第1333話 ケイと紅焔の模擬戦 その3
紅焔さんの光の操作での攻撃は、かなり予想外だったなー。元々近接攻撃はしてたけども、まさか火属性以外の遠距離攻撃を使ってくるとは……。
今はなんとか湖の中へ退避して、お互いに目視が出来ていない状態にはしたけど……その間に、岩の操作も土の操作も削られ切った。
行動値も魔力値も、凄い勢いで回復する設定だから……まず間違いなく、紅焔さんも全快して、姿が確認出来れば速攻だろうなー。……とりあえずは位置の確認をしておくか。
<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します> 行動値 120/125
よし、灰色の矢印は出たから、目視は出来なくても紅焔さんの位置はなんとか把握。ただ、紅焔さんは危機察知を持ってるから……不意打ちはほぼ意味がないか。
危機察知があっても間に合わない速度で連続攻撃をするか、もしくは飽和攻撃で根本的に避けられなくする? ……今はLv10になった水の操作の検証も兼ねてるし、強引にどこまで突っ切れるか試してみるか。
そういや減ってるHPの回復はどうしよ? 脱皮を使って回復させて、防御の低下効果が切れるまで水中に潜んどくか? ……いや、紅焔さんが他に水中への攻撃手段があれば危険だな。実況で間違いなく回復した事は言われるだろうし……更に下に潜ればいけるか? でも、それは何か違うよな。
「さぁ、水中から機会を窺うケイ選手と、ケイ選手が出てくるのを空で待ち伏せしている紅焔選手の睨み合いが続いていますが、先に動き出すのはどちらかー!?」
「紅焔さんからは潜られた現状じゃ攻撃し辛いだろうし、ケイさんからしかねぇんじゃね?」
「そうだろうね。でも、ケイさんの事だから、意外な手段でも使ってくるんじゃないかい?」
「それもそうかもしれません! 果たして、ケイ選手はここからどう攻めていくのかー!? その戦法に期待です!」
おーい!? ここで意外な戦法を期待とか言われても、そうそうそんなに色々は出来ないんだけど!? ……くっ、言うだけでいいんだから、無責任な事も言いやすいってか!
「……そういや、これだとどうなる?」
もう実況の方は気にしないとして……ちょっと気になるけど、これはどうなるんだろ? 生成量が増えるのが仕様だから、登録中のスキルLvそのものは関係ないはず。
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 125/125 → 123/123(上限値使用:2)
水のカーペット用だけど、実際に使ってみて……あぁ、この状態でも生成量は切り替えが可能だな。なるほど、登録をし直さなくても生成量を増やして、操作自体も出来る範疇か。
ただ、もう規模的に水のカーペットじゃないな。目立たないように湖の中で薄く広げたけど……どう考えても広過ぎるわ! Lv10で操作するよりは規模は抑え気味にはなるけど、こんなの何に使えば……あっ、これって使えるんじゃね? よし、やってみるか。
でも、水のカーペットだと強制解除が簡単だし、量も制限があるから、実行に移すのはこれじゃない方でいこう。逆に邪魔になりかねないし、水のカーペットは解除して……。
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 123/123 → 123/125
よし、これでいい。さーて、これからやる事の実況は勘弁願いたいけど……そこは無理だろうなー。
「ケイ選手、巨大な水のカーペットを生成したかと思えば、それを即座に解除したー!? これは何か企んでいる様子ですが、解説のザックさん、その辺はいかがでしょうか!?」
「何か企んでるのは間違いないと思うぜ! でもよ? これ、2人も聞こえてるんだよな? いいのか、お互いに筒抜け状態って?」
「それは問題ありません! 今回の一戦は水の操作Lv10の検証も兼ねていますので、紅焔選手にはそれをどのように潰すかという点でも注目したいですからね!」
「あー、なるほどな!」
今回は冗談抜きで検証から始まってるからそれでいいけど、集中力がどうとかって問題じゃなく、戦略が筒抜けになるって意味で本気の勝負では無しだな、この設定! 次回からは、もうしないでおこう!
もう完全に俺がやる事は紅焔さんには筒抜けなんだし、分かってても対処が出来ないって形でやるまで! 水の操作Lv10で、どこまで強引な事が出来るかってのも気になるしね!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値10と魔力値20消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 115/125 : 魔力値 290/310
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値20と魔力値20消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 95/125 : 魔力値 270/310
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
俺の場合だとこれで昇華魔法が発動してしまうから、絶対に重ならないように上下で二層に分けて広く生成! ……なるほど、球形でなくても初めから板状にするのは問題無しか。最低限の必要な体積分だけ生成出来てれば、形に制限はなさそうだね。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を2消費して『水の操作Lv10』は並列発動の待機になります> 行動値 93/125
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を4消費して『水の操作Lv10』は並列発動の待機になります> 行動値 89/125
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
水の操作のコストパフォーマンスが良過ぎる気もしてたけど、増やした生成量を操作する事を考えればそれほどでもない? 操作中には全く行動値や魔力値が回復しない事も考えれば、まぁこんなもんか。
「おーっと!? ここでケイ選手、先ほど解除した巨大な水のカーペットを、並列制御で二重に展開だー!? 湖の中で、果たしてそれに何の意味があるのかー!?」
「これ、普通に湖の水を操作すりゃいいんじゃ?」
「そこにケイさんの意外な意図がありそうだね?」
「おそらく、そうでしょう! ケイ選手、一体どのような手段を思いついているというのか!?」
あー、はいはい。もう俺の状況はダダ漏れもダダ漏れだけど、どういう意図でやってるかまでは理解出来てないなら問題なしって事にしとこう。
さてと、肝心の抵抗は……あー、結構あるな。まぁ広げた水がそのまま湖の水の影響を受けるんだから、当たり前な話だけど……でも、この程度の操作時間の削れ方なら問題なし!
わざと水を受けるような形にしたんだし、狙ってる事を考えればむしろ抵抗がないと困る! そして、水の操作Lv10の精度があれば、考えてる通りの事は実行可能っぽいね。
とりあえず、2つ用意した上側のを先に使って、下側の方に俺が乗っておこう! そのまま俺も突っ込んで、翻弄してやる! どうしても距離が離れればそれだけ精度も落ちるし、出来るだけ近くに移動もしないとね。
「……よし、準備万端!」
ロブスターで跳ねて、俺のいるつもりの場所へ移動完了! もう少しで効果が切れそうだけど、獲物察知で紅焔さんのいる方向は分かってる!
という事で、攻撃開始!あー、そのまま平たくいくと上手く掬えてない感じだから、少し窪ませて……おっと、そうしたら今度は一気に負荷が大きくなったか。まぁ湖の水は巨大な水のカーペットの何倍もの体積があるんだから、当然ですよねー。
えーと、ここから……よし、下側は固定して、上側を思いっきり動かしてひっくり返すイメージで一気に動かす! くらえ、巨大な水のカーペットで掬った、水での津波攻撃! 直接操作したら剥奪されてしまうだけだけど、操作されていない津波となれば、剥奪は出来ないよなー!?
「げっ!? なんじゃそりゃ!? 『自己強化』『高速飛翔』!」
あー、それなりに上手くいったとは思うけど、当たった手応えはなく、灰色の矢印は離れていってるなー。流石に目視出来ない状態では、しっかりとは当てられなかったか。
どの程度の津波になったかも見えてないし……いくらLv10の水の操作とはいえ、流石に今のは負荷が凄いな。追撃に使おうかと思ってたけど、今のだけで使った方の水の操作の操作時間は切れたか。……ちっ、ぶっつけ本番だと力加減が難しい。
「ケイ選手、巨大な水のカーペットで強引に水を押し動かし、津波を作り出してきたー! 近くの小島が、津波に呑まれていくー!」
「うへぇ……やる事がとんでもねぇな!? あー、こういう手段なら、剥奪も何もねぇわな!」
「規模が段違いに上がるからこそ、出来る事なのかもね。これ、Lv7くらいの操作精度じゃ、負荷が大き過ぎて操作時間の方が保たないんじゃないかい?」
「まさか、まさかの! 水の操作Lv10だからこそ出来た芸当だー! 流石の紅焔選手も、慌てて逃げる事しか出来ていないー! だが、ケイ選手はまだ2発目を残しているー!」
状況の説明、どうもっと! 今の感じで小島の1つを呑み込めるくらいには出来た訳か。でも、咄嗟に逃げに転じられたら避けられる範囲なんだなー。まぁその辺は微調整するとして……。
「もう1発、いっとくか!」
「ちょ!? またか、ケイさん!? くそっ!?」
「って、おわっ!?」
「……えぇ? 自分が流されていくのかよ!?」
言ったはいいけど、自分自身も流したら勢いがすげぇな!? これ、自分でやっといてなんだけど、操作してる水じゃないから制御が効かないんですけどー!?
「まさか、まさかのケイ選手自身が流されていったー!?」
「わっはっは! そんな事、あるのかよ!」
「あはは、ケイさん自身がまだ扱い切れていないみたいだね。何をどうやれば、どの程度の効果になるかが分かってないのかも?」
「このような状況に陥るという事は、それで間違いないでしょう! それだけLv10となった水の操作が強力という事ですね!」
えぇい、好き勝手に言われてるけど、とりあえず今は流されている状況の打開が先! 今回のはさっきよりも勢いは控えめにしたし、流されてる方向の先に水のカーペットを回してきて、反発力を強めて受け止める! ……ふぅ、なんとか止まったか。
「わっはっは! 隙だらけだぜ、ケイさん! 『光の操作』『光の操作』!」
「げっ!?」
咄嗟に目の前に操作してる水を持っていったけど、あっさり貫通してきて防御になってない!? いや、でもコケにもロブスターにも当たってないから、途中で光が曲がってるのか! よし、今のうちに湖の中へ潜り込む!
「ちっ! 『光の操作』! 『光の操作』! 『光の操作』!」
ちょ!? また連続で攻撃してきてるんだけど、跳ねまくって進行方向を変えまくれ! あの攻撃はピンポイントかつ直線的な攻撃だから、動きまくっていれば狙いは外しやすい! 湖という場所なら、尚更に!
「紅焔選手、猛攻撃を繰り広げていくー! そしてケイ選手は、ザリ……ロブスターならではの跳ねる挙動で、それらを回避していく! さぁ、先ほどまでとは攻守が変わって、ケイ選手が逃げに一手となっているが、ここからどうなるのかー!?」
「なんだかんだで、紅焔さん、まだノーダメだもんな」
「ケイさんの津波攻撃は意外だったけど、紅焔は呑まれてはいなかったからね。ここからは、あの手段をどう活かすか次第じゃないかい?」
「そうなってきそうですね! 紅焔選手がケイ選手の不慣れな攻撃を凌ぎ切るか、ケイ選手が決定打を与えられるようになるか、そこが勝負の分かれ目となりそうです!」
その辺は承知済みだけど、今はともかく紅焔さんからの攻撃を凌ぐ事を優先で! ひたすら湖の奥へ潜るのみ! ……ここまで湖で攻め切れないとは思ってなかったわ!
「さぁ、再びケイ選手と紅焔選手の距離が開いたー! 次に仕掛けるのは、やはりケイ選手かー!?」
「てか、紅焔さんって光の操作以外に水中戦の手段って持ってんの?」
「ううん、持っていないね。アイテムが使えればどうとでも水中戦は出来るけど、今回はアイテムの使用は不可だから……この場で新たな手段を思いつかない限りは紅焔から攻めるのは厳しいだろうね」
「ここで紅焔選手の手の内が明かされたー! 条件としては同じになるので、苦情は受け付けておりません!」
あー、俺には聞こえてきてないけど、紅焔さんがソラさんへ苦情を言ったっぽいね。まぁ色々とダダ漏れなのはお互い様だから、今回の一戦は我慢って事で!
それにしても、さっきの攻撃手段……俺自身も同時に流されるのは無しだな。そもそも、紅焔さんの意表を突いてはいたけど、それでもかなり上空へ退避されてしまえば意味がない。
そういやあの津波に対しては、危機察知って働いてたのか? 俺が起こしたものではあっても、完全な制御下には置けていないし……状況的には流れ弾に近いはず? うーん、その辺は確認してみたいとこだけど……まぁ検証も兼ねてるんだし、今聞いてみるのもありか。
「ハーレさん、少し紅焔さんに確認を取って欲しい! 対戦としてじゃなくて、検証として!」
「少し実況は中断とします! えっと、ケイさん、何を確認すればいいのー?」
「紅焔、ケイさんが聞きたい事があるみたいだから、少し中断だよ」
ふー、別に戦闘後に聞いてもいいんだけど……お互いに状況がダダ漏れなら聞いてしまうのもありだろ。どうも危機察知に反応があったとも思えない動きだったしなー。
さてと、これでどういう答えが返ってきますかねー? 勝負にこだわって紅焔さんから却下されても仕方ないけど、どうだろなー。
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