第1356話 生成の準備
まさかの1撃での、ヒラメの撃破……。オーバーキルになる気はしてたけど、流石に1撃でとは思わなかった!?
「……おい、こっちの1撃はどうしてくれる、灰の暴走種!」
「いやいや、まさか1撃で終わるとは……って、呼び方が戻ってる!?」
「予想外の状況なら、丁度いい呼び名だろうが!」
「うぐっ!?」
あながち否定し切れない部分だから、スミへの反論が思いつかない!? くっ、魔法に弱い物理型の敵に対して、やっぱり白の刻印で威力増幅まではやり過ぎたか!? 格上とはいえ、雑魚敵だし……。
「スミ、そのくらいでいいでしょう。威力の読み違いは、流石に仕方ないですよ」
「……ふん。これは無駄撃ちにはなる……いや、そうでもないか。『貫通狙撃』!」
おー、空へと向かって銀光を放つ凝縮された風の弾が投げ放たれて……ん? これ、さっきのハーレさんが投げたのと色違いなだけで……って、あれ? なんか黒い大きな鳥が――
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
ちょ!? なんか発見報酬と撃破報酬が出てきたんだけど、上空にいたっぽい黒い鳥を仕留めたのか! てか、今の鳥、なんの鳥だろう? 黒いからってカラスとも限らないし……。
「ふん、真っ黒なペリカンは初めて見たな。あれは闇属性か?」
「多分、そうだろねー! あの感じは、闇纏いで隠れて飛んでたのかも?」
「くっ! 私とした事が、闇夜に隠れたペリカンを撮り逃すとは!? 次は決してそのような事にならないよう――」
「はーい、ルスト、暴走はなしだからねー?」
「……はい」
流石に今回の件でルストさんが先走り過ぎたので、弥生さんが少しキレ気味だな。まぁ今日だけで、もう何度目だって話だし……うん、気持ちは分かる。
というか、今の鳥はペリカンだったのか。しかも闇属性とはね。
「スミ、さっきの状況でよく見つけたもんだな。まぁ無駄撃ちにならなくてよかったけどさ」
「あんなもの、ただの偶然に過ぎん。ただ、今のを『貫通狙撃』で投げられるとも思わなかったが……もしかすると、どの応用スキルでも投げられるのか?」
「はっ!? 確かにその可能性はありそうなのです!」
「……スミ、ハーレさん、それはどういう事ですか?」
ハーレさんもスミも、使ったのはどちらも同じ『貫通狙撃』で、俺の清水魔法の『ウォーターハンマー』もジャックさんの暴風魔法の『ゲイルスラッシュ』も……共に同じような形状の槍のような見た目へと変わっていた。これ、投擲の種類で応用魔法スキルの形状が変化する?
「位置的にかなり強引に狙ったから、そもそも失敗でもいいつもりで『貫通狙撃』にしたが……見ての通りの結果だ。今の、無駄撃ちではないかもな?」
「……なるほど、要は魔法側ではなく、魔法弾として扱う投擲側で性質が決定付けられるという可能性ですか」
「ふっふっふ、何パターンか試してみる必要がありそうなのさー!」
「ですよねー。流石にこうなるとは思ってなかったけど、結果オーライだな!」
「確かにそれはそうだね。何故、投擲系の応用スキルには『応用連携スキル』はあっても『応用複合スキル』がないのかが疑問だったけども、答えはそういう事なのかもしれないね」
……はい? え、投擲系の応用スキルには属性持ちになる『応用複合スキル』って存在してなかったの!? いや、それって普通に知らなかったんだけど……。
「その辺りは『魔法弾』で魔法を投げられるからだと思っていましたが、まさか『応用魔法スキル』を普通の『応用スキル』で投げられるとは思っていませんでしたからね。運用方法そのものもですし、これは良い発見でしたよ」
「……投げたらどうしても目立つが、あぁ、こういう事も出来るか? 『魔法弾』『並列制御』『ブラックホール』『爆散投擲』! ほう? いけそうだな」
「わー!? 手の平の上にブラックホールが出来てるのさー!?」
「……そういう使い方ってあり?」
「出来ている以上、ありだろう」
「まぁそりゃそうだろうけどさ……」
黒いリスの手の平の上に、小さなブラックホールを持っている状態って凄まじいな!? でも、今の段階では吸い込むような状態にはなってないっぽい?
「さて、試しに投げてみたいところだが……それよりも『刻浄石』の生成が先か」
「あー、それもそうだな。とりあえずそこから――」
「っ!? スミさん、何故ブラックホールを握りつぶすのですか!? まだスクショの撮影の角度を調整していたところなのですが!?」
「それを待ってたらキリがなさそうだから、キャンセルしたまでだ!」
「そんな!? 後生ですから、今のをもう一度お願い出来ませんか!? ブラックホール自体は弥生さんが使うので見慣れてはいますが、黒いリスの手の平に展開される小さなものというのは――」
「これがお望みなら、どーぞ? 『ブラックホール』!」
「弥生さん!? くっ!? 身動きが……一般生物の魚が海水と共に浮き上がってきていますね! これは、絶好のスクショのチャンス――」
「え、逆にこの状況でもそうなるの!?」
「およ? うーん、なんかどんどん逞しくなっていくねー?」
弥生さんに怒られている最中だっていうのに、すごいな、ルストさん!? てか、ブラックホールって味方でも吸い寄せられるのか?
風音さんが使ってた時はそんな事はなかったけど……もしかしてスキルLv次第では吸い込む対象を変化させるなんて芸当も出来たりする? 応用魔法スキルはLvを上げる事で性能向上って話だったし、可能性はありそうだよな。
「おい、何故ブラックホールで味方を吸い込める? Lv1ではそんな事は出来ないはずだが?」
「んー、それは内緒。流石になんでも情報の開示はしないよ?」
「……ふん、強化の先にある内容のようだな」
「さー、どうだろね?」
弥生さんは思いっきりとぼけてるけど、スミの読みが正解なんだろうなー。よし、今度、風音さんと一緒に動く時があったら、その辺を聞いてみよ。魔法の事なら、勢いよく食いついてくるだろうしね。
「また脱線にはなってたけど、軌道修正していくぞー! とりあえず、サクッと『刻浄石』の生成から済ませてしまいたいんだけど……誰がやる?」
「生成は僕がやるよ。『過剰浄化・重度』でしばらく戦闘は不可になるし、さっきの件でルストが先走ってしまったし、お詫びも兼ねてね」
「……戦力が欠ける状況にはなりますから、戦闘の可能性が低い『刻浄石』の生成にはシュウさんが適任でしょうね。問題は誰が『纏浄』を使って土の浄化魔法を使うかですが……」
浄化魔法の使用でもスキルの使用でダメージを受ける『過剰浄化』の状態異常になるし、『刻浄石』の生成の為にアブソーブ系スキルを使えば『過剰浄化・重度』でそのダメージも跳ね上がる。……時間経過でしか治しようがないから、2人の戦線離脱は覚悟しておかないと駄目なんだよな。
そもそも、なんで今更になって生成しようとしてんの!? 戦闘しなくていいタイミングで生成しとけば済んだ……って、脱線し過ぎてたから、その辺が抜け落ちてたのか!?
「なぁ、それって移動中に生成しとけばよかったんじゃね?」
「フラム兄やルストさんが脱線させまくったからなんじゃ?」
「……アーサー、事実であっても言わない方がいい事もありますからね?」
「水月!? え、俺が悪いの、これ!?」
「……まぁ誰も生成の事を口にしていなかったのだから、今になって誰かを責めるのは筋違いではあるね」
「そういう事だから、フラムは黙ってろ」
「お、おう」
フラムだけの責任ではなく、全員が言い出さずにいたんだから、これは全員の責任だな。あー、ここにきて準備不足をやらかすとか……えぇい、済んだ事を言っても仕方ないし、シュウさんが言ってるように責めるのもなし!
「えーと、シュウさんは除外として、土の昇華持ちって誰がいる? あ、赤の群集の人は実行出来ないから除外で! 俺は持ってる」
「私も持っていますね」
「ホホウ! 私もなので!」
「ケイと、ジェイさんと、スリムさんの3人かな?」
「そうみたいなのさー! これなら、3個は生成出来そうなのです!」
「およ? なんでハーレ、3個なの?」
「え? 生成した後、また新しく生成するのじゃダメなの?」
「あ、どうなんだろ? ケイさん、その辺はどうなの?」
「……あー、どうなんだ?」
連続で生成するという発想はなかったんだけど……『過剰浄化・重度』の状態で、更にアブソーブ系スキルで吸収って出来るのか? 自分のスキルでは必ずHP1は残るから、無茶をすれば出来る可能性もある? いや、それ以上は吸収し切れずに浄化魔法で死ぬというパターンもあり得るか。
「シュウさん、今のはどう思う?」
「……やってみないと、なんとも言えない部分だね。出来る可能性はあるけども、アブソーブ・アース自体が発動出来ない可能性も否定は出来ないよ?」
「ですよねー。ジェイさん、どうする?」
「折角なので、『過剰浄化・重度』の状態でアブソーブ・アースが展開出来るようなら試してみましょうか。シュウさんが場合によっては死ぬかもしれませんが……いかがですか?」
「まぁやれる事は、可能な限りやってみるべきだね。それでいこうか」
「では、そのように」
よし、これで複数の『刻浄石』の生成が可能かどうかも試していく事に決定! 今の場所を動く前に、生成と『過剰浄化』の回復まではやっておきたい――
「では、私がPTを抜けて1個目の生成を請け負いますので、ケイさんは2個目をお願いしますね」
「……へ? まぁそれはいいけど……なんで俺が2個目? 別に1個目の方でも――」
「いえ、場合によってはシュウさんを殺す可能性もありますし、私は弥生さんに殺されたくはありませんのでね」
「ちょい待った!? 俺なら殺されてもいいって事!? てか、弥生さんはそんな事はしないよな?」
「んー、ごめん、ケイさん! 正直、自信ないかも!」
「いやいやいや、弥生さん!? そこは自信を持って大丈夫って言ってくれない!?」
検証の過程での事故的な死亡で、報復されるって嫌なんだけど!? ジェイさんはジェイさんで、何を押し付けてくれてんの!? いつの間にかジェイさんが仕切ってると思えば、嫌な役回りを引き受けないのが目的か!?
「大丈夫ですよ、ケイさん」
「何がどう大丈夫なんだ!?」
「元々、狙われている立場ではありませんか」
「それ、全然何も大丈夫じゃないんだけど!?」
確かに狙われてるのは元々だけども、それとこれとは話が違うよな!? っていうか、その理屈だと俺が2回目の生成をやるのを一番避けるべきじゃない!?
「まぁ待て、ケイ。ジェイさんもだ」
「……アル?」
「アルマースさん、何か異議がありますか? 正直、誰がやっても危険性は変わりませんし、ここは逃げ切れる方がやるのが確実かと思いますが」
「おいこら、ジェイさん!? だったら、土の操作で篭って耐え切れるスリムさんでもいいんじゃね!?」
「それはケイさんも同じでしょう?」
「うぐっ!?」
Lv10の操作を持ってるという意味では、確かに俺も同じだけども! えぇい、この状況でアルが割り込んできたんだし、何か打開策を求めたい! 頼む、アル! 何か良い案を出してくれ!
「いや、異議って訳じゃねぇよ。ただ単に、生成する時にはPTを抜けておく必要があるが、それを浄化魔法を使う側じゃなく、生成する側……シュウさんにすれば良いだけじゃねぇか? それなら……襲われても死にはしないだろ」
「あぁ、確かにそれはそうですね。あとは、シュウさんが死んだ場合でもすぐ戻れるようにしていればいけますか?」
「それならルストにリスポーン位置の設定はしているから大丈夫だけど……」
くっ! 根本的に、俺が2回目の生成をやる事も、襲われる可能性もある事も全く回避出来ていない! いや、殺される事だけは回避出来てるし、シュウさんがすぐに戻ってくるなら止めてもらえるのか!
「……そもそも、完全に僕が死ぬ事が前提になり過ぎてないかい? まぁ可能性はある訳だけども……弥生がそういう風に動いてしまうなら、無理に僕がやらない方が――」
「あ、それだ! 役割交代! 俺が水で『刻浄石』の生成をやる!」
「まぁ別にそれでも構いませんが……そういえば水の昇華をお持ちの方は何名いますか? 灰の群集を除いてになりますが」
「私が持っていますけど……私達の中では1人だけですね」
「……水月さんだけですか。ケイさん、すみません。青の群集で来ているメンバーの中に水の昇華持ちがいないので、その役割交代は却下でもよろしいですか? 複数個の生成は試しておきたいところですしね」
「ちょ!? そういう理由!?」
待て、待て、待て!? 検証したい理由自体はまぁ分からなくはないんだけど、これじゃ回避不可能なんかい!? えぇい、他に何か弥生さんから襲われる可能性を無くす方法はないか!? 考えろ! 何か手段はあるはず!
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