第1347話 軽い口
出発して早々に、移動を止めて色々とあった。まぁ擬態した敵がフィールドボスである可能性は否定出来なかったし、各群集にとっても珍しいバナナの採集が出来たのはよかった……って、あれ?
バナナを初めて見つけた割には、シュウさんのスルーっぷりが変なような気もしてきた? ……さては、初めて知ったフリをして、元々知ってはいたな!? でも、そうだとしても俺らにその事を話す義務もないからなー。
「ふぅ! バナナの採集、完了なのさー!」
「よいしょっと! さーて、このバナナは色々と加工を試していきたいとこだけど……あ、シュウさん、実はバナナの事は知ってたでしょ?」
「……レナさん、どうしてそう思うんだい?」
ほほう? 俺も不思議に思ってた部分に、思いっきりレナさんが突っ込んでいったね。その辺、元々が知り合いだからこそ聞ける事なんだろうな。
「だって、最初にスルーし過ぎじゃない? それに、ルストさんが採集の光景に大々的に動かなかったのも怪しいよねー? 実は、見慣れてるんじゃなーい?」
「鋭いね、レナさん。まぁこの天然のバナナをはっきり見るのは初めてなんだけど……」
「それは単純な事ですね! 弥生さんが2ndでバナナの木を――」
「ルスト! サラッと何を暴露してるの!?」
「ぐふっ!」
おー、思いっきり弥生さんに吹っ飛ばされて、ルストさんが川の中へと落ち……てないな。近くの何本かの木の幹に根を伸ばして巻きついて、水面ギリギリで止まってるよ。……相変わらず、ルストさんの動きは色々おかしいな。
「おぉ! 弥生さんの2ndはバナナの木なんだ!?」
「……なるほど、それは面白い内容を聞きましたね。プレイヤー産のバナナを既に得ているから、天然のバナナの質には興味を示さなかったという訳ですか」
「およ? でも、中立地点で見た覚えはないよー? 雪山には持っていってないの?」
「それはそうでしょうとも! 弥生さんのバナナは峡谷――」
「だから、余計な事は言わない!」
「ぐふっ!」
おー、巨大化した弥生さんのネコが、根で川に落ちないようにしてるルストさんの上に乗って……ギリギリの状態で川の中には落ちていないな。
ふむふむ、弥生さんの2ndのバナナの所在は赤の群集の占有になった峡谷エリアのどこかかー。果物系のアイテムはプレイヤー産の方が性能は上な事が多いから、バナナもそうなんだろうな。少なくとも、レモンよりも遥かに食べやすそうではあるしね。
「まぁ大体はルストが言ってしまった気がするけど……レナさん、理由としては今ので納得かい?」
「んー、隠そうとするのが珍しい気もするけど、そこを除けば納得ではあるねー。シュウさんも2ndを作ったりしてるの?」
「僕かい? 僕は――」
「シュウさんはヤシの木で、弥生さんの隣に――」
「沈みたいんだ? そんなに沈みたいんだね、ルスト? ちょっと発動Lvを上げよっか」
「あぁ、ルスト。その下……多分、アナコンダがいるから要注意だよ」
ちょ!? なんで水中に落ちないようにしてるのかと思ったら、そういう理由!? あ、確かにそう言われてみれば……何かが泳いでるような水の動きがある。
何かがいるのはよく見れば分かるけど、これがアナコンダってよく分かるな!? 透き通ってる水じゃないし、夜の日で尚更川の中の様子は分かりにくいのに……。
てか、弥生さんのネコ……これまではライオンくらいのサイズだったけど、そこから二回りくらい大きくなってるなー。普段は大型化のLvを抑えて使ってるのか。
「気付いていますから、水中に落ちないようにしているんですけども!? 弥生さん、不用意な戦闘は控えませんか!?」
「それなら、不用意な発言も控えよっか? 今日、どれだけ暴走すれば気が済むの?」
「すみませんでした! なので、降りていただいてもよろしいですか!? 流石にこれ以上は、掴んでいる木の方が保ちません!」
「えー、どうしよっかなー?」
弥生さんがそこまで2ndの木の存在を隠したがってる理由がよく分からないんだけど……まぁ不用意に他の群集に広めまくる情報ではないしな。でも、気にはなるし……よし、ここは口が軽そうな奴に聞いてみるか。
「フラム、弥生さんはなんでそんなに隠したがってるんだ?」
「ん? あぁ、それなら弥生さんが木の操作のコツをルストさんから教わってるのを――」
「フラム君? それ、内緒の話だったよねー?」
「あ、そういやそうだった!? って、弥生さん!? ちょ、待っ!?」
「隠し玉として育ててる最中なのに、なんでこうベラベラと喋ってるの!? ルスト共々、川に沈んできなさい!」
「おわっ!?」
「ぐふっ!」
おー、フラムを咥えに移動してジャンプした弥生さんが、ルストさんに向けてフラムを叩きつけたね。あ、ルストさんが巻きついてた木が折れて、盛大に水飛沫を上げて、ルストさんとフラムの両方が落ちていった。
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
おー、何気に黒の暴走種が3体も出てきてるんだな。とりあえずアナコンダは黒の暴走種で確定。……ふむふむ、マムシさんを見ても平気だったんだし、デフォルメされていればアナコンダを見ても平気ではあるか。
「くっ!? このアナコンダ、締めつけてきましたか!? このタイプの敵、身動きがしにくくて嫌いなんですが!」
「待て、待て、待て!? ピラニアが噛み付いてきてるんだけど!? 『エレクトロボム』『エレクトロボム』! おわっ!? 増えた!?」
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
あー、巨大なアナコンダがルストさんの木に巻きついてミシミシと締め上げていて、フラムのツチノコは……うん、大量のピラニアに噛まれまくってる。てか、川で電気魔法を適当の撃ちまくれば、そりゃ敵も次々とやってくるのは当然の状況ではあるよな。
それにしても、黒の暴走種の発見報酬が大量だね。それだけ、ここのエリアへの進出があんまり進んでないって事なんだろうなー。不用意にフラムが引きつけ過ぎたのもありそうだけど。
「弥生、これはちょっとやり過ぎじゃない?」
「ちょっとくらい、いいの! 今日のルストは散々やり過ぎてるし、フラム君も色々と口が軽いからね!」
なんかご立腹中だね、弥生さん。まぁ気持ちは分かるけど……今回は、流石にフラムに聞いた俺も悪い気もしてきた。隠し玉として育成中って事は、仕留めるのを狙ってる俺には隠しておきたかったんだろうし……。
「弥生さん、この状況を利用してもいい?」
「いいけど……ケイさん、何かする気?」
「折角だから『共闘殲滅を行うモノ』を取れる状況にしようかと思ってるんだけど……フラム、適当でいいから盛大に電気魔法をぶっ放しとけ。ただし、どれも殺すなよ? あと、お前も死ぬなよ?」
「あ、確かに敵は結構集まってきてるもんね。うん、そういう事なら問題ないよ」
「マジか!? 死なずに敵を集めりゃいいんだな! だったら、『魔法砲撃』『エレクトロクリエイト』!」
さーて、お詫びと言ってはなんだけど、このピラニアの集まり具合ならいい感じに条件は満たせられるだろ。問題は……俺らのPTだと既に『河口域を荒らすモノ』の称号は持ってるから、『共闘殲滅を行うモノ』の称号に重ねるのは無理なんだよな。となれば……。
「アルかヨッシさん、空白の称号を使って『河口域を荒らすモノ』を消して、取得を狙うか? フラムと昇華魔法を使う感じで」
「それなら、俺よりヨッシさんを優先的にしてやってくれ。この状況ならサンダーボルトでやるのが取りやすいだろうしな」
「え、私? 確かに取りたいけど……いいの? ジェイさん達は……?」
「私なら既に持っていますし……このメンバーで魔法を普段使いしながら持っていないのは、スミだけですね?」
「……ふん、俺は今すぐでなくても構わん。取るならさっさと取ってしまえ」
「という事なので、今回はお譲りしますよ。空白の称号の使用が必要なのでしたら、急いだ方がよろしいかと思いますけども……」
「ちょ、ケイ!? 急いでくれね!? やるとは言ったけど、これ、死にそうなんだけど!?」
あー、流石に大量のピラニアに噛みつかれまくって、フラムが死にそうにはなってるなー。うん、まぁそのまま死んでくれてもいいけど……状況的にそういう訳にもいかないか。
ルストさんの方は……いつの間にやら、アナコンダに巻きつかれた状態から、アナコンダを根で締め上げてる状況に変わってるな。盆栽サイズに小型化してその辺の木の枝からぶら下がっているし……うん、少し見てない間に凄い事になってるよ。
「ルストさん、フラムを抱えて逃げるのは可能?」
「それは問題ありませんけど……ケイさん、このアナコンダは平気なのですか? ヘビは苦手と聞いていたので、出来るだけ目に付かないようにと思ったのですが……」
「あー、大丈夫、大丈夫。苦手生物フィルタでなんとかなる範囲」
「そうでしたか! それでしたら気兼ねは必要ありませんね! フラムさん、一旦離れますよ!」
「お、おう! おわっ!?」
おー、巻きついていた根を離してアナコンダを解放して、今度はフラムに噛みついているピラニアの群れを弾き飛ばしながら、フラムを回収して他の木の上に飛び移っていったね。ピラニアの群れとアナコンダが追いかけていってるけど、ここで捕獲してしまおうか。
<行動値1と魔力値2消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 123/124 (上限値使用:1): 魔力値 308/310
<行動値を2消費して『水の操作Lv10』を発動します> 行動値 121/124(上限値使用:1)
とりあえず、これでピラニアのアナコンダをぐるっと覆う感じに操作して……中を空洞にした球状の水で、川の水ごと捕獲完了! 生成する水量は多くしなかったけど、まぁ耐久性はLv10だし問題ないだろ!
あ、でもアナコンダを捕まえるのには狭かったか? 水の中で暴れまくってるけど……まぁ操作時間の減り方は全然平気だな。
「なるほど、生成した水で敵の動ける範囲を区切り……ケイさん、この数を抑え込めるのですか? もし厳しそうなら、スリムが代わりに捕獲しますが?」
「ホホウ! そこはお任せなので!」
あ、ヤバい。普通に抑え込めると思って、生成こそ控えめにしたけど水の操作Lv10で捕獲してしまった!? あー、でも隠さないでもいいって方針にしてたし、そこは別に問題はないか。
「問題なし! 俺の水の操作、Lv10だしな」
「……何か今の捕獲に違和感がありましたが、やはりでしたか。昨日はそんな素振りはなかったですし……今日の補填分でLv10に至りましたね?」
「ちょ、ジェイさん、気付いてた!?」
「カマはかけましたけどね。この数、容易に捕獲し切れる筈もないですが……その迷いがありませんでしたし、変に思いますよ」
「……ですよねー」
『共闘殲滅を行うモノ』を取るには同時に10体以上の撃破が必須だけど、それだけの数の敵を一気に捕まえるなんてのは……これまでの水の操作じゃ不可能だもんな。
まぁ隠す気はなかったんだし、別にいいや! 堂々と使ってしまえばいいし、とりあえず数の確認の為に持ち上げてみる。……うーん、川の水が濁っててよく分からないな。バシャバシャと暴れまくってるのは分かるし、結構な数がいるのも分かる。でも、具体的に何体かが分からない!
くっ、中に川の水を残したのは失敗だったか? いや、でもそうしないとアナコンダはともかく、ピラニアは死にかねないしなー。
「シュウさん、これって何体いるか分かる? 川の水は澄んでる訳じゃないから、よく分からん!」
「数としては……アナコンダを含めて12体だね。何体か統率個体が混じってはいるみたいだけど……これは『共闘殲滅を行うモノ』のカウントに入るのかい?」
「あー、それはどうなんだ? ジェイさん、その辺って何か知らない?」
「……それは残念ながら知りませんね。ですが、試すにはいい機会ではありませんか? 進化階位が下がる単なる『同族統率』の個体では無理な気もしますが、『強化統率』の個体でしたらカウントとして成立する気はしますよ」
「それは確かに?」
ふむふむ、試してみる価値は十分あるか。いや、でも空白の称号を使ってやるんだから、ここは確実性を取るべきだな。あ、でもその前に、先にこれをやっといてもらわないと駄目だね。
「ヨッシさん、色々と準備はしとくから、今のうちに空白の称号を使ってきといてくれ」
「あ、それもそうだね」
空いている称号がない以上、空白の称号の出番だしなー。ヨッシさんがログアウトしていったんの場所で称号を消している間に、統率個体を除いた状態で10体以上の敵を確保しとこう!
それにしても、このメンバーだとどうも色々と脱線しがちだなー。まぁ全く無意味な事をしてる訳でもないし、今日のは大急ぎな検証でもないから別にのんびりやればいいや。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます