第1324話 発見出来るか?
飛行種族で森の上にいると推測して、水のカーペットで飛びながら、更に条件を絞っていった。その結果、霧から出てきている木が怪しいという事になったので、その1本に近付き中。
「はっ!? フクロウがいるのです! ケイさん、早く!」
「おっ、マジか!」
ハーレさん、テンションが一気に跳ね上がったな! よし! 何本か見えてる霧の上まで伸びている木だけど、いきなり当たりを引いたか! ふっふっふ、ここまでの推測も――
「あ、これ、普通の一般生物のフクロウかな。群集支援種じゃないね」
「あー!? よく見たらそうなのさー!?」
「紛らわしいな!?」
「……あぅ……気が急きました……」
「その気持ち、分からなくはないけどさ!?」
「ケイさん、抑えて、抑えて! 声、大きいから!」
「あ、すまん……」
しまったな。つい今のは思いっきり言いたくなってしまって声を荒げ過ぎた……。でも、読みが当たったと喜んでたところに、この落差は酷くね!?
「ハーレも、少し落ち着こうかな? 大事なとこで見落としそうだよ?」
「今のは流石に自分でも反省なのです……」
あ、ハーレさんも項垂れてるし、今のは本気で見誤ってテンションが上がってた状況だったっぽい。……下手にミスを責めるのは駄目だし、今のは謝っとこ。
「すまん、ハーレさん。さっきのは言い方が悪かった」
「……私こそ、ごめんなさい。今のは私が悪いのです……」
「次は、もっとしっかりと確認しつつやっていくかな!」
「それに、これはこれで悪い情報じゃないんじゃない? なんだかダミーが配置されてるような印象はあるよ?」
「あー、それは確かに?」
近寄ってよく見てみれば、遠目からでは分かりにくいような緑色のカーソルのフクロウが1羽止まっている。地味に枝の中にいて、葉に隠れている状態だもんなー。ただの偶然か、これ?
「なぁ、ソラ。なんか上からケイさんの声が聞こえなかったか?」
「確かに聞こえたね? あ、紅焔、もしかして森の上を探してるんじゃないかい?」
「……へ? なんか意味あるのか、それ?」
「よく考えたら、僕らは下ばっかり見てるしね。……上は盲点じゃないかい?」
「あ、そういやそうか!」
なんか真下の霧の奥から、聞き覚えのある2人の声が聞こえてきてるんだけど!? あー、でもこの2人なら別に……って、他の人にも聞こえてる可能性はあるのか!?
「あ、やっぱりいたね。アルマースさん以外は全員いるみたいだよ」
「おっす! ケイさん達はそこで何やってんだ?」
「おー! 紅焔さん、ソラさん、こんにちはー!」
「群集支援種の捜索中だけど、2人もかな?」
普通に森の上まで飛び上がってきたよ、紅焔さんとソラさん。まぁさっきの俺ら……主に俺の声が聞こえてたら、そりゃ気になりますよねー。
「おっ、やっぱりか! その感じ、まだ見つけてはないよな?」
「まぁなー。そういう紅焔さん達もまだっぽい?」
「いやはや、これがまた全然見つからねぇの! で、ケイさん達が上にいるって事は……こっちにいるってのが正解か?」
「『フクロウがいる』とも聞こえていたね? 新たな群集支援種、フクロウなのかい?」
なんか思った以上に会話を聞かれてた!? ここはどうするのが正解だ!? うーん、前にソラさんからヤナギさんの居場所を聞いた事はあるし、ここでこの2人に隠すのは何か違う気がする。
むしろ、ここは協力して動く方がいいか? みんなを見回してみれば……頷いてくれてるし、意図は察してくれたっぽい。逃げる合図だと思われていませんように! てか、そう思われないように手早く伝えよう!
「ソラさんには前にヤナギさんの場所を教えてもらったし、推測で良ければ狙ってる場所を教えるぞ? てか、どうせなら一緒に探さね?」
「おっ、いいのか! ソラ、どうだ?」
「ケイさん達の推測なら、賭けとしては分は悪くはないね。今いるのは僕と紅焔だけだし、いいんじゃないかい?」
「って事だ、ケイさん! 乗るぜ、その案!」
「よしきた! それじゃこれな!」
一旦PTを解散してもらおうかとも思ったけど、なんかPTを組んでない状態だったからそのまま2人に申請で! まぁ俺らも時々組み忘れる事もあるから、戦闘を意識してなければそういう事もあるだろ!
「……そういえば、PTを組み忘れてたね」
「まぁ結果オーライって事でいいだろ!」
<紅焔様がPTに加入しました>
<ソラ様がPTに加入しました>
さてと、これで1PTがフルで埋まった。とはいえ、そんなに長時間はこの状況にはならないけどなー。うん、サヤとヨッシさんの晩飯の都合もあるし、手早く説明は済ませて――
「狙いはズバリ、霧の上まで伸びている木にいる何かなのです!」
「フクロウじゃないかって推測はしてるんだけど、種族は確定じゃないんだよね」
「さっきはそれで早とちりがあって、その時の声が聞こえた感じになりそうかな?」
「あぁ、さっきのはそういう事かい。確かに、このフクロウは紛らわしいね? 群集支援種、普段はNPCとして緑色のカーソルだし……」
「あー、全然この辺は考えてなかったな! てか、怪しい場所はいくつかあるな? でも、森の中を闇雲に探すよりは確率は高そうだ!」
俺らの元へ飛び上がってくる前にある程度は察してた感じだったけど、みんなが言った内容で状況はほぼ伝わったっぽい。……俺が説明するタイミング、無かったわ! まぁ別にいいけどさ……。
「おし、こりゃ手分けをした方が良さそうだ! ケイさん、それでいいか?」
「それで問題なし! 一応、推測の範囲だけど伝えとくぞー。まだ群集支援種自体を見つけてないから確証はないんだけど、大きくは動かないはず。動くとしても、多分霧から出てる木の間を移動する程度だと思う!」
「なるほど、そういう要素か! ソラ、俺らは思いっきり速度を上げてバラバラで探していくぜ!」
「はいはい、それはいいけど……下手に見落とさないようにね?」
「分かってるての! 『自己強化』『高速飛翔』!」
「それじゃ僕らは怪しいのがいないか、ざっくりと探ってくるよ。怪しいのがいれば、そこに急いで来ておくれ。『自己強化』『高速飛翔』!」
「ほいよっと!」
どういう風に手分けをするかを確認する前に紅焔さんがやり方を決めて凄い勢いで飛び出していったなー。流石は飛行種族の龍とタカなだけあって、飛ぶのは速い! あ、これは言っておかないと!
「多分だけど、エリアの中心ほど可能性は高いと思うぞ! もし大きく動かないなら、ミズキと安全圏からの距離は同じ程度になるはず!」
「あー、そりゃそうか! おし、俺は中央の西側を集中して探すから、ソラは――」
「僕は東側だね」
「おう!」
なんだか、完全に紅焔さんとソラさんに任せっきりの探索になってしまってるんだけど!? んー、俺とヨッシさんなら同じくらいの速度は出せるだろうけど、サヤとハーレさんは流石に空では多分無理だしなー。
その辺があるからこそ、情報を聞いてすぐに紅焔さんが飛び出していったのかも。飛翔連隊って共同体名になってるくらいだし、普段から空中戦力として動いてるんだから、こういう時の判断は紅焔の方が的確だろうしなー。
「はっ!? ケイさん、獲物察知では見つけられませんか!?」
「あー、多分無理だな。一般生物なら見つけられるには見つけられるけど、完全なNPCだと表示がどうなる事やら……」
「僕も『鷹の目』で探してみたけど、それは無理だったよ。攻撃が不可能なNPCは察知対象外だね」
「おぉ! そうなんだ!?」
ソラさんのタカが持ってる『鷹の目』は、獲物察知の名前違いの性能だったもんな。それで不可能だと断定出来るなら、やるだけ無駄で確定。
というか、獲物察知で見つけられるならとっくの昔に誰かが見つけてそうだから、その可能性を気にしてもいなかったなー。
「……でも、これならそうでもないのかい? 『鷹の目』!」
ん? なんで今、ソラさんは『鷹の目』を使った? 意味がないって言ったばかりのような気もするんだけど――
「ふむふむ、こりゃケイさん達の読みは正解かもな。何ヶ所か見てみたけど、どこにも一般生物のフクロウがいるぜ? まぁ場所によって何羽いるか、違うっぽいが……」
「紅焔の方もかい? 僕が見て回った場所も同じような感じだよ」
「どこにもフクロウがいるんかい!?」
まさかの霧から出ているどの木にも一般生物のフクロウがいる状態。流石にそこまでフクロウが出てきたなら、偶然と切って捨てる方がないな。
「種族はフクロウでほぼ確定と考えてよさそうだけど……紅焔さん、ソラさん、それだけ早く移動して分かるもん?」
「わっはっは! 無理に決まってるだろ! 大雑把にだ、大雑把に!」
「僕の方は『鷹の目』で除外しているから、判定は出来てるよ。目視の数と、矢印の数が合わなければそこが当たりのはずだろうしね。判別が出来ていないのは紅焔だけだよ?」
「ちょ!? ソラ、それはズルくねぇ!?」
「あ、さっき『鷹の目』を発動してたのはその為か!」
「そういう事になるね。ケイさん達は紅焔が見て回った方の精査をお願いするよ」
「了解なのさー! ケイさんの獲物察知の出番なのです!」
「ケイ、よろしくかな!」
「ほいよ! そこは任せとけ!」
獲物察知で直接見つける事は出来なくても、目視で確認出来る数と反応に出る数の差異で見つけていくとはね! ソラさん、ナイスアイデア!
<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します> 行動値 111/116(上限値使用:9)
という事で、即座に獲物察知を発動! 目の前の木には、見えているフクロウは1羽で、緑色の矢印も1つだけ。……正直、普段は一般生物の反応は鬱陶しいだけだからスルーしてるけど、こういうとこで役立つとは思わなかった!
まぁ植物だけは一般生物であっても、基本的には反応はしないけど……そこまで表示されたら鬱陶しいを通り越して実用性が無くなるもんな。戦闘中なら一般生物は大体逃げ去ってるから、そこまで支障はないけども。
「うーん、獲物察知での一般生物の表示はオンオフで切り替えたい……」
「え? ケイさん、それは普通に出来るようになってるよ?」
「……はい? え、ソラさん、それはマジで!?」
「本当だけども……あぁ、意図しないと触れない部分だから、見落としている人も多いのかもね。獲物察知の効果が出ている時に、それぞれの色の矢印が出ているのを選んでみるといいよ」
「……あ、これ、表示と非表示の切り替えが出来るのか!?」
うっわ、緑色の矢印を選択してみたら視界から消えて、視界の左下の方に『非表示:一般生物』って表示が出てるし……。そこを選択したら、緑色の矢印が再び現れた。初めて知ったわ、この仕様!
「ソラさん、よく気付いたな!?」
「これ、ヘルプに載っているんだけどね? まぁわざわざそこまで見ない人も多いから、仕方ない部分かもしれないけど」
「……ヘルプかー」
うん、その辺は全然見てないわ! いやー、でもこれまで全然困った事もないし、問題ないと言えば問題ない? 今回は思いっきり必要だけど、普段は一般生物はオフにしとこ。
「ケイ、そろそろ移動をお願いかな?」
「あ、それもそだな。おし、紅焔さんが飛んでいった方に移動で!」
「今度はしっかりと見つけるのさー!」
「サヤとハーレの目視の数と、ケイさんの獲物察知の数の差異が重要だもんね」
「だなー! それじゃ出発!」
「「「おー!」」」
という事で、改めて移動を開始! 何気にソラさんは紅焔さんよりは速度を落とし気味にして、木の近くではホバリングにしてるから、任せても大丈夫だろ! 木と木の間の移動は、出来る限り加速させていこう!
◇ ◇ ◇
役割を分けて、紅焔さんとソラさんと協力しつつ、霧の上まで出ている木の枝を覗いていくのを続けている。今のところ、まだ当たりはない。
まぁ結構な数があるからまだ当たりがないのは仕方ないとしても……ちょっと良くない状況になってきたか。くっ、空に上がるところを見られてたか、それとも会話を聞かれたのか、それともこの可能性に思い当たった人が他にもいたのか……。
「……どんどん、空を探してる人が増えてきたかな?」
「みたいだなー! まだ俺らも見つけられてないってのに!」
文句を言っても仕方ないけど、もうパッと見える人数だけでも紅焔さんやソラさんの時みたいに一緒にやろうって引き入れるのは無理! これ以上はどうやっても連結PTの人数は超えるし!
「森の上に出てきただけで、どう探していいかは悩んでる感じだね?」
「でも、私達の動きを見られたら、真似される気がするのさー! まだまだ見れてない木があるもん!」
「そうだろうね。あ、僕が見た方にはいなさそうだけど、見落としがないか引き返していくよ」
「ソラの方にはいなかったのか! 頼むぜ、ケイさん達!」
「早めに見つかればいいんだけどな……」
もう少しで7本目の木の元に辿り着くけど、ここまでは完全に空振り。競争率がどんどん高くなってきてるんだし、この推測が当たりならそろそろ群集支援種を見つけたいところだけど……あ、獲物察知の効果が切れたか。
<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します> 行動値 111/116(上限値使用:9)
よし、再発動は完了! そろそろ、8本目の木が効果範囲に入るから……よし、木の上の方に緑の矢印が出た!
「ここのフクロウは、獲物察知での反応は3羽! サヤ、ハーレさん、目視ではどうだ!?」
「今、確認してるのさー! えっと、フクロウが1……2……3……あ、4羽いるのです!」
「あ、見つけたかな! 群集支援種、名前は『ナギサ』!」
「やった! 見つけた!」
「おし、読み通り! 紅焔さん、ソラさん、こっちまで大急ぎで!」
わっはっは! 推測に推測を重ねてたけど、それが大当たりだな! それでも実際に探すのは大変だったもんだ。でも、なんとか見つけたぞ!
「おうよ! あ、でもケイさん達がトレードし損ねても困るから、俺らは気にせず先に行っててくれ!」
「この状況、下手すると僕らが他の人を引き連れて行きかねないからね。合流しているようには見えないようにした方が、僕らもトレードで良いのが手に入れやすいだろうし、むしろ手早く済ませて離れてくれる方が助かるかも?」
「あー、否定出来ない可能性!? そういう事なら、そうさせてもらう!」
紅焔さん達と俺らが一緒に探しているというのは、他の人達からは分からないはずだしね! ここで群集支援種のナギサを見つけたと思わせないようにしておくのが、この場では正解のはず!
さーて、取引可能な距離まで近付いてラインナップを確認していこう! 良いのがあればそのまま手早くトレードを済ませて、紅焔さんとソラさんがトレードしやすいようにこの場を離れないとな! でもまぁ、なんとか18時までには間に合いそうだね。
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