第1322話 新たな群集支援種の捜索


 元々の目的の中にあった事ではあるけども、本格的に元巨大レンコンの群集支援種の捜索をやっていきますか! 今いる場所で見つけた、再戦が可能っぽいエリアボスのレンコンについては他のみんなに任せる!


「さて……どこをどう探す? ぶっちゃけ、ノーヒントだけど……」

「……どうしようかな?」

「種族だけでも知りたかったのさー!?」

「誰も知ってる人はいなさそうだったけど……情報共有板に情報が出てないだけって事はない? 伝手でその辺を聞いてみるのもありな気はするけど……」

「誰なら知ってるか、そこが鍵になりそうかな?」

「知ってる可能性があって、尚且つそれを教えてくれそうな人か……」


 灰のサファリ同盟やオオカミ組の人達は種族くらいなら知っていれば教えてくれそうあるけど、今は別件で忙しそうだからなー。そんなに時間は取らせないだろうけど……流石にこの件で邪魔をするのは無しだろ。そもそも、大きな共同体だからこそ下手に誰にも教えないって判断もあり得るよな。

 闇雲に探しても勘だけで探す事になるし、即座にこの場を離れるのも流石に無責任。ベスタなら多分そう時間もかからずここまで来るだろうから、そこで引き継いでもらうとして……ん?


「案外、ベスタが知ってるとか? 既に目当てのものは調達済みだから――」

「俺がどうかしたか?」

「ちょ、来るの早くね!?」


 早めにベスタが来るとは思ってたけど、まさかのこのタイミングで張本人が登場だよ!? てか、何処からともなく現れてきたな!? ……サヤかハーレさんが気付くものかと思ったけど、そんな気配もまるでなかったっぽいね。


「……この霧で、誰かが近付いてきても気付きにくいかな」

「それ以上に、ベスタさんの動きも速いのです! 音がしたと思ったら、すぐ近くにいたのさー!」

「あぁ、驚かせたか。それはすまん。どうもまだこの霧の濃さに慣れなくてな」

「ベスタさんでもそうなんだ?」

「ヨッシ、俺だって何でも出来る訳じゃないからな。座標を頼りに、最小限の動きで突っ切ってきただけだ」

「……そうだとしても、来るの早くね?」

「割と近くにいたんでな。それに、ケイ達が群集支援種を探しに行くなら、ここは早めに誰かが引き継いだ方がいいだろう?」

「あー、近くにいたのか。まぁレンコンの再戦の方は任せた!」

「あぁ、そこは任せておけ」


 ベスタが何処にいたかまでは考慮してなかったけど、ハーレさんが現在地の座標を表示した時点で走り出してても不思議じゃないな。うん、ベスタの場合は動きながら情報共有板を見てるっぽいし、普通にそれはあり得る!


「さて、さっきの俺の名前が上がっていたのは……タイミング的にお宝探しの件か?」

「まぁそうなるなー。ベスタ、新しい群集支援種の種族だけでも知らない?」

「いや、それは知らん。片手間で探してはいたが、本命はこっちの再戦の方だったしな。なんでも俺が知っていると思うなよ?」

「まぁそりゃそうだよなー」


 ベスタでも見つけられてはいなかったんだな。というか、ベスタも群集支援種を探してはいたんだね。優先順位が再戦のレンコンの方だっただけで。


「おーっす、ケイさん!」

「……みんな、こんばんは!」

「ん? あ、ザックさんと翡翠さんか!」


 誰かが呼びかけてきたと思えば、トリカブトのザックさんとハチの翡翠さんが揃ってこっちに向かってきているところだね。……声で方向は分かるけど、霧で姿がギリギリ見えるかどうかって厳しいなー。

 あ、でもある程度、湖の上まで来れば一気に見えるようになったか。ふむふむ、これは湖の上かそれ以外かで判定が変わってるっぽい?


「いやはや、すげぇな、この湖の霧! おっ、そこの黒いカーソルのハスの葉が再戦のやつか!」

「……分かりにくいし、場所的にも見つけにくい……」


 この感じだと、ザックさんと翡翠さんはレンコンとの再戦に参加しに来たっぽいな。うん、毒持ちのザックさんや翡翠さんがいれば、割と倒すのは楽そうな気がする。


「ねぇ、ザックさん、翡翠さん、新しい群集支援種の事で何か知らない?」

「ヨッシ! ……知ってたら教えたいけど……ごめん、知らない」

「あいにく、俺も知らねぇな! そもそも種族が分からんから、俺らが通った場所で見落としてたとしても不思議じゃねぇ!」

「んー、まぁそうなるよね」


 ヨッシさんが聞いてくれたけど、残念ながら手掛かりなし。何かしらのヒントを得ようとしても、これは無謀か? 聞けそう人には他にも色々と心当たりはあるけど……答えが出てくるかは、怪しいな。

 

「これ、もう勘でいくしかないかな?」

「だなー。さて、どの方向に進んでみるのがいいか……」

「はい! そんなに時間がある訳でもないし、真っ直ぐミズキの所へでいいと思います! それで18時くらいになる気がするのさー!」

「まだまだ結構な距離があるし、周囲を探しながらだとそれくらいはかかるかもね」

「それもそうだなー。おし、そうするか!」


 闇雲に探すしか方法がない以上、もうこれは単なる運の問題だろう。ヒントがあれば可能性は上げられるけど、何処にヒントがあるかすら、そもそもヒントになる情報を持ってる人がいるかすら未知数!

 あのレナさんでさえ、探してる真っ最中っぽいしね。俺らはレナさん以上の伝手は持ってないし、その方向から探るだけ無駄な気がする。


「おっ、ここだな! さっき情報が上がってたレンコンの再戦の場所!」

「おー! ハスの葉がいっぱい!」

「リーダーはあそこか。ん? グリーズ・リベルテもまだいるのか?」

「見つからないお宝探しは終わり! 再戦で、瘴気珠を手に入れよー!」


 あー、なんだか次々と他の人達が集まってき始めた……って、そういえば、この件を情報共有板に書き忘れてた!? ちょっとベスタに聞いてみよう!


「ベスタ、ちょっと確認! 昨日のレンコンの討伐で瘴気珠が手に入ってないんだけど……その部分、何かあると思う?」

「ん? あぁ、それか。城塞ガメしか再戦が出来ない状況だからなんとも言い難いんだが……『オオヤドレンコン』の『ヤド』要素が、見ていた限りでは無かったからな。ザッと見た感じ……再戦で、おまけの敵辺りが追加ってとこだろうよ。おそらく、瘴気珠を落とす敵はそっちだ」

「あー、その辺は同じ見解か!」

「むしろ、ケイの方で何か他の敵を察知はしてないのか?」

「それは特に何も? 多分、いるとしたら擬態して察知出来ない敵?」

「……なるほど、その手の敵の可能性か。そのつもりで戦うとして……ケイ達はもう早く行け。戦闘していく気はないんだろう?」

「まぁなー。それじゃ後はよろしく!」

「あぁ、任せておけ」


 次々とこの場所に来ている人がいるから、これ以上俺らが留まる理由もないな! 下手すれば邪魔になりかねないし、戦わないのならさっさと退散した方が良さそうだ。


「だー! 群集支援種、見つからねー!」

「……遠くまで見渡せないのは厳しい!」

「見つけさせる気あるのか、これ!?」

「ヤナギさんみたいに徘徊されてたら、見つかるものも見つからないよー!」


 なんというか、新しい群集支援種を探してたけど、それを諦めてこっちに切り替えてきたって感じの人が多いな!? ……今、ぼやいてた人の中でちょっと気になる部分もあったけど、その可能性を考えるのは、この場を離れた後にした方がいいかも?

 その思いついた可能性、ここで口に出すとマズい気がする。みんなに意見を聞いてみるのは、ここから離れてからにしよう!


「おし、それじゃミズキまで進んでいくぞ!」

「「「おー!」」」

「頑張ってこいよ、ケイさん達!」

「……頑張って!」

「ほいよっと!」


 ザックさんと翡翠さんから激励の言葉をもらったし、頑張って群集支援種を探しに行きますか! 少しここから離れたら、気になった部分の意見をみんなに聞いてみよう!



 ◇ ◇ ◇



 巨大レンコンとの再戦の場所から離れて、少し経った。離れていく時に進化の演出と歓声が出てたから、多分再戦は上手く出来てそうだったね。


「あぅ……それっぽいのはさっぱりなのさー!」

「チラホラと他の敵は見えるけど、群集支援種は全然ダメかな」

「んー、普段の群集支援種ってただのNPCだから表示は緑のカーソルだよね? その辺が余計、分かりにくくなってない?」

「そうなのです! 一応、群集の区別が付くように灰色の線は入ってるけど、普通に見落としそうなのさー!」

「……普段はダメージが一切発生しないようにする為の措置なんだろうけど、尚更厄介かな!」


 あ、普段は全然意識してなかったけど、カーソルの色ってそういう変化があったんだ? 戦闘が発生してる時しか意識してなかったから、普段のカーソルの見た目とか気にしてなかった!?

 そもそもNPCの数自体がそう多くはないから、カーソルを見て判別してないしな……。根本的に定位置にいるNPCの方が多いんだし……まぁだからこその、この違和感なんだけどさ。さて、この辺まで来れば聞いても大丈夫だろ。


「みんな、ちょっといいか?」

「ケイ、どうしたのかな?」

「はっ!? もしかして、何か見つける手段を思いつきましたか!?」

「あはは、そこは見つけたかどうかの確認じゃないんだね?」

「ケイさんに、見つける部分で負ける気はしないのです!」

「自信満々で上からきたな!? いやまぁ、確かに俺もその部分で勝てる気はしないけど……」


 否定出来ない事実ではあるけど、こうも真っ向から言われるとちょっとイラッとくるよねー。まぁちょっと程度だし、喧嘩をするつもりもないからこのくらいはスルーで!


「それで、どういう話かな?」

「あー、見つける手段というか、探す対象の話だな。サヤ、ハーレさん、どういう風に探してる?」

「どういう風にって……動きがある何かを探してるかな?」

「同じくなのさー! あちこちを徘徊してるなら、結構早く動いてる気がするのです!」

「あ、やっぱりそういうイメージになるよな」


 確証はないけど、その徘徊しているという状況認識が根本的に間違っている気がする。近くの視界はいいけど、決して長距離の視界が良くない状況の場所だしなー。上からも見下ろせず、この広さでとなると……徘徊してたら本当に見つけさせる気がないだろ。

 ぶっちゃけ、これなら占拠したエリアでいるより、安全圏に追加されてる遥かに便利だ。


「……ケイさん、どういう事?」

「結論から言うけど、今探してる新しい群集支援種……移動してるのか? なんかヤナギさんのイメージに引っ張られてる気がするんだけど」

「……え? あー!? 確かに誰も移動種だとも、徘徊してるとも言ってないのさー!?」

「……言われてみれば、確かにそうかな? 種族が分かったとしても、この広さで、この見通しの悪さ……探すのに苦労し過ぎかな!」

「ボスの撃破と占拠の両方を成し遂げた報酬としては、難易度が高過ぎる気がするね」

「そういう事! まぁだからといって、1番最初に見つけるとこまでは運だろうけどさ……」


 最初の位置特定さえしてしまえば、後々からは探さなくてもいいようになってる気がする。それでも、最初に見つけるまでが大変なのは変わらないとは思うけど……。


「そっか、その視点は盲点だったかも……」

「あぅ……完全にヤナギさんみたいに徘徊してるって勝手に思い込んでたのさー!」

「もし、動かないのだとすれば……探すべきは不動種かな?」

「いや、状況次第では占拠をさせる味方なんだから、ここはただ単に動かないだけで、移動自体は可能な種族な気はする」

「……マサキみたいな感じで考えた方がいいのかもね」

「多分だけどなー」


 競争クエストで味方になって占拠をさせる事を考えれば、不動種の可能性は非常に低いはず。……なんかヒントになってるようで、全然ヒントになってない気がしてきた。


「はっ!? 盲点といえば、他にも盲点な場所があったのさー!」

「ハーレさん、どこだ?」

「空! 一度上から見てみたけど、そこで満足して空では群集支援種を全く探していないのです!」

「あ、飛行種族かな!?」

「……確かにすぐに降りてきちゃったもんね」

「そっちも別の意味で盲点か!」


 競争クエストの真っ最中なら空も霧で覆われていたから、占拠する個体が空にいたとしても不自然ではない。それに今の状況であれば、空をわざわざ飛ぶ人は殆どいないだろう。

 実際、さっきのレンコンがいた湖へきた人達も地上からやってきてたもんな。木々が密集してる訳でもないし、遠くが見通せないだけで近場の視界は決して悪くはない。再戦のレンコンも同時に探していたのなら、上空は完全に対象外!


 ははっ、地上を徘徊していると考えてしまっているのは勝手な思い込みで、空でそれほど場所を変えずに飛び続けている可能性か。ただ闇雲に地上を探し回るよりは、賭けに出るだけの価値はあるかもね。


「さて、どうする? ここまでのはただの推測で確証は全くないけど……上空にいる可能性に賭けるか?」

「元々、賭けみたいなものだし、それでいくのです!」

「ハーレに同意かな! 駄目で元々だし、ここまで推測したならそれに賭けるかな!」

「分が悪い賭けでもなさそうだしね。みんなが探してるのに見つからないのなら、見落としてるものがある可能性は高いよ!」


 みんな、賭けに出る気満々だな! まぁ駄目で元々だし、推測した事は全くの的外れでもないはず! これで駄目でも、笑い話にすればいい!


「おし、それじゃ上空を探しに行くぞ!」

「「「おー!」」」


 さーて、問題は霧の森の上空のどの辺にいるかだけど……その辺は探しながら、もう少し条件を絞ってみますか! ノーヒントかと思ったけど、先入観を取っ払えばそれなりにヒントっぽいのは出てきたし、何かしら範囲を絞れる部分はあるはず!

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