第1349話 移動を再開
俺が水の操作で隔離した中にいたピラニアの群れを、ヨッシさんとフラムで発動したサンダーボルトで殲滅していっている。経験値は入ってくるけど……流石に連結PTの最大人数の18人ではかなり減ってるなー。適正Lvくらいではあるはずだけど、逆に適正Lvでこの人数は多過ぎか。
まぁ今はLv上げを目的にしてる訳じゃないからその辺はいいとして……そろそろ全滅かな? ふぅ、発動する昇華魔法に対して捕らえている水の範囲が狭かったし、次にこういう事をする機会では生成量を増やしていこうっと。うん、こういう時にはあの過剰過ぎる気がする量も使えそうではあるね。
「おっしゃ! 『共闘殲滅を行うモノ』が手に入ったぜ! これで魔力値が増える!」
「あー、はいはい。ヨッシさん、ちゃんと取れた?」
「うん、問題なく取得出来たよ。みんな、わざわざ機会を作ってくれてありがとね!」
「……あはは、なーんかルスト相手に怒ってただけだから、微妙な心境?」
「そうですよ、弥生さん! ケイさんが咄嗟に切り替えてくれたからよかったですけども、あれはどうかと――」
「それ、ルストだけは言ったら駄目な気がするんだけどなー?」
あー、また弥生さんとルストさんが暴れ始めそうな雰囲気。決して仲が悪い訳じゃないんだろうけど、この頻度は凄まじいな。まぁスクショの件でルストさんが暴走し過ぎていたのが原因ではあるんだろうけどさ。
まぁその辺は置いといて、これ以上は水の操作は不要だから解除しとくか。ザバっと水を落とすと敵が寄ってきそうだから、丁寧に川の水を元に戻すか。今は必要以上の戦闘をする必要はなし!
「弥生もルストも、それくらいにね? みんな、そろそろ先に進もうじゃないかい」
「脱線しまくってたし、改めて出発なのさー!」
「そうしましょうか。シュウさん、私は既に獲物察知を発動中なので、交代でよろしいですか?」
「僕の方は効果は切れたし、そうしてもらえると助かるね」
「それではそのように。スリムさん、アルマースさん、移動をお願いしますね」
「ホホウ、了解なので!」
「了解だ。……それにしても、俺が普通に泳いでる限りでは襲われはしなかったのに、ルストさんやフラムさんが落ちた瞬間に襲われたのはなんでだ?」
「あー、そういやなんで?」
気にもしてなかったけど、言われてみれば気になる部分ではある。別に威嚇で追い払っている訳でもないし、水面を泳いで進んでいるアルが飛び抜けてLvが上という訳でもないし……本当になんでだ?
移動は再開になったけど、その辺の分析をしていこうか。アナコンダはたまたま近くにいて襲われる寸前だったと考えてもいいだろうけど……問題はピラニアの方だな。ピラニアが大量に川の中にいるのは間違いないけど、それがアルを襲わずにフラムだけを襲った理由か。
「……フラムがゲームに嫌われてた?」
「いやいやいや、それはねぇだろ、ケイ!?」
「そんな分かりきった事に、本気でツッコむなよ」
「ちょ、待て!? 今の、俺が悪いのか!?」
「あぁ、こうやってうるさいからか? 落ちる時もうるさかったし」
「そういう結論!?」
「……経緯は乱暴ですが、普通に音に反応した可能性はありますね。全てが全てではないようですが、音に反応する個体が噛みついたのでは? あぁ、数が集まったのは確実にフラムさんの電気魔法のせいでしょうが」
「そうそう、結局数が集まったのはフラムが悪い」
「ちょ!? ケイだけじゃなく、ジェイさんまで俺が悪い判定!?」
全部が全部、一気に襲いかかってきた訳じゃないんだからなー。少なくとも不用意に川の中で電気魔法を使ったのはフラムが悪い。
「はい! 単純にフラムさんのLvが1番低いからっていうのもある気がします!」
「あー、そういえば……?」
「……え? 俺、1番低い……って、マジだ!?」
あんまり気にしてなかったけど、フラムのツチノコはLv5。他は低くてLv8のアーサーで、高くてLv 14のシュウさんと弥生さんってところか。俺らはみんな、Lv10だしな。レナさんだけ高くてLv13だけど。シンプルな理由ながら、1番雑魚が襲われるのは当然ですよねー。
「この辺はLv10前後だから、そりゃLv5なら狙われるよねー! 弥生、川に突き落とすんじゃなくて、守ってあげなよー?」
「そうだ、そうだ! 弥生さん、俺を殺す気か!?」
「……フラム」
「……フラム兄、みっともない」
「え、ちょ!? 水月!? アーサー!? なんで引いてんの!? あ、弥生さんまで無言で引いてる!?」
いやいや、今のはそりゃ引くだろう。なし崩し的に一緒にここまで来てるけど、どう考えても適正Lvじゃないフラムが偉そうに言う部分じゃないし……。
「あー、元々のフラムの狙いは終わったんだし、もう帰っていいぞ? 適正外の足手まといは別にいらんし」
「待てや、ケイ!? 俺とアーサーに帰れってか!?」
「え、俺も!?」
「いやいや、アーサーはいていいぞ。次のエリアは全員が敵より格下になるだろうし……だよな、ルストさん?」
「最低でもLv15ですので、そうなりますね! フィールドボス相当を狙うなら条件的にはLv16以上の敵を選ぶ訳ですし、誰にとっても格上でしょう!」
「だったら、俺もいてもよくね!?」
「えー、さっきのドン引き発言をしておいて……? 守ってもらうのが当たり前のつもりの奴とか、今回の検証ではいらないんだけど」
「いやいやいや、さっきのは冗談だっての!? え、あれ、何その反応!?」
フラムの反論に対してシーンと静まり返っていく。うん、俺らや青の群集のメンバーはともかく、同じ赤のサファリ同盟のメンバーからもフォローが入らないって事は……冗談だとは思われてないな。これが普段の行いかー。
「……フラム、よく聞きなさい」
「水月!? 水月は俺の――」
「こういう時は普段の行いがものを言います。……私も守るような動き方をする気はありませんので、死んだ時は素直に戻ってください」
「俺が死ぬのを前提で言ってねぇ!?」
「えぇ、言っていますね。不動種の杉の育成を優先していたから仕方ないとはいえ、この中で1番弱いという自覚は必要かと思いますよ。ましてや、格上のフィールドボス相当の敵と戦うのなら……誰にとっても余裕はありませんからね」
「……いやまぁそうなんだろうけど!?」
いやはや、水月さんが盛大にばっさり言ってくれてますなー。まぁここで水月さんに言ってもらってる方がマシだと思うけど! 多分、スミ辺りからは戦闘中にバカな真似をやらかしたら、とんでもない叱責が飛んできそうだし。
「だー! 分かったよ! 自分の身は自分で守るし、足は引っ張らないように頑張る! ケイ、それなら文句ないだろ!」
「……いや、それをこの場でわざわざ宣言しなきゃいけない状況に文句はあるけどな?」
「ケイから言っといて、それはねぇんじゃね!?」
「……ふん、馬鹿をやるのはその程度にしておけ。そっちの木の中、枝に擬態してるナナフシがいるぞ」
「おー! 確かにいるのです!」
おっと、スミが思ったよりも穏当な形で収めにきたな。てか、指さしてる方向の木の枝に……ナナフシねぇ? 元々が枝の形をしてるような虫の種族だけど、どこにいるか分からん! この手の種族、オフライン版の時から冗談抜きで見つけにくい!
「あ、見つけたかな! これ、看破をすればいいかな?」
「スミ、ここはサヤさんにお任せしてもよろしいですか?」
「……あぁ、構わん。距離があるから、もしフィールドのボスなら即座に攻撃に移れるようにしておく」
「という事なので、サヤさん、お願いします」
「任されたかな! 『看破』!」
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
おー、完全に枝にしか見えてなかったのが、カサカサと動き出して、黒いカーソルがあるのも見えた。王冠マークは無いから、ただの雑魚敵だったみたいだな。
「……ハズレか。ジェイ、そっちには反応はないのか?」
「雑魚敵の反応でしたら大量にありますが、フィールドボスの反応は皆無ですね。あぁ、効果が切れましたか。ケイさん、交代をよろしいですか?」
「あ、そういや次は俺の番か。了解っと」
なんだかんだで話しながら川を下っていけば、獲物察知の順番は俺になったね。さーて、いつどういう反応が見えるか分からないし、しっかりと使っていこう!
<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します> 行動値 119/124(上限値使用:1)
という事で、早速発動! えーと……おー、こりゃ確かに大量な反応! 森の中に結構な数の反応があるけど、それ以上に川の中の反応が多いな!? まだエリアの3分の1も進んでないけど、その分だけ川が結構深いのかも?
「ケイ、反応はどうだ?」
「特にこれといって目立つのはなし。でもまぁ、川の中に反応は多いから下からの攻撃には要注意で! これ、いつ攻撃されてもおかしくないぞ」
「へぇ、そんなにか?」
「まぁこの辺、そこそこ深さがあるみたいで離れてはいるけどなー。マングローブとかが見え出したら要注意かも?」
「なるほど、浅くなればそれだけ当たりやすくもなるか。ま、その辺まではもう少し時間がかかるだろ」
「だなー」
あんまり速度を上げ過ぎれば敵を刺激して戦闘になりかねないし、空を飛んでいく訳じゃなければ下手に速度を上げ過ぎる訳にもいかないしね。
「ねぇ、みんな? 今、ふと思ったんだけど……水中で隠れてる敵が自然発生のフィールドボスだったらどうする?」
「あ、そういう可能性もあるのか!?」
うーむ、この濁った川の中で獲物察知に反応しない敵がいるかもしれないのか。アルのクジラが泳げるくらいだから、ものすごく浅い訳ではないし、獲物察知の反応を見る限り……そこそこの深さはある。うーん、いる可能性は否定し切れないなー。
「どうするって……レナ、それはスルーしかないんじゃない? 流石に潜って探すには広いし、視界も悪いし……かといって、無差別攻撃で引きつけるにはLv差的に危ないよ?」
「およ!? 予想外に弥生から冷静な判断が返ってきたね!?」
「ちょっと待って!? 私にどういう反応を期待してたの!?」
「んー、ネコ夫婦の連携で一掃とか? シュウさん、そういうのはいかがー?」
「……そうだね。ケイさんの水の操作Lv10と、スリムさんの土の操作Lvと、僕らが上手く連携して動けば出来なくはないだろうけど……」
「シュウさん、確かに今のメンバーなら出来るとは思うけど、それは面倒じゃない?」
「手間がかかるのは間違いないし、いるのが確定して、それなりに範囲を絞り込めたらの話だね」
なんかサラッと言ってるけど、どういう手段で……って、あぁそういう事か。スリムさんの土の操作で川を堰き止めて、堰き止めた水を俺の水の操作で除去して、その場に残った敵をみんなで倒していけばいいんだな。
うん、やろうと思えば出来るけど、面倒なのは確実! そもそも、Lv上げが狙いならそれでもいいけど、いるかどうかも不明な水中に隠れるフィールドボスの確認の為にそんな事をやってられるかー!
「レーナー? 冗談で言うとも思えないんだけど……何か見つけてる?」
「んー、ちょっと一瞬過ぎたから自信はないんだけど、カーソルが出てない影が潜っていくのが見えたんだよねー? ケイさん、そういう移動をする反応ってなかった? えっと、位置的にはもう少し先の右側の川岸の辺り」
「随分先だな!? あー、多分、川に入るような敵はいなかったと思うけど……レナさんが見たのって、どういう種族?」
「多分、大きなイモリかサンショウウオ辺りだとは思うんだけど……流石にこれだけ濁ってたら、見失っちゃってさー」
「……なるほど」
なんで急に思いついたかのように言い出したのかと思ったら、そういう敵に思いっきり心当たりがあったからか! しかも、レナさんでも濁った水の中に入られて見失ってる状況かい!?
「なるほど、そういう敵がいたのですか。ふむ、ケイさんとスリムさんで川の水の除去は可能でしょうが……皆さん、どうします? フィールドボスの確証はありませんけど、念の為でも確認して進みますか?」
「……悩ましいところだね。動きながらの確認ならいいけど、完全に無駄足になる可能性もあるから……流石に脱線のし過ぎだし、僕は反対だね」
「俺もシュウさんに同意で! 気にはなるけど、その辺を探っていくのは検証でフィールドボスが対象じゃないとダメな可能性が高くなった時でいいと思うぞ!」
「まぁそれは私も同意見ではありますし、ここは見送りが無難ですか」
「だなー。……てか、なんかジェイさんが仕切ってない?」
「おや、これは失礼しました」
「まぁ別にいいんだけどさー。レナさん、今はとりあえずそういう事でいい?」
「うん、問題ないよ。まぁちょっと色々と脱線し過ぎてるのは間違いないし、検証場所に早く行かなきゃねー!」
「ですよねー!」
つい流れで『共闘殲滅を行うモノ』の取得をやってしまったし、なんだかんだで時間も21時半を過ぎている。次のエリアでの検証そのものにはそれほど時間はかからないだろうけど、成功した場合は結構な激戦になる可能性は高いしね! 流石にこれ以上、脱線しまくる訳にはいかない!
「アル、襲われない範囲で加速は可能?」
「……加速は出来るが、どのくらいで襲われるかは分からんぞ?」
「なら、その辺を試しながらで! ハーレさん、危機察知に備えといてくれ!」
「了解です!」
「って事で、少しペースアップして進むぞ!」
「ホホウ! 了解なので!」
「コケのアニキ、分かった!」
さーて、他のみんなもそれぞれにペースを少しだけど上げてくれたから、とりあえずはこれで進んでいこう。戦闘が増えて逆に進行ペースが落ちたなら、元のペースに戻すつもりで!
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