第1344話 まずは河口域へ
色々と不安がある状況にはなるけども、とりあえず検証を行うメンバーが全員、連携PTにはなった。……これ、俺は大丈夫だよな? 群雄の密林を出た途端、連結PTが解除になって襲われたりしないよな?
「さーてと、弥生、シュウさん、ジェイさん、スミさん、今日はそういう戦闘は無しだからねー? そういうのは後日、ケイさんに許可を得てからで!」
「まー、そこはレナの言う通りだねー。って事で、ケイさん、またの機会にね!」
「またの機会はいらないんだけど!?」
「いえいえ、勝ち逃げは許しませんからね、ケイさん。……近々、またタッグ戦でも行いますか?」
「あぁ、それもいいかもしれないね」
「おい。待て、ジェイ。その場合、俺はどうなる?」
「私は斬雨と組みますし……タッグ戦では少々厳しいですか。そうなると……1対1、大型アップデートが終わって群集間での模擬戦機能の解放待ちになりそうですね」
「別に1戦くらい、ジェイとスミが組んでもいいんじゃねぇか? 俺はそれでも構わないけどよ」
「……ふん、それは俺がお断りだ。競争クエストで一緒に戦う必要がある時は仕方ないが、普段からジェイの指示に従うのはごめんだな」
「それは私も同じ気持ちですよ」
ちょ、俺を抜きで話を進めるのはやめて!? てか、ジェイさんとスミって、地味に仲が悪い……あー、いや、これはお互いにライバル視してる感じな気がする。本当に仲が悪ければ、そもそもここで一緒に検証って話にはならないだろうし……。
それはともかくとして……早く、全員がマサキの所まで来てくれませんかねー!? PT会話で牽制し合っててもどうにもならんだろ、この状況!
「……まぁその辺は改めて考えましょうか。新たな模擬戦を使うには、大型アップデートを待つ必要がありますしね」
「ふっふっふ! その時には大々的に中継をするのです!」
もう既に乗り気になっているのは……まぁ容易に想像出来るハーレさんの反応だよな。この状況、逃してはくれそうにない気がする……って、考えてる間にジェイさん達は到着だね。
マムシさんのヘビ、相変わらずデカい大蛇ですなー。ジャックさんは双頭のオオカミなのは変わらず、スリムさんは……フクロウの頭の上にカタツムリがいるんだな。スミは、昨日見た様子のままの黒いリス。
「……あー、ケイ?」
「ん? フラム、何の用?」
「いや、これ……マムシさんの大蛇は平気なのか? ヘビ、苦手でブチ切れまくってたじゃん?」
「あー……」
そういやフラムがツチノコになる前に、一度ブチ切れてたような覚えがあるなー。うん、まぁ元々、デフォルメ化の範囲で平気ではあったし……ダメだった理由はフラムの方にあるんだけど、そこはどう説明したものか?
というか、なぜそれを俺を狙ってる相手がいる時に言う? ……ジェイさんとかスミとか、その辺を狙って――
「……こちらを見なくても、心配はいりませんよ。苦手な種族で判断力を失わせて勝っても嬉しくはないですからね」
「……そこは同意しておいてやる」
「あ、なるほど」
ジェイさんもスミも、そういう部分で狙ってきはしないのか。……ホッとしていいのかどうか不安は残るけど、そこはいいや。というか、そういうやり方をし始めたら泥沼化しそうな予感はするしなー。
「結局、ケイ、その辺はどうなんだ?」
「……フラム以外は、苦手生物フィルタでどうにかなる範囲だよ。フラムだけはリアルでの不快感補正で駄目だったけどな!」
「ちょ、何、その補正!? 俺、そんなのあんの!?」
「……自覚なかったんかい!」
ウィルさんとか、思いっきりこれまでの作戦に組み込んできてただろ! ……うん、もう今はそういう話はいいや。
ルストさん達も戻ってきたし、サヤ達もアルのクジラの上に戻ってきてるし、さっさとエリアの移動を開始しよう。このメンバーでの雑談は、なんか色々と危険過ぎる!
「ともかく、全員揃ったから出発――」
「ケイさん、少しだけお待ちいただけますか!?」
「今度は何だよ、ルストさん!?」
本当にスムーズに進まないな、今回の共同検証!? あー、不動種の並木ではなく、マサキと川の真ん中にある鳥居のスクショを撮ってるのか。……まぁ赤の群集のルストさんにとっては、ここも今だからこそ撮れる場所ではあるんだよな。
「ルースートー?」
「すぐに終わらせますので! 弥生さん、あとほんの少しだけお願いします!?」
「うーん、まぁ私も撮りたい光景ではあるんだけど……これ、後が大丈夫?」
「およ? 弥生、何の心配?」
「いやー、灰の群集で撮ってるのって特例な訳だし……ほら、レナとかハーレさんとかが、赤の群集の占拠場所のスクショを撮りたいって話になったり――」
「それはもちろん撮りたいです!」
「当然だよねー? 集合場所としての役割以上に、ルストさんがスクショを撮る為に入ってきてるし、もちろんわたし達も入れてくれるよねー?」
「……あらら、やっぱり狙ってたね」
「まぁ、その辺は始めから折り込み済みだよ。赤のサファリ同盟の責任である程度の出入りの許可は出せるようにするから、来たい時に声をかけておくれ」
「おぉ、やったのさー! レナさん! 今度、赤の群集へスクショをみんなで撮りにいくのです!」
「ふふーん、それはもちろん! さーて、撮影会の日程を決めなきゃね!」
なんかルストさんがスクショを撮りまくってる事実を使って、赤の群集の占拠エリアに入る算段を立ててたー!? あー、まぁその辺はお互い様って事にはなるし……灰の群集のサファリ系プレイヤーがそれを逃すはずがないか。
「ホホウ! それなら、共同撮影会を開催するのはいかがなので?」
「良い提案です! 是非ともやりましょう! 今すぐにでもやりましょう! それでしたら青の群集の方にも――」
「ホホウ!?」
「はーい、ルスト、ストップ!」
「……弥生さんは興味ないのですか?」
「あるにはあるけど、今はそっちを最優先するのは無しだからね! スリムさん、その辺はまた今度打ち合わせ! レナもそれでいい?」
「ホホウ、了解なので!」
「もちろん! わたしの方から、色んなとこに声をかけて根回しはしとく!」
「うん、お願いね」
「任せて!」
レナさんが取りまとめて根回しをするのなら、まぁほぼ確実に開催は決定だな、共同撮影会。順番にそれぞれの占拠エリアを巡っていくような内容になりそう。
「ワクワク! ヨッシ! サヤ! 待ちきれない楽しみが更に出来ました!」
「あはは、よかったね」
「いつ行くかは……今後の打ち合わせ次第かな?」
「この感じだと俺らも行く事になりそうだよなー」
「だな。まぁ次の共闘イベントまでは間が空くんだし、それもいいんじゃねぇか?」
「それもそだなー」
まだまだ行けてない新エリアも多いし、占拠が終わった後のエリアはこういう機会がなければ立ち入る事は出来ないもんな。色々な場所を転々と動いていくのもありだろ! まぁその時の予定次第にはなるけども。
「さてと……ルストさん、そろそろいいか?」
「全然よくありませんが……流石にこれ以上はリアルでの身が危険になる気がしますので、ここまでにしておきますね」
「んー? ルスト、しばらく食事抜きがいーい?」
「それがよくないから、ここで引き上げさせてもらいます! 『樹洞展開』!」
うん、弥生さんの実力行使が遂にリアル側まで及び始めたな。まぁそうでもしないと、暴走が止まらないルストさんもルストさんだけど……。
「みんな、移動中はルストに入っておくよ。僕らはそれぞれに足場を用意するタイプだからね」
「うん! 分かった、シュウさん!」
「おっし! 検証、開始だな!」
「ルストさん、私が水で持ち上げましょうか?」
「いえ、大丈夫です、水月さん! 足場は自前で作った方が早いですので!」
……今まで何度か見たけど、ルストさんの挙動って色々おかしいもんなー。アルが一時教えてもらってた気もするけど、クジラと完全に一緒な今はあんまりその辺の技術も活用出来てないか。まぁ種族の構成による部分だから、その辺は仕方ないよなー。
さて、とりあえず赤の群集のメンバーの移動準備は整ったみたいだけど、青の群集の方はどうだろね?
「ホホウ! 私達は、このまま進むので?」
「別にスリムさんに土の操作を解除していただく必要もないでしょう。既に知られている内容ですしね」
「……どうも乗ったままってのは、落ち着かないんだがな」
「だったら、ジャックだけ1人で降りて走ってくるか?」
「それは遠慮させてもらうぞ、スミ。そもそも、ここを出るまでは固まってろって話だ」
「……そういやそうだったか」
どうにもスミが浮いているような印象を受けるけど……まぁ実際、2回目の競争クエストで初めて見た人だしなー。後発で始めた人なのか、それともどこかからの移籍なのか……それともインクアイリーみたいに表面化してなかっただけの人?
「……なんだ、灰の暴走種? 何か言いたい事でもあるのか?」
「特に無かったけど、今言いたい事が出来たわ! その呼び方、本気でやめてくれない!?」
「ふん、知った事か」
「それが嫌でしたら、『ビックリ情報箱』とお呼びしましょうか?」
「それ、もっと嫌だから!?」
最近めっきり聞かなくなってきたと思ったのに、ここでジェイさんがそれを掘り起こしてくる!? 冗談抜きで、それは勘弁! それで呼ばれるくらいなら、青の群集の一部の人しか呼んでこない『灰の暴走種』の方が遥かにマシ!
「……冗談はそれくらいにして、本当に何か俺に用件でもあるのか? そうでないなら、落ち着かんからそう見てくるな」
「あー、いや、最近まで全然見た事なかったなーって思ってさ」
「なるほど、そういう事か。ま、テストでいなかった学生組って話だったし、そうもなるか」
「えーと、確か……スミさんは後から始めて、学生組が不在中に頭角を表してきてた人だね! ケイさん、ベスタさんが仕留められたって聞いてない?」
「あー、それは聞いた事があるような……?」
俺らがテストで不在な頃は停滞してた時期だって話だし、そこで色々と育った人もいたんだっけ! そっか、その中の1人がスミって事かー。
「ちっ、噂に違わぬ情報通っぷりだな、『渡りリス』」
「ふふーん、まぁねー! あ、そうそう。あの停滞時期って、スキルの熟練度も溜まりにくかった気がするんだけど、みんな、どう思う?」
「……確かに、それはある気がしますね? ですが、一定Lv以上からは急激にスキルLvが上がりにくくなりますので、一概にどうとは言えないかと……」
「私もジェイさんに同意かな。レナ、そこは気にしても仕方ないと思うよー? 必要な熟練度の量が明示されてないし、比較しようがないからね」
「んー、まぁそれもそだね」
その辺、俺はいなかった時だから何にも意見が出せない部分になるなー。でも、スキルLvにも上がりにくい時期がある可能性か。
逆に言えば、上がりやすくなる時期がいつか訪れる可能性もある? うーん、ありそうな気はするけど、実際にどうとは断言し切れないとこだね。あ、そういやLv上げ向けの緊急クエストって……流石に終わったか? まぁお知らせでも見てない気がするし、終わったのかもなー。
「さてと、これでみんな準備完了だね? ケイさん、出発の号令をお願い!」
「ほいよっと!」
そのままレナさんが号令をかけてくれてもよかったんだけど、任されたならしっかりとやっていこうか。まぁ号令というか、これからの検証の方針の確認って感じになるだろうけどさ。
「おし、それじゃとりあえず『名も無き未開の河口域』に移動して、既に自然発生しているフィールドボスを捜索! ただし、これはあくまで移動途中で見つけたらの話で! 本命は、その先の海岸エリア!」
「という事で、『刻瘴石』と『刻浄石』の検証に出発なのさー!」
「おいこら、ハーレさん!?」
俺に任されたのに、肝心な部分を持っていくんかい! 何というか、テンションが高い時のハーレさんってこういう事が多くない!?
「さて、それでは進んでいきましょうか。ここの北側ですし、それほど移動には時間はかからないでしょう」
「ホホウ! 進んでいきますので!」
「それでは皆さん、いきますよ!」
って、特に何も突っ込まれずに移動が始まったよ!? てか、相変わらずルストさんは無茶苦茶な移動だな!? 生成した石を根で掴んで、全身を揺らしてそのまま跳んでいくって木の動きじゃないっての! あの動き、地味に早いんだよなー。
「俺らも行くぞ! 『自己強化』『高速遊泳』!」
「検証に向けて、出発かな!」
「調査船『アルマース号』、全速前進なのさー!」
「あ、今回は調査船なんだ?」
「なんかそういう呼び方、久々に聞いた気がするなー」
「ふっふっふ、私も久々に言った気がします!」
前に聞いたのって、いつだろ? うーん、いつ言ったか覚えてないし、わざわざ無理に思い出す必要もないか。ともかく今は、群雄の密林を抜けて北側のエリアに進むのみ!
一応おまけ的に目標には設定したけど、自然発生のフィールドボスがいてくれれば検証が出来ていいんだけど……その辺は運次第だね。普通の敵に対して、大した成果が得られなかった時には本格的に探す事にはなるだろうけどさ。まぁその場合は『瘴気珠』を使って、自分達で生み出す事も考えないとなー。
「そういえばケイさん、フィールドボスの誕生に必要な強化済みの『瘴気珠』はあるのですか?」
「あー、俺らは持ってないけど……ジェイさん達は?」
「……流石にそれを用意している時間はありませんでしたよ。てっきり持っているのかと思ったのですが……」
「あぁ、それなら僕が持っているから心配はいらないよ。まぁ可能であれば使わずに済ませたいし……そもそも、Lv30の未成体を探すのが面倒ではあるからね」
「だそうだぞ、ジェイさん」
「シュウさんが持っているのであれば問題はありませんが……どこの群集が負担するかを考えると、自然発生の方がありがたいですか。探すのが大変なのは同意ですしね」
「まぁそうなんだよなー」
フィールドボスに進化させるのは、瘴気珠だけあればいい訳じゃないからなー。まぁその辺は、実際に必要になった場合に考えよ。とりあえず脱線しまくってたし、今は移動が最優先!
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