第1376話 並木道を歩きながら


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『群雄の密林』に移動しました>


 エンから転移して、ジャングルへ移動完了! 転移してきたら、エンの周囲ほどは混雑はしてないけど……こりゃ凄いな。


「おぉ!? 並木が拡大してるのです!」

「随分と気合が入ってるなー。桜以外の並木道までしっかりと出来てるじゃん」

「これ、不動種は何人いるのかな?」

「んー、パッと見では分からないね」


 昨日見た時でも十分なほど凄い事にはなってたけど、あれはまだ途中だったんだな。不動種同士の間隔は適度に空けられつつも、しっかりと並木として成立するくらいにはなってるしね。

 ふむふむ、基本的には同じ種類の並木の真ん中が通路になっていて、木の種類が変わる合間が、樹洞以外での中継の投影場所になってるっぽい? 中継の規模が広がる場合は、通路側も使いそうな感じもするね。


「まぁ急ぐ内容でもないし、のんびり並木を歩きながら進んでみるか?」

「賛成なのさー! ふっふっふ、スクショの撮影チャンスなのです!」

「あはは、それもいいかもね。サヤ、どうせなら不動種の人数でも数えてみる?」

「それは遠慮しとくかな。数えて意味がある情報とも思えないし……」

「あー、それは確かになー。3rdで形だけって人も植ってそうだし、意味があるかというと微妙か」

「そういう事かな!」

「あ、それはそうかも?」


 純粋に不動種として活動してる人が何人いるかなら数えてもいい気はするけど、見栄えの為だけに植わっている人を除外して数えるのは難しい! だから、無理に人数を数える必要はなし!


「さてと、とりあえず進んでいきますか!」

「「「おー!」」」


 おっと、その前にPTを手早く組んでからにしよう! 別に戦闘をする予定じゃないから無理に組む必要もないんだけど、一応念の為にね。

 それにしても……昨日のルストさんが撮った時の様子とはかなり違うもんだ。これを知ったら、またルストさんが入ってきたがる事があったりもする? ……うん、あり得そう。まぁ今はそんな心配はしなくていいや!



 ◇ ◇ ◇



 手早くPTを組んで、桜の不動種の並木道を進んでいく。あちこちで中継の準備をしてる様子は見えているから、オオカミ組が開催中のトーナメント戦の影響が大きいか?


「あ、ケイさん! 皆さんもこんにちは!」

「おっす、フーリエさん。1人か?」


 細長いコケの塊で、ヘビとの融合種のフーリエさんとばったり遭遇だな。シリウスさんは一緒にいる様子ではないけど……。


「シリウスはトーナメント戦に参加しに行ってますね! これから僕も行くとこです!」

「あー、それじゃ下手に足止めも出来ないな。頑張れよ、トーナメント戦!」

「はい! 勝ち抜いてきます!」


 そう言いながら、急いでマサキの元へと向かって進んでいったフーリエさんである。なんだかんだでフーリエさんも成熟体までは進化したんだし、トーナメント戦にも参加しやすい段階にはなってるんだなー。


「……最近、あんまりフーリエさんに師匠的な事が出来てない気もする?」

「それ、割と元々な気がします!」

「空き時間があれば、その時にアドバイスしてる程度じゃないかな?」

「あー、まぁ言われてみれば確かに?」


 わざわざどの時間に特訓をするとか決めてたりはしないし、結構元から行き当たりばったりだったよ。それで師匠を名乗っていいのか、俺!? 


「でも、別にそれでもいいんじゃない? そこまでフーリエさんもガッツリと鍛えられるのを望んでる風にも見えないしね」

「……それもそうか」


 元々、同じコケとして俺を目標にしてた部分から弟子だ師匠だという話が出てたのが発端なんだし、今の状態でいいのかもね。まぁ一応師匠となってるし、どこかでお互いに時間があればまたアドバイスを……って、同格の成熟体まで育ってきてるんだから、下手すれば俺が負けかねないってのも気に留めておくべきか。


「そういえばケイさん! 今日いた、あのアルバイト仲間になる人はどんな人ですか!? 地味に気になってるのさー!」

「あー、あいつか。そういやハーレさんの先輩にもなるもんな」

「そうなのです! 私の高校のeスポーツ部が全国大会に出てたのは知ってたけど、それが兄貴と同じ中学出身の人だとは思わなかったのさー!」

「だろうなー。俺も初めて知ったし……」


 お互いに連絡はなかったけど、まさかあいつがeスポーツで全国まで行ってるとは欠片も思ってなかったわ。連絡が全然なかったのって、そういうので忙しかったとかもあるのか?


「えっと、ケイ? ハーレ? それって、どういう内容なのかな?」

「……eスポーツで、全国?」

「今日、夏休みのアルバイトのシフトの件でスーパーまで行ってたんだけど、その時に中学の時の友達に会ってな。久々に話したら、ハーレさんと同じ高校で、去年eスポーツ部で県大会の優勝だったんだと。これ以上はリアル情報を言い過ぎだから、勘弁なー」

「アルバイトの件で遅くなるとは聞いてたけど、そんな事があったのかな!?」

「eスポーツで全国行きって凄いね!」

「いやー、俺としてもビックリな話でな。同じアルバイト先になるとも思ってなかったし……まぁフラムと違って信用は出来る奴だから、ハーレさんは安心しとけ」

「おぉ、そうなんだ! 頼りにしておきます!」


 余計な事を言いまくるフラムと比較するのが失礼なくらいだしなー。あいつは少しチャラい感じはあるにはあるけど、根は真面目だし、変な心配はいらん!


「……ねぇ、ケイさん? ケイさんの中学の同級生って事は、私にとっても中学生の頃の先輩って事になるの? 男の人だよね?」

「あー、そういやそうなるのか? でもまぁ、それは気にしても――」

「……その人と一緒にゲームセンターとか行ってたりしなかった?」

「へ? あー、まぁ中学の頃はちょいちょいゲーセンのフルダイブのやつで対戦はしてたけど……」


 中学時代ではまだフルダイブでのオンラインゲームに対応出来る高速回線が一般向けには整備されてなかったから、対戦するとなればゲームセンターにあるヤツしかなかったんだよな。俺としてはそこまでして対戦をしたかった訳じゃないけど、あいつがやりたがって色々やった覚えはある。

 そうやって考えてみれば、あいつがeスポーツ部にいるのって割と納得かも? かなりの負けず嫌いだし、対戦好きだし、ゲームの腕は良かったもんな。


「あ、やっぱりだ! 多分、私、その人は見た事あるよ!」

「ヨッシ、そうなの!? でも、私達はゲームセンターに行ってないよ!?」

「私も直接ゲームセンターに行った訳じゃないんだけど、入っていくのは見た事あるんだよね。ハーレのお兄さんがいるなーって感じでさ」

「おぉ、そうなんだ!? ヨッシにケイさんが目撃されてたのです!」

「あー、まぁそういう事もあるか」


 地元が同じなんだから、そういう事は発生しても不思議じゃない。まぁだからって何かが変わる訳でもないけど……。


「サヤ、別に除け者にしようって訳じゃないから、拗ねるなよー」

「す、拗ねてないかな!? ……その人、ケイより強いのかな?」

「前はゲームによって勝ったり負けたりだったけど、流石に今は勝てないと思うぞ。てか、勝てちゃマズい気もする?」

「え、なんでかな?」

「いやー、eスポーツとして本格的にやってる相手だぞ。遊んでるだけで、勝てるほど甘くもないだろ」


 俺としてはゲームはゲームとして楽しむだけのつもりでいるから、それ以上をやろうとしている人には勝てる気はしない! まぁそういう人と対戦してみた事はないけども……。


「……そうなのかな? 『好きこそ物の上手なれ』って言葉もあるよ?」

「あー、まぁそれはあるだろうけど……」


 好きだからこそ上達するのは……言われてみれば確かにあるか。とはいえ、実際に対戦してみないとその辺は分からんしなー。あいつなら、アルバイト終わりに久々に勝負とか言ってくる可能性はありそうな予感?


 あー、そういや中学から少し自転車で進んだとこにあったゲームセンター、そもそもまだやってんのかな? VR機器が一般普及する前辺りにフルダイブ用のゲームを体験出来るって形でオープンしてた店だけど、家庭でオンライン対戦が可能になってる今では……ゲームセンター自体がもう無いかも? 最近、あの辺には行ってないから分からん!


「てか、サヤ的には何か気になることがあるのか?」

「んー、単純にケイがどのくらい強いのかなーって? ほら、このゲームは色々と特殊じゃない?」

「……そりゃ確かにそうだけど、他のゲームでの強さねぇ?」


 前にやってたオンラインゲームでは、まぁそこそこ強かったとは思うけど、それでも上には上がいたからなー。それ以外はオフラインゲームをメインでやってたから、他の人との力量差って比べてみた事はないかも?


「むしろ、サヤが格ゲー辺りで、もの凄く強そうな気がするぞ」

「え、そうかな? ……格ゲーはやった事ないかも?」

「マジで? え、ちょっとそれは意外なんだけど……サヤって他にどんなゲームをやってた? もしくはリアルでなんか格闘技でもやってた?」

「あはは、何も習ってはいないかな! やるゲームはRPGが多かったかな? 大体、そこで近接の武道家とかにして、最高難易度でやってたよ」

「あ、なるほど。そっち系か!」


 サヤの近接戦闘は格ゲーかリアルでの格闘技経験かと思ったけど、アクション要素の強いRPGでのものか! フルダイブになる前のゲームと比べたらアクション性が強くなってるし、難易度は跳ね上がってるもんなー。

 それを最高難易度でクリアが出来るなら、そりゃ強くもなるわ。下手な格ゲーよりも、敵の強さが半端ないし……。


「……フルダイブのアクションRPG、主人公が近接のみだと厳しいのです!」

「あれ、地味に難しいもんね。主人公が自由に戦闘スタイルを選べるヤツならいいけど……そういう変更が出来なくて難易度設定もないのは投げちゃったのもあるし……」

「そうなのさー! 難し過ぎるのもあるのです!」

「あー、そういうのはたまにあるよな」


 戦闘スタイルは変えられる方が多いけど、それでも高難易度なゲーム性を売りにしているシリーズもあるからなー。死んで敵の攻撃パターンを覚えろっていうゲーム。

 何本かやった事はあるけど、あの手のは本当に難しい! まぁその分だけ、勝った時の達成感が凄いんだけど……途中で挫折する人の方が多いですよねー。

 

「……てか、なんで他のゲーム談義になってんだ? あ、サヤ!? もしかして、俺との対戦に向けての情報収集か!?」

「え、そんなつもりはなかったよ!? でも、ケイはそういう高難易度のゲームはクリア出来るのかな?」

「……一応は出来るけど、流石に途中で死にまくるぞ?」

「あ、そうなのかな」


 というか、初見殺しな攻撃も多いから、あの手のゲームで一切死なずにクリアって相当難しいよな? いやまぁ行動パターンは一定化されてるから回数を重ねれば倒せるし、そもそも勝てるようには出来てるからなー。そういう面では、対人戦の方がよっぽど難易度は高いか……。


「それでも、クリア出来るのは凄いのです!」

「……あはは、私とハーレはクリアどころか、最初の方のボスだけでアウトだもんね」

「てか、そういうサヤはどうなんだ?」

「……実はやった事はないかな」

「……へ? あ、そうか! その手のは暗い世界観のが多いし、ホラー的な演出も結構あるから、そっちで駄目なのか!」


 それに年齢制限も高めなのが多いし……むしろ、ハーレさんとヨッシさんが少しでもやってるのが不思議だな!? あー、まぁR18以外は保護者の許可があればやろうと思えば出来るし、どうしてもやりたければ出来ない訳でもないか。


「うん、そうなるかな。ゾンビやクリーチャー的なのは平気だけど、幽霊的なのはちょっと……」

「流石にそれは仕方ないけど……どっちかというとゾンビやクリーチャー的な方が多いぞ? まぁホラー的な演出もあるけどさ」

「どこで出てくるか分からないから無理してやる気もないし、興味はないかな!」

「まぁ無理にやるもんでもないか」


 苦手なものは苦手として、触れずにいるのも間違ってはいない。楽しむ為にやってるのに、わざわざ苦手なものを選ぶ必要はどこにもないしね。ホラー系が苦手なサヤには向いてないゲームではあるもんな。


「おっと、話してる間に桜花さんの近くまで来てたんだな。さて、雑談はこれくらいにして、情報収集といきますか!」

「うん、そうするかな! あ、風音さんもいるね」

「風音さんは、トーナメント戦に参加はどうなんだろ?」

「その辺も聞いてみればいいのです!」

「だなー」


 桜花さんの周辺に結構な人が集まってきている様子だし、話しかけられたらいいんだけど……雑談しながら周囲も見てたけど、色々なとこで中継はしてたから、オオカミ組主催のトーナメント戦はもう始まっている可能性はあるんだよなー。

 まぁ桜花さんは中継はしていないから、それとは別のトーナメント戦や模擬戦の可能性もあるけども。まぁその辺は実際に聞いてみれば分かるだろ!


 それはそうとして……植わってる位置を把握してないと、同じ不動種の桜の木がズラッと並んでいるからややこしいな!

 こういう状況だと、むしろ一番端が好立地なんじゃね? まぁ基本的には進化階位が高いほど大きな木にはなってるから、その辺が目印にはなるのかも? 

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