第1319話 新たな占拠エリアの探索
<『五里霧林・灰の群集の安全圏』から『五里霧林』に移動しました>
新たな群集支援種を探すという目的も加えて、安全圏の方から五里霧林へ移動開始! ここの安全圏は北側にあるから、このままずっと南に進んでいけばミズキのいる湖に到着だな。
「これ、どうやって進んでいく? アルがいないけど、空中から行くか?」
「はい! 移動中ずっとかどうかは別として、とりあえず上からの景色が見たいです!」
「あー、そういやそういう話だっけ。それなら、それぞれで飛んでいくか!」
「うん、それでいいかな!」
「それで決定なのさー! 『略:傘展開』『略:ウィンドクリエイト』『略:風の操作』!」
「なんだかんだで、みんな飛べるもんね」
アルがいる時は足並みを揃えたり、周囲の警戒をしたり、まぁ他の事をしながらになるからアルに移動を任せっきりにはなるけど、今回は別にそういう理由もないからなー。
サヤは竜に腰かけて飛んでるし、ハーレさんはクラゲの傘の中で風を操作して飛んでるし、ヨッシさんは元々飛んでるしね。俺は岩で固めた状態で飛んでるけど……改めてこう比べてみれば、変な飛び方をしてるのは俺とハーレさんか。まぁどういう飛び方でも問題はないけどな!
とにかく、今は少しずつ高度を上げて……ん? 上に行けば行くほど、どんどん視界が良くなってる気がする?
「わっ! 霧を抜けたのさー! おぉ、これは凄いのです!」
「うぉ!? こりゃ確かに凄い……」
昨日はこの高度でも霧に完全に覆われてた気がするけど、今は森の木々の2メートル上くらいまで出れば霧の中からは完全に抜け出たな。
そして、目の前には霧に包まれて木々の上の方の葉が僅かに見える程度の濃い霧が広がっている。あ、ちょいちょい霧を抜けてる高めの木もあるっぽい? 雲海とはまた少し違うんだろうけど、この景色はこれまでのエリアでは見た事がない光景ですなー。
「なんというか……これは圧巻かな! 見渡す限り、霧の中の森はすごいよね!」
「うん、これは凄いかも! リアルじゃ濃霧は危ないけど、ゲームならその辺は気にしなくていいのは大きいしね」
「スクショのコンテスト、第2回はいつですか!? ここ、かなり良い撮影スポットになる気がします!」
「あー、それは確かに」
アルを森の中から出てくる様子を撮れば、それだけでかなり凄い光景になる気がする。演出次第で、他にも色々出来そうでもあるよなー。森の中にいる時は視界の悪さは問題にはならないみたいだし、良いエリアが手に入ったもんだ!
まぁもっと勝ちたかったとこではあるけど、流石に第1回の開催の時よりも赤の群集も青の群集も強くなってたもんなー。それに、あの時にはなかった無所属って要素があるのも大きいか。
「でも、第2回のスクショのコンテストの前に共闘イベントが先にありそうじゃないかな?」
「順番的にそうなりそうではあるよね」
「まだ1回しかしてないから、完全にそうと決まった訳じゃないのです!」
「まぁそりゃそうだけど……いかにも、黒の異形種に何かあるっぽいもんなー。次の共闘イベントがあるとして、敵は曖昧な自我じゃなくて、明確な意志を持った黒の異形種?」
「……その辺はどうなのかな? 前の開催の時は瘴気が関係してくるのは分かってたけど、クオーツみたいな存在が出てくるとは思わなかったし……」
「最初のプロモーションビデオでは出てはいたけど、今みたいに味方になるものとは思わなかったよね」
「まぁ、それはそうなんだよなー。でも、他に候補になりそうな敵っている?」
「ふっふっふ、多分いるのです! あっちに!」
「あっちに……って、上?」
思いっきりハーレさんが空を指差してるけど、空にどんな敵が……あ、違う。これ、指し示してるのは空より更に上か!
「なるほど、宇宙からの襲撃者か。確かに元々プレイヤー達も、地球からここまで渡ってきてるんだもんな」
「そういう事なのです! 惑星外から来る可能性もあるなら、いくらでも敵の可能性はあるのさー!」
ふむふむ、突拍子もない意見にも思えるけど……よくよく考えてみれば、結構理に適った意見ではあるのか。そもそも、この惑星に今のクオーツの元になった惑星浄化機構を作り出した存在がいる訳で……。
「えっと、確か『機械人』っていうのは、存在が出てたよね? ほら、このゲーム上で地球を滅ぼした集団」
「それらがクオーツの生みの親で、この惑星を一度滅ぼした集団だったかな?」
「確かそうだったはず? って事は、次の敵は機械か? あー、でも次とは限らないのか」
「因縁はあるから間違いなく、どこかで出てくるとは思うのです!」
「まぁそこには同意だなー」
次の敵かどうかは置いておくとしても、間違いなく敵として出てくる事はあるだろう。……プレイヤーとはかけ離れ過ぎた相手になりそうだから、どういう戦闘になるかが不安にはなってくるけど。
「他には……人化を目指してない別の精神生命体とか? 必ずしも味方とは限らないよね」
「それもありそうかな? でも、それって敵として強力過ぎない?」
「可能性は色々なのさー!」
「まぁ設定上は色々出てくる余地はありそうだけど……だからこそ、内容を絞り込むのが難しいな!?」
「それは、確かにそうなのです!」
宇宙から来るのなら冗談抜きでなんでもありだし、共闘する理由としても十分なものになる。……意思を持ち始めた黒の異形種に興味を持ったどこかの精神生命体が何かしてくるとかありそう。
もしくは、一度は放棄はしたものの、クオーツの現状の異変を感知して機械人が様子を見に来るとか? うーん、どっちもあり得そうだし、それ以外の何かが出てくる可能性もあるし……。
「まぁ共闘イベントについては続報待ちでいいや。あれこれ考えても、推測の域は出ないしさ」
「あはは、まぁそれはそうかな? それじゃ、改めて探索開始かな!」
「サヤ、たまにはクマの頭の上に乗ってもいいですか!?」
「あ、うん。問題ないかな!」
「やったー! お邪魔しまーす!」
フヨフヨとパラシュート状のクラゲで着地位置を調整して、ちょこんとクマの頭に乗ったリスかー。なんだかすごい久しぶりに見た気がするな、こういう光景。
アルがいたら、大体ハーレさんは巣の中だしなー。それ以外でも警戒している最中では別々に動いてたりするし、意外とこうする機会は少ないのか。
「ふっふっふ、ここはケイさんには譲らないのです!」
「いや、元々狙ってないからな!?」
「……え、そうなのかな?」
「なんでサヤがそこで少しガッカリしてんの!? 今までそういう乗り方した事あったっけ!?」
「コケだけの時には、それなりに運んだ気がするよ?」
「あー、それは……その時はお世話になりました!」
「どういたしましてかな!」
すごい初期の頃の話だけど、そういう時期もあったよなー! いやはや、最初の頃は移動に難儀していたのが懐かしい。……全然、一発芸は使わなくなったもんだよな。ちょっとその辺は寂しい気持ちになるし、サヤ的にもそんな感じなのかも?
「まぁ移動手段は色々と変わってきたもんね。ケイさんとアルさんの変化は特に大きいしさ」
「ですよねー。まぁそれはいいとして……探索はこのまま飛んでいくか? 森の中、全然見えないけど……」
「流石にこれは森の中に降りるしかなさそうかな?」
「降りて、陸路から探索なのさー!」
「上からだと無理そうだし、必然的にそうなりそうだよね」
「だよなー」
という事で、高度を下げて地上へ戻る! 霧の部分に入った途端に視界が良くなるのは、なんとも不思議な感覚だな? 上から見た感じの濃霧なら、全然周りが見えてないレベルだし……。
「この中で、新しい群集支援種を探すのって難易度高くね?」
「……そうかも? サヤ、ハーレ、探し出す自信はある?」
「何を探せば良いのかが分からないから、自信はないかな?」
「せめて、何の種族になってるかが分かれば探しやすいけど……それがないのは厳しいのさー!?」
「……なるほど」
んー、そういう事ならいっそ、群集のみんなにその辺の情報を聞いてみる? 多分、探している人は間違いなく存在してるだろうし、発見情報自体は既に上がってる可能性は――
「自力で探したいから、その案は却下なのです!」
「ハーレに同意かな!」
「だそうだよ、ケイさん?」
「……まぁそうですよねー。まぁ18時まで、のんびりと探していきますか!」
「「「おー!」」」
また声に出てたっぽいけど、まぁそのまま会話が繋がってるんだし問題なしで! 消えてくれないこの悪癖だけど……サヤはこれが俺らしさって言ってたっけ。
うん、そういう俺らしさはいらないから、可能な限り治したいな! 気を付けてはいるつもりなんだけど、どうやればいいのかさっぱり分からないけども!
◇ ◇ ◇
のんびりと話しながら、適当に五里霧林の中を進んでいく。進んでいくのは、昨日は通らなかった部分。その中でも踏破済みの情報も無かった場所を中心に進んでいる状態。
上から見た濃い霧を知らなければ、この森って普通の森と大差ないんだよな。大きな違いといえば、単純にエリアが広いのと、湖が点在しているくらい?
「もう少し先に行けば、小さな湖があるはずなのさー!」
「そういやハーレさんは完成版のマップを貰ってたな」
「ふっふっふ、そうなのです! ハスの葉や花があればいいなー!」
「復活してるかな?」
「行ってみれば分かるとは思うけど……それって、普通に敵だよね? 襲ってきたりはしないの?」
「ただ眺めてるだけなら大丈夫らしいです!」
「なるほどなー」
1体のレンコンからいくつのハスの葉や花が出てくるのかは分からないけど、それなりに敵が集まってる場所になるんだね。……『刻浄石』や『刻瘴石』の正確な仕様がまだ分からないけど、進化階位が変わらない可能性は高いから、成熟体で試す個体が必要なら確保しやすい場所になりそうな予感。
その辺の検証の話は、まぁ夜になってからだなー。ちょいちょいフレンドリストを確認してみたりはしてるけど、シュウさんも弥生さんも、ジェイさんも斬雨さんも今はログインしてない状態。
伝言を頼めそうな人がいない訳でもないけど、焦って連絡する案件でもないしなー。こっちもアルが一緒にいる時に時間を決める方がやりやすいのもある!
「……あっ」
「ん? サヤ、どうした……って、足が埋まってる!?」
「あー!? サヤ、大丈夫!?」
「……あはは、泥濘があるのを忘れてたかな。よいしょっと!」
「竜の上に退避だね」
「うん、しばらくは飛んでいくかな!」
のんびりし過ぎてて、この森の湖の周りは沼地になってるのをすっかり忘れ切ってたわ! 俺は飛行鎧で低空飛行をしてたから、その辺は全然影響なかったけど……。
「……ねぇ、ハーレ。この泥濘で、そのまま泥団子って作れたりする?」
「はっ!? やろうと思えば出来そうな気がします!?」
「あー、元々ある場所を使って、泥団子の生産か」
「普通にありな気がするかな?」
というか、その辺も考慮に入れて灰のサファリ同盟の本部の移転が決まってたりしない? うーん、灰のサファリ同盟の人達から直接話を聞いた訳じゃないから、よく分からん!
「後でその辺はラックに聞いておくのさー! ともかく、もう少し先に進むのです!」
「ほいよっと。さて、どうだろうな?」
「なんだか水面は、特に霧が濃い感じかな?」
「見通しが悪いみたいではあるよね」
「足場に注意って証なのかもしれないのです!」
「あ、それはありそうかも」
霧の中での視界はいいけど、距離があればあるほど、どんどん先の見通しが悪くなっていくのが進んでいく中で実感したとこだな。それが顕著に出てくるのが湖部分か。……これ、湖の近くだと他のプレイヤーの視認すら結構怪しい! ミズキがいるあの湖だけが特殊なのかも?
まぁすぐ近くが見えないって事はないし、音は普通に聞こえるから、特訓してる場合なら物音で気付ける範囲だけどね。無発声でも何かしらの音は聞こえるから、よっぽど不注意に進まない限りは邪魔する事はないだろ。……とはいえ、ここはジャングルがあるなら正直――
「……正直な感想をいいかな?」
「ん? それはいいけど、どういう感想?」
「ここって、絶対に特訓には向いてないかな!」
「あー、そういう感想か。まぁ空いてる場所を探すのが難しいもんなー」
「特訓するなら、ジャングルの方が良さそうだよね」
「あっちの方が見通しは遥かにいいのです!」
「やっぱりみんなもそう思うよね? でも、内緒の特訓には良さそうかな?」
「占有エリアだから、別に内緒にする必要もないけどなー」
「……やっぱりそうなるかな?」
「他に場所がなければここでも十分だろうけど、他の場所があるからなー」
どうしてもエリアのそれぞれの特徴を比較すれば、使いやすさはかなり変わってくる。植生が違うとはいえ、勝ち取った2ヶ所はどっちも森ではあるし……。
「新エリアの中で、どこが1番使いやすいと思いますか!?」
「どこと言われると……微妙なとこだな? どこもクセがあるのは間違いないし……」
「ジャングルは木の密度が他の森よりも高めだよね。まぁこの辺は、破壊前提にすれば問題ないと思うけど……」
「うん、ジャングルはそんな印象かな! 峡谷エリアは、音が響かないようになってるなら使いやすいかな?」
「あそこは、空から飛んでいかないと場所を探すのが大変そうだけどなー。まぁ全く飛ぶ手段を持ってない人も少ないか」
「それはそうなのです! 海溝エリアとサバンナエリアは、行ってないから分かりません!」
「海溝は海だから、そもそも陸エリアの人には向いてないよね」
「サバンナは拓けてそうだから、見通しがよくて使いやすそうではあるかな!」
「青の群集、何気に1番便利そうな場所を持っていってるのか」
こうして改めて考えてみれば、実物は見てないけどクセが1番少なさそうなのはサバンナっぽい。次点でジャングル辺り? 海エリアの人にとっては、海溝エリアが最高だろうなー。
「おぉ! 水面が見えてきたのです!」
「おし、とりあえず目的地の1つには到達だな」
さて、かなり霧が濃いけどハスの葉と花はどうなってるんだろうね? てか、湖とは言ってるけど、完全に周囲は沼地だな。水がある部分とない部分の境目、分かりにくいわ!
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