第1336話 夜の部、開始!
紅焔さんとの模擬戦を終え、19時までの時間の猶予はあまりなかったけども、手早く桜花さんの元まで移動して、場所を移す前の桜花さんに挨拶を済ませてログアウト。ログイン場面のいったんの胴体の確認もスルーして、とりあえず晩飯は食べ終わったところ。
「春巻き、美味しかったー! 兄貴、先に行ってるねー!」
「ほいよっと」
という事で、いつものように晴香が先に戻り、俺は晩飯の食器の片付け中。新しく食洗機を設置するのは今週末だから、あと少しでこの状況から離脱可能になる! ……今日、まだ火曜日だけど!
あ、母さんが近付いてきたって事は……これは何か話があるパターンだな?
「圭ちゃん、晴ちゃんの予定は聞いてる?」
「それなら聞いてる。24日から4泊5日なんだってなー」
今日が11日の火曜だから、予定としてはほぼ2週間後になるんだな。……晴香が家にいないってのも、かなり珍しくはあるのか。中学生の頃の修学旅行以来ってとこ?
「やっぱり既に聞いてたのね」
「それがどうかした?」
「ほら、それに合わせてお土産用にお小遣いを渡すって話があったじゃない?」
「あー、そういやそんな話があったっけ? あれ、前日って話じゃなかった?」
俺にも額は減るけど貰えるって事だった気もするけど……この話が出たって事は、もしかして俺の方は無くなる!?
「元々はそのつもりだったんだけど、ちょっと母親同士で話をしてたら予定が変わっちゃってね? ほら、雫ちゃんのお友達の家に泊めてもらうって事になってるじゃない? 流石にそれに甘えっぱなしもなんだから、手土産をいくつか持たせようかと思うんだけど……」
「圭吾もその辺は知ってる相手なんだろ? ちょいと喜びそうなもんを聞いてきてくれ!」
「ちょ、そういう話!? それ、晴香に聞いてきてもらった方が早くない!?」
ヨッシさんの本名が四ツ谷雫で、母親同士でも交流があるのは知ってるし、2人揃って泊まるのにサヤの両親へ連絡が行ってるのは分かるけども! なぜ、そこで俺が聞いてくるって事になった!?
「晴ちゃんや雫ちゃんからだと、流石に聞きにくいでしょ? ほら、泊まりに行くのに何を手土産にすればいいとか、直接聞くのはね?」
「いやいや、それは分かるけど、俺が聞くのも相当やりにくいんだけど!? 母さんが直接話をした方が早くない!?」
リアルではサヤへの直接の連絡手段は持ってないし、ゲーム内で聞こうと思っても晴香がいないタイミングを狙うのって難し過ぎるんだけど? ……サヤとのリアルでの接点って、晴香がいないとないんだよな。
「んー、この反応だとそうみたいね? 少し前に一緒に勉強をしてたから、てっきり連絡出来るかと思ってたけど……そうでもないの?」
「あれ、晴香が用意したVR空間だったからなー」
テスト期間中にサヤとヨッシさんのリアルの姿のままのアバターを見た時の話なんだろうけど……生憎と2人のどちらとも、直接の連絡手段は持っていない。
あー、この際だから、晴香が旅行に行く前に連絡先を聞いておいた方がいいのかも? 晴香を経由すれば連絡は取れるとはいえ、個別に連絡を取りたい時もあるかもしれないしね。
「あー、後で連絡先を聞いてみる。夏休み……というか、晴香の旅行中はその方が都合はいいだろうしさ」
「まぁ俺も母さんも、平日は普通に仕事だからな! なんかあった時は、圭吾がひとまずの窓口になってくれや!」
「……へいへいっと。てか、そっちが本題だよな!?」
「まぁな! って事で、頼んだぜ、圭吾!」
「ほいよっと」
まぁ何かトラブルがあったとしても、昼間は父さんも母さんも仕事中になるんだから……俺もアルバイトの最中の可能性が高い……いや、8月からがメインだからそうでもないか? まぁとにかく一番時間に融通は利くのは間違いないもんなー。何事もなければ特に必須な訳ではないけど……これまで色々と一緒にやってきたんだし、直接連絡を取れる状況にしておくのも悪くはないか。
アルとも大型アップデートの後は連絡が取れるようにはなる。でも、流石に旅行時の連絡にゲーム内の機能でやるのは駄目だろうから、リアルの連絡先を聞いておくのが無難なとこだろう。
「それじゃ圭ちゃん、手土産の件も出来るだけ早く聞いておいてね?」
「えーと、それって絶対に晴香に内緒にしとかなきゃいけないやつ?」
「別に無理に隠す必要もないわよ。最終的には晴ちゃんに持っていってもらうしね?」
「……ほいよっと」
結局そうなるなら、もう初めから晴香から聞いてもらえばいいだけな気もするけど……どちらかと言うと、俺がサヤやヨッシさんと連絡が取れる状況かどうかの確認が主な目的だった気がする。まぁこれくらいの役目は引き受けますか。別に連絡を取れるようにするのが嫌だとも思わないしね。
◇ ◇ ◇
晴香の旅行中に何かあった時の為に、サヤとヨッシさんとリアルでの連絡を取れるようにしておけという遠回しな要求を両親から受けつつ、食事の片付けは完了。それから自室に戻って、VR機器を被って……。
「あー、そういや相沢さんとのグループメッセージも作る事になってたっけ」
晴香が突っぱねると思ってたら、意外とあっさり受け入れてたやつだけど……なんか携帯端末に一気に登録先が増えそうだな。あ、教えてもらえるのが当然みたいに思ってたけど、サヤやヨッシさんに断られる可能性もあるんだった……。うーん、まぁ嫌がられた場合は……流石に仕方ないけど、なんか地味に凹みそう。
いや、多分大丈夫だろ! VR空間のアバターとはいえ、リアルの姿を見せてもいいと思うくらいには信用されてるはず! ……本当に大丈夫だよな? えぇい、そうなったらそうなった時だ! とりあえず、フルダイブ開始!
◇ ◇ ◇
いつもの見慣れたいったんのいるログイン場面へと移動完了。えーと、19時のお知らせの更新で胴体部分はどうなてるんだろ? 『そのうち共闘イベントは始まるけども、しばらくは旧エリアや新エリアをまったりとお楽しみに下さい』となっている。
「いったん、しばらくは特に公式のイベントはないって認識でいい?」
「その認識で問題ないよ〜! 初回の開催の時は、競争クエストと共闘イベントの間が短過ぎたからね〜」
「あー、まぁそりゃ確かに」
正確には覚えてないけど、あの時は空白期間ってほぼ無かった気がする。ボロボロになってた赤の群集が、急激に進み過ぎてたりしたもんなー。
まぁ新エリアの探索は全然出来てないし、そういう探索を進めつつ、育成をしていくにはいい機会だろ! 次の共闘イベントに向けての準備期間だな!
「あ、スクショの承諾は来てる?」
「色々と来ているので、時間があるなら確認をお願いします〜」
「なら、やっとくか」
「それじゃ、これね〜」
「ほいよっと」
という事で、いつものようにいったんから一覧を受け取って確認していく。……なんか、五里霧林の上空でナギサを探していた時っぽいスクショが多いんだけど!? あー、途中から俺らを探すのに移行してたような感じだなー。
あと、地味に水の操作Lv10の実験中のスクショも撮られてる。あの時は上以外に周囲には人がいないと思ってたけど……微妙に霧がかかってるのを見た感じ、上から霧に隠れつつ撮ってた人が結構いたっぽい。別に隠れてなくても、堂々と見てればいいのにね。
えーと、とりあえずざっと見た感じでは、スクショは灰の群集の人だけか。これならいつも通りの処理でいこう。
「灰の群集の人だけ承諾で! まぁ他の群集の人のはなかったけど」
「はいはい〜。いつも通りに処理しておくね〜」
「よろしく! それじゃコケでログインを頼んだ!」
「夜からも楽しんで行ってください〜」
「おうよ!」
いつものように、いったんに見送られながらゲームの中へと移動開始! さーて、合流場所を決めてないけど、まずはみんなと合流だなー。
◇ ◇ ◇
ログインした先は、桜花さんが植わっている場所のすぐ側。だけど、俺がログアウトする時点でもう移動の準備を始めていたから……今はもうポッカリと空いた場所があるだけだった。
「なんか、こうしてみると寂しいもんだな……」
思い返せば、ハイルング高原を纏樹で強引に進んできて、立ち往生してたのが桜花さんなんだよな。群集間の移籍が可能になってすぐの事だっけ。
ここには不動桜がいるせいなのか、他の不動種の人で桜の木の人がいなかったし……桜花さんがここに植わってたのって、かなりインパクトが強かったもんだよな。
いや、別に桜花さんがゲームを辞めた訳じゃないんだし、場所を移しただけだから! 今はもう新たに群雄の密林へと植わり直してるはず! この場所には、新規のプレイヤーさんや誰かの2ndや3rdが来るだろ!
「さーて、みんなと合流しよう!」
ここでしんみりしてても意味ないし、とりあえず合流が先! それからシュウさんとジェイさんに連絡して、共同検証の打ち合わせをして……あー、そういや『共闘殲滅を行うモノ』の取得の機会も作るんだった! とりあえず順番にだ!
「あ、共同体のチャットの項目が光ってるな」
このタイミングって事は、俺のログインに気付いて合流先の指定だろうね。まぁハーレさんが少しだけ先にログインしてるんだから、俺のログインのタイミングは分かるか!
という事で、とりあえず共同体のチャットを開いていこう! さーて、どこに行けばいいんだ?
アルマース : ケイ、ログインしたな。合流場所を伝えようと思うが、大丈夫か?
ケイ : それは問題なし! どこに行けばいい?
ハーレ : 『群雄の密林』なのさー! 新しく桜花さんが植わった場所に集合なのです!
ヨッシ : マサキからそんなに遠くはないから、アルさんを目印にすればすぐ分かると思うよ!
サヤ : ただ、他の不動種の人も多いから、桜違いには要注意かな!
ケイ : 桜違いって……あー、他にも桜の不動種の人がいるのか? 要は、人違いに注意?
サヤ : うん、そういう事かな!
ケイ : なるほど、それは了解!
桜違いという表現が合ってるのかどうか……まぁそこは気にしなくていいや。それにしても、桜花さん以外の桜の不動種の人かー。森林深部以外では見かける事もあったから、そういう人達も移動してきてるのかもね。
あ、そういや夕方には灰のサファリ同盟の移築場所の確認までは出来てなかった気がする? まぁ途中から宝探しやら模擬戦やらをやってたらそうなるか。
「あ、そうだ。今のうちに言っとくか」
後回しにしたところで意味はないし……変に断られるのに怯えても仕方ないだろ。別に変な目的がある訳じゃないし、堂々としてればいい! それにアルなら事情をある程度は把握してるし、直接話すよりも共同体のチャットで伝えるのがいいだろ。他に見てる人はいないしね。
ケイ : ちょっと別の話になるんだけど、サヤとヨッシさんにリアル関係での話がある!
アルマース : ん? 急にどうした、ケイ?
サヤ : どういう内容かな?
ヨッシ : 私とサヤに?
ハーレ : ケイさん、どういう事ですか!?
ケイ : いや、ハーレさんが旅行に行く日程が決まったろ? でも、日程的に平日だから、なんかあった時にハーレさん経由以外で連絡が取れるようにしといてくれって、うちの両親からなー。あと、サヤの家に泊まるんだし、なんか手土産を持たせたいってよ?
アルマース : あぁ、そういう内容か。まぁ親としては当然な判断だな。
サヤ : え、手土産とか、無理に用意しなくても大丈夫だよ!? あ、でも連絡先については分かったかな!
ヨッシ : そっか、平日だから叔母さんにすぐに連絡が付くとは限らないもんね。ハーレに何かあって、ちょっとした事の範囲ならケイさんに連絡って感じ?
ケイ : そうそう、そんな感じ。もし問題ないようなら、後でハーレさん経由で連絡先を交換でもいいか?
ハーレ : 私、問題は起こさないよー!?
ケイ : 別に悪さをするとかの心配をしてる訳じゃないぞ? 体調不良とか、怪我とか、そういう時の連絡用。そういう状況だとハーレさん経由じゃ無理だろ?
ハーレ : はっ!? 確かにそうなのです!
ヨッシさんのお母さん経由という訳にもいかないだろうしなー。この夏の暑さの中、ハーレさんがはしゃぎ過ぎて体調を崩すって可能性は……否定し切れない気がする。まぁだからこその連絡先の交換なんだろうけど。
サヤ : ケイと連絡先の交換……うん、問題ないかな!
ヨッシ : 私も大丈夫だから、ハーレ、後でそれぞれ送ってもらえる?
ハーレ : そういう事なら了解です!
ヨッシ : あ、そうそう。手土産に関しては、私のお母さんからも言われてたんだよね。
ハーレ : そうだったの!? サヤ、手土産は何がいいですか!?
サヤ : え? そこは無理に用意してもらわなくても大丈夫だよ?
アルマース : サヤ、そこは変に拒まずに受け取っとけ。その方がハーレさんとヨッシさんの両親が安心出来るし、変に遠慮され過ぎる方が恐縮するからな。
サヤ : ……そういうものかな?
アルマース : そういうもんだ。単に受け取るのが嫌なら、一緒にみんなで楽しめるようなものにしとけ。
ケイ : そうそう、それでいいと思うぞー。
サヤ : ……うん、分かったかな! 何がいいか、決めるのは今すぐじゃなくてもいい?
ヨッシ : うん、それで大丈夫。食べたい物の食材でも言ってくれれば、私が料理しちゃうよ?
ハーレ : おぉ! それも良さそうなのさー!
サヤ : あ、それは良いかな! うん、その方向で考えてみるね!
さてと、とりあえずこれで母さんと父さんに頼まれた件は片付いたね。……それに理由があったとはいえ、リアルでの連絡先を交換するのを断られなくてホッとした。
ん? てか、なんでそんなにリアルの連絡先を交換するって話で緊張してたんだ? ……うーん、なんかいまいちよく分からん?
まぁいいや。とりあえず今はみんなと合流……の前にこれを使っとこ。夜の日だから、これは必須だしね!
<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します> 行動値 125/125 → 124/124(上限値使用:1)
よし、これで視界良好! 移動はこっちでしていきますか。
<行動値上限を6使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 124/124 → 118/118(上限値使用:7)
飛行鎧の展開完了! さーて、合流場所は群雄の密林だから、まずはエンまで行って、そこからエニシに転移して、エニシからマサキへと転移だな! ……転移の回数が多くなるのは、流石に仕方ないか。
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