第1339話 共同で検証する事


 検証の打ち合わせをする為に、ジェイさん達とシュウさん達との連結PTは組み終えた。……なんだか予想外の事も色々あったけど、とりあえずフラムからの希望の『共闘殲滅を行うモノ』の取得については別枠でやるって事に決定。

 趣旨が違い過ぎるから、同時にやるのは難しいもんなー。まぁもし可能そうなタイミングがあればやってみてもいいけど……そんなに都合がいいタイミングがある訳ないか。それはともかく……。


「えーと、ジェイさんは……俺やシュウさんが何の検証をしていたかは……?」

「内容は『刻瘴石』絡みだとは思っていますよ。……タイミング的に、ジャングルでの競争クエストで私へ瘴気魔法を使って撃退した後でしょう?」

「……まぁ大体はそれで正解だなー。あの時、しっかりと『刻瘴石』は生成されてた?」

「えぇ、あの後、どのような効果があるのか検証は行いましたからね。まぁ今のところ、効果は不明なままですが……その効果の確認と……『刻浄石』の方も効果の確認といったところですか」

「なるほど、『刻浄石』の存在は知っているんだね?」

「当然ですよ、シュウさん。まぁ模擬戦で生成してみただけで、実物はありませんけどね」


 正直、『刻浄石』の存在を知らないとは思ってなかったけど……堂々と確かめた宣言をしてきたかー。しかもこの言い方、俺らも知っているのを前提にしてだよな。


「あぁ、流石に『瘴気石』の上位版の『瘴気珠』の検証は入っていませんよね?」

「成熟体のフィールドボスを誕生させるには+15まで強化した『瘴気珠』が必要な事は把握しているから、そこは今回は除外してもいいけど……このメンバーで、フィールドボス戦というのもありではあるね」


 何気に相当な実力者揃いだし、Lv16のフィールドボスでも倒せるだけの戦力は十分ある。というか、それだけの戦力がないと困る。シュウさんや弥生さんはLv14だし、斬雨さんはLv13とかだもんな。ジェイさんがLv10なのは、まぁ共生進化だからか。

 今回の検証の目的はそのフィールドボス戦そのものではないけど、それに近いところはあるんだよなー。場合によっては強化された瘴気珠を調達して、フィールドボスの誕生からやる必要もあるかもしれないしさ。


「……それは検証が終わってから考えましょうか。流石に瘴気珠はまだ数が沢山ある訳ではありませんしね」

「まぁ、それはそうだね。さて、ジェイさんに質問だけど……『刻瘴石』と『刻浄石』の効果はどのようなものだと思っているんだい? 流石に前回確認した事を、そのまま垂れ流して教える気はないからね。僕らから確認した内容を伝える前に、知っている範囲の事は教えてもらうよ?」

「……それはまぁ、当然の反応でしょうね。後からこうして参加させてもらっている訳ですし……」


 なんかおさらいも兼ねての説明のつもりだったけど、内容的にはジェイさんが知ってる事の聞き出しになってる気がする!? いや、まぁ本当にこの辺は後から参加してるんだし、無条件で話すってのも駄目なのは確かだけど!


「数が作れなかったので大半が推測になるのですが……シュウさん、それは構いませんか?」

「あぁ、それは問題ないよ。まだ僕らも完全な検証が出来てる訳じゃないから、こうして続きをやろうとしているんだしね。ジェイさんなりの見解を聞かせてもらえるだけでいいよ。ケイさん、それでいいかい?」

「まぁ俺らのも推測段階だし、その辺の認識のすり合わせって意味でも、それでいいぞ」

「という事だよ」

「……まぁそれはそうなりますか。同じ見解であれば助かりますけども……『刻瘴石』と『刻浄石』で共通して考えている点は、フィールドボスの誕生……正確には進化階位を上げて進化させる場合には使わないという事ですね。おそらく、使用対象は成熟体ではないですか?」

「おっ、俺らと同じ見解だなー」

「……本当に使わずに、その結論を出したのかい?」


 あ、そういや俺らは実際に『刻浄石』を使って半覚醒にしてLvが上がらない事から出した結論だけど……推測だけで、そこまで辿り着く? 情報、足らなくね?


「……なるほど、色々と試した結果の結論でしたか。それは『刻瘴石』と『刻浄石』、どちらを実際に使ってみてですか? 流石に生成条件的に、複数は生成出来ていませんよね?」

「あ、その言い方、ジェイさんも実際に使ってるな!? 使ったのはあの時に生成した『刻瘴石』か!」

「えぇ、まぁそうなりますね。あの『刻瘴石』を試した時には未成体Lv30の敵に使ったのですが、全くの無反応でした。その後、成熟体を探して使ってみれば……黒の瘴気強化種で反応がありましたね。その時には名前は付いていませんでしたが、今で言う『黒の異形種』には進化しましたよ」

「あー、そっちを試したのか」


 地味に俺らが試してないパターンだけど……内容自体は推測してたヤツだなー。ここでジェイさんが嘘をつく理由はないし、『刻瘴石』を成熟体に使えば『黒の異形種』に進化するのは確定か。


「そのパターンは、敵を用意出来なくて僕らが試せていない内容だね」

「おや、そうなのですか? では、シュウさんやケイさんが試したのは『刻浄石』の方……これ、もう検証の内容が全て出揃っていませんか?」


 続きをやるという事で俺が『刻瘴石』を預かったままだけど、あの時に決めた目的って、アンデッド系……つまりフィールドボスの『黒の異形種』を誕生させれるかって話だからなー。

 まだまだこれじゃ終わっていない! むしろ、ここまでの情報は大前提になってくるから……ある意味、実際には試せていないパターンの情報をジェイさんが持ってて助かる!


「いや、それらは前段階だね。僕らの検証の目的はそれらの効果が、フィールドボスに有効かどうかだよ? まぁ正確な狙いとしては『刻浄石』か『刻瘴石』だけで、フィールドボスに相当する存在を誕生させられるかどうかだけどね」

「あぁ、なるほど。……それは興味深いですね」

「そうそう! シュウさん、俺らで調べた内容はもう話していい?」

「そこは僕が話そうか。僕らが実際にしたのは『刻瘴石』と『刻浄石』の生成を1つずつ。初めは『刻瘴石』が『瘴気石』の上位版だと睨んでいたけども、これが外れでね。そこから方針を変えて、弥生に捕まえてきてもらった黒の暴走種に『刻浄石』を触れさせてみれば、半覚醒の個体に変わったという内容になるよ」

「『刻浄石』はそういう効果でしたか! ……なるほど、半覚醒に変えてしまうのですね」


 とりあえずこの辺で、お互いに持ってる情報のすり合わせは終わりかな? ……少し自分の中でもあやふやになってた部分もあるから、思い出しての整理も出来たしね!

 さて、ここからはフィールドボスに相当する何かを生み出す事が出来るかどうかの検証の話をしていこう!


「先ほど、このメンバーでフィールドボス戦をするのもありだと言ったのは……検証の過程でそれ相当の敵と戦う可能性があるからですね?」

「そうそう、そういう事! まぁ『瘴気珠』なしで出来るかは分からないけど……」

「『瘴気珠』の使用でのフィールドボスの誕生については……まぁ最終手段にするよ。流石に僕らの方でも、まだ気軽に手に入るものではないからね」

「……それは確かにそうですね。となれば、必然的に元のLvが高めな個体を探すべきですか」

「そうなるなー。出来れば、フィールドボスになるのが分かってるLv16以上の個体? それで黒の暴走種なら『刻浄石』を試して、黒の瘴気強化種なら『刻瘴石』を試す形になる感じだろうなー」


 それよりLvが低い個体ではただの雑魚の半覚醒になるだけで、大した意味がないのは前回の検証をした時に分かっている。ただ単に『半覚醒』の個体にする為だけのアイテムが、トレードで情報ポイント500も取られてたまるか!

 絶対に何かまだ知らない要素があるからこそ、あのレートになってるはず! ……それが何かは分からないけど、それを調べる為のこれからの検証だし! でも……そこまで高Lvの敵の必要性までは、今の今まであんまり考えてなかったかも。


 てか、俺とジェイさんとシュウさんで話し始めてから、他のみんなが随分と静かだね? まぁ好き勝手にみんなが喋ったら訳が分からなくなるし、この状態はありがたいけどさ。


「なるほど、Lv16以上の敵が出てくるエリアへ行く必要があるんですね? ケイさん、どこか心当たりはありますか?」

「いや、その辺はさっぱり! シュウさん、赤のサファリ同盟の方で心当たりってあったりしない?」

「……どうだろうね? 僕と弥生は、今回は競争クエストにガッツリと参戦していたから、そっちの探索はあまり出来ていないんだけど……ルスト、心当たりはあるかい?」


 あ、ここでルストさんがいた意味が大きく出てくるのか! 確かに色々な場所には行ってるだろうし、こういう情報を聞くには最適な人だったよ!


「競争クエストの対象エリアから同じ方向に2エリアほど離れればどこも大体そのくらいのLv帯にはなりますが、まだLv差があるのでかなり強いですね! ですが、それも一興というもの! 下手にスクショを撮れば完全体の敵も襲いかかってくる事もありますが、死しても悔いはありませんとも! 強大な敵ではありますが、襲いくる恐怖というのを捉えたスクリーンショットというのも、これはこれで――」

「話が長い!」

「ぐふっ!」


 早口で喋りまくり始めたルストさんの言葉は、弥生さんによって強制的に中断させられたー!? いやまぁ、必要な情報は最初に出てきて終わってたとは思うけど……。


「完全体って、もう出てくるんだ!?」

「未成体の時の徘徊してる成熟体みたいな感じなのかな?」

「『格上に抗うモノ』の称号取得に必要なんじゃない?」

「……随分と、難易度が跳ね上がってそうだがな」

「だろうなー。てか、別の上位の称号になってたりしない?」


 ちょっとルストさんが弥生さんにボコられてる声が聞こえてるから、その辺が落ち着くまで雑談してようっと。もう少し具体的な話を聞きたいけど、シュウさんは止める気配もないし、みんなも普通に話し出したからねー。


「それはあり得そうな話ですね。ケイさん、折角ですし、機会があればそっちも試してみますか?」

「……そこまで余裕ある?」

「どうでしょう? 何となくですが……何かまた増えてそうな気がするんですよね、ケイさん」

「あー、そういや夕方にケイさん達を探し回ってる灰の群集の連中を見かけたもんな。何やってたんだ、ケイさん達?」

「ちょ、斬雨さん、そんな情報が回ってたのかよ!?」

「そりゃ、目立つからな? 海で『グリーズ・リベルテを探せ!』って転移していくヤツらが結構いりゃ、気になって当然だろ」

「ほほう! ケイ、何やったんだ!?」

「黙ってろ、フラム!」

「毎度、俺だけ扱いがおかしくねぇ!?」

「知るか!」


 フラムの扱いが悪いのは単なる自業自得だから、本当に知らん! てか、何気に海エリアの青の群集にまでそんな情報が伝わってたのかよ! ……あー、多分あの宝探しについては各群集で発生してるだろうし、内容自体も推測されてても不思議じゃないよなー。


「まぁそれは今は無理には聞きませんが……どこのエリアに向かっていくかという問題がありますね。どこかの群集の占有エリアを突っ切らせてもらい、合流するのが早いでしょうが……」

「それでしたら、私を是非とも灰の群集のジャングルへと入れさせていただけ――」

「まだそういう事を企んでるんだね、ルスト!」

「や、弥生さん!? そろそろご勘弁を――」

「問答無用!」


 ボコられてる最中なのに、今の内容で俺らの話に入ってくるってすげぇなルストさん。てか、大真面目な話として……手段としてはありだよなー。


「ジャングルから2エリア離れた位置となると……河口域の北側のエリアじゃねぇか? 前、ケイさん達がフィールドボスと戦ってたろ?」

「あー、そういえばジェイさんと斬雨さんにもそこで会った気がする? てか、あそこが河口域だから……そこの先のエリアになったら海か?」

「砂浜と遠浅の海が広がる『名も無き未開の海岸』ですね! 浅瀬ですし、砂地の陸地も点在しているので無理に適応しなくとも進みやすいかと思いますよ! 途中で死にはしましたけど、私は何度か行った事はあるので案内は可能です! それに手前の河口域には皆さん行った事があるようですし、途中の移動の負担は減らせるはずです! ですので、その途中経路になる場所ですし、是非ともジャングルへの立ち入りの許可をよろしくお願いします!」


 うん、ルストさんのジャングルへと立ち入らせろっていう圧が凄い。……この感じ、弥生さんでも全然抑えきれてないし、放っておいたら強引にでも突入してきそうだな!?

 まぁルストさんはそれで害がある人ではないけど……うーん、これは堂々と許可を出してしまう方がいいのか? 別に他の群集と共同で検証する事自体はもう伝わってるんだし、一声かけておけばあっさりと許可は出そうだけど……。


「シュウさん、完全にルストのスイッチが入っちゃってて、全然止まらないんだけど!?」

「……そうみたいだね」

「このチャンスは逃せられませんからね! シュウさんがなんと言ったとしても、私は――」

「ルストの部屋のブレーカーでも落として、物理的に切断でもしようかい?」

「ケイさん! 後生ですから、ジャングルへと立ち入りをお願いする事だけでも駄目でしょうか!? 決して、立ち入った中での情報は他言しませんので!」


 あ、もう先に許可をもらって、シュウさんが強行手段に出る必要をなくす方向に動いたな、ルストさん。……うん、スクショが絡むと本当に暴走しまくるよなー。


「……はぁ。ケイさん、僕からもジャングルへの立ち入りをお願いするよ。このまま放っておいた方が、後々で厄介な事になりそうだ」

「どうもそんな感じだし、群集のみんなに聞いてくるわ。あ、ジェイさん、なんか自動的に行く方向が決まってるけど……その辺は問題なし?」

「えぇ、構いませんよ。占有エリアを突っ切って進める方が、私達にとっても楽ですしね」

「そりゃそうだ。それじゃちょっと聞いてくるから待っててくれー!」

「ケイさん、是非ともよろしくお願い申し上げます!」

「今日のルスト、一段と暴走し過ぎ!」

「ぐふっ!」


 なんというか……ご苦労様です、弥生さん。てか、このルストさんと弥生さんの様子って、灰の群集の森林深部でやってるんだよな!? よく考えなくても、もう既に情報共有板で話題になってる気がするんだけど!?

 えぇい、ともかく急いで話をしにいこう! 流石に占有エリアへの立ち入りを、独断で許可するのはマズいしな! 入ってくる相手が相手だから、尚更に!


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