第1337話 群雄の密林で合流


 サヤとヨッシさんとのリアルでの連絡先の交換自体は、今日のプレイが終わってログアウトしてからだなー。とりあえず、今は合流が最優先! まずはエンからエニシへ転移して、その次は群雄の密林へ転移すればいい!


「……ん? あ、直接『群雄の密林』まで転移出来るのか!」


 エニシからしか転移出来ないと思ってたけど、普通にエンからも転移出来るようになってるじゃん!? あ、でも選べるのは『群雄の密林』と『五里霧林』の2ヶ所だけ?

 この2ヶ所も安全圏には転移出来ないし、勝ち取って占有した先だけ他の群集拠点種から転移出来るようになってるのかもなー。うん、まぁこれは普通に便利だし、活用させてもらおうっと。


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『群雄の密林』に移動しました>


 さて、これでキツネのマサキがいる鳥居の所へと転移は完了。おわっ!? 人が凄い集まってきてる……って、そう来たか!


 転移してきて周囲を見渡してみれば……一方向に桜並木が出来ていた。少し外れれば蜜柑の木の並木だったり、杉の木の並木だったり……違った種類の木が並んで道が形成されている。

 それぞれまばらに木々の間は空いているけど、こりゃ壮観な眺めだな! とりあえず桜並木を上から飛んで見ていこうっと。


「なるほど、桜違いってそういう意味か。正確な位置を知ってないと、普通に間違えそうだな」


 同じ種類の不動種の人が並んでいるからこその光景だなー。チラホラと3rdで育成が間に合ってなさそうな小さい不動種も混ざってはいるっぽいから、これは確実に見た目だけで置いてる人もいるみたいだね。

 ふむふむ、ログインしている人もログインしてない人も、なんか混在しまくってる? まぁ夕食時だし、そういう事もあるか。


「こりゃ、アルが目印って言われる訳だ」


 どう考えてもこの周囲は、元のジャングルの面影は皆無。チラホラと見知った不動種の人も見かけるし、それぞれの不動種の人の馴染みの人も集まってきてる様子も見える。相変わらず、人が集まってる時の種族の多種多様さは凄まじいもんだな。


「灰のサファリ同盟主催のトーナメント戦の中継を始めるぞー! 見るやつ、樹洞に入れ!」

「あ、待った! 俺の方、解説役が足りてないから、外に投影してもらって共同でもいいか?」

「おっ、早速やってみるんだな! 実況、ちょっと範囲が広くなるけどいいか?」

「問題なーし! 複数のスクリーン、周囲に展開しちゃって!」

「おし、助かる!」

「私のとこは別の模擬戦の中継をするから、樹洞の中だけでするよー!」


 おー、なんか不動種同士で声を掛け合って、同じ中継をしてる場合なら外で投影して、共同でやるって事も出来るのか。人が集まってる場所の前後に2つの投影とかやってるよ。

 単独でしたい時は樹洞の中でやればいいし……なるほど、他の群集の人が入ってこないからこそ、今までよりも自由な感じに中継が出来るんだなー。こういう効果も狙って、不動種の人達が集まってきてる感じ? 


「あ、並んで纏瘴と纏浄を使ってるとこもあるんだな。あれは瘴気石の強化をやってるのか」


 一定段階まで強化すると、瘴気が強くなり過ぎて浄化の光で弱めなきゃそれ以上の強化は不可能になってたはず。でも、纏瘴と纏浄には使用制限があるから、こういう風に手分けをしてやってるんだね。

 なるほど、なるほど。不動種って商人プレイだけど、中継や瘴気石の生産の効率も考えたら、こうやって集まるのもありなんだな。ある意味、商店街みたいなものが形成されてる?


「色々と変わってきてるもんだなー」


 全部の初期エリアから不動種の人が全員集まってきている訳ではないんだろうけど、それでも結構な数の人が来てるよなー。桜花さんもその中の1人に加わっているって感じなんだろうね。


「えーと、それで肝心の桜花さんは……どこだ?」


 アルのクジラを目印にすればいいって話だったけど、地味にクジラのプレイヤーもチラホラと来ているから……探すべきは木を背負ったクジラ! 他に全くいない訳じゃないけど、それでもアルと同じ構成の人は数は少ないからな! ……正確に数えた事がある訳じゃないけど。


「よし、見つけた! ……って、割と端の方?」


 桜並木の中にはいるけど、場所的にはジャングルへと変わる外れの位置辺り。マサキからは一番遠い辺りだけど……まぁそこでも極端に遠い訳でもないか。

 でも、なんでそんな端の方になったんだろ? 早い者勝ちで、出遅れてしまったとか? ……あ、もしかして移るタイミングで俺と紅焔さんが模擬戦をしたせい!?


「あ、ケイ! こっちかな!」

「お待たせ。あー、桜花さん……」


 サヤが呼んできたから、そこへとりあえず降りては行くけど……もしこの外れの位置になった一因が俺にあるなら……ちょっと罪悪感があるんだけど。


「ん? ケイさん、どうした? そんな申し訳なさそうな声をして……?」

「いやー……夕方、俺が邪魔してない?」

「……邪魔? あぁ、この外れにいる理由か! ケイさん、心配すんな! 元々、これは俺が出してた要望の場所であって、ケイさんと紅焔さんの模擬戦を中継してて場所が無くなったとかじゃねぇからな!」

「……え? あ、そうなのか」

「おう、そうだぜ! そもそも、途中で3rdの育成が中途半端な不動種も結構植わってたろ? メインで不動種をやってる俺みたいなのを押し退けてまで、そういう事をすると思うか?」

「あー、確かにしないかも?」


 言われてみれば、そこは納得な部分ではある。誰が言い出してこういう不動種による商店街みたいなのが出来てるのかは分からないけど……中途半端な3rdで植わらせる為に追いやるなんて事はあり得ないか。灰の群集であれば、その辺は特に!


「えーと、そうなると……桜花さんが外れの位置にしたのには、なんか理由あり?」

「まぁな。簡単に言えば、十六夜さんみたいにソロで情報やアイテムを持ち込んでくる人向けにしてるんだよ。様子、見てきたなら分かるだろ?」

「あー、なるほど! 他じゃ賑やか過ぎるのか!」

「おう、そういう事だ。あっちの賑やかな方は、共同体所属の奴も多くてな。別に俺があっちに植われない訳ではないんだが、その辺は需要に合わせた調整だぜ」

「なるほど、そういう理由かー」


 うん、理由を聞いてみれば納得。完全に無関係な場所に植わるほどはソロの人達を優先する訳でもないけど、それでもそこそこ入りやすいように外れの位置にしてるんだな。


「ふっふっふ! この色んな種類の並木通り、深夜帯のプレイヤーの人が考えたそうです!」

「え、マジか!?」


 てっきり、灰のサファリ同盟とかそういう大規模な共同体が仕切ってると思ってたけど、意外とそうでもなかった? あー、灰のサファリ同盟が仕切るのなら、本部が五里霧林に移動にしたりはしないか。


「でも、なんでまた深夜帯の人が?」

「ぶっちゃけ、初めはただのノリだったぞ。いつも時間帯の都合でいいとこには参加し辛いけど、こうしておけば存在感はアピール出来るってな? 結構いただろ、ログインしてないプレイヤーの不動種」

「あー、いたような気がする? あ、それが深夜帯の人のか! ……てか、アルはなぜそれを知っている!?」

「ま、その場に居合わせたからな。昨日の夜、ケイがいた時に既に話は始まってたが……まともに聞こえていなかったようだな?」

「……あー、そういう流れか」


 くっ、昨日の競争クエストが終わった後の祝勝会の中で出てた話題だったのか! とことん、昨日の夜の俺は疲れ切ってて全然駄目だったっぽいなー。

 我ながらよく強制ログアウトにならなかったもんだね。……強制ログアウトになる一歩手前でずっといたのかもなー。


「って、事はサヤ達も知ってた?」

「うん、そうなるかな!」

「まぁ昨日の段階では、桜花さんは決定まではしてなかったけどね」

「あ、そうなのか」

「おう、そうなるな。場所の移動自体は考えてたけど、こういう話が出てきて色々悩んだ結果、ここにしたって流れになるぜ」

「……なるほど」


 てか、昨日の夜に話題になって、それが今日の夜までには現実のものとなってるのが凄いな!? 競争クエストが終わったばかりなのに……いや、競争クエストが終わったからこそ大胆に動けたってのもありそうな気がする?


「ケイさん、そろそろ今の状況の説明はいいですか!?」

「状況は分かったからいいけど……何をそんなにソワソワして……って、スクショを撮りに行きたい――」

「当然なのさー!」


 まだ全部言ってないのに、食い気味で肯定されたよ。いやまぁ、これこそハーレさんらしい反応な気はするけども。


「合流してからずっとウズウズしてるよね、ハーレ」

「この景色、撮るなという方が無理なのです!」

「ハーレらしいけど、その気持ちは分かるかな!」

「それは分かるけど……なんで夕方にはそれを言わなかったんだ?」

「本格的に移動を始めるのが、19時からだったからなのです! 今もまだ、移動の途中で完全じゃないんだよ!?」

「あ、そうなのか」


 なるほど、ここまで来る間でも壮観だったけど、それでもまだ不完全な状態なのか。まぁ発案が昨日の夜なら、まだその後にログインしてないって人も結構いそうだし、これからも移動してくる事になるのか。


「……てか、絶対に俺が来るまでの間に結構撮ってるだろ?」

「それは当然なのです! でも、撮る時間の猶予が分かんないから、早めにこれからの予定の確定をお願いなのさー!」

「あー、何を焦ってるのかと思ったら、そういう事か」

「うん! すぐに検証に行くなら検証が終わった後にするし、検証までに待ち時間があるならその時間に撮りたいのです!」

「なるほど。……アルの方で連絡を取ってたりは?」

「ん? ケイがログインしてからやると思って、俺は何にもしてねぇぞ。てか、ジェイさんやシュウさんの相手をするのはケイの方がいいだろ? 特にジェイさんの方はな」

「ですよねー」


 そうなると、これから俺がすべき事は『刻瘴石』と『刻浄石』の共同検証の為にシュウさんとジェイさんに連絡を入れるとこからか。それと『共闘殲滅を行うモノ』の取得の件も!

 うーん、シュウさんとジェイさんと同時に話してしまいたいけど、どうやってやろう? こりゃ『黎明の地』に戻って、雪山の中立地点に向かって話し合いか? ……共同での検証の打ち合わせの為に集まるってのも面倒だな!?


「ケイさん、集まるのが面倒なら連結PTで話し合うのじゃ駄目なのか? 隣接エリアでPTを連結させるだけなら、それほど手間でもないだろ?」

「桜花さん、ナイスアイデア! その案、いただき!」

「ただ単に思い付いてなかっただけなんだな? ま、普通にありなら、それでやってくれや!」

「そうさせてもらう!」


 流石に色々な思惑があったインクアイリーとの共闘の協議とかでは出来ないけど、今回は気楽な打ち合わせだからなー。お手軽に連結PTでのPT会話機能でやるにはありな手段! てか、こんな簡単な手段をなぜ今まで思い付かなかった!?

 あ、気楽に済ませられる、3つの群集が集まる機会がなかっただけかー。タッグ戦の打ち合わせの時は、どう考えても連結PTには収まらない人数だった気がするし……。


「そうと決まれば、大急ぎなのさー!」

「ほいよっと。てか、これでも連結PTを組む必要はあるから……その間にスクショの撮影をしてていいぞ?」

「おー!? やったー!」


 別に全員で予定を決める必要はないんだし、検証を始めるまではそれでもいいだろ。さてと、それじゃシュウさんとジェイさん、どっちから連絡して――


「ケイ、そういう事ならシュウさんには俺から連絡しておくぞ。手分けをした方が早いだろ」

「あ、それもそうだなー。おし、それじゃPTリーダーを変えながら、俺がジェイさん達、アルがシュウさん達とPT連結していく形にするか」

「あぁ、それで構わんぞ。サヤ達は……ハーレさんが1人でどこか行き過ぎないように見ててくれ」

「私は監視対象なの!?」

「……あはは、まぁ今日は元々テンションが上がり気味だし、ちょっと見てた方が良さそうかも?」

「ハーレの方は任せてかな!」

「あぅ……!? でも、思いっきり撮りまくるのさー!」


 うん、しょんぼりしたのが一瞬過ぎるくらいだし、冗談抜きで今日は見ておいてもらった方がいい気がする。ヨッシさんがそういう判断を下すくらいなんだから、尚更に……。


「おし、とりあえずその方向でまずは予定を決めて――」

「あ、その前に確認だ、ケイ」

「ん? どした、アル?」

「水の操作Lv10になった事は聞いたが、シュウさんやジェイさんには伏せるのか?」

「あー、それか。競争クエストは終わったし、別に隠さなくてもよくね?」


 青の群集は確実に操作系スキルLv10の効果を知ってるんだし、赤の群集も知らないと思う方が無理だろう。だったら、変に隠して動きを制限する必要はない! 対人戦の競争クエストの真っ最中なら流石に隠すけど、それも終わったばかり!


「なるほど、隠さない方向性でいいんだな。……実は操作系スキルLv10の効果を知らずに対応してた事も、言う必要はなしか」

「あ、そういやそうだっけ……。うん、むしろ俺のスキルよりも、そっちを知られない方が重要な気がするわ! 知らなかったって事は内緒で!」

「おう、その方向性で了解だ。あと、これな」

「サンキュー!」


<ケイ様がPTに加入しました>


 連結PTにしていくんだから、PTに入っておくのは必須だよね。それに、ハッタリで動いてたのはわざわざ教えなくていい部分! この先もそういうハッタリを使う可能性はあるだろうから、変に種明かしする必要はない!


「あー、よく考えたら情報不足な部分は推測のみで動いてたのか。無茶してんな、ケイさん」

「そうするしかなかっただけの話だけどなー」


 いやはや、全勢力での総力戦をする前に、青の群集との総力戦でスリムさんの土の操作Lv10を見てなければどうなってた事やら……。うん、その辺をジェイさんに知られたら面倒な事になりそうだから、要注意で! アルが連絡する前に確認してきた理由もそこな気がするわ!

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