第1403話 ケイとサヤの対決 下
遠隔同調でコケの一部をサヤの背後に移したけども……気付かれてないよな!? 思いっきり竜の目がこっちに向いてる気がするんだけど、視点はクマの方だよな!?
てか、遠隔同調の使用中って、HP表記はどこに出る!? コケの場合は群体数だけど……いや、考えるより一気に攻めた方がいいか! 2分割されている俺の視界と違って、サヤはどっちか片方のみ! 気付かれたとしても、どちらかの不意は突ける!
<行動値10と魔力値20消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 27/106(上限値使用:21): 魔力値 151/314
不意を突くのが目的だし、ここは遠隔同調で離れたコケから魔法砲撃で放水! って、量が多いな!?
「っ!? え、後ろから!? わっ!?」
ダムの堰を切ったかのような異常な量の水が湧き出たような状態になって、流石のサヤも慌ててるね。でも、津波に呑まれたみたいな感じで上手い具合に……いや、そう上手く流されてくれそうにないな。竜の背にしがみつくような形で、流れに乗ろうとしてるか。
「……いつの間に、遠隔同調で移動してたのかな?」
「さてね?」
「っ! これじゃ、下手に身動きが取れない……」
凄い勢いで湧き出す水は、平原の傾斜に沿って思いっきり流れていってますなー。具体的に言えば、元々あった川に流れ込んで思いっきり増水しまくった状態。
サヤはどんどん下流へと流されていってるけど……この放水状態、操作の制御下に置けるか? スキルの使用中の判定になれば厳しいんだけど……あ、やっぱりそうなるのか。なら、生成をここまでにして、その水を使ってみよう。あ、追加でこれも良いかも?
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を10消費して『双打連破Lv1』は並列発動の待機になります> 行動値 17/106(上限値使用:21)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を4消費して『水の操作Lv10』は並列発動の待機になります> 行動値 13/106(上限値使用:21)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
何か刻印を使いたいとこではあったけど、行動値の余裕はないから仕方ない! ともかく、湧き出た大量の水が消える前に操作下に置いて、サヤを反発力を盛大に強めた空洞で覆っておく!
あと、俺のロブスターとコケが感電しないように空洞を作って隔離しておこう! ……ふぅ、これでキャラ同士が水で繋がってる状態ではなくなったね。
「きゃっ!? っ!? 閉じ込められたかな!?」
「その通り!」
水中ではなく、水の中に覆われた空洞に閉じ込めさせてもらった! 俺が入ってる空洞とは別のやつ! 地面が結構近いから上空に上げて……反発力は強めにして、電気を流しての攻撃も俺には届かない状態!
その上で、一旦空洞から出て、一気に距離を詰めてロブスターで殴りかかる! ここから大攻勢といこう!
「っ! 『双爪撃・風』!」
「真っ向から迎撃か!?」
くっ、サヤの竜をこれで仕留めたかったんだけど、真っ向から打ち合う形になったな! でも、双打連破の吹き飛ばし効果で……って、これはまずい!? 下がれ、下がれ、下がれー!
「『爪刃乱舞・風』!」
<ダメージ判定が発生しました。あと2回の発生で『移動操作制御Ⅱ』は強制解除になります>
「危なっ!?」
「一撃しか……きゃっ!?」
ふぅ、反発力で逆に勢いをつけて戻ってきて斬りかかられるとは思わなかった。もう少し水の中に戻るのが遅かったら……って、まだ安全じゃない!?
サヤが空洞で跳ねまくっている状態の間に、ロブスターを空洞に戻さないと電気がまた来る! 急げ! サヤの対応が、相当早い!
「まだ……かな! 『共生……指示……登録2』!」
<ダメージ判定が発生しました。あと1回の発生で『移動操作制御Ⅱ』は強制解除になります>
「うげっ!?」
ヤバい、ヤバい、ヤバい! あともう1撃受けたら、今の状態で空洞の中に留まる手段がない!? 次が放たれる前に……よし、なんとか退避用の空洞に間に合った!
「……うっわー」
「っ! っ!?」
双打連破と水の中の空洞で、跳ねさせまくるのが狙いだったけど……一応、狙い通りの状況は作り出せたか。とはいえ、竜が方向関係なくエレクトロボムを放ちまくってる状態だし……冗談抜きで、今のは危なかった!
即座に俺の狙いを読んで、ロブスターへカウンター攻撃に動くとか恐ろしいな!? あと1撃が入っていたら、水の操作を解除しないと空洞に留まる手段が無くなるとこだったよ。
「……ここかな!」
「はい!? ちょ、えっ!?」
待て待て待て!? さっきまで跳ねている状態は全然制御出来てなかったのに、体勢を立て直してきた!? 自ら跳ねて、勢いに転化し始めて……だー! 本当に無茶な動きをしてるな、おい!?
「いつまでも閉じ込められるとは、思わない事かな! 『アースクリエイト』『操作属性付与』『爪刃乱舞・土』!」
うげっ!? 俺の水の反発力を利用して、思いっきり勢いをつけまくって、重量を増した爪で水の表面を撫でるような感じで操作時間を削ってくるのかよ!
くっ、いくら水の操作がLv10でも、サヤの爪刃乱舞もLv10だから、盛大に操作時間が削れまくってる!? しかも、行動値の消費量も減ってるから……このままだと必ず破られる! これ、どうしたら……。
「あ、こうすりゃいいだけか」
「っ!? きゃっ!?」
タイミングを見計らって体勢を整えるんだから、着地先の水の位置を少し乱してしまえば……うん、流石に対応し切れずにバランスは崩れたね。
はっはっは! 繊細なタイミングとキャラ制御が必要になる高度な行為だろうけど、その足場は俺の制御下のもの! 乱す事そのものは、それほど難しくはない!
とはいえ……サヤは体勢を何度も崩しながらでも水へと斬りかかっているし、これでは決定打になってないのも確か――
<『遠隔同調』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 13/106 → 13/121(上限値使用:6)
<『遠隔同調』の効果による視界の分割表示を終了します>
あ、遠隔同調の効果時間が過ぎて、コケの核がロブスターの背中に戻ってきた。……もう一度離しておきたいけど、今の状況だとそれも無理だしなー。
サヤとこうして全力で戦うのは初めてだけど……思った以上にやりにくい! 予想外の攻撃は多いし、俺から仕掛けた攻撃は逆に利用すらされてしまう。
あ、双打連破の連撃の有効時間が過ぎて銀光が消えたか。全部叩き込みたかったけど……まぁ最初の2撃で吹っ飛ばせただけでも良しとしようか。
それにしても……さっきから何度もサヤもタイミングをズラしまくっているけど、それにも徐々に合わせてきてるし……あの速度で動きながら、その見極めはとんでもないな!
でも、それならこれでどうだ? 丁度跳ねるのが真上にだし……ここで決める!
「っ!? 変化がないかな!?」
「ご明察! それで、こうだ!」
「っ!? これって!?」
サヤの動きに合わせて、空洞を下へと移動させていく! 正確には空洞を取り囲んでいる水を移動させてるだけだけど……なんとか操作時間は足りるだろ! そのまま地面に激突すれば、大ダメージになるはず!
「これは……マズイかな!? 『略:大型化』!」
「あ、竜を巻きつけ……クッションにしたか!?」
「……はぁ、一気に厳しくなったかな」
そんな事を言いながら、サヤはポリゴンとなって消えていく竜を見ていた。勢いをつける手段が俺由来のものだから、通常の落下ダメージに加えて相当な加速分でのダメージは出たんだろうね。
「でも、まだ負けてはいないかな! 『爪刃乱舞・土』!」
「ぐっ!?」
くっそ! 竜は倒せたけど、地上まで降りた事でサヤの攻撃の鋭さが増した!? もうそんなに水の操作は保たないぞ!?
もう一度、水の操作を展開して……いや、ダメだ。もう黒の刻印の剥奪が再使用出来るようになってるだろうし、それで窒息を狙っても破られる可能性は高い。サヤの行動値が足りない可能性もあるけど……ここは破られるものとして考えておいた方が――
「よし! 破れたかな!」
「……マジか」
まだ次の手を決めかねているのに、剥奪なしで水の操作を突破されたか。よし、ここはダメ元でいいから、これだ! ……サヤ相手にこれで通じるかは怪しいけど、それでも行動値は削れるはず! 俺の方もギリギリにはなるだろうけど……その場合は状況を見つつ、一旦距離を取るまで!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値2消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 12/121(上限値使用:6): 魔力値 149/314
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値2消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 10/121(上限値使用:6): 魔力値 147/314
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
1つずつの量は少なめだけど、生成数は最大数の合計12個!
「っ!? これは数が多いかな!?」
残り僅かな行動値だけど、これでサヤの防御をすり抜けてやるまでだ! クマだけになったなら魔法は効きやすいし、そうでなくても窒息は狙える……というのは、サヤも予測済みのはず。だからこそ、そこを狙う!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を3消費して『閃光Lv3』は並列発動の待機になります> 行動値 7/121(上限値使用:6)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を4消費して『水の操作Lv10』は並列発動の待機になります> 行動値 3/121(上限値使用:6)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
生成した水球のうち、6個はフェイク! 狙いはこの状態からの目潰しだ!
「っ!? ここで閃光!?」
「もらった!」
「がぼっ!?」
おし! サヤに盲目が入ると同時に、6個の水を操作して、その中の1つでクマの頭を覆えた! そこから更に追加生成をして脱出しにくくしつつ、残りの5発を叩きつける!
「っ! っ!? っ!?」
盲目と、窒息狙いの水と、水球5発での同時攻撃は、流石のサヤでも対応出来ないか。下手に暴れるのではなく、この場から離れていこうとしてるけど……させないっての!
「っ!?」
動かそうとした脚に水を叩きつけて、バランスを崩させる。……完全に転ばせるつもりだったのに、転ばずにバランスを保っているのは流石だね。
完全に『窒息』の状態異常になったから……変に出し惜しみをしてたら、このまま俺の勝ちだぞ?
「ぷはっ! これは……マズいかな!?」
よし、今ので剥奪を使ったから、もう防ぐ手段は使えないはず。完全に盲目が回復し切る前に、決め……あ、操作をわざと破らせたのは読まれてそうだし、下手に水の操作で捕まえるのは危ないか? 今の発言も油断を誘ってそうだし……これでも行動値はギリギリ足りるな。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 2/121(上限値使用:6): 魔力値 144/314
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 0/121(上限値使用:6): 魔力値 141/314
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
さて、これはサヤが予測しているかどうかが問題だけど……。
「っ!? 真下に土――」
<『昇華魔法:アップリフト』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/314
おっ、生成するタイミングで頭を下げて四足歩行に切り替えたから、やっぱり水は躱すつもりだったっぽいね。でも、残念。読みはハズレだ。
使ってる魔力値は少ないけど、今必要なのはアップリフトそのものの威力じゃない。隆起する大地を使ってサヤを上へと吹っ飛ばす事、それが大事。今でこそ少なく感じる量だけど、昇華魔法が使えるようになったばかりの頃はもっと少なかったしね。
おー、見事に吹っ飛んでいった。身構えてたならここまで綺麗に吹っ飛ばなかっただろうけど……最後は俺の狙いが上手く決まったか。
「っ!? これ、アップリフト!?」
「ご名答! さて、竜なしで無事に降りれるかな?」
「……それは、無理そうかな?」
そう言っておいて、無事に着地してくる可能性もあるから要警戒で! HPは残り3割くらいまでは削ってるけど、高さ的に絶対に仕留め切れるとも限ら……いや、どうにか削り切れたっぽいな。
<サヤが生存不能になったため、模擬戦を終了します。勝者:ケイ>
ふぅ……なんとかギリギリ勝ったー! あー、マジで今回の1戦はキツかった! 少しでも対応を間違えてたら、コケとロブスターが斬り離されてたよな!? ……もしくはロブスター自体がやられてたかも。
あ、サヤがクマと竜の共生進化の状態に戻って復活して、こっちに近付いてきてるね。
<模擬戦が終了しましたので、10秒後に外部へと転送されます>
「……あはは、負けたかな。やっぱり、ケイは強いね」
「サヤもなー。さっきので行動値と魔力値、0だったからな?」
「え、魔力値はともかく、行動値もかな!? ……もう少しだけ粘れたら、近接で押し切れた?」
「その前に逃げるけどな!」
「それは惜しかったかな!?」
いやはや、本当にギリギリもギリギリ。あそこで水の操作を使って躱されていたら、少し焦ってサヤの接近を許した可能性は十分過ぎる程ある。急いで逃げるか、届かせないように攻めるか……そこの判断が遅れたかもしれないんだよな。
「まぁともかく、今回は俺の勝ちって事で!」
「あーあ、勝ちたかったなー。ケイ、そのうち再戦はどうかな?」
「受けて立つぞ! まぁ次も俺が勝つけどな」
「次はそうは言わせないかな!」
油断してた気は全くないけど……次に戦う時は、サヤの手札が思っている以上に増えている事を念頭に入れておかないと危険かもね。でもまぁ、楽しい1戦ではあったよなー!
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