第1397話 夜の部、開始!
サヤにも色々あるという事が分かりつつ、とりあえず晩飯のカレーを食べ終えて……食器洗い中。
「兄貴、先に行ってるねー!」
「ほいよっと」
新しく食洗機を設置するのは次の週末だから、そこが過ぎれば俺も同じタイミングでログイン出来るようになる!
「圭ちゃん、ちょっといいかしら?」
「ん? どしたの、母さん?」
「晴ちゃんの旅行の時のオリーブオイルをお土産にって話……圭ちゃんは聞いてる?」
「あー、まぁ一応は?」
うーん、その選定に俺が絡んでいるとは……言っておくべき? あ、そういやこれの報告はしといた方がいいのか。その流れで、相談されたと言ってしまえばいいかもね。
「そうそう、晴香の友達2人とは連絡先は交換しといたから、万が一の時の連絡は取れるようになったよ。その中で、ちょいと相談された結果がそのオリーブオイル」
「……なんで圭ちゃんが、晴ちゃんのお土産の内容を考えてるの?」
「ちょい待った! そもそもその件は、母さんが聞いてこいって言ってきてなかった!?」
「それはそうなんだけど……晴ちゃんから伝えられたから、圭ちゃんは用件だけ伝えたのかと思ってたのよ」
「あー、なるほど……」
そもそも手土産の件は、晴香に伝えた時点で俺の役目は本来なら終わってたはずだもんな。本当に何がどうしてそうなった……って、サヤが相談してきたからか!? 俺が絡んでる部分は晴香には伝えてなかったから、そこで微妙な齟齬が発生したんだな。
「連絡先は交換出来たみたいだし……内容的に相談してきたのは、雫ちゃんじゃなさそうね? えーと、多分、片山さんのとこの『紗香』ちゃんね! 圭ちゃん、具体的にどんな子なの?」
「はい!? え、いきなり何の話?」
ちょ!? ここでサヤの名前を出されるとは思わなかったんだけど……って、そういや親同士で繋がりが出来てるんだった。そうじゃないと、サヤの家に泊まりに行くなんて許可は出ないだろうけども!
「いえね、雫ちゃんのお母さんと色々話してたら、よく話題に出てくる娘だから気になるなーって? 泊まりに行く件で直接、片山さんのご両親に連絡を取ってよくよく聞いてみたら、紗香ちゃんも中学を卒業してから今まで色々あって、気分的に沈んでたって話もあってね?」
あー、うん。色々と問題があった部分、親に筒抜け状態じゃん。恐ろしいな、親同士のネットワーク!?
「まぁそれも随分と元気になったって話も聞いてね。特に晴ちゃんと一緒に遊ぶようになってからみたいだから、色々と気になってるのよ。ほら、圭ちゃんも関わってるじゃない?」
「……あー、まぁ確かに?」
サヤにとっても、今の環境が大きな影響を与えているという事は間違いないっぽい――
「それでなんだけど、お盆辺りに雫ちゃんが一度こっちに帰ってくる予定だから、紗香ちゃんもその時に一緒にどうかなーって親同士で話して――」
「はい!?」
ちょ、晴香が向こうに行くだけでなく、サヤがこっちに来るのか!? え、そんな話は初耳なんだけど!? って、危な!? 思いっきり洗ってる最中の皿を落としかけた!?
「圭ちゃん、驚き過ぎじゃない?」
「いや、まったく聞いてなかった話だったもんで……」
ヨッシさんがお盆にお婆さんの家に帰ってくるという話は前にチラッと聞いた覚えがあるけど、サヤは親戚が集まってくるとか言ってた気がするんだけど!?
「あぁ、まだ本決まりじゃないのよ? 紗香ちゃんのお母さんが『親戚の集まりはあるけど、そこへ強引に縛るのもねー』って言って、考え始めたとこだからね。まだ紗香ちゃんも知らないと思うわよ?」
「あ、なるほど。だったら、下手に俺からは言わない方がいい?」
「まだ大丈夫か分からないのに、変に期待させてもあれだからそうなるわね」
「……ほいよっと」
本決まりじゃない話を、俺にする必要はなくね!? いや、でもサヤがこっちに来るかもって聞いた時はびっくりした! 危うく、皿を1枚割ってしまうとこだったよ。我ながら、なんとか落とさずに済んだのはナイス!
「……この反応、面白くなりそうね!」
「なんか母さん、楽しんでない?」
「そりゃもちろん楽しんでるわよ! 晴ちゃんと雫ちゃんの友達で、圭ちゃんとも仲良くしてるなら、親としてはね? 色々と気になる部分ではあるのよ」
「……そういうもん?」
「そういうものよ」
まぁ晴香が落ち込みまくってたのを考えたら、そりゃ母さんとしては気になるか。ヨッシさんの親も、サヤの親も、それぞれに問題を抱えてた状態だったなら……どこも気にして当然なのかもなー。
「あ、そうそう、それと山田くん! 一緒のアルバイトなんだってね?」
「あー、まぁそうなった」
そっちも筒抜けかーい! まぁ山田については何度か家に来た事もあるし、母さんとも面識はあるもんな。スーパーのおばちゃん達から話が伝わっていても何の不思議もないか。……主婦のネットワークも恐ろしいもんだな。
ん? あ、サヤがこっちに来る可能性があるなら、この件は早めに伝えておいた方が……いや、ヨッシさんが帰ってくるのは確定なら、晴香はアルバイトのシフトは避けるよな? うん、間違いなく避けるはず。
「あ、話は戻すけど……オリーブオイルの話ね?」
「そういや、それが元だったっけ。えーと、何か問題あった?」
「……流石にお土産として直接持っていかせるには、微妙じゃないかしら? 手土産じゃなくて、先に送っておいた方がいいわよ。それに……時期的に、完全にお中元ね」
「あ、確かにそりゃそうだ!?」
手土産として考えてたけど、どう考えても手土産というよりお中元の内容じゃん!? 自分でお中元を送るなんて機会なんてないから、思いっきりその辺の考えがなかったわ! 店長さん、その辺の指摘をして欲しかったんだけど!?
「えーと、それだとオリーブオイルは却下?」
「いえ、普通に明日にでもお中元として送るようにしてくるわよ」
「あー、なるほど」
ふむふむ、確かにその方が晴香の移動時の荷物も少なくて済むのか。まぁ改めて考えれば、オリーブオイルを送ったらそうなりますよねー。
「でも、それだと手土産は考え直し……?」
「ううん、そこはもう晴ちゃんに道中で気になったものでも買っていってもらおうかと思ってるわよ。なんだか妙に悩ませちゃってたみたいだしね?」
「……まぁ、それはあるかも?」
サヤは手土産自体をいらないと言ってたくらいだし、最終的には俺に相談してくる事態にもなってた訳で……ここから改めて考え直せっていう方が厳しいわ! こっちの特産のお土産は諦めて、移動途中でのどこかの物を買っていくのはありかもなー。
「ん? 根本的に、その話ってもう俺は関係なくね?」
「えっと、報告だけのつもりだったんだけど、まさか圭ちゃんが考えてたとは思ってなくてね。あ、それと雫ちゃんや紗香ちゃんと連絡が取れるようになってるかの確認ね?」
「あー、そっちがメインか!」
うん、なんか余計な情報まで言ってしまった感もあるけど……まぁ困る内容でもないし、別にいいか。なんだか思わぬ形で、サヤ達がまだ知らない情報を伝えられた気もするけど……。
「おし、片付けは終わり! えーと、まだ話ってあったりする?」
「ううん、連絡先が交換出来てるか確認しておきたかっただけだから問題ないわよ」
「あ、そういや手土産の件って、晴香には?」
「まだ言ってないけど、まぁそれは寝る前には話すわよ。あ、圭ちゃんが伝えてくれてもいいけど?」
「……なんか余計な事まで言いそうな気がするから、それは遠慮しとく」
「確かにそれはそうね」
「それじゃ俺は自分の部屋に戻る!」
「あ、圭ちゃん、寝坊には要注意ね。今日、危なかったって晴ちゃんから聞いたわよ?」
「……ほいよー」
くっ、晴香め、母さんに報告してたか! 今朝、寝坊しかけたのは夜中に妙に眠れなかったのが原因だから、ゲーム自体は関係ないはず。……なんであんなに昨日の夜は落ち着かなかったんだろ?
ともかく、母さんとの話は切り上げ! まさかサヤがこっちに来る可能性があるとは思わなかったけど……まぁまだ本人すら知らないのなら、余計な事は言わないようにしないとな。
◇ ◇ ◇
自室に戻り、ログインしてくればいつものいったんのいるログイン場面へとやってきた。今の胴体部分は『今週末に、何かが起こる!』って……え、これって何かのイベント予告か? でも、次のイベントって共闘イベントなんじゃ? あ、前兆的な何かか!?
「いったん、今週末って何が起きるんだ?」
「それは言えない内容だね〜! でも、金曜日の夜からは要注意!」
「……ほほう?」
明後日の夜からか。ふむふむ、どうも『要注意』という言い回しが気になるね? 気にしないといけないような何かが起こる可能性がありそうだし……これは、本格的に次の共闘イベントの前兆が出てくるのかも?
でも、前回の開催時にこんな予告みたいな事はなかったけど……まぁ、週末になれば分かるか。夏休み前の3連休にはなるし、大型アップデート前のちょっとしたミニイベントという可能性もあるもんな。
「あ、いったん。スクショの承諾をするから、一覧をくれ」
「はいはい〜。こちらになります〜!」
「サンキュー!」
晴香から話を聞く為にログアウトしたから、処理はまだ出来てないもんな。サヤとの対決までにはちょっと時間の余裕はあるし、今のうちに手早く済ませてしまおう。
えーと……うん、まぁ昨日はシュウさん達と一緒にいたんだから、やっぱり大量にスクショが届いてますなー。飛び抜けて枚数が多いのは、ルストさんか。
ほんと、昨日の色んな光景がスクショに撮られてるなー。こうやって一緒に動いた時のスクショは、拒否はせずに承諾するとして……それ以外に混ざったりはしてないか? ふむ……特にはなさそうだし、一律許可でいいか。
「いったん、全部許可でよろしく!」
「はいはい〜! そのように処理しておくね〜!」
「ほいよっと。それじゃコケでログインも頼んだ!」
「夜もお楽しみにください〜!」
「おうよ!」
さーて、まずはサヤとの対戦からだな! なんか今日はトーナメント戦やら模擬戦が多いけど、まぁたまにはそういう日もいいかもね。
それが終わってからどうするかは……まぁその時になってから考えよ。出来ればLvを上げに行きたいけど、みんなの希望にもよるしなー。
◇ ◇ ◇
ログインしたのは、エンの外れの位置。今日は昼間の日だし、晴れてて木漏れ日が心地いいね。
そういやハーレさんと『純結晶』の効果の一時付与のスキルの確認と、そのまま続けての戦闘をした後だけど……『純結晶』で一時付与されるスキルの、スキルLvがどうなるかって判明してるかな?
「それより先に、合流が先か」
えーと、とりあえず誰がどこにいるかを確認しようか。まぁこの後はサヤとの対戦があるんだし、みんな桜花さんのとこにいそうな気がするけど……って、共同体のチャットが光り始めたな。さて、誰の書き込みだ?
アルマース : ケイ、ログインしたなら桜花さんのとこまで来てくれ。
ケイ : ほいよっと。ハーレさんはもうそっちに行ってる?
ハーレ : 既に到着済みなのさー!
サヤ : ケイ、待ってるかな!
ヨッシ : 出来るだけ急いでくれると助かるかも。
ケイ : ほいよっと。とりあえずすぐ行くわ!
そういや、レナさんもサヤとの対決を観にくるみたいな雰囲気だったけど……その辺はどうなってるんだろ? ベスタも解説に呼んでたし、場合によっては実況がとんでもないメンバーになるんじゃ?
「ま、とりあえず桜花さんのとこに行くか」
今の時刻はもう少しで20時ってとこだから、予定の時間よりは30分以上早いしね。新しい食洗機が設置されれば、もっと早くにログインが可能にはなるだろうけど……それは今週末の土曜までの我慢!
あ、そういや同じ日に俺の部屋のドアに鍵も付くんだった。あれ、何時頃になるんだろ? うーん、まぁ取り換えにそんなに時間はかからないだろうし、大丈夫だろ!
<行動値上限を使用して『移動操作制御Ⅱ』を発動します> 行動値 127/127 → 125/125(上限値使用:2)
まぁその辺は後で詳しく確認するとして、とりあえず今は水のカーペットを展開! 新しい移動操作制御なら2回までは当てて大丈夫だし、普段使いにはしやすいよなー。
「……ロブスター側でも、取ってみるか?」
水の操作Lv10を登録すればいいだけなら、サクッと取れるはず。……いや、そんなに簡単か? 進化ポイントで取れた『移動操作制御Ⅰ』ほど、簡単とも思えないんだけど……。
うーん、まぁまずはみんなと合流する方が先だな! ササっと水のカーペットに乗って――
「おっ、ケイさんじゃん!」
「ん? あ、ダイクさんか!」
隣に俺と同じ水のカーペットで飛んでいるマンドレイクのダイクさんがやってきたね。どうも今は1人っぽいけど……。
「レナさんは一緒じゃないのか?」
「最近のレナさんなら、20時過ぎまではログインはしてこないぞ」
「あ、そういやそんな事も言ってたっけ!」
オフライン版の配信を見てるって話だったよな、確か。俺もチラッと見たけど……レナさん、相当気に入ってるんだなー。まぁ時間があれば見てみたい変わったプレイではあったけど……時間帯が微妙に悪過ぎる!
「そういうケイさんは、この後はサヤさんと模擬戦だよな?」
「まぁなー。それ、レナさんから聞いた?」
「それもあるけど、結構話題になってるぜ? 『グリーズ・リベルテ』内での対戦、2戦目だってな!」
「ん? なんで2戦目?」
「なんでって……ハーレさんとも対戦したんだろ? それを見そびれたって、なんか余計に注目されてる感じだぞ」
「あー、あれもカウントに入ってるのか!」
確かにあれも『グリーズ・リベルテ』内での対戦って事にはなるもんな。なるほど、それでより注目を……って、ハーレさんがあの時に対戦にしたのは、これが狙いか!? うーん、流石に考え過ぎ?
「まぁまだ時間はあるし、ケイさんは桜花さんのとこに行くんだろ? 俺も桜花さんのとこに行くから、一緒に行こうぜ!」
「だなー」
さーて、とりあえず桜花さんの元へ向かいますか! なんか混雑してそうな予感もするけど……まぁそれはその時だ。少なくとも、俺らが移動出来ないって事はないだろうしね。
問題はサヤに確実に注目が集まってるだろうけど……これが荒療治って事になるのかもな。サヤ、あんまり無理してなければいいんだけど……。
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