第1348話 称号取得を狙って


 変な流れからではあるけど、アナコンダとピラニアの群れを俺の水の操作で捕獲中。折角だから、これを使ってフラムとヨッシさんの『共闘殲滅を行うモノ』を取る事にしたから、その準備をやっていこう。

 とりあえずヨッシさんには『空白の称号』を使ってきてもらう事になったから――


「あ、ケイさん、その水の操作を使ったままだと……『河口域を荒らすモノ』は取れる?」

「あー、微妙かも? でも、影響範囲は過剰に広げたくないし……よし、だったら消す称号は『成熟体・暴走種の討伐』の方で! そっちなら確実だろ!」

「あ、確かにそれはそうだね。うん、そうしてくる……あ、まずは戦闘状態にならない場所まで移動しないとね」

「それならヨッシの護衛に行くのです!」

「私も行くかな!」

「わたしも行くよー! 安全を期して、複数人でヨッシさんを護衛だね!」

「あはは、それじゃ護衛はお願いするね」

「その辺は任せた!」


 空白の称号を使うにはログアウトして、いったんのいる場所に行く必要はあるけど、ここから一定以上を離れれば戦闘状態は解除になるし、護衛が3人もいれば大丈夫だろ。


「ちょ!? ケイ! それだと俺も空白の称号を使わないと無理なんだけど!?」

「だったら、一緒に行って使ってこい。持ってないって事はないだろ」

「いやいやいや、『河口域を荒らすモノ』の方で取らせてくれね!? 空いてる称号があるのに、わざわざ空白の称号を使いたくないんだけど!?」

「……過剰に敵を増やし過ぎても厄介だし、それは却下で」

「それ、酷くねぇ!?」

「あー、スミ? フラムは要らないそうだから、代わりにどうだ? 電気の昇華魔法はいけるよな?」

「……ふん、出し惜しむなら代わりにこの機会をもらうとするか」

「えぇ!? ちょ、そんなのあり!?」

「フラムさん、早く決めないと置いていくよー!」

「俺、どうすりゃいいんだよ!?」


 ぶっちゃけ、俺としてはヨッシさんが取れる状況にさえなれば問題はないから、フラムはどうでもいい。アルなら自分で夜に取りに行く機会も作れそうだしなー。


「だー! 分かった! 分かったから、レナさん、置いていかないでくれ!?」

「うんうん、それでよし! それじゃちょっと、わたし達は離れるねー!」

「そっちは頼んだ、レナさん!」

「お任せあれ! まぁ戦闘になったら離れる意味がないから、極力避けていくよー! 可能な限り、敵を見落とさないように!」

「はーい!」

「分かったかな!」


 サヤ、ハーレさん、レナさんの3人がいて避けられない敵なら、根本的に避けようがない敵になるだろうしね。そうでなければ、接敵を避けて最短でログアウトが可能な状態には出来るはず。……フラムが余計な事をしなければだけど。さてと……


「ジェイさん、シュウさん、悪いんだけど本体だけで10体を超えるように調整を手伝ってもらえない? 捕獲は俺の方でするからさ」

「それは構いませんが……この状態ですと、逆にアナコンダが暴れ過ぎてて邪魔ですね? ……というか、『共闘殲滅を行うモノ』は称号と重ねる必要はなかったと思うのですが?」

「……へ? え、そうだっけ!?」

「およ!? あれ? それだと、前提条件が変わってこない?」


 あれって称号と重ねるのが必須だったんじゃ? ……自分で取った前の事過ぎて、こう言われると自信無くなってきたんだけど!? え、マジでどうだった!? こういう時は、まとめで確認を――


「えぇ、今まとめを確認したのでそれで間違いないですね」

「マジか!? てか、気付いてたなら早く言ってくれてもよくない!?」

「……誰も何も言わないので、私の方が勘違いしてるのかと思っていたんですよ。まぁそういう訳ではなかったようですが……」

「あー、そういう……」


 うっわ、盛大に勘違いをやらかした!? ……自分で見つけたやつの条件を間違えて覚えてたとか、穴があったら入りたいくらいなんだけど!


「ちょ、ケイ!? 何やってんだ!?」

「自分で確認した訳じゃないくせに、フラムはうるさいわ! ヨッシさん、悪い! 戻ってきてくれ!」

「……あはは、まぁ私もど忘れしてて鵜呑みにしちゃってたから、そこは反省かも……」


 思いっきりやらかしたけど、今ならすぐにリカバリーは可能! 空白の称号を使う前でよかったわ! てか、ジェイさんナイス!


「まぁ下手に突いても藪蛇になりそうなのでこれ以上は何も言いませんし、取得自体はそれでいいとして……今のうちにアナコンダだけ出して、他の小さな敵を補充する方がいいのでは?」

「……確かにその方がいいかもしれないね。ケイさん、アナコンダだけ出せるかい?」

「あー、確かに? ちょっとやってみる」


 どう考えてもピラニアの群れよりもアナコンダの暴れ方の方が目に見えて酷いし、その余波で地味にピラニアも弱っていってるからなー。ここでアナコンダだけ取り除くというのは賛成。


 シュウさんが何も触れてないって事は、もしかして赤のサファリ同盟も勘違いしてた? あ、もしかすると赤のサファリ同盟の共同体としての性質的に『共闘殲滅を行うモノ』自体を知らない可能性もあるのか!


 まぁその辺は変に追求せずに、やらかした事はもう水に流して、アナコンダの顔がある辺りの水に穴を空けてみよう。これですんなり出てきてくれたらいいんだけど……よし、出てきた! あ、即座に逃げ出した!? まぁすぐに襲いかかってくるだろうし――


「ホホウ、上手く出てきたので!」

「でも、川の中に逃げちまったぞ?」

「ルスト、引き上げてくれるかい?」

「お任せ下さい!」


 おっと、襲いかかってきた時を捕まえてもらおうかと思ったら、その前にルストさんが根で巻きついて……あっさりと捕獲して地面に引き上げていった。てか、いつの間にかルストさんのサイズが普通のサイズに戻ってるよ。


「このアナコンダ、どなたか倒しますか? 誰も倒さないのであれば、私が倒しますけども」

「おし、そういう事なら俺がやるぜ。いいよな、ジェイ?」

「ご自由にどうぞ、斬雨。私は追加の魚でも捕まえてきますよ」

「おう! ルストさん、そのまま捕まえといてくれよ? 『魔力集中』『白の刻印:剛力』『貫通刺突』!」

「えぇ、了解しました!」

「あ、そういう倒し方なら、これはおまけしとくねー! 『黒の刻印:脆弱』!」


 普段は立った状態の斬雨さんのタチウオが横に寝て、突きをする構えから銀光を放ち出した。白の刻印の『剛力』で物理攻撃の威力が上げられて白光も放っているし、しれっと弥生さんが刻んだ黒の刻印の『脆弱』で物理防御も大幅に低下してますなー。


「ははっ、いいなこりゃ! これで即死はいけるか?」

「『識別』……ふん、斬雨から見れば格下のLv10だ。それなりに弱っている上に、刻印が2種類もあって倒せない方が恥だろうよ」

「……仕留め切れなきゃ、後でぐちぐち言われそうだな、おい!?」


 ここまでのアナコンダの動きや、体表面の全体に白い模様が浮かび上がっているのを見る限り……おそらくは物理型。だけど、Lv13になってる斬雨さんからすれば格下なのは間違いないよな。


「馬鹿やってないで、倒すのは手早くお願いしますよ、斬雨。『獲物察知』! ……ふむ、そこですか。『アースクリエイト』『土の操作』!」

「ホホウ! 私もやるので! 『強獲爪』!」


<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


 おー、あっさりとジェイさんとスリムさんが追加のピラニアを捕まえていくね。ジェイさんは石の槍で串刺しに、スリムさんはフクロウの爪でガッチリと掴んでの捕獲か。


「ケイさん、入り口を開けてもらえますか? 中に放り込みますので」

「ほいよっと!」

「ありがとうございます。スリム、少し弱らせてから、放り込みましょうか」

「ホホウ! その方が後が楽なので!」


 そう言いながら、ジェイさんが操作する石で叩かれまくるピラニア2体ですなー。HPが半分くらいまで減ってから、俺の水の操作の中に投入された! 他のピラニアも多少の差はあっても、同じくらいのHPにはなってるし……どんだけアナコンダが暴れまくってたんだよ! まぁピラニアに噛まれまくってたみたいで、アナコンダ自体も結構弱ってたけどさ。


「チャージ完了だ! くたばれ、アナコンダ!」


 眩い銀光と白光を放つ斬雨さんのタチウオが、ルストさんの根で締め上げられているアナコンダの頭に突き刺さっていく。まぁ元々弱ってたし、あっけなくHPが全て無くなりポリゴンとなって砕け散っていった。


<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


「おし!」

「……倒せて当然な相手だろう?」

「別にこれくらいはいいだろうがよ!?」

「……ふん、この程度で満足か」

「別に満足はしてねぇよ!」


 さーて、俺は何もしてないけど邪魔だったアナコンダの撃破は終わり! これでピラニアは何体になったんだろ? アナコンダを抜いて11体になって、そこに2体追加で13体? でも、その中に統率個体が混ざってるから、それは除外するとして……って、統率個体と通常個体の見分け方ってどうやんの!?

 いや、待て。統率個体はシンプルな指示でしか動けないのはヨッシさんのを見ていて知ってるし……動きを見れば分かるはず!


「ややこしいから、統率個体は出しておこうか。『アースクリエイト』『土の操作』!」


 あ、頑張って見極めようとしてたら、シュウさんがあっさりと串刺しにしていってる!? あ、よく見たらHPの下に『統率個体』って表記が出てた。……見極めるも何も、ちゃんと見てたら一目瞭然だったわ!


「これで……9体か。足らずはあと1体だな」

「結構、統率個体がいたんだね、コケのアニキ!」

「そうみたいだなー。どれかのピラニアが最大まで生成してたか」


 全部を識別するのは面倒だからそのチェックまではしないし、水の操作を使用中の俺にはそもそも出来ないけどね。わざわざ全部の敵の識別はしてられん!

 いやー、それにしてもサクサクと作業が進んで助かるなー。色々とここまで脱線も多かったけど、いざ目的を決めて動き出せば、実力者揃いだから早いもんだ! ……今のこれも、思いっきり脱線ではあるけども。


「弥生、始末を任せていいかい?」

「もちろん! よっと!」


 串刺しにされた状態のピラニアの統率個体達は、弥生さんの銀光を放つ爪で斬り刻まれて、あっという間に撃破は終わった。統率個体でも一応の経験値は入るみたいだけど、量はオリジナルより遥かに少ないなー。


「ホホウ! ジェイさん、残り一体をどちらが捕まえるか、勝負なので!」

「おや、勝負ですか? 構いませんが……もう終わりますよ?」

「ホホウ!? 既に捕まえていたので!?」

「刺すタイミングを計っていましたからね。ケイさん、開けてもらえますか?」

「ほいよっと! よし、これでこっちの準備は完了だな!」

「あとは、フラムさんとヨッシさんが戻ってくるのを待てばいいだけですね」

「だなー」


 やらかした事には、もう触れない。多分、ジェイさん以外の全員に特大のダメージがくるから! 誰にでも勘違いやミスはあるから、そこは気にしない! という事で、他の話題に繋げるまで!


「あ、そうそう。今は流れで『共闘殲滅を行うモノ』の取得になってるけど……その辺の取得の協力、今後にやるやつは冗談抜きでどうする?」

「……そうですね。アルマースさんがまだのようですし、こちらもスミがまだですし……何か希望はありますか? まぁここで聞くのは、あくまで参考意見としてですが」


 なるほど、既に取得済みの俺やジェイさんで決めるのではなく、まだ取得出来ていないアルやスミの意見で決めた方がいいか。うん、そこは配慮すべき点だね!


「ふむ、取得時の希望か。まぁ欲を言うなら変に待ち時間はない方がいいが……敵を集める必要がある以上、そういう訳にはいかないよな?」

「……それはそうだろうが、その背負っている木は使えないのか? 木なら『樹液分泌』があるだろう? 虫を集めるのは簡単じゃねぇのか?」

「あー、それは出来るには出来るが……場合によっては余計なものまで集まってくるぜ?」

「なるほど、その手段は害虫の類いも集まるのでしたね。苦手な人はとことん苦手ですし、そこの配慮は必要ですか」

「……ふん、ならばそれが平気な奴はそれでやればいいだけだ。駄目な奴は、別の手段でもいいだろう」

「私はそれでも構いませんが……アルマースさんはいかがですか?」

「まぁ最初からそう分けて募集するのであれば、問題もないか。シュウさん、赤の群集の方はその辺はどうなんだ?」

「僕らの方かい? 一応、ルアーさんやウィルさんには伝えてはおくけど、確約はできないよ」

「……やはり、色々と確定させるのは全て終わらせてからの方が良さそうですね」

「ケイ、そういう事だ」

「みたいだなー」


 ヨッシさんとフラムが戻ってくるまでの間が暇になったから聞いてみただけではあるけど……まぁ実際にどういう風に人を集めるかは、検証が終わってからの方が良さそうだね。

 アルの樹液分泌で虫を集めるのなら後で割と簡単に出来そうではあるけど、害虫系の種族が集まるのには注意しないと! ハーレさんが苦手な黒い饅頭の方はどうにかなるとしても、サヤが苦手なクモが厳しそう!


 てか、地味にフラムが叫んでたけど、何かあったのか? まぁいいや。マップを見る限り、そこまで遠くまでは行ってないはずだけど……。


「たっだいまー!」

「戻ったかな!」

「なんか時間がかかってたけど、ヨッシさん、すぐにいけるか?」

「あはは、ちょっと何体か敵と遭遇しちゃってね。大半は避けたんだけど……」

「途中でバッタの上に乗っちまったのは、焦ったけどな!」

「まぁフラムさんが襲われる前に仕留めたけどねー」

「それでも気分的にはヒヤッとしたぜ!」


 あー、戻ってくるのに時間がかかってたのや、フラムがさっき叫んでたのはそういう事か。襲われたのを助けてくれたのなら、普通に感謝しとけよー。フラムだけなら死にかねない場所なんだしさ。


「おし! 変な勘違いはあったけど、条件的に問題がないならサッサとやろうぜ!」

「あはは、そうだね。ケイさん、すぐに出来る?」

「川から少し上に持ち上げて、上部を開けるから、そこから狙ってくれ! 数は揃えたから、それでいける!」

「了解! それじゃいくね! 『エレクトロクリエイト』!」

「おっしゃ、いくぜ! 『エレクトロクリエイト』!」


 お椀型みたいな状態で川の水ごとピラニア10体を持ち上げた俺の水の操作の中に、雷鳴を轟かせながら昇華魔法のサンダーボルトが発動して、雷が続々と落ちている。あー、ちょっと俺の水の操作の範囲が狭かったか? 可能な範囲で追加生成して、川へと雷が落ちるのは防いで……よし、いけた。


 さてと、黒の暴走種ばっかりだから撃破報酬が次々と出てるけど、今はスルーでいいや。まぁこれならなんとか無事に『共闘殲滅を行うモノ』は取れたはず!

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