第1341話 共同での検証の為に


 なんとか共同での検証の為に、群雄の密林への立ち入り許可は得たけど……このメンバーが揃うとややこしいな!? フラムはいつも通り鬱陶しいし、ルストさんは暴走中だし、ジェイさんは探りを入れてくるし!?


「ケイさん! 今、許可は出たと言いましたね!?」

「こら、ルスト! どこに向かって走っていこうとしてるの! わー! シュウさん、テンションが上がり過ぎててルストが止まらないんだけどー!?」


 ちょ!? 弥生さんでもルストさんが抑えきれなくなってきてない! いやいや、許可が出たって伝えたら逆に抑えが効かなくなるってどういう事!? 


「ルスト、灰の群集に迷惑をかけたら……入れなくなるよ? 分かっているのかい?」

「シュウさんの言う通りだぞ、ルストさん! 俺らの責任にもなりかねないから、通る時にスクショを撮るだけ! その範疇に抑えてくれないなら、許可出来ないからなー! シュウさん、いざって時は――」

「……僕が責任を持って、強制的に立ち去らせるよ」

「シュウさん!? ケイさん!? それはいくらなんでも――」

「ルスト、普通にしていればいいだけだよ? ……そうでなければ、覚悟はいいね?」

「……はい、分かりました」

「あー、やっと止まった……。シュウさん、ケイさん、ありがとねー!」

「すまないね、ケイさん」

「どういたしまして……?」


 なんかここでお礼を言われるのも変な気がするけど……まぁいいや。下手に暴れたら蒼弦さんが戦おうとしてるという情報は、伏せておいてもいいだろ。……言ったところで、シュウさんの強制的なリアル側からの排除以上の効果はないだろうしなー。


「あ、ジェイさん。他の群集の立ち入りは1PTまでは許可が出たから、あと4人はメンバー追加は可能だぞ。一緒に纏まって動くのが条件だけど」

「おや、よろしいので?」

「まぁ赤の群集から6人だし……水月さんやアーサーも来るんだよな?」

「ちょ!? シレッと俺を除外してね!?」


 うるさいフラムは黙ってろ。今日の学校での事は助かったけど……なんかこいつが来るとその話題が出てきそうで嫌な予感がするんだよ! 戦力的には大して強くないどころか、俺にとってはむしろ邪魔だし……無視だ、無視!


「俺らが行っていいなら、行きたい!」

「ルストさんほどではありませんけど、灰の群集での並木道の話は聞いていますので、少し見てみたくはありますね」

「おー! 水月さん、見てみたいんだ!? はっ! もしかしてスクショを撮るのにハマりましたか!?」

「えぇ、まぁそれなりにはですけどね。今は良いスクショの撮り方を色々と教わっているところです」

「水月さん、サファリ系プレイヤーに仲間入りかな?」

「おそらく、そうなるのでしょうね」


 あー、なるほどね。赤のサファリ同盟のメンバー入りをしていたら、必然的にその辺へ興味が出てきても不思議じゃないか。


「ケイさん、ジャングルへの立ち入り……合流地点はどうすればよろしいですか?」

「あー、その辺を先に話しとかないとなー。必要があれば安全圏まで迎えに行くけど……どう? あ、これ、シュウさんや弥生さんの方も!」

「私達は必要ありません! 全速力で、群集支援種の元へ駆けていきましょう!」

「こら! ルストが勝手に代表で答えない!」

「……まぁルストが言っても聞かないだろうから、僕らの迎えは必要ないよ。ただ、移動種の木が猛烈な勢いで突っ切るくらいは伝えておいてくれると助かるかも……」

「それは伝えとく。あ、サヤ、頼みがあるんだけど……」

「私に? どういう内容かな?」


 ハーレさんは間違いなくスクショを撮ってるだろうし、ヨッシさんはハーレさんの暴走を見張ってもらっておいた方がいいはず。そうなると、これを頼むのはサヤが適任だ!


「桜花さんに今話してる内容を伝えといてもらえない? そもそもあの辺、不動種同士のネットワークがメインで形成されてるらしいから、そっちから情報を流してもらう方が確実っぽい」

「あ、そうなのかな! そういう事なら任せて!」

「それじゃ頼んだ! あ、それともう1つ、レナさんが一緒に来たいって言ってたけど、みんな、問題なし?」

「おー! レナさんが来るなら歓迎さー!」

「それは大丈夫かな!」

「うん、私も大丈夫! あ、でもダイクさんは?」

「いつも常に一緒って訳でもないだろうし、俺らに空きが1人分ってのは知ってるだろうから、レナさん1人じゃねぇか?」

「ダイクさんを連れてくるなら言ってるだろうし、多分レナさんだけだと思うぞ」

「あ、確かにそれもそうだね」


 アルも言ってる通り、レナさんは状況を分かってるだろうし、人数が1PTに収まらないようなら、その事は伝えてくるだろう。それがなかったって事は、この解釈で大丈夫なはず!

 今回のレナさんの臨時メンバー入りはすんなりと決定だなー。風音さんの話題は出てこなかったけど……すれ違っただけで、桜花さんの所には行ってなかったとか? まぁその辺は後で聞こうっと。


「なるほど、レナさんが来るのですか。……つかぬ事をお聞きしますが、アブソーブ系のスキルを使えるのはケイさんとシュウさんだけでしょうか?」

「俺らのPTは、レナさんも含めてそうなるなー」


 アルがスキル強化の実を溜め込んでるけど、それは言わなくてもいい部分。この検証の為だけに、わざわざ取る必要はない!


「僕らの方も、アブソーブ持ちは僕だけになるね」

「シュウさんは土と風の2つを持ってるけどなー」

「……気軽に暴露してくれるね、ケイさん」

「何気にとんでもない情報が出てきますね!? ……流石はシュウさんと言ったところですか」


 このジェイさんの驚いたようでいて、そこまで動揺していない感じ……もしかして、青の群集にも2属性のアブソーブ持ちの人がいるか? それか、2種類のLv10持ちのプレイヤーがいるのかも? ……ジェイさん自身がその可能性もあるよな。


「……今は探り合いはやめませんか?」

「先に仕掛けてきたの、ジェイさんじゃね? さっきの、そういう意図があったんじゃ?」

「先ほどのは、単純に『刻瘴石』や『刻浄石』の生成が可能な人員の確認ですよ!? ……アブソーブ持ちの人が少ないようなので、私達の方から風属性と雷属性の人を連れて行きます。あと、水の昇華持ちもいた方がいいでしょうね」

「あ、そういう意図か」


 前回は俺とシュウさんで生成してたから、そのまま同じ組み合わせでするつもりになってたよ。まぁそれで特に問題はないけど、青の群集からも参加してくるなら、生成出来る人員は多い方がいいか!


「アブソーブ持ちとなると……風はジャックくらいだが、雷は誰を呼ぶ? 何人かいただろ」

「それは向こうの都合にもよりますし、呼びかけてから考えましょう。一旦そちらに戻りますので、先に斬雨の方で話を進めておいて下さい」

「おう! それで、迎えはどうしてもらうんだ?」

「あぁ、そういえばそうでしたね。ケイさん、集合場所はマサキの元でよろしいのでしょうか?」

「えーと――」

「それでいいですとも!」

「なんでルストが答えてるの!」


 まだ続いてるのか、ルストさんの暴走……。まぁ迎えがいらないって事なら目印としてはマサキが一番分かりやすい場所なのは間違いないのは確かだけどさ。


「まぁルストさんの要望の場所はマサキの近くだし、集合場所はマサキの目の前にしとくか。ジェイさん達なら、変に暴れる事はないだろ! ……変に探りを入れ過ぎて、怒られないようにはしてくれよー」

「釘を刺されてんぞ、ジェイ」

「流石に今回の状況ではやりませんよ!?」


 何気に『今回の状況』とか言ってるし、状況次第では冗談抜きで探りを入れるんだろうな、ジェイさん。まぁそれは灰の群集でもザックさんとかが状況を探る為にやってた事もあるし、文句を言い切れない部分ではあるけどさ。

 許可を出してる今回、自重してくれるならそれで十分だろ! 青の群集のリーダー格のジャックさんも来るのなら、万が一の時に斬雨さんと一緒にジェイさんを止めてくれるはず! そういう時、何気にジェイさんよりも斬雨さんの方が冷静なんだよなー。


「ともかく人数が揃い次第、改めてジャングルのマサキの方まで移動しますので! もうすぐに動き始めてよろしいのですよね?」

「あー、そうなるよな。どう考えてもルストさんが待てそうにはないし……」

「弥生さん! すぐに赤の群集に戻りましょう! それで、転移して安全圏からジャングルへ行きましょう!」

「あっ!? 抜けられた!? ルスト、待ちなさーい!」

「……すげぇな、ルストさん。弥生さんが根に噛みついて抑えてたのに、それを振り解いて駆けていったぞ」

「……マジかー」


 アルがすぐ近くで見てるんだろうけど……ルストさんより弥生さんの方が強いイメージだったんだけどな。暴走してない弥生さんより、暴走したルストさんの方が強くなってる? ……ヤバいな、その強さ。


「さてと、僕らの方も準備が出来次第、ジャングルの方へと向かうとするよ。今日はよろしく頼むね、ケイさん、ジェイさん」

「こっちこそよろしく、シュウさん!」

「どういう結果になるか、楽しみにしていますよ。それでは一旦失礼します」


 さーて、目の前にいたジェイさんも離れていったから、俺も群雄の密林へと戻りますか! レナさんはマサキの前で待ってるって言ってたし、PTに入れるようにしておかないとね。という事で、転移して戻っていきますか!


「おーい、ケイ?」

「……なんだよ、フラム」

「あ、完全に無視されてた訳じゃねぇのな!」

「……無視していい?」

「いやいや、よくねぇよ!?」

「だったら、何の用だよ」

「いやー、『共闘殲滅を行うモノ』はやっぱり後日?」

「そりゃな! やらないとは言わないけど、今から行くのは格上の敵の出る場所だぞ? 大量の敵を集めたら、死にかねんわ!」


 実力者揃いとはいえ、昇華魔法で一気に同時に倒さなきゃいけないんだから、これからの中では不可能に近いわ! まぁ群雄の密林で出てくる敵を集めれば不可能でもないだろうけど……やっぱり別枠で用意した方がいいのは確実だよな。出来るような機会、あるとも思えないし……。


「それが嫌なら、PTを抜けて自分で募集でもかけろ!」

「嫌って訳じゃねぇよ!? 確認しときたかっただけなのと……あー、あれだ。俺ら、戦力的に足手まといにならね?」

「なるとしたら、フラムだけだけどな。アーサーと水月さんは、欠片も問題ないわ」

「俺の扱い酷くねぇ!? 今日の昼、変な誤解が発生したのを助けてやっただろ!?」

「それとこれとは、話が別過ぎるわ! てか、リアルでの話を今ここで出してくるな!」

「はっ!? フラムさん、それはどういう内容ですか!? 例のあの人が絡んでる話ですか!?」

「例のあの人……あ、なるほど、そうなるな! えーとだな――」

「ハーレさんも食いつかんでいい! てか、それ以上喋ったらぶっ殺すぞ、フラム!」

「えー!?」

「ケイ、怖っ!?」

「フラム、話されたくない内容のようですし、これ以上はやめておきなさい」

「へいへいっと」


 余計な事を言い出しそうな予感がしてたら、本当に言い出しやがったぞ、こいつ! しかもハーレさんまで反応してるし……例のあの人って、相沢さんの事だよな!?

 水月さんがなんとか止めてくれたから良かったものの……今日の学校の件、どう説明しろってんだよ! あー、やっぱり何かにつけて余計な事を――


「おーい、ケイ君? 騒いでるけどどうかしたー? 変に目立っちゃってるよ?」

「げっ!?」

「あ、その反応は酷くない!?」


 このタイミングで、相沢さんのコケのアイルが出てくるってどういう状況だよ! いや、部活は終わってるだろうし、森林エリアとはいえ初期エリアにアイルさんがいる事そのものはおかしな事じゃないか。

 見なかった事にして立ち去るのは……既に反応してしまってる以上、遅いですよねー。うん、手早く話を打ち切って、この場を離れよう! フラム相手に大声を出してしまったので、悪目立ちしてるのも間違いじゃないし……。


「ケイ? どうしたのかな?」

「あー、なんでもない。……フラム、後で覚えとけ」

「ちょ!? 言うのは止めたのに!?」


 言おうとした事そのものが、根本的に余計な事でしかないからな! ちっ、既に同じ連結PTに入ってるから殺せないし――


「おーい、ケイ君! 無視も酷くない?」


 あー、目の前までアイルさんが飛んできた。……なるほど、コケの群体塊で空中を浮かぶような感じでの移動方法か。この状況、出来るだけアイルさんの名前は出さずに済ませるしかない! ハーレさんに勘付かれたら、また話題が再燃しかねないだろ!

 シュウさんやジェイさん達は俺らの会話には触れてこないで準備に動いている声が聞こえてるし、俺らも単純にやる事はある! だから、さっさと切り上げるのみ! ……避ける訳じゃなく、大真面目に用事があるしね。


「あー、これからちょっと用事があって、連結PTで話してる最中だったもんで?」

「連結PTって、あの18人までいけるやつだね! あ、これから規模が大きめな戦闘でもするの?」

「まぁそんなとこ?」

「あ、そこにフラム君もいる感じ? でも、群集は違ってたよね?」

「競争クエスト中じゃなきゃ、群集間での関わりって普通にあるもんだぞ」

「へぇ、そうなんだ! そっか、そっか。常に敵対って訳でもないんだね」

「まぁそんなとこだな。てか、悪い! 人を待たせてる状態だから、もう行くわ!」

「あ、ごめん、ごめん。変に足止めしちゃってたんだ。でも、人が多いところで喧嘩はダメだよ?」

「……ですよねー。って事で、また!」

「うん、また明日ー!」


 確かに明日も学校はあるけど……クラスは違うんだけどなぁ。正直、今日の学校はすごく疲れたし、ああいう状況は可能な限り避けたいんだけど……バイトの件もあるし、難しそうな予感。

 いや、今はそこは忘れよう! とにかく、まずレナさんをPTに入れる為にも群雄の密林へと転移していくぞ!

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