第1323話 再び森の上へ


 元巨大レンコンだった、新たな群集支援種を捜索中。闇雲に探しても運任せになり過ぎるから、気になった部分から条件を絞ってみたらそれなりに絞れた。

 空を飛ぶ飛行系種族というのはかなり盲点な部分だとは思うけど……推測以上の事は、実際に確かめないと分からないからなー。という事で、それぞれみんなが上空に上がってきたけども……。


「ハーレさんは、サヤの頭の上かい!」

「自分で飛ぶより、こっちで探すのに集中するのです!」

「そういう事みたいかな?」

「あー、なるほど。……それだったら、俺が全員乗せた方がよくね? サヤもその方が探すのに集中出来るだろ」

「あ、確かにそれはそうかな?」

「ケイさん、水のカーペットを展開なのさー!」

「ん? 水の方でいいのか?」

「うん! 空と言っても、上空なのか、森のギリギリなのか、その辺は分からないから、透明で下も見通せる方がいいのです!」

「あー、そりゃそうだ」


 飛行鎧を展開中だから、そのままそれを広げようかと思ったけど、理由を聞けば納得。そりゃ透明な水のカーペットの方が、捜索中には向いてるよな。


<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します>  行動値 118/118 → 116/116(上限値使用:9)


 という事で、水のカーペットを展開! そんなに広くする必要もないけど、まぁ狭過ぎてもあれだから2メートルもあればいいだろ。

 サヤは水のカーペットの展開に合わせて乗ってきて、ハーレさんはサヤの頭の上。ヨッシさんだけは自分で飛んでる状態だけど、まぁいいか。


「よし、展開完了! 強制解除になっても困るから、ちょっと高度は上げ気味でいくぞ」

「はーい! えいや!」

「あ、ハーレ!? 飛び乗るくらいは……平気かな?」

「……まぁ移動の範囲ならなー。ハーレさん、間違っても蹴りを入れながら飛び移るなんてするなよ!?」

「その辺は分かってるのさー!」


 まったく、分かってるのなら変に勢いをつけて飛び乗ってこなくてもいいんじゃ……って、なんだかヨッシさんが妙に静かだな? 何か周囲を気にしてるっぽい?


「ヨッシさん、どうかしたか? 流石に上がってきてすぐに見つかるほど都合よくはないと思うけど……」

「あ、ごめん。他に空を探してるプレイヤーがいるのか気になってさ」

「あー、先客がいるかどうかか」


 ここまで上がってきてすぐに飛行手段の方に意識が行ってたから、周囲の確認までは気を配ってなかったよ。先客の有無は、これから空を探す上ではかなり重要な要素だよな!


「ヨッシ、それでどうでしたか!?」

「今は特に何もいないけど、何か気になるのを見たのかな?」

「うん、ちょっとね。さっき空に来ている人がいたんだけど、群集支援種を探してる感じではなさそうだったよ? どちらかというと、私達が最初にしたみたいに霧の様子を見にきてた感じ」

「あ、他に人がいたのか!?」

「うん。それで他にもいないか気になっちゃてね」

「そりゃ気になるよなー」


 俺もだけど、サヤとハーレさんも気付いてなかったみたいだけど、ヨッシさんが空に来ているプレイヤーを見てたのか。そんな光景を見えたら、周囲の状態が気になって当然だよな。


「まぁここから見える範囲で、大々的に探してる人はいなさそうだね。ただ、こっちの方を見てたから……ずっと同じとは限らないかも?」

「はっ!? 空にいる可能性に気付かれたら、ライバルが増えるのさー!?」

「ケイ、霧に偽装して動くかな?」

「いやいや、流石にそこまでやらなくてもよくね!?」

「……それもそうかな」


 なんかサヤがしょんぼりしちゃったけど……流石に即座に却下したのはよくなかったか。でも、この探索は味方が敵になってるとはいえ、そこまでやる事でもないんだよな。


 おそらく目玉商品は『スキル強化の種』だろうけど、味方が手に入れていて困るもんでもないからね。まぁ出来れば自分で欲しいけど、今は補填で貰ったばかりの1個しかないからなー。2つ目のLv10のスキルを手に入れるのは、正直無理!

 もし2個手に入るのなら水の操作Lv10を狙いたいけど……そんなに都合よくいくとも思えない。いや、意外と情報ポイントは使わずにいるから、運が良ければいけるか?


「……そういや、今の情報ポイントはいくらあるんだ? みんなはどんなもん?」


 全然使ってない上に、競争クエストでの報酬で結構貰ってるから溜まってるはず。あ、やっぱり結構溜まってる。今、情報ポイントは8616もあったのか。


「私は4000ポイントぐらいなのさー!」

「私は5000くらいかな?」

「あ、サヤもハーレも結構あるんだね。私は細々と使っちゃってるから3000くらい」

「みんな、そんなもんなのか。俺、なんか8000を超えてるんだけど……」

「それはあり過ぎなのです!?」

「なんでそんなにあるのかな!?」

「なんでって言われても……」


 気付けばこれだけあったという状況だし……冗談抜きでなんでこんなに所持ポイントに差が出てる? ヨッシさんは色々交換してたから、減ってるのは分かるけど。


「……そういえばケイさん、あんまり群集支援種でのトレードをした事がないんじゃ? 大体、私が足らずのアイテムを狙ったりしてたもんね」

「あー、言われてみれば確かに?」


 ふむ、改めて考えてみたらヤナギさんにしろ、マサキにしろ、トレード画面は見た事はあるけど、自分では全然交換してない気がする。樹属性の進化の輝石は、報酬で貰ったものだから情報ポイントは使ってないしなー。

 これだけ情報ポイントがあるなら、ちょっとくらい盛大に使ってしまっても問題はない? いや、まぁその機会があればだけど……今はその機会になり得るのか。その為に偽装するのも……あ、どっちにしても無理じゃん。


「サヤ、偽装は今ありかと思ったけど、普通にここまで上がってきたら視界はいいから偽装は無理だぞ?」

「あっ! 確かにこの視界じゃ、バレバレかな!?」

「サヤ、地味に昨日の感覚が抜けてきってない?」

「……あはは、そうかもしれないかな?」


 昨日の霧の森は、今日のこの五里霧林は同じ場所ではあっても、様子は全然違うもんな。咄嗟の発想だと、昨日のイメージを引き摺るのは仕方ないか。さっきまで、それで空を探すって意識自体が無かったんだしさ。


「はい! ケイさんの闇の操作で隠れてしまうのはどうですか!?」

「……悪い、闇の操作は全然育てられてないから、Lv2だ。流石に偽装には心許ない……」

「あぅ!? まさかの落とし穴なのです!?」


 くっ、こういう場所での使用を全く想定してなかったから、闇の操作とか全然触ってない! ……十八時から、ちょっと闇の操作を鍛えとこうかな? 色々と偽装手段はあった方がよさそうだし、PT内で使える人がいた方がいい気はする。

 あー、今こそ風音さんにいてほしい! よし、今からちょっと声をかけてみて、一緒に……あ、ログインしてなかった。くっ、他に闇の操作を使いこなす人は……ベスタ辺りは使ってるけど、どう考えても今呼ぶのは無理だよ! 他に思い当たるのは弥生さんだけど、そもそも群集が違うから!


「偽装が無理なら、早く見つけてしまうのです! ケイさん、それでスキル強化の種の入手、2個以上を狙うのさー!」

「まぁそれが最善……って、2個もトレード出来るのか?」

「それは分かりません! 単なる願望なのさー!」

「願望かよ! まぁ俺だって手に入るなら欲しいけどさ……」

「私が前にトレードした時は、情報ポイント2000で手に入ったから、数さえあれば個数制限がない限りは狙えるかも?」

「え、そうなの!? 私が交換した時は4000だったよ!?」

「あー、必要な情報ポイント数はその時によって変わるのか」


 ふむ、これは実際に見に行ってみなければ具体的に何個トレード可能かは不明っぽいね。


「でもまぁ、結局は群集支援種を見つけなきゃ意味がないな。闇雲に動き回るだけじゃまだ範囲が広過ぎるし、もう少し場所を絞ってみるぞー!」

「ケイ、とりあえず適当でいいから移動はしててかな! 場所の絞り込みは、移動しながらで!」

「それもそうだな。ハーレさん、適当でいいから進む方向!」

「私なの!? えーと、えーと……西で!」

「ほいよっと!」


 完全にハーレさんに丸投げしてみたけど、まぁここは誰がやっても同じだろ。どちらかというと東寄りに進んでたし、ここで西に向かって動くのもあり!

 まぁ五里霧林の南北で見ても、今の位置は半分も来てないけどね。半分どころか、ゆっくりペースだから4分の1も進んでないわ。……つくづく広いな、この新エリア!


「これ、多少はペースを上げてもいいか? いくらなんでも広過ぎる!」

「私は問題なしなのさー! サヤはどうですか!?」

「私も大丈夫かな! 飛ばし過ぎてたら言うから、ケイのペースで!」

「ほいよっと! ヨッシさん、速度を合わせて飛ぶよりは掴まってた方が楽だろうし、サヤの竜にでも捕まっとけー」

「あ、それもそうだね。サヤ、いい?」

「うん、問題ないかな!」


 夜ならアルのクジラと木で移動するから、この辺は自然と場所は決まるんだけどなー。今はアルがいない以上、こういう風にやっていくのがいいはず!


「それじゃ西に向けて出発! それと並行して、場所ももう少し絞っていくぞ!」

「「「おー!」」」


 あ、そういえば飛行鎧も展開したままだけど……まぁいいか。万が一にでも強制解除になった時の、落下防止用にそのまま発動しとこ。大々的に戦闘をする訳でもないんだから、上限が多少減ってても問題ないだろ!


「はい! 飛行種族って推測だけど、もう少しそこを絞り込んでみるのはどうですか!?」

「ほほう? 具体的には?」

「今は夜だから、夜行性かどうかの部分!」

「あー、なるほど」


 ふむふむ、確かにその絞り込み方はありだね。昼夜の違いによって、捜索範囲が微妙に変わってくる可能性か。……というか、そうなると根本的に常に空中にいるとも限らなくなってきそうだな。


「群集支援種なんだし、日によって活動しない事があるとは思えないから、夜なら飛ぶのを控えて高い木の枝に止まってるとかかな?」

「ずっと止まったままのフクロウとかあり得そうじゃない? コウモリみたいなのは、飛行種族でも森の中にいそうだし……」

「それなら、探すべき場所は霧を突き抜けてきてる高い木か?」

「ちょっとその方向で探してみます!」


 あんまり種族は絞れてない気もするけど、群集支援種という性質上、昼夜で行動の変化が少ないのは良い目の付け所な気がする。普通の敵なら夜にしか出現しなかったり、昼にしか出現しなかったりはあるけど、流石にNPCだとそういう訳にはいかないだろ。

 というか、夜の間には活動しないとかだったらもうこうやって探してる事自体が無駄足過ぎるわ! 占拠をする場合もあったのを考えれば、それは無し!


「そういや、サヤが竜って予想をしてたよな? 意外と、種族的に可能性はあるんじゃね?」

「え、適当に言っただけなのに、あれが絡んでくるのかな?」

「飛行種族としては該当するもんね、東洋系のドラゴン。まぁ西洋系のドラゴンもだけど」

「でもその辺が飛んでいたら、普通に目立つ気がします!」

「それはそうだよなー」


 成熟体のドラゴンともなれば大きいし……って、そもそも成熟体ではないのか。群集支援種は占拠と共に進化するんだから、未成体と考えた方がいいだろ。

 まぁ未成体でも成熟体でも、俺らやヨッシさんが見た人みたいに森の上へ様子を見に来る人がいれば目立つのは間違いない。パッと見ではそうだと意識しない種族だと考えた方が無難だろうね。


「とりあえず、今はフクロウ辺りの夜行性の鳥と想定してみるか。その上で、今後も大して場所が変わらないという仮定で考えると……位置は、安全圏とミズキとの中間地点くらいか?」

「大きく変化がないなら、確かにそうかも? ちょっと仮定を重ね過ぎてる気もするけど……」

「そこはもう全然ヒントがないからなー。闇雲に探すよりは、何かしらの指標が欲しいって程度で!」

「あはは、まぁそれはそうだよね」


 推測に推測を重ねまくってるだけで、どれも明確な根拠がないのはヨッシさんの言う通りだけどなー。まぁ、間違えていたとしても痛手ではないから気楽でいいけどね!


 それなりに速度は上げたから、話している間に結構進んだか。……あー、これは読み自体が完全に外れてはいないのか? んー、逆に完全に外れたか?


「チラホラと、霧の上まで出てきてる木はあるみたいかな?」

「何本かあるけど、それぞれ見ていきますか!?」

「実際にそこは見ていくしかないかー。18時まで……あと30分もないくらいか」

「もうそんなに時間はないみたいだね。それっぽいのがいてくれたらいいんだけど……」

「だなー。とりあえず近い木から見ていきますか!」

「「「おー!」」」


 霧よりも高い位置まで伸びている木が複数あるのは、意味がない事とも思えない。うーん、不動種ではないけど、特定の場所から動かないって想定にしたけど、不定期で数ヶ所の場所を移動するパターンもあり得るか?

 どうも五里霧林の中央に進むほど、こういう霧の上まで出ている木が増えてるっぽいしなー。まぁ実際に見てみれば分かる事か! ……全部の木を見て回れるか、時間的に厳しい部分もある気はするけども!

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