第1332話 ケイと紅焔の模擬戦 その2
紅焔さんとの模擬戦が始まったけど、お互いに相手の動きを見てから動き出すつもりで……いきなり膠着状態になってしまった。初期位置の小島から飛び上がるところを狙うつもりだったんだけど、まさか動きが被るとはね。
まぁ長々と膠着状態を続ける訳にもいかないし、ここは俺から仕掛けようか! 対戦にはしてるけど、それ以上に実戦での水の操作の使用感の確認が目的だしな! 出し惜しみなしの、最大でいく!
<行動値10と魔力値20消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 115/125 : 魔力値 290/310
<行動値を2消費して『水の操作Lv10』を発動します> 行動値 113/125
「おーっと!? ここでケイ選手に動きが出たー! 水の操作Lv10で得た『生成量増加Ⅱ・水』の効果を乗せて、一気に大量の水を操っていくー!」
「おわっ! 聞いちゃいたけど、すげぇ量なのな!?」
「自分自身を包んでいるけど、どうするんだろうね?」
「果たして、どのような狙いで動くのかー!? そして、紅焔選手はこの攻撃をどう凌ぐのかー!?」
ソラさんが言ってるように俺自身を包み込み、巨大な水球を生成! ロブスターやコケに触れている部分と外周部分の反発力を高めにして位置を固定して、その上で紅焔さん目掛けて、そのままぶつける!
「まったく……やっぱり馬鹿げた水量だな、おい! 『高速飛翔』!」
「逃すか!」
真っ向から当たれば、流石に紅焔さん的には属性の相性で分が悪過ぎるけど……こうも安直に逃げの一手というのも違和感はあるな。距離は縮めつつ、それでいていつでも反撃を出来る心構えでいよう。
「紅焔選手、逃げの一手で空へと飛び上がっていくー! ケイ選手も自らを呑み込んだ水と共にそれを追いかけていったー!」
「あー、ケイさん、警戒してるのな? あれ、普通に追いつけるだろ? 紅焔さんも、逃げてる割には遅くね?」
「お互いに次の一手の読み合いってところだろうね」
「さぁこの一戦、お互いに慎重を期しているが、どこでどう動くのかー!?」
俺がまだまだ加速出来るのは事実だし、紅焔さんもまだまだ加速出来る状態なのは間違いない。ちょいちょい後ろを見ながら、一直線ではなく大きく旋回するように飛んでるし……何かタイミングを計ってる?
まぁここで変に追いかけっこを続けていても仕方ないし、こっちから攻撃を仕掛けてみるか。紅焔さんがこの状態で、どういう攻撃を仕掛けてくるかは気になるしね。
という事で、巨大な水塊から5つの水球を分離して、個別に攻撃用に準備完了。2発は何かの迎撃用に周囲へ残しておいて、3発分を紅焔さんにぶつけていく! 一気に加速させるんじゃなくて、段階的に上げていくか。
「ここでケイ選手の操作する水が6個になり、そのうちの3つが紅焔選手に襲いかかっていくー! だが、紅焔選手もその攻撃を見事に躱しているー!」
「はー、すげぇな? なんつーか、3発の追尾ミサイルから逃げまくってるような状況だな!」
「あぁ、確かにそんな感じだね」
「何度躱しても執拗に狙う、ケイ選手の水の操作! 果たして紅焔選手は逃げ切れるのか!?」
この水球が追尾ミサイルねぇ? まぁ手動で操作してるけど、やってる事は見たままそうだから良い例えだけど……ちっ、段階的に加速させてタイミングを読み違えさせようとしてるのに、随分とあっさり躱されるな。こりゃ、まだまだ余力があるって読まれて――
「おいおい! ケイさん、その操作、限界はそんなもんじゃねぇだろ!?」
「あー、いきなり全力をお望みか? なら、これで!」
そう言ったからには、全力で応えようじゃん! ただ、普通に加速させたんじゃ単純に避けられるだろうから、3つの水球のそれぞれに違った量で追加生成しつつ、更に加速!
「ここで、紅焔選手に迫る水球のサイズが全て変わったー!?」
「そういう事も出来るのか!? うはー、避けにくそう!」
「紅焔はどうするんだろうね?」
さーて、これまでの回避行動の範囲では避け切れないだけの変化は――
「わっはっは! 『並列制御』『ファイアクラスター』『黒の刻印:剥奪』!」
「やっぱ、そんなとこか!?」
何か狙ってるとは思ったけど、本当に回避し切れなくて当たりそうになる攻撃を待ってたな!? ちっ、全部が同じ水の操作だから、今ので一気に解除にさせられたか。
俺自身を支えていた水も同時に消えたけど……真下は湖か。通常発動のファイアクラスターは撹乱も兼ねてるんだろうけど、あわよくば俺のコケに当てるつもりでもありそうだ。だったら、こうだ!
<行動値を19消費して『水流の操作Lv4』を発動します> 行動値 94/125
湖の水を俺の真上で渦巻かせて、ファイアクラスターの火球を防御! ジューって音がして蒸発はしてるけど、水量的にはこっちの方が多いから押し切られる事はないな。おし、今はとりあえず湖の中の落ちとこう。
「紅焔選手、黒の刻印の剥奪で水の操作を破ったー! これはどう見ますか、解説のザックさん!?」
「どれだけ精度や量があろうが、『剥奪』には勝てねぇって事だよな? これ、『守護』でキャンセルを防がない限り、どうしようもねぇんじゃね?」
「操作系スキルの最大の弱点という訳だね」
「どうやらそのようですね! 紅焔選手は剥奪すると同時に攻撃を仕掛けましたが、ケイ選手の反応も早く、あっさりと水流の操作で防御されていましたが!」
「おっかねぇよな、あの無差別攻撃! 出が早い上に狙いが分からねぇって、面倒くさいやつだぜ!」
「上手く狙えないけど、咄嗟の攻撃には有効なんだろうけどね」
チャポンと着水して沈んでいる状態だけど、紅焔さんからの追撃が無かったのが気になるな? 水流の操作で防御したとはいえ、ファイアクラスターの発動はすぐに終わってたから、あそこから更に攻撃は可能だったはず?
でも、なんでそこから追撃を仕掛けてこなかった? 俺が紅焔さんの立場なら、狙うのは俺のコケを焼き払っての撃破だよな。いや、引き剥がす方向性でもいけるけど……それにはまず距離を詰める必要があるはず?
うーん、ここの湖は透明度が高いけど、今くらいの深さじゃ強引に引っ張り出そうと思えば出来るか? もうちょい深く、自分から潜っていくか。
いや、流石に深く潜り過ぎたら俺からも紅焔さんが見えなくなるしなー。さて、ここからどうしたもんか? とりあえず――
「火の龍だからって、水の中の敵相手に何の対策もなしじゃねぇんだぜ? 『移動操作制御』『光の操作』!」
「……はい? おわっ!?」
ちょ、ロブスターのハサミに小さな穴が空いて、がっつりとHPが削られた!? ヤバっ!? これ、閃光と並列制御で使ったレーザー攻撃と似たような感じ!? こんな隠し玉を持ってたのか、紅焔さん!?
「今のは……巨大な火の球が上空に生成され、その明かりが失われたようでしたが、一体何が起こったのでしょうか!?」
「レーザーみたいなのが出てたよな! 光の操作って、紅焔さんが使ってるのが意外なんだが!?」
「常々、紅焔が水中相手の敵に対する有効な攻撃が少ないのを気にしていてね? その解決策として編み出したのが今の戦法だよ。まぁ炎の操作で火球を作って、それを光源にして光の操作でレーザーにしてはいるんだけど……移動操作制御を使っているのが欠点ではあるね。レーザーにするには、光量不足とスキルLv不足でちょっと一苦労はあったけど、まぁ実用レベルには達したところだね」
「今の使用ではダメージ判定が出る……つまり、すぐに巨大な火の球が消えたのは強制解除になったという事ですね? あれだけの大きさの火の球があってこそ、光量が足りるようになるのでしょうか!?」
「そうそう、そういう感じだね。って、全部喋っちゃったけど、いいのかい?」
「わっはっは! 駄目と言ったところで、もう遅いだろ、ソラさん!」
「まぁそれはそうだね」
「さぁ、ソラさんの口から紅焔選手には水中を攻撃する手段を明確に持っている事が判明しましたが、この勝負、ここからどういう動きになっていくのかー!?」
カラクリは分かったけど、快晴の今は巨大な火球なんか用意しなくても普通に攻撃は出来るだろ! 水中なら角度次第で多少はレーザーが屈折してくるだろうけど、空から俺の位置が見えてる状況はマズい!
「さーて、どうするよ? ケイさん! 『並列制御』『光の操作』『光の操作』!」
「おわっ!? ヤバっ!?」
くっ、結構練習してるっぽくて、狙いがかなり正確!? 流石に一撃でやられる事はないけど、ロブスターのHPが結構削られた!
まさか紅焔さんが火属性以外の操作を使ってくるのは想定外! あー、でも大きくイメージを損なうかというと、別にそうでもないな! てか、光源に巨大な火球を使ってるから、火からの攻撃ってイメージはあるわ! って、考えてる場合か! 何か対策を……あぁ、もう全快してるし、盛大に使えるならこれでやっちまえ!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 124/125 : 魔力値 307/310
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 122/125 : 魔力値 304/310
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
すごい速さで行動値も魔力値も回復してるから、出し惜しみはなしで! 偽装を重視するか、強度を重視するか……あー、もう両方でいこう!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』は並列発動の待機になります> 行動値 103/125
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を6消費して『土の操作Lv7』は並列発動の待機になります> 行動値 97/125
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
岩の操作を防御用に用意して、そのサイズに合わせた薄い石を横に4つ並べて展開! それで、俺は操作した岩の裏側にしがみつく! その上で、全てをバラバラの方向へ沈めつつ移動で!
「おーっと!? ケイ選手、ここで薄い石と岩を生成し、岩の下に隠れて移動を始めたー! 紅焔選手の視点からでは、この偽装は見破れるのかー!?」
「おー、今はケイさんの視点になってるから違いはよく分かるけど、上から見たら分からないんじゃね? はー、色々考えて動くもんだな!」
「偽装用の石で時間を稼ぎつつ、確実に岩で攻撃を防いで距離を取る気みたいだね? それとも、姿をくらますのが目的かい?」
「どちらもケイ選手に狙いとしてはありそうですが、果たしてどちらなのかー!? おぉーっと、ここで紅焔選手の上空からの視点に切り替わったが、これはどれがケイ選手の隠れている岩かが非常に分かり辛い状態になっているー!」
ほほう? 今回は実況が聞こえるような形にしたけど、相手からどういう風に見えてるのかってのが分かるのは面白いね。……まぁ自分の視点からの内容も筒抜けになるから、一長一短だなー。
本当に集中してやりたい時には、PTメンバーの会話まで聞こえる状態にしておくのはやめておいた方が良さそうだ。まぁ今回は検証も兼ねているから問題はないけど……それでも、スキルLvが10になったからって、破ろうと思えば手段はあるか。そういう意味では、良い相手をしてくれてるね、紅焔さん。
それにしても……すぐに行動値が回復するからって、思いっきり光の操作を撃ちまくってくるな!? 土の操作も岩の操作も、かなり操作時間が削られてるんだけど!?
てか、PTメンバーの会話が聞こえるようにはしたけど、対戦相手だけは別なんだな! 思考操作の可能性もあるけど、発声での発動の声は聞こえない状態だし!
「紅焔選手、猛攻に次ぐ猛攻だー! 少し間を開けて行動値の回復はしているようですが、応用スキルのこの連発は凄まじいー!」
「わっはっは! 模擬戦ならではのこの回復速度の上昇は、これが楽しいとこだぜ! 再使用時間の設定があるスキルはどうしようもないけど、そうでないスキルは撃ち放題!」
「模擬戦だと熟練度は入らないけど、単純に狙いをつける練習にはいいと思うよ? 紅焔、これで光の操作の狙いの練習はしてたからね」
「それは確かに練習方法になりますね! 紅焔選手、練習の成果をここで存分に発揮中のようだー!」
そういう練習方法もありかよ! まぁ確かに行動値の回復を待つ必要がなければ、いくらでも連発出来るもんなー! そりゃ、どんどん当たりまくるだけの精度にもなるわ!
「……思った以上に押されるなー。こりゃ、再発動した方がいいか?」
かなり動かしてるから直撃は避けられてるけど、それでも大きく操作時間を削られているし……いや、でも深くまで潜っているのと、岩と石の位置をバラけさせたので、どんどん命中率は下がってるし、このままいける?
うーん、でもここから浮上した際に思いっきり狙われるよなー。ただ水を操作しただけじゃ光は貫通してくるだろうし……これ、いっそ水の操作で全反射でも狙った方がいいんじゃね?
レンズ状にした水で収束は出来るんだし……あー、でも全反射しようと思ったら、そうなる角度に調整しないと無理か。流石に、それは厳しいかも?
「さぁ、現時点ではノーダメージの紅焔選手と、ロブスターのHPが4割ほど削られたケイ選手ですが、ここからどう展開していくのでしょうか!?」
「このまま大人しくケイさんがやられるとは思えねぇけど、紅焔さんがあっさりとそれを許すとも思えねぇな!」
「まぁ結果が出てみるまで、どっちが勝つかはなんとも言えないと思うよ?」
「確かにそうでしょうね! さぁ、勝負の行方は如何に!?」
さて、大真面目にどう攻めよう? 黒の刻印は無限に使える訳じゃないし、飽和攻撃で使い切らせて水中に引っ張り込むか? それとも空中戦に持ち込むか? うーん、流石は紅焔さん、手強いですなー。
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