第1329話 大きく増えた生成量


 水の操作をLv10にして、その効果が乗った状態で単独での昇華魔法の発動には成功。発動コストが増えている分だけ効果は増してる気はするけど……まぁ使うかどうかは微妙な範疇だな。

 効果時間は普段より長めみたいだけど、発動中は他に何も出来ないんだからデメリットも大きいか。うーん、Lv10に到達したスキルが2つあってのこの効果、正直微妙過ぎる。


「爆増した生成での昇華魔法が発動する為の緩和条件は『水属性強化Ⅲ』の所持になるのか?」

「まぁ、多分そうだろうなー。逆に言えば、それで強化してもこの程度……」

「もっと、ドカンと大きな変化に期待してたのさー!」

「さっきケイさんも言ってたけど、なんだか感覚は麻痺しているね」

「そうなんだよなー」


 自分自身で言った事ではあるけど、今の成果でも十分な程ではある。そもそも水の操作Lv10だけでも相当な強化になっているんだから――


「んー? あれ? これってもしかして……ケイさん、ちょっと実験してもいいですか?」

「ん? いいけど、何を――」

「えいや!」


<ダメージ判定が発生した為、『移動操作制御Ⅰ』は解除され、10分間再使用が不可になります>

<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 106/116 → 106/118(上限値使用:7)


 ちょ!? 水のカーペットに向けてなんで石を投げた!? 飛行鎧と同時展開してたから落ちはしないけど、いきなり何事!?


「おいこら!? ハーレさん、何やってんだ!?」

「これが実験なのさー! もう一発、えいや!」


 待て、待て、待て!? 更に投げようとして……ちっ、予想外の実験過ぎて、回避が間に合わない! どういう狙いだ、これ!


<ダメージ判定が発生した為、『移動操作制御Ⅰ』は解除され、10分間再使用が不可になります>

<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 106/118 → 106/124(上限値使用:1)


 げっ!? 本気で飛行鎧にまで当てやがった!? 今動けないのに、この状態だと変な形で落ち……って、あれ? 普通に動かしてちゃんと着地が出来た? あ、そういう事か!


「……これ、発動中でも普通に動けるな?」

「おぉ! やっぱりなのさー!」

「マジか!? それ、地味に便利だな!?」

「へぇ? そういう効果もあるのかい?」


 ちょっと軽く走り回ってみるけど……うん、これまでと違って動きに制限がかかったような様子はない。スキルは流石に新たに発動出来そうにはないけど、これは大きな変化かも?


「ハーレさん、なんで気付いた?」

「ふっふっふ、ケイさんのザリ……ロブスターのハサミが癖で動いてたのです! 昇華魔法の発動中にそれは見た事ないし、もしかしてって思ったのさー!」

「そこで気付くんかい! あー、俺は自発的に移動操作制御を解除出来ない状況だったから、強制的に外から解除したのか」

「そういう事なのです!」

「……説明してからすればよくね?」

「確認は取りました!」

「いや、まぁそうだけど……急過ぎるわ!」


 確かにいいとは言ったけども、その内容までは聞いてないから! まぁ効果時間中にやらなきゃ意味ないし、説明している間にささっとやってしまう方が早いか。うーん、微妙な心境ではあるけど、無茶な判断とも言えないのがなー。


「次はデブリスフロウで動けるのか、試すのさー!」

「まぁそりゃそうなるか」

「水属性が関わってたら動けるのか、水属性のみでないと動けないのか、その辺の条件の切り分けは大事だろうね」

「ですよねー」


 ソラさんの意見には全面的に同意だし、次に試すのはハーレさんの案で確定だな。でも、その前の魔力値を回復させないと試しようがない。


「ケイさん、それが終わったらスチームエクスプロージョンを試してみようぜ! 威力、どう変わるかが見てみてぇ!」

「確かになー。あ、ハーレさん、土の操作Lv10の検証をしてた人と共同の検証はいけるか?」

「あぅ……それは残念ながら、無理なのです。その人は晩ご飯でついさっき切り上げたとこなのさー」

「あー、そりゃタイミングの悪い……」


 とはいえ、それぞれの家庭の都合があるんだから無理は言えないよな。まぁ土の操作Lv10の方だけだから『水属性強化Ⅲ』と同等の状態にはなってないし……いや、それでも生成量を増やした状況での2人での昇華魔法は見てみたいとこか。


「はっ!? 土の操作Lv10持ちが2人でのアップリフトの発動を確認したって、今報告が上がってるのさー!」

「このタイミングで、そういう情報が出てくる!? いやまぁありがたいけど……どういう内容?」

「……規模はそんなにパワーアップしてないそうです! でも、効果時間が短くなるんだって!」

「ほほう? 短くなるって……アップリフトは元々長時間の効果はないよな?」

「ふっふっふ。隆起する時間が速くなるそうなのです!」

「……それ、実質的には威力は上がってね?」

「多分、そうだと思うのさー!」

「だよなー」


 勢いがダメージ量に影響があるんだから、発動の速度の向上はそのまま威力に影響してくる。昇華魔法の種類によって、強化内容が微妙に変わってくるのかも?


「そして、そういう効果に変化が出るのは、2人ともが生成量を増やした場合のみだそうです!」

「あー、俺と紅焔さんのスチームエクスプロージョンだと、効果なし?」

「多分だけど、そうなのさー! 生成量を増やさずにやったら、これまでと特に変わらないそうです!」

「やる前から、内容が分かっちまった!? あー、でも裏付けの為にやっとくのもありか? ケイさん、どうする?」

「一応、後で確認だけはしとく?」

「おし、了解だ!」

「それじゃそれで決定で」

「おう!」


 情報源は多ければ多いだけいいし、試した事が完全に無駄になる事はないだろ。まぁ優先順位は下がるから、他に試す内容が先だけど。


「というか、ハーレさんに聞かずにみんなで見に行けばいいんじゃないかい?」

「あー、確かに? まだ魔力値の回復には時間かかるし――」

「ふっふっふ、ケイさん! 移動に関しては、魔力値の量は関係ないのです! 生成に必要なだけの魔力値があれば大丈夫なのさー!」

「あ、そりゃそうか。そのくらいならもう回復してるし……ハーレさん、もしかして報告して、急かされてる?」

「みんなが気にしてるのは間違いないのです!」

「……なるほどね」


 並行して報告しているハーレさんがいるなら、俺は検証する事の方に集中しろって事か。まぁ逸る気持ちは分からなくもないし、俺も気になってる部分ではあるから、ささっと試してみますか!


「おっし、そういう事なら手早くデブリスフロウでも動けるか試してみるか。……正直、駄目な気がするけど」

「ケイさんが強化されたのって、あくまでも水属性だもんな」

「それを確認する為の検証なのさー! ちなみに、情報共有板では駄目だという意見の方が多いです!」

「まぁ、そういう予想にはなるだろうね」

「ですよねー」


 昇華魔法の発動中に動けるようになるというのは、まぁかなり破格な効果だもんなー。移動操作制御で強引に動かす事も可能とはいえ、自力で移動可能な状況になるのは回避行動を取る上でかなり重要な要素ではある。

 ぶっちゃけ、今の俺の状態で、その効果が水属性のみに限定されるなら……大半のプレイヤー相手では注意すべき点ではなくなるんだよね。まぁ競争イベントが終わった今だと、そこまで警戒すべき事でもないけど……その辺はいいか。


「それじゃ始めるぞー」

「はーい!」


 生成量の増えた水の操作そのものを少し使ってみたいし、昇華魔法で確認したいところは手早く済ませてしまおうっと。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値10と魔力値20消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 114/124(上限値使用:1): 魔力値 50/310


 うーん、基礎生成量の基準が大きく変わるから、毎回『生成量の大幅増加』の項目を選ぶ必要があるのは少し手間かも? まぁこれの有無で消費する行動値と魔力値が違ってくるんだから、ここは仕方ないか。


<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 112/124(上限値使用:1): 魔力値 47/310

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 さーて、生成可能な段階になったけど……あれ? 土の生成位置が、水の生成位置と重ねられない? あー、この制限ってそういう風にかかってるのか。


「これ、単独では発動出来ないっぽいな。水の生成位置と、土の生成位置が重ねられない」

「え、マジか!?」

「生成量を増やしたものは、各属性の属性強化Ⅲを持っていなければ、そもそも1人では昇華魔法に出来ないって事かい?」

「多分なー。こりゃ、操作系スキルLv10だけだと変に昇華魔法には使わない方が良さそうだ。単独なら尚更に」

「そんな気がするのです!? 報告してくるねー!」

「おー、任せた」


 まさかの昇華魔法の不発だけど……まぁこれはこれで重要な成果だな。少なくとも操作系スキルLv10で生成量を大幅に増やしたものは、同系統の効果を持つもの同士でなければまともに昇華魔法へ影響は与えられないか。

 行動値の消費が大きくなってる事を考えれば、下手にこの生成で昇華魔法を狙わない方がいいな。あー、だから競争クエストでそういう動きを見る事がなかったのかも? まぁ単純に使う機会がなかっただけかもしれないけど。


「ケイさん、まだ生成してないけど、その水と土はどうすんだ?」

「……勿体無いし、ちょっと試しに水の方は操作してみるか」

「それはいいかもね」

「って事で、ちょっとやってみますか!」


 土の生成は適当な場所にしておいて、多量の水は空中に生成! ……最低限の量でも、アルの木とクジラを丸ごと包み込めるほどなのは凄まじい。


<行動値を2消費して『水の操作Lv10』を発動します>  行動値 110/124(上限値使用:1)


 これで支配下には置けたけど……相当な量の水を操作してるのに、地味にすぐ側の湖面全ても同時に操作可能だったのが凄まじい。これだけ量を生成出来るなら、そりゃスリムさんが岩のドームを作ったり、彼岸花って人が霧に偽装した氷の操作を展開出来るのも納得。


「とりあえず、どこまで追加生成が出来るかやってみるか」

「上限は見ておきてぇもんな!」

「だよなー!」


 という事で、単純に巨大な球形の水でどんどん生成を続けていくけど……これ、すげぇな!? 球形にしてたら、下は湖に当たったし、上は霧の範囲に入っていってるんだけど!?

 あ、このくらいが限界……って、十分多いわ! 25メートルプールの丸ごとくらい……いや、それどころじゃなくてもっとあるか? 正直、どのくらいの水量があるのか、よく分からん! ただ、思った事は……。


「……この量、普通には使わなくね?」

「だろうな!」


 凄い勢いで紅焔さんからの同意が飛んできたけど、どう考えても過剰なんですけどー! どこで使うんだよ、この多過ぎる水量!?

 昨日のリコリスって人がやってたみたいに、電気魔法を通す為に広げるくらいか? いや、でもこの量は下手しなくても簡単に味方の邪魔になるぞ。……うーん、色々と運用方法を考えないと、扱いにくそうな量だな。


「おぉ!? 凄まじい水量なのさー!?」

「凄いだろ、これ。ハーレさん、報告は終わったか?」

「終わったよー! みんな、ケイさんと同じで変に昇華魔法には使わない方がいいって結論なのです!」

「まぁそりゃそうだろうなー。それどころか、普段使いにすら過剰過ぎる感じがするぞ」

「この量は、確かにそうなのさー! ちょっと泳いでみていいですか!?」

「それは別にいいけど……」

「『略:傘展開』『略:ウィンドボール』! とう!」

「……動きが早いな」


 もうあっという間に生成した水の中へ飛び込んで泳いでるよ……。別にただ浮かせているだけだから、ハーレさんが泳ぐ程度であれば全然操作時間は減らないな。

 というか、操作時間の減り方が今までよりも相当鈍い? まぁスキルLvが上がったんだし、根本的な精度が上がってるのかも。


「あ、これならみんなの防御には使えるのか」

「おっ、確かに水ならそうなるよな! この量なら、周囲のPTを丸ごと呑み込んでそのまま守りを固めるってのも出来そうだぜ!」

「でも、電気魔法には要注意じゃないかい?」

「だなー。まぁその辺は使い方次第か」


 ソラさんの言う危険性は無視は出来ない部分だけど、それは属性の相性問題だしなー。逆に言えば、それ以外ならどうともなる?

 あぁ、電気魔法を持つプレイヤーそのものを包み込むって手もあるのか。……結局、これだけの水量が必要かどうかって部分は変わらない気もするし、水量が増えただけで運用方法自体は極端には変わらなさそう――


「ぷはっ! ケイさん、ケイさん! これ、中で流れを作れませんか!? 洗濯機みたいに!」

「……多分出来るだろうけど、やればいいのか?」

「最大まで加速でお願いします!」

「ほいよっと」


 ハーレさんらしい希望ではあるけど、まぁどこまでの操作精度で動かせれるか試すのには丁度いい! さーて、全力で回転させていこうか! 思いっきり回っていけー!

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