた事もどうかと思うしなー。その辺、ちょっと意趣返ししてやろうっと!


「直樹! 今回も銃なしで仕留めていくぞ!」


 大声で聞こえるように……あ、割とすぐ近くに直樹がいたよ。って、駆けてきてる? って、ぶん殴ってきた!? まぁ、当然の反応かもなー。うん、オンライン対戦で見ず知らずの相手にこんな宣言をしたら、トラブルの元だしね。


「何のつもりだ、圭吾!?」

「いやいや、ちょっとした意趣返しだから! あと、今のは作戦だから! 今度は盛大に銃をぶっ放すつもりだから!」

「ハッタリも含んでんのかよ!? ……ったく、ローカル対戦だからって無茶な方法をホイホイとやってくるよな!?」


 いやはや、予想通りの反応をありがとう! すぐに味方だけに聞こえるように切り替えたけど……直樹の反応も想定内。

 まぁ思った以上に初期位置が近かったけど、それは別にいいや。おっ、水のショットガンとかこのマップでは珍しいのを手に入れてんじゃん。


「……圭吾、あの敵意に対して、地味に根に持ってやがるな?」

「まぁなー。なんで悪い事をした訳じゃないのに、あんなに敵意を向けられなきゃならないんだよ。そんな相手を完膚なきまで叩き潰せるなら、それをやるまでじゃん?」

「わー!? 完全にキレてる時の兄貴なのさー!?」

「晴香、うるさいわ!」


 内容は否定しないけど……一切の容赦なく、ぶっ倒してやる! 1ラウンド目は久々だったから慣らしも兼ねてたけど、大体の今の感覚は掴めたしな。


「それで……晴香はもうあちこち動き回ってるっぽいけど、何か見つけたか? 土のハンドガンももう手に入れてるみたいだしさ」

「ふっふっふ、『風のエレメント』を取りに向かってる村田さんを尾行中なのさー! 動きが止まったところを、後ろから撃ち抜くのです!」

「あんまり不用意には近付き過ぎるなよー。誘き寄せられてる可能性もあるからな」

「はーい! 伏兵には気を付けるのさー!」


 さて、北の方に晴香と村田さんの2人がいて、南に俺と直樹か。相沢さんと沢村さんは……さっきの煽りでどう出てくる? 結構反響してたから、近場にいれば様子を窺いに出てくるとは思うんだけど……。

 それと近場に『エレメント』は……ふむふむ、西の少し先に風、北の少し先に土か。他にもある可能性はあるけど、建物で視界が遮られて確認は出来ないな。


 既にどこからか狙われていてもおかしくないし、手早くどっちかのエレメントは取りに行きたいとこだけど……さて、どういう手段でやろう

 もしスナイパーライフルがあったら、俺ならエレメントを確保する寸前でエレメント自体を消滅させて、動きが止まった瞬間を狙う。もしくは、俺と直樹が離れた瞬間だな。

 少なくとも直樹がすぐ隣にいる今の状態では、2人同時に仕留められる状況でなければ動かない。よっぽど離れた位置からの狙撃でなければ、直樹なら位置をすぐに割り出すだろうしね。さて、そうなれば……。


「直樹、そのショットガンで俺の背中を撃ってくれない?」

「……は? いやいや、フレンドリーファイアはないが、どうやっても衝撃で体勢は崩れるだろ!?」

「それが狙いだから、問題なし!」

「……何を考えてるか知らねぇが、いいんだな?」

「問題あったら、そもそも言ってないっての!」

「ははっ、違いねぇな! おらよ!」

「おっし!」


 何をするかを説明しなくとも、狙いがあるって事だけで実行に移してくれた。ははっ! 思った以上の衝撃だけど……初速の加速には十分!

 少し形は違うけどもモンエボで何度も経験した、爆発での加速をアバターの動作へと繋げていく! 普通に走るイメージに加えて、限界超えて前に進んでいくイメージで!


「……へぇ? 味方からの銃撃で加速って、どういう発想してんだよ! でもまぁ、それで1人釣れたか!」


 おっ、あわよくば予想外の光景に驚いて身を乗り出してくればいいとは思ってたけど、そっちの狙いも成功か。まぁそっちの処理は直樹に任せるとして、俺は風のエレメントの確保に向かう!


「無茶苦茶な事ばっかやってくれるね、吉崎くん!」


 おっと、目の前から土のスナイパーライフルを構えた相沢さんが出てきたけど……流石にこの距離では相性が悪いだろ。狙いを定めさせないように左右へ動きつつ……おー、危ない、危ない。この状況で頭をピンポイントで狙ってくるか。


「っ!? 地面にナイフを突き刺して、方向を変えるの!?」


 いやー、意外と曲芸的な動きも出来るもんだね。突き刺したナイフ足場に右方向へ大きくジャンプしたけど……水の膜で跳ねての移動に近い感じはしたかも? もしくはロブスターで跳ねる時とか!


「だったら!」


 あ、動きまくる俺じゃなくて、動かないエレメント狙いに切り替えたか。それは妥当な判断だし、武器の確保を防ぐならそうなるよなー。

 まぁそれに固執しなけりゃ済む話だけど……あー、後で回収は必要になるけど、このまま離れようっと。逆にいい囮になるだろ、あのナイフ。


「ふふーん! これで武器は……って、あれ!? いない!?」


 武器の入手を防ぐのはいいけど、完全に目を離したのは失敗だな。流石にガラスを割ったら気付かれるから、元々割れてたとこからビルの中へと突入! 1ヶ所が潰されたなら、他の場所のを確保しに行けばいいだけだ!

 おっ、キル数が同時に2増えたって事は、晴香と直樹がそれぞれに倒したな?


「晴香ちゃん、やるじゃねぇか」

「ふっふっふ! 忍び寄るコツを掴んだ気がするのです! あ、兄貴、武器はいりますか!? エレメントが目の前にあるし、私は他の武器がいいのさー!」

「あ、それならくれ! ナイフを置いてきたし、流石に武器なしはなー」

「おい、圭吾!? まだ何も武器を手に入れてないのに、なんでナイフを手放してんだよ!? 復活しても、あれは手元に戻らねぇぞ!?」

「大丈夫、大丈夫。後でちゃんと回収するから」


 むしろ、ここでハンドガンが手に入るなら、ナイフの回収も楽になるしな。なんなら、そのまま相沢さんも仕留めてしまうか。

 そう話してる間に、晴香が使ってたハンドガンが送られてきたか。よし、回れ右で元の方向に戻れ!


「あ、風のアサルトライフルだったのさー!」

「そう都合よく、スナイパーライフルは出てこないか」

「そりゃそうだろ! まぁ弾速の速い、中距離で使える風のアサルトライフルは使いやすいけどな」

「だなー」


 1番扱いやすい武器種だし、とりあえずの凌ぎの武器としてはハンドガンよりもいいだろ。他に良い武器が出れば、弾用のエレメントに変換しちまえばいいだけだしな。


「さて、相沢さんは……」


 ビルの中へ入ってきた場所に戻って、壁に隠れつつ様子を窺って……あー、ナイフを置いてきたから、回収に来ると思って離れずに待ち構えてるのか。まぁナイフがないと、武器を弾に変換出来ないしね。狙いとしては悪くはない。

 さて、ここからどう攻めるか。うーん、これって別に俺が無理に突っ込む必要もなくね?


「直樹、俺の南側に相沢さんがいるけど、仕留められる? 武器は土のスナイパー」

「……出来るが、なんか人使いが荒くねぇか?」

「大丈夫、大丈夫! 気はこっちで引いとくから!」

「ま、指揮官の指示には従う……っと、目の前で復活か! おらよ!」


 ほほう? またキル数が増えたけど、直樹の目前で復活とは運がないね。まぁ今ので直樹の位置は銃声と目撃の2つから、相沢さんに位置はバレただろうけど……むしろ、それは都合がいい! って、あれ?


「……おい、圭吾。相沢さんのとこに、もう1人がやってきたぞ」

「それはこっちでも確認済み。スナイパー2人って、また妙な構成になってんな」

「兄貴、どうするのー!?」

「どうすっかなー」


 直樹が突っ込む間に俺が奇襲を仕掛けるか、逆に俺が先に奇襲を仕掛けてから直樹に突っ込ませようかと考えてたけど……このタイミングで合流とはね。

 うーん、スナイパーが2人か。他の銃に変える余裕がなかったのか、何か作戦があっての事なのか……。まぁ見つからないように、隠れとくけどさ。


「わっ!? 北から撃ってきたのさー!? これ、アサルトライフルなのです!」


 あー、晴香の近くにもう1人が出たか。これで今の全員のおおよその位置が分かったけど、どうしたもんか。まぁ最低限、これは言っとこう。


「ヘッドショット以外での即死はないから、頭を下げて、建物を盾にしながら逃げて……あー、俺の方まで来い!」

「了解です! わー!?」

「圭吾、晴香ちゃんを追ってる奴を仕留める気か?」

「まぁ状況的に、晴香を挟撃しようとはするだろうしな。その隙を狙う」

「……その程度は読まれるだろ?」

「だろうなー。ただ、俺が刺したナイフも、直樹の動きも、見失ってる俺の位置も、全部に警戒するのは厳しいよなー? 直樹、手榴弾を作れるくらいのエレメントは?」

「土と風でなら、あるにはあるが……まとめて爆殺か?」

「いや、シールドを作って、風の爆発を受けて自分で吹っ飛べ! それで懐に入ってナイフで大暴れで! 晴香は、そこを目掛けて思いっきり撃ちまくれ。追いかけてきてるやつは、俺が仕留める」

「本当に無茶を言いやがるな!? でもまぁ、乱戦に持ち込むのもありっちゃありか。流石に晴香ちゃんに突っ込めとは言えんし、状況的にも俺しか出来んな」

「そういう事! それじゃ合図をしたら任せた!」

「……ったく、うちの部長よりも人使いが粗いもんだな!」


 わっはっは! 俺に指揮を任せたんだから、指示には従ってもらうまで! 相沢さんともう1人は周囲を警戒しつつ、ナイフを突き刺した場所からは大きく動けないでいる状態で……晴香が逃げてきている方向からは銃声が響きまくってるな。直樹は射線が通らないように、隠れながら相沢さん達に東側から接近中。


 晴香のマップ上での位置を見る限り、もう少しで辿り着きそうだし……今のうちに迎撃を狙える位置に移動しとこ。あんまり距離がありすぎると弾速が速くて貫通力がある風のハンドガンでも、当てるのは難しいからな。ヘッドショットは無理だとしても、体勢を崩すくらいはしておきたいし……。

 おっ、このビル、1階降りたら中が貫通して吹き受け状態になってるじゃん。こういう破壊状況って、地味にランダムだからなー。こりゃラッキーな条件じゃん!


「晴香、俺がいるビルは分かるか?」

「えっと、えっと、多分見えてきた! どうすればいいですか!?」

「その中に逃げ込んでこい。上から狙えそうだしな」

「了解です!」

「おいおい、もしかして貫通してんのか、そこ!?」

「まぁ吹き抜け状態だなー。あー、出来れば自分で撃つんじゃなくて、上から爆弾を放り込みたい」

「……建物、そのものを崩す気かよ」


 いっそ、生き埋めにしつつ、倒壊する様子に気を取られるようにしたいくらいだけど、まぁ流石に手持ちが足りな……くもないか? いや、ナイフがなければ、このハンドガンをエレメントに分解は出来ないか。


「兄貴、ビルに入るよ!」

「ほいよっと!」


 晴香の姿が見えて……土のアサルトライフルをぶっ放してる相手も視認出来た。地味に晴香がかなりダメージを受けてて危ないけど、狙うはここ!


「直樹、突っ込め!」

「おうよ! おらぁ!」


 東から爆音が響くと同時に、流石に少し動きが止まったな! とりあえず、これでも食らっとけ! 上から飛び降りながら、ハンドガンを連射!

 おっ、流石に上から奇襲とは思ってなかったみたいで、上手くヘッドショットが決まったな。結構な高さからの飛び降りだったけど、着地も無事成功。ふむ、やっぱりアバターの動きが相当良いな。飛び降りながらの射撃も、結構いい感じで狙えてたしさ。


「圭吾、ナイスだ! わっはっは! スナイパー2丁で、近接を戦おうなんて甘いわ!」

「晴香、そのまま直樹の援護に行け! 直樹に当てても問題はないからな!」

「了解です! 突撃なのさー!」


 さーて、俺がすぐ近くにいるのもバレただろうけど、スナイパーが2人の状態でこの状態をどう凌……って、こっちに銃口が向いた!? いや、微妙にズレて……って、もしかして!?

 あ、ヤバっ!? いつの間にか、柱に風の爆弾が設置されてる!? ちっ、相沢さん、1番最初にここに罠を仕掛けてたか!?


「初めから、ここを崩すつもりでのスナイパーか!」


 1ラウンド目に、ちょっとトラップを仕掛けまくり過ぎたかな? 同じような方法を返してくるとはね。ともかく、爆弾が撃ち抜かれて爆発したし、即座に退避! このままビルの崩落で潰されてたまるかっての!


 

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