第1393話 晩飯までの間に
『変質進化・侵食』について色々と検証する為のトーナメント戦も終わり、サヤとヨッシさんは晩飯を食べにログアウト。19時まで俺とハーレさんだけにはなったけど……。いや、周囲には人はたくさんいるけど、今はむしろそれが邪魔というか……とりあえず場所を変えるか。
「さて、ちょっと場所を移して話を――」
「あ、ケイさん! それはリアルでいいですか!?」
「……まぁそう言うなら、それでもいいけどさ」
「それじゃ、その件は後でなのさー!」
「……ほいよっと」
ここでは話せない内容って事は、サヤのリアルに関わってそうだな。あー、なんとなく理由は分かったかも? あれ、ハーレさんなりの荒療治だな? ……目立つのが苦手な原因は、後天的な理由みたいだしさ。
サヤ自身、PTとして動く時に目立ってるのは気にしてないし、意識の持ち方が変われば、さっきみたいな反応はなくなるのかも? 少なくとも、サヤは完全な人見知りって訳でもないもんな。
まぁとりあえず、後でちゃんと理由は確認するとして――
「という事で、先に『進化の軌跡・雷の純結晶』の性能確認なのさー!ケイさん、まずはアイテムの説明欄からお願いします!」
「分かったから、少しテンションを下げろ! てか、この状態で継続?」
「何か問題がありますか!?」
「……特にないなー」
思いっきり注目を集めてはいるけども、それはさっきまでの実況と何も変わらない。そもそも、その実況の真っ最中に生成したアイテムだから、実況が終わってもこっちの検証を待ってる様子。うん、リアルの都合とか関係なく、下手に離れられる状況でもなかったよ。
「まぁとりあえず、実際に使ってみる前に説明を読み上げとくか」
「はーい! ワクワク!」
「おう、ケイさん! 詳細情報の確認を頼んだぜ!」
「……一時付与……どうなってるんだろ?」
「内容次第じゃ、黒の異形種の討伐を頑張らねぇとな!」
桜花さん、風音さん、ザックさんの3人を筆頭に、他の人達も興味津々な様子ですなー。まぁ新アイテムなんだし、そりゃこうもなるよね。さて、とにかく説明を読み上げていきますか。
【進化の軌跡・雷の純結晶】
雷属性を得るまでに至る進化情報の結晶を、純度が極めて高い状態で再結晶化したもの。通常の結晶より、より高度な力を引き出す事が可能になる。
30分限定で成熟体を特殊進化の『纏属進化』をさせる事が出来る。付与される属性は雷。使い捨てアイテム。
ふむふむ、普通のものから更に純度を上げて再び結晶に変えたものがこれっぽいね。効果時間は変わらないけど、説明からでも分かる上位版っぽい内容だな。
「へぇ? 『純度が極めて高い状態で再結晶化したもの』か。そうなると、俺ら不動種での上位変換が必須なのかもな」
「……桜花の役目……また増える?」
「ま、それならそれで望むところだ! この上位変換に必要な素材は判明してる訳だしな!」
「なぁなぁ、桜花さん? これ、普通の成熟体用の進化の軌跡を、再構築ってのは出来ねぇの?」
「……そりゃ、考えてみた事もなかったな? ザックさん、それは良い着眼点かもしれねぇぜ!」
「そういう事なら、私が持ってる『打撃の極意』も素材に使って下さいなー!」
「おっ、いいのか! 助かるぜ、ハーレさん!」
ふむふむ、さっきは未成体用の進化の軌跡からの『上位変換』で生成したけど……確かにザックさんの疑問は、可能性としてありそうな話だ。
「……おっ、どうやら当たりだな。成熟体用の『進化の軌跡・火の結晶』と『進化の軌跡・打撃の極意』が1つずつで上位変換は可能みたいだぜ。まだ実行はしてないが……ハーレさん、欲しい属性とかはあるか? あれば、その属性に『上位変換』をしてみるぞ?」
「それなら、そのまま火属性でお願いします! 私達のPTは、火が不足してるのさー!」
「よしきた! なら、始めるぜ! 『上位変換』!」
すぐに作る事になったけど……この組み合わせって、実は火属性と打撃特性の複合になったりはしない? なんか火属性の応用複合スキルが一時付与出来る代物が出来そうな気も――
「おし、完成だ! ……別物が出来る可能性もチラッと過ぎったが、まぁ出来たのは『火の純結晶』だな。ほれ、ハーレさん!」
「おぉ! 桜花さん、ありがとー!」
あー、俺が考えてた可能性は桜花さんも考えてはいたんだな。でも、そうはならずに、純結晶へと再結晶化になったか。
「……桜花さん、属性と特性を併せ持つ『進化の軌跡』ってあると思う?」
「それが出来るんじゃねぇかとも思ったんだが、条件的には違ったみたいだな。あったら面白いとも思ったんだが……」
「……纏属進化と……変質進化は……併用出来るから……存在しないかも?」
「まぁそういう可能性もあるよなー」
うーん、併せ持つ進化の軌跡となれば……そもそも『纏属進化』と『変質進化』のどっちになるのかが不明になるもんな。進化の種類が違うという点から考えたら、流石にそういう進化の軌跡は存在しないのかも?
「俺としてはあれだな! 使い捨てじゃない『進化の輝石』の上位版があるかどうかが気になるとこだぜ!」
「あー、それは確かに?」
最近はもうほぼ死蔵になってる『進化の輝石・樹』も、昇華相当まで性能が上がるのなら出番も出てくるかもしれない。とはいえ、あっちの進化の輝石はプレイヤーから入手は不可能なアイテムだしなー。
「もし仮にそれがあるとすれば……何かのイベントの報酬とか?」
「はい! 使い捨てじゃない極意系の進化の軌跡も、その時に出てくる気がします!」
「……可能性としては……次の共闘イベント?」
「もしくはあれだな! 夏の大型アップデートで追加される内容の報酬とかだな!」
「おぉ!? その可能性もありそうなのさー!」
来週の木曜に実施される夏の大型アップデート。1週間くらいあれば、まぁ成熟体のフィールドボス戦を普通に無理なく実行出来るくらいには育ってくるだろうし……タイミング的にもあり得るな。
「おし! ハーレさん、手早く実際に使ってみるか!」
「はーい! エンのとこで、私とケイさんで模擬戦をしてやるのでいいですか!?」
「実際にここで消費したら勿体ないしなー。それでやるぞ」
「了解です!」
「って事で、ちょっと行ってくる! 桜花さん、中継は任せた!」
「おう、任せとけ! ザックさん、実況を頼めるか?」
「よっしゃ、やってやろうじゃん! おし、解説は風音さんに任せるぜ!」
「……分かった!」
さーて、それじゃ新たな進化の軌跡の検証、第二弾といきますか! とはいっても、こっちは一時付与のスキルを確認するだけだから、そんなに手間はかからないだろうけどね。……未知のスキルがあったりしなければだけど!
◇ ◇ ◇
<『群雄の密林』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>
中継と実況用に俺、ハーレさん、桜花さん、風音さん、ザックさんの5人でPTを組んでから、エンの元へと転移してきた。さて、すぐに――
「来たな、ケイ、ハーレ」
「ベスタ? あ、オオカミ組のみんなもか!」
「おぉ! みんな、勢揃いなのさー!」
いなり寿司さんはいないっぽいけど、蒼弦さんや湯豆腐さん、それに他のオオカミ組の面々も揃ってるね。でも、なんでここで待ってるんだ?
「えーと、ベスタ達は……何をやってるところ?」
「誰かが、検証の最中で盛大に項目を増やしてくれたからな? 今度は狙った通りの組み合わせにしつつ、検証の続きをしようとしてるところだ」
「……ですよねー!」
その『誰か』ってどう考えても俺の事ー!? うん、まぁ『進化の軌跡・侵食』を持ってる人はまだ限られるんだし、ベスタとオオカミ組が引き続き検証をするのは何の不思議でもないな! というか、ここで遭遇するのは必然とも言えるよね!
「それで、ケイとハーレは……例の『純結晶』の効果確認か?」
「まぁそうなるなー。模擬戦なら実際に消費しなくて済むしさ」
「やってる事は同じなのです!」
「消費アイテムの効果確認だと、そういう選択肢になって当然か。中継には流すのか?」
「そのつもりだけど……やめといた方がいい?」
「いや、逆だ。積極的にやってくれ。中継で確認する奴が多いなら、まとめへの編集は他の奴に任せておけるからな」
「あ、そういう理由か!」
なるほど、中継で検証をするとまとめの編集は楽にはなるのか。まぁベスタ以外にも編集してる人は沢山いるんだから、そうなるよねー! 編集してくれてる人達、いつもお世話になっております!
「それとは別件だが……ケイ、夜にサヤと対決するそうだな?」
「そうなるなー。そういや、ベスタに解説役を頼むとか聞こえてたけど……」
「時間帯が少し微妙だが、まぁ間に合うなら引き受けるつもりではいるぞ。興味はある一戦だからな」
「あ、マジか! そういう事なら、よろしく!」
「あぁ、任せておけ」
サヤは集中力が散るのを嫌がるだろうから、実況の音声は無しになるだろうけど……見てる側としてはベスタが解説してくれるのはいいだろ!
まぁ解説出来る程度に抑えて戦うなんて真似をする気はないし、これで心置きなく全力で暴れられる! ……サヤ相手に手抜きとか、負けに行くようなもんだしさ。
「俺からの話としてはそんなもんだ。中継を待たせているんだろうし、これ以上、変に足止めするのも悪いだろう。今は混雑してないし、早めにやってしまえ」
「だなー! ハーレさん、行くぞ!」
「はーい! ベスタさん、夜によろしくお願いします!」
「あぁ、また後でな」
さーて、それじゃサクッと模擬戦を始めて、『純結晶』の進化の軌跡を試しに使っていきますか!
◇ ◇ ◇
ベスタやオオカミ組と挨拶をしてから別れて、ハーレさんに模擬戦を申し込んで、エンの樹洞の中まで移動してきた。さて、模擬戦の条件設定をしていきますか。
「えーと、アイテムの使用は必須だけど……他はどうする?」
「『純結晶』の効果の確認だけだから、どこでもいい……はっ!? 海の中だったり、雪山だったり、砂漠だったら困るのさー!?」
「……完全なランダムで決めるのはなしにしとくか。でも、見通しはいい方がいいし……草原辺りでどう?」
「それでいいのさー! 晴れで昼間がいいのです!」
「ほいよっと」
対決が目的ではないから、出来る限り安定して実行が出来る条件の方がいいからね。ハーレさんが火で、俺が雷だから、夜でもいいような気はするけど……まぁ昼でも問題はないだろ。
「中継の声は切って、PTのメンバーの声が一緒に聞こえるように設定しとくぞ。今回はそこまでで十分だろ」
「大勢の声があり過ぎると困るのは実感したので、それでいいのです! 少なくとも、主導で実況をする人は決めておくべきなのさー!」
「まぁ、そうなるよなー」
誰でも声をかけられる状態自体はいいんだけど、他の中継をしている人達との連携が取れないのが痛い! 今日やった検証のトーナメント戦での反省点はそこだな。
前にアルと検証用に模擬戦をした時は、その辺の主導は俺らのPTにしてたから……ああいう形が最善なんだろうね。今回で言うなら、ザックさんと風音さんがその役割だな。
「おし、設定完了!」
「はーい! 桜花さん、ザックさん、風音さん、いいですか?」
「……大丈夫!」
「問題ねぇぜ! いつでも実況は始められるからな!」
「中継も大丈夫だ。すぐに開始出来る」
「それじゃ始めるぞ!」
必要な設定は済ませたから、対戦エリアへと繋がっているエンの樹洞の中央にある光の中へ進んでいこう! ここから模擬戦が開始に……そういや、大型アップデートで他の群集の人とも模擬戦が可能になるんだよな? あれって、どこで実行する事になるんだろ?
<『模擬戦エリア:草原』へと移動しました。模擬戦の開始のカウントダウンを開始します>
うーん、まぁ今考えても答えが出ない事を気にしてても仕方ないな。さて、設定した通りに昼間で晴れた草原に出たし、『純結晶』の検証を――
「おらー! 期待の新アイテム、『進化の軌跡・火の純結晶』と『進化の軌跡・雷の純結晶』の性能確認を始めるぜー! 実行者は、言わずと知れた『グリーズ・リベルテ』のケイさんとハーレさんの2人だ! 実況はこの俺、トリカブトのザックがお送りするぜ! そして、解説はこの人だ!」
「……龍とトカゲの……風音」
「さぁ、どういう一時付与スキルになってるかが気になるとこだが……実際どうなんだ?」
「……昇華の可能性はあるけど……まだ……詳細不明」
「ま、それを確かめようって趣旨だもんな! って事で、カウントダウンも始まったし、頼んだぜ、ケイさん、ハーレさん!」
なんだかテンションが高いな、ザックさん。ハーレさんの実況とはまた違った雰囲気だし……まぁこういう部分は人によって差が出てくる部分か。
「さて、カウントダウンが終わったら、同時に進化をしていくか」
「はーい! ふっふっふ、火を纏うリスとクラゲになるのです!」
あ、そういや共生進化だと両方が進化するんだっけ? 支配進化や同調だと『纏浄』や『纏瘴』を除けば片方だけだもんな。その辺、この『純結晶』だとどうなるんだろうね? そこも含めた検証になりそうだし、しっかりとやっていきますか!
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