第1360話 刻浄石の効果
刻浄石を使って半覚醒にする事には成功したけど、まさか『浄化の守り』でバリアが出てくるとは思わなかった! 耐久性の表示は……なしか。フィールドボスに相当する何かと考えてたけど、こうくるとは予想外!
『……コレハ……ナニガ!? ……ナニカノ……チカラニ……ツツマレテ!?』
半覚醒の個体も、何が起こってるのか分かってないんかい! あー、どうせなら『浄化の守り』を展開して半覚醒止まりじゃなく、完全に正常化までしてくれた方がよかったんだけどなー。ゲーム的に流石にそうはならないんだね。
「ケイさん、これはどうするの? そのまま破壊?」
「破壊はしたいけど、レナさん……というか、みんな一旦攻撃中止で! ちょっと確認したい事がある!」
「およ? それはいいけど、中止なの?」
「ちょっと待ってくれ、ケイさん!? 俺の『ゲイルスラッシュ』もか!?」
「ジャックさんはそのまま凝縮しといてくれ! そんなに時間はかからないはず!」
「それなら了解だ!」
あー、こういう状況になったし、どうせ溜めるならみんな一斉に溜めていった方がいいか? その方が後が楽な気がして……いや、無防備ではあるんだから、それをするにしても先にいくつか確かめよう!
「ヨッシさん、その捕獲した状態で攻撃は可能? 追加生成が出来れば、『浄化の守り』の内側にいるんだし――」
「ごめん、それは無理そう! 試してみてはいるんだけど、追加生成とか以前に操作が全然動かせないよ!」
「あー、マジか……。操作時間は?」
「それは大丈夫そうだけど……何だか、捕獲を無理矢理続けさせられてる感じがするよ?」
「……なるほど」
うーん、ヨッシさんが捕獲している状態で強制的に状況が固定されている感じか? 半覚醒になって『浄化の守り』を展開する前に触れていたものは、キャンセルされずに強引に固定される?
「『浄化の守り』は、周囲を覆う壁ではなく、空間を埋め尽くしているのかもしれませんね。それで生成する余地や動かす余地が無くなっているのでは?」
「あー、確かにそういう感じかも?」
推測以上の事は分からないけど、既にそこに不可視の何かがあるのなら……動かせないのも、追加生成が出来ないのも、そのスペースがないからだと納得は出来る。この半覚醒のタツノオトシゴも『何かに力に包まれて』って言ってたし、そう仮定するなら……。
「ヨッシさん、その状態で操作の解除は出来るか?」
「多分出来るとは思うけど……これ、離さない方がよくない? 解除したら、海の中に落ちる気がするけど……」
「あ、そりゃそうだ。それなら、悪いけどヨッシさんは捕獲を維持で頼む!」
「了解!」
下手に解除して海中に落ちたのを攻撃するよりは、空中に持ち上げた状態で攻撃していく方が楽だもんな。さて、確認すべき事は他にもあるし、次はそっち!
「シュウさん、弥生さん、赤の群集でその『浄化の守り』は破れるか?」
「……どうだろうね? 弥生、やってみてもらっていいかい?」
「当然だよ! わっ!?」
「弥生!? え、味方でも弾かれるんだね?」
「……そうみたいだねー。よっと!」
赤の群集の弥生さんが振り下ろした爪でも、『浄化の守り』のバリアによって攻撃は阻まれるか。これ、同じ群集で味方の個体だったとしても、突破が容易な事ではないのかもね。
「なるほど、耐久値は残り99%かい。少し削れば、表示が出るようだね」
「……え?」
耐久性の表示が出てるって……どこに!? HPの表示と黒いカーソルくらいの表示しかないけど、一体どこを見て……あ、識別すれば――
「どこも何も、HPバーの下に新しいバーの表示と%表示が出ているけども……」
「はい!? え、そんなものどこにも出てないぞ!?」
「いやいや、普通に見えるだろ、ケイ!」
「だから見えないって言ってんだよ、馬鹿フラム! って、もしかして!? ジェイさん、そっちは!?」
「……そんな表示は見えませんね。皆さん、どうです?」
「ホホウ! そんな表示は見えないので!」
「俺もだな」
「私も見えません!」
「同じくかな?」
「え、えっ!? 俺は見えてるけど……コケのアニキ、どうなってるの!?」
「……どうやら、表示が見えているのは赤の群集の私達だけのようですね」
「多分、水月さんの言った通りだぞ、アーサー」
「そんな事ってあるんだ!?」
なるほど、これが同じ群集にとっての追加の優位性か。どれだけ減らせばいいのか分からない『浄化の守り』の耐久値を、明確に把握する事が出来るのは大きいな。となれば、ダメージの通り方の違いも把握しておきたい。
「サヤ、水月さん、『強斬爪撃』をLv5で『浄化の守り』を斬りつけてみてくれない? 進化先の差で同じ威力にはならないだろうけど、比較対象にはしやすいはず」
「あ、うん、任せてかな! 水月さん、いい?」
「えぇ、それは引き受けましょう。私からやりますけど、構いませんか?」
「問題なし! 任せたぞ、水月さん! シュウさん、数値の変化を教えてくれ!」
「了解したよ」
さて、半覚醒の本体への攻撃にはダメージ減衰があるのは確定だろうけど、『浄化の守り』に対してもそれがあるのか……やってみないと分からないんだよな。さっきの1%の低下が、弥生さんの攻撃によるものか、それともレナさんの攻撃によるものかが分からないからね。そこら辺、はっきりさせとこう!
「それじゃやりますね! 『魔力集中』『強斬爪撃』! くっ!?」
思いっきり水月さんが爪を振り下ろして、盛大に攻撃を弾かれている。……この弾かれ方、嫌な手応えな気がするなー。
「シュウさん、どうだった?」
「……どうやら、赤の群集では削るのは難しそうだね。今のでは変化は皆無で、99%のままだよ」
「全く効果なし!? ……ダメージ減衰なんてレベルじゃないな」
いくらなんでも、これは想定外だぞ! 赤の群集の人だけで遭遇しても、絶対にどうしようも出来ないって事なんじゃ……いや、もしかしたら前提が根本的に違うのかも? そもそも味方なら、守りを張る意味がないし……。
「あっ、もしかして他の群集のプレイヤーがいなかったら、そのまま正常化してるのか、これ!?」
「それはありそうかも! だよね、シュウさん!」
「そうだね。いくらなんでも、今のは削れなさ過ぎるし……ケイさん、後でもう1つ、刻浄石の生成をして試してみるかい?」
「その方がいいかもなー。ジェイさん、それでいい?」
「……興味深い内容ではありますし、構いませんよ。ただ、どこの群集が実行するかは要相談ですね」
「そりゃそうだ」
誰が使って、誰が生成するかも決めないといけないけど……まぁそれは後での話だな。今はこの状況をどんどん進めていこう。
「サヤ、比較の意味はあまりなくなった気もするけど、どの程度削れるかの確認を頼んだ!」
「任せてかな! 『魔力集中』『強斬爪撃』!」
「今ので、98%になったね。……これは、応用スキルを叩き込んだ方が早そうだよ?」
「そうっぽいなー」
サヤの強斬爪撃、決して弱いはずはないんだけど……それで1%しか削れないのは厳しいよなー。行動値5で1%と考えると、単純に行動値500分の攻撃が必要だしさ。でもまぁ、この無防備状態なら削るのはそんなに難しくはないか。
これ、1番面倒なパターンって他の群集の半覚醒と真っ向から戦わないといけない場合かも? 『刻浄石』って地味に使ってみるまで、どういう事になるのか分からないっぽいなー。……まぁその辺の追加項目は、後だ、後! 今やるべきは、これだ!
「一気に終わらせるつもりで、灰の群集と青の群集で一斉攻撃! お互いの邪魔にさえならなきゃ、もうそれでいい!」
「了解っと! サヤさん、溜めてタイミングをズラしていこっか! 『重脚撃』!」
「分かったかな! 『重硬爪撃』!」
サヤとレナさんは、チャージを始めて後から攻撃を叩き込むつもりか。まぁ一斉に攻撃したら邪魔になるし、これが適切な判断かもね。
「ジャック、それは後で使え。マムシ、溶解毒をよこせ!」
「その方がよさそうだな」
「……溶けるかは知らねぇぞ? おらよ! 『ポイズンインパクト』!」
「そんなもの、試してみれば分かる! 『連投擲』! ちっ、状態異常は意味はなさそうか」
「ふっふっふ! それなら、普通に攻撃するのさー! 『魔力集中』『白の刻印:増加』『拡散投擲』!」
マムシさんから受け取った毒魔法を次々と投げつけるスミと、銀光と白光を放つ砂を投げ放ったハーレさん。どれも弾かれている風にしか見えないけど……これ、耐久値が分からないと進展がさっぱりだな!?
「コケのアニキ! 耐久値、80%を切ったよ!」
「おっ、結構効果あり! アーサー、報告サンキュー!」
「どういたしまして!」
今ので2割近く削れるって事は、ハーレさんの応用スキル……それも白の刻印の増加でほぼ確実に最大強化までした状態でなら、かなり有効な感じだな。……サヤとレナさんにも、白の刻印を使ってもらっておくべきだったかも?
「おし、凝縮完了だ! ゲイルスラッシュ、いくぞ!」
「ほいよっと!」
みんなの位置的には……巻き込まれる事はないな。解き放たれた多数の風の刃が『浄化の守り』へ襲いかかっていくけど……全然攻撃してる感がないね。これ、耐久値が見える状態になってないと気分的にしんどいかも。
「今のジャックさんのゲイルスラッシュで、残り68%までは削れたね」
「……応用魔法スキルで1割程度か。ちっ、硬いな」
うーん、かなりの高威力なはずなんだけど、白の刻印を使わずのゲイルスラッシュで削れるのはその程度か。いや、それでも順調に削れてはいるんだし……。
「あ、そういやこの『浄化の守り』って、黒の刻印は効果あるのか?」
「……どうでしょうね? 斬雨、試しに『脆弱』を刻んでみてください」
「いまいち効果がある気はしねぇが……まぁやるだけやってみるか。『黒の刻印:脆弱』! おっ、意外だな? 普通に刻めたぜ」
「というか、なんか透明な『浄化の守り』に黒い模様が出てきたのです!?」
「これは!? 透明度の高いガラスのように、角度を変えれば多少は見える程度のバリアだった『浄化の守り』の中に、黒の刻印、それも脆弱の証である折れた剣と盾の模様が浮かび上がるとは!? しかも、刻んだ位置から、徐々に巨大に広がっているではありませんか!? これは初めての光景ですし、貴重なものですね! 是非とも――」
「こら、ルスト! って、あら?」
「邪魔をしないでください、弥生さん! おぉ! 上から見てみれば、反転した模様も見えるとは!」
「こら! 待ちなさーい!」
「お断りさせていただきます!」
うん、もう今日は見慣れた光景だし、気にしないでおこう。ルストさんが邪魔になってる訳でもないし……むしろ、しっかりと計算して突っ込んできてるもんなー。
かなり近付いてきてて邪魔になりそうだけども、意外と全然そんな事がないのは凄い。凄いけど……無茶な突っ込み方をしてるのは間違いないから、弥生さんが止めようとする気持ちも分かる。
「……ルストさんの動きがとんでもねぇな」
「まぁそこは気にしても仕方ないので、攻撃をお願いしますよ、斬雨」
「へいへいっと。チャージ待ちも多いし、ここは大技でいくか。『魔力集中』『白の刻印:剛力』『連閃舞・大断』!」
「ホホウ? それはやり過ぎではないので?」
「どうせ、ぶっ壊さなきゃ先には進まねぇんだ。だったら、全力でさっさと破壊するまでだぜ!」
おー、銀光と白光を放ちながらの斬雨さんのタチウオでの連続斬撃は凄まじいものがあるな。この『連閃舞・大断』ってスキルは前にも見た覚えはあるし、多分だけど連閃と断刀の応用連携スキルだよね。
なんというかタチウオ自体が刀みたいな姿をしてるから、こういう斬撃の連撃って見栄えが凄いよな。まぁ刀だけで浮いて斬っているのは不思議な光景ではあるけど……刀って純粋にいいよなー。こう、なんか振り回したくなる感じ!
「おら、おら、おら! ちっ、全然斬ってるって気がしねぇが、一応は当てた判定で強化にはなってんだな!」
「シュウさん、耐久値の減り具合はいかがです?」
「今までで1番の削れっぷりだね。今の時点で35%くらいに――」
「はっ! 最大強化で、もっと削れろや!」
斬雨さんが思いっきり銀光が強まり切った状態で振り下ろしていき……それでも弾かれるように終わるんだから、この『浄化の守り』って攻撃が効いてる実感が薄いもんだな。
あ、今の攻撃で黒の刻印の効果が切れて、『浄化の守り』が透明な状態に戻ったね。うーん、何でもいいから黒の刻印を刻んでおく方が分かりやすい? いや、でも半覚醒のタツノオトシゴは全く動いてないんだし、そこは問題ないか。
「……弾かれ過ぎて斬った気がしねぇな」
「ふん、そこに文句を言っても仕方ないだろうが」
「シュウさん、最終的にはどうなりましたか?」
「刻印の効果が大きかったみたいで、残りは15%というところだね。サヤさんとレナさんの攻撃で、多分削り切れるんじゃないかい?」
「だってさー。サヤさん、どっちが先にやる? トドメ、譲ろっか?」
「はい! サヤが浄化の守りを突破するところを撮りたいです!」
「ハーレがそう言ってるし、トドメはもらっていいかな?」
「うん、どうぞー! それじゃ、一気にやっちゃうね! えいや!」
軽々とアルの上から飛び降りたレナさんが、踵落としの要領で『浄化の守り』へと蹴りを叩き込んで……って、なんか亀裂が走った!? これまでとは明確に違う状況じゃん!
「およ? なんか今のはしっかりと手応えがあったね!」
「レナ、今ので残り7%まで削れてるよー! 多分、10%を切れば――」
「亀裂が走った『浄化の守り』とは希少な光景ですね!? 是非ともスクショに収めておかなければ――」
「ルースートー!? 割り込んでこないでくれない!?」
「弥生さんだって、私のスクショの撮影に何度も割り込んでいるじゃありませんか!?」
うん、その光景はもう何度も見たからスルーで。残りはあと少しなんだし、さっさと終わらせるのみ!
「サヤ、『浄化の守り』をぶっ壊せ!」
「当然かな! これで、破壊完了!」
銀光を放つサヤの爪が、ひび割れた『浄化の守り』に当たれば、ガラスが砕け散るような音が響いてきた。はっきりとは見えないけど、欠片が飛び散って、塵のように消え去っていってるね。
『……チカラガ……キエタ……?』
よし、これで『浄化の守り』の破壊は成功! あとは、半覚醒のタツノオトシゴの撃破をすれば今の『刻浄石』の検証は終わり! ……まぁ検証内容に追加は出来たけども!
――――
電子書籍版、第11巻が完成!
予約開始したので、詳細は近況ノートにて!
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