第1343話 検証のメンバーが揃って
ちょっと変な脱線をしている間に、もうルストさんが到着している。赤の群集の安全圏って、決して近くはないはずだけど……本気で早いな!?
「それでは、私はスクショを撮りに行って参りますので、全員が揃ったらお呼び下さい!」
「「おわっ!?」」
「ルストさん!? これはいくらなんでも乱暴ではないですか!? 『略:アクアクリエイト』『略:水の操作』!」
ちょ!? 根が伸びてその辺の木に巻きつけて、勢いを更に高く飛び上がった状態で、樹洞を開いて中にいたアーサーや水月さんが落ちてきた!? ……フラムも落ちてるけど、そこはどうでもいいや。
てか、水月さんはホタテを手に持ったクマの状態だから、これは共生進化か? 発動の仕方から見て、ログインはホタテ側っぽいね。それで水のカーペットを広げて受け止めてる状態か。
シュウさんと弥生さんは……まぁ心配する意味もないくらいに、あっさりと着地をしている。シレッと思考操作で発動したっぽい岩の上に。
「こら、ルスト! 待ちなさーい! シュウさん、私だけじゃ止め切れそうにないから一緒にお願い! レナも手伝って!」
「……はぁ、仕方ないね。ケイさん、ジェイさん達が来たら伝えておくれ。レナさん、悪いけど監督役をお願い出来るかい?」
「およ? あ、そっか。わたしがすぐ近くにいれば、まぁ早々騒動にはならないもんね。そこは了解として……それじゃちょっと行ってくるねー!」
「任せた、レナさん!」
「うん、任された!」
ふぅ、暴走しまくってるルストさんをそのまま放置という訳にはいかないもんなー。この場合だとレナさんに監督責任が行く形にはなるんだろうけど、シュウさんと弥生さんもいるんだし……多分大丈夫なはず。
というか、この3人が揃っていても暴走が止められないとしたら……冗談抜きで誰が止められるんだ? うん、スクショを前に暴走をしたルストさんってとんでもないな。
あっという間に見えなく……なってはないな? 目的地はすぐそこだから、ルストさんはすぐ止まった様子。……PT会話でテンションが上がったような声は聞こえてるけど、ここまで普通の声として届いてはいないから、地味に声量自体は抑えてはいるみたいだなー。うん、そういう配慮が出来るなら、もう少し他のところに配慮してほしかった。
あ、そうしてる間に水月さんがアーサーとフラムを乗せて、上空まで上がってきた。とりあえずこれで赤の群集の方は到着だな。
「うっぷ……ちょっと酔った……」
「いや、酔わないようにはなってるだろ! 何言ってんだ、フラム!」
「いやいや、結構凄い状態だったからな!? さっきまでのルストさんの樹洞の中!」
「……フラム兄、よくあの状態で話してたよね」
「そりゃまぁ、面白い話だったし――」
「あー、やっぱりフラム、死んどく?」
「ケイ!? なんかゲーム内で会う度に俺を殺そうとしてないか!?」
「毎回、余計な事をし過ぎなんだよ!」
「……さて、フラムの色々な失敗談でも語っていきましょうか。まずは……そうですね。小学生の頃にあった初恋の話でも――」
「だー!? 水月、それは待った!? そういうのはズルくねぇ!?」
「ケイさんの嫌がっていたリアルの話を面白がってしていたのですし、同じ事をされても文句はありませんよね?」
「いやいや、文句はあるって!?」
なるほど、なるほど。流石は水月さんはフラムといとこなだけはあって、色々と知らないような事を知っている訳か。目には目を……リアル話にはリアル話でいいじゃん!
「水月さん、その話を詳しく!」
「ちょ、ケイ!?」
「私もそれは気になります!」
「ハーレさんまで!?」
「ごめん、フラム兄。俺も気になる!」
「アーサーもかよ!?」
さぁ、逃げ場はどんどん塞いでやる! マサキのかなり上の方にいるから、多少騒いだところで邪魔にはならないだろうしな! てか、かなり上空で待機してたのは……アルめ、俺とフラムが言い合うのを想定してたな!? ……うん、毎回やってる気がするし、そう判断されても仕方ない気もする。
「……さて、私たちは今の内にメンバーを決めてしまいましょう。メンバーのPT加入にする前にお伝えしますので、話の区切りが付いたらお教え下さい」
「この感じなら、妙に慌てて準備する必要もなさそうだな。あー、ジェイが焦らせるから、焦ったじゃねぇか」
「……すみません、斬雨。ルストさんも色々と規格外だというのは、どうにも印象が薄いものでして……」
「ははっ、確かにそれは違いねぇな! どっちかというと、暴走した弥生さんに吹っ飛ばされるイメージが強ぇ!」
「いやいやいや、ジェイさん、斬雨さん、ここで変な話はやめておけとか言って止めてくれてもよくない!?」
「……正直、フラムさんの自業自得かと?」
「俺もそこは同感だぜ? 言われたくない事を言うってのは、自分がそうされても仕方ないって覚悟はしとくべきだ。むしろ、笑い話で済む程度の内容になりそうで良かったじゃねぇか」
「下手すれば、一生ものの恨みを買いかねないですからね」
「そういう事です。フラム、覚悟しておきなさい」
「どこにも味方がいない!?」
「あれは、フラムが小学5年生の頃でしたか。夏休みで私の住んでいる実家の方に帰省していた時なのですが――」
「あー! あー! あー! あー! あー!」
「……フラムさん、申し訳ないのですが静かにしていただけませんか?」
「暴走しまくってるルストさんにだけは言われたくないんだけど!?」
今のツッコミだけは同意だけど、この辺でフラムは一度、本気で痛い目に合っておけ! ジェイさんも言ってたけど、内容次第では冗談抜きで恨みを買うからな!
さて、フラムの黒歴史は一体どういうものなのやら? 今後はそれを盾にして、余計な事をしようとするのを防いでいくか! てか、初恋でここまで隠したがる内容ってどんなのだ?
◇ ◇ ◇
フラムが悶絶している様子はどうでもいいけども、水月さんが内容を語り終えた。……なるほど、これは確かに黒歴史!
「っ! お前……中性的でどっちか分からない、会ったばっかの相手に一目惚れして告白って……っ! しかも相手は男で……っ! 性別を間違えた事にブチ切れられて、殴られたとか……っ!」
「だー!? やめろ!? 笑いを堪えなから、それ以上言うな、ケイ!?」
「いえいえ、ケイさん。まだ話は終わりじゃなくてですね?」
「これ以上、まだ続きがあるのか!?」
「水月!? ストップ! もう反省したから、これ以上はなしで!」
「その後、何があったの、水月?」
「ワクワク!」
アーサーとハーレさんの追撃が入ってるし、ここからまだ何かあるとは! さっきの話で終わりだと思ってたんだけど、普通に続きが気になるな!
「それがですね? その後、私に対しても『水姉は男? 女?』とか聞くんですよ。色々あって私自身が見た目には無頓着な時期ではあったんですけども、流石に従姉弟でも失礼じゃありません? あまりフルダイブ内とリアルでの声にも差はないですけども……」
「だー!? だから、それは変に気が動転してただけの話だって!?」
あ、水月さんって中性的な声だから性別が謎だったけど、女の人だったのか。まぁ確かにそんな予感はしてたから、そこまで違和感もないけど……リアルの姿を知っていて、その質問は失礼過ぎないか?
それなりに年は離れてそうだし……いくら小学生でもなー。あ、地味に水月さんはその事を根に持ってそうな気がしてきた!? ……口は災いの元とはよく言ったもんだね。
「それは普通に失礼かな!?」
「というか、『水姉』って呼び方の時点でほぼ確定だよね?」
「水月さんがリアルでも中性的な声でも、それはないのです!」
「……フラム兄、そんな事してたんだ」
「みんなしてドン引きしないでくれね!? 小学生の頃の話だから!」
なるほど、フラムの余計な事を言い過ぎる部分は、俺に対してだけじゃなく、今まで色んな所でやらかしてそうだな。これ、深掘りしたら他にも色々出てきそうな予感。
「一区切りついたみたいですし、そろそろPTに入れても問題ないでしょうか?」
「問題ないぞ! ジェイさん、早くしてくれ! このままだと別の話題が始まっちまいそう!」
「……随分と必死ですね、フラムさん。というか、従姉弟とはいえ一緒に住んでいる訳ではないようなのに、そんなにいくつもあるのですか?」
「流石に山ほどではありませんけど、大きなのはあと3〜4つほどありますね」
「水月、もうこれ以上はやめて!?」
「……まぁ丁度いい時間潰しにはなりましたし、既に近くまでは来ているようなので、これくらいにしておきましょうか」
「た、助かった……」
他にもまだあるってのがビックリだけど……あ、大きな土の塊が浮いてきてる様子が見えるね。ちょっと遠いけど……それでも見えるほどの生成量って事はスリムさんが来てるな?
「こちらからもアルマースさんの姿を視認……この並木は思った以上に凄い状況ですね」
「検証が終わったら青の群集でもやってみるか? 地味に利便性は良さそうだしな」
「ふむ……確かに瘴気石や瘴気珠の強化に少し手間がかかっていましたし、こうやって1ヶ所に集まるというのもありですね」
ルストさんはスクショを撮る対象としてテンションが上がってたけど、ジェイさんは利便性を考えているんかい! いやまぁ俺も上から見てきた時は、その辺は思ったけども!
「青の群集もこの景色を作るのですか!? 元となる場所が違うでしょうし、それはそれで別の趣きがあって良さそうではありますね! 弥生さん、シュウさん! 赤の群集でも同じように作りましょう! 確か赤の群集では峡谷エリアを得ていましたよね!? いえ、海水の海溝エリアもありましたし、そちらでというのも……流石に不動種が集まる場所としては適応が必須な場所は厳しいかもしれませんね! ですが、海は海で海藻の不動種で集まるという事も――」
「ルスト、早口で捲し立てない!」
「ぐふっ!」
「提案するのはいいけど、決定権は私達にある訳じゃないからね!」
「……それもそうでした」
「さてと、ルスト、ジェイさん達が来たならここで切り上げだよ? 時間の延長はなしだからね?」
「……えぇ、分かりました! ですが、最後の1枚……いえ、2枚ほど――」
「いい加減にしなさーい!」
「ぐふっ!」
「あはは、大変そうだね、弥生」
「まったくだよ! 私と違って、暴走してる自覚もないんだから! ほら、早く行くよ!」
「……はい。あ、弥生さん、シュウさん、後で撮ったスクショを見せ合いましょう!」
「んー、まぁ検証が終わってからねー」
「まずは検証が優先だよ」
「でしたら、早めに終わらせるだけです! いえ、検証で出てくる未知の敵というのもスクショの対象としていいのでは? これは張り切ってやっていきませんと!」
うん、まだルストさんのテンションは高いままなんかーい! 今日はもうずっとこの暴走状態な気がするけど……なんかちょっと不安だな。戦力としては申し分ないはずなんだけど、根本的にちゃんと戦ってくれるかという部分に不安要素が満載過ぎる。
「さて、それではこちらのメンバーを――」
「あ、ジェイさん! 少し待ったなのさー!」
「……ハーレさん、どうかしましたか?」
「ついでなので、一緒に乗せていってください!」
「……はい? え、まだ移動していなかったのですか?」
「話を聞いてて、すっかり忘れてたのです!」
「そうなのですか!?」
あー、そういや場所の移動は全然しないまま、ずっと水月さんの話を聞いてた気がする。途中で水月さんとアーサーとフラムが、アルのクジラの上に移動はしてたけど、それ以上は何もしてなかったもんなー。グダグダだな、おい! ……俺が言う事でもないけどさ。
「……まぁいいでしょう。位置は……あぁ、桜の並木の端の方ですか。なるほど、桜花さんの所ですね」
「そうなるのさー! あ、来たのです!」
「ジェイさん、よろしくかな!」
「よろしくお願いします、ジェイさん」
「少しの距離ですし、これくらいは構いませんが……流石に脱線し過ぎなのでは?」
「ま、競争クエストも終わったんだし、多少は気を抜いてもいいんじゃねぇか? 検証も何時間もはかからないだろうしよ」
「……それもそうですね。今日は気楽にやりましょうか。あ、とりあえずこれは済ませておきますよ」
おっと、連結PTの表示の方でジェイさんのPTにメンバーが追加になったね。最終的には誰が来る事になったんだろ? とりあえずその辺を確認していくか!
出ている名前は……『濡れたらスリム』さんは、まぁこの移動の様子を見る限り分かってた。それから『ジャック』さんは……名前がでてたし、ここも想定内。えーと、後は……『マムシ』さんと『スミ』!?
「よう、昨日ぶりだな、灰の暴走種」
「……その呼び方、勘弁してくれない? てか、スミが来るのは意外だったんだけど?」
「ふん。俺は投擲もメインだが、それだけじゃねぇとは言ったはずだぜ?」
「……はい? あ、もしかしてスミがアブソーブ・エレクトロ持ち!?」
アブソーブ持ちで風と雷の人員を用意するって言ってたし、他のメンバーの状況を考えると必然的にそうなるよな!? いや、言ってた通りの属性が集まったとも限らないけども……。
「さっき得たばっかだが、それで正解だ。精々、ここで今まで以上に警戒するようにしてもらおうか」
「検証をしに来たんじゃねぇの!?」
「そうですよ、スミ。ケイさんを倒すのは私ですからね」
「はっ! そんなもん、早い者勝ちだっての。ジェイに遠慮してやる理由はねぇよ」
「そういう話なら、私達も混ぜてもらおうかなー? 昨日、ケイさん達を仕留め損ねちゃったしさー。ねぇ、シュウさん?」
「そうだね。早い者勝ちというのは賛成だけど……場合によっては、先に僕らが相手になるよ?」
「……へぇ? 赤のサファリ同盟のネコ夫婦が相手か。上等じゃねぇか!」
「……まったく、血の気が多いですね、スミは」
ちょ!? なんか俺狙いの人が勢揃いしてるんだけど、これからやるのって検証だよな!? ここから乱戦になって、みんなして俺らを仕留めに動くとかないよな!?
「わっはっは! 人気者じゃねぇか、ケイ!」
「うるさいわ、フラム!」
いくらなんでも、ここで襲われる事はないはず! ……多分、いくらなんでもそういう動きはしないだろ! なんだかんだで許可を得て入ってこれる状況にしてるんだし、それぞれの立場的にそれを反故にする真似はないよな!? ……あー、群雄の密林を出た後が危険?
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