第1318話 今はのんびりと
『未開の霧の森』だったのも、命名クエストを終えて今は『五里霧林』へと変わった霧の森。競争クエストの真っ最中でしか動いていなかったので、改めて占拠エリアになった今、探索していく事になった。
さっき、少し遠回しな感じで教えてもらった灰のサファリ同盟の本拠地の移動の件もあるし、これからの新たな活動拠点の候補として探索してみるのもありだよなー。
「あ、そういえば、ここの安全圏での妨害ボスってどうなってる? 昨日のレンコンの討伐の時はその辺は完全にスルーしたけど……」
あの巨大レンコンのHPを4割くらい削った辺りで瘴気が3方向の広がっていくのは見たけど、まぁ何が起こってるかは予想出来てたから確認してなかったんだよなー。終わった後で色々確認していくなら、そこも知っておきたいところ。
「それは知りません!」
「知らないんかい! あー、サヤとヨッシさんは?」
「私も知らないかな?」
「同じく、私もだね」
「全員知らない状態かー。いっそ、そっちの確認から行く? 戦いはしないけど、種類の確認だけ」
ゾンビもスケルトンも両方が『黒の異形種』と名前は付いたけども、どっちの何がいるかは気になるところではある。あの安全圏から先のエリアに進むなら絶対に倒さないといけない的にはなるから、見るだけ見ておいて損はないはず。
「……それもありかな?」
「はっ!? それなら倒したレンコンが味方になったのがどこにいるかが気になります!」
「あ、そっか。安全圏にいる可能性はあるんだよね」
「そういやそれもあったなー。……共闘の協議の際に、城塞ガメが味方になったのを見せられたっけ」
「……確かにそんな事もあったかな」
あれがどこまでジェイさんの意図したものかは分からないけど……まぁ結果的にはしっかりと巨大レンコンのトドメは取れたんだから別にいいか!
「はい! ゾンビとスケルトン、どっちだと思いますか!? 私はスケルトンに1票なのさー!」
「あ、見にいく前に予想するのかな? それなら、私はゾンビで!」
「確かジャングルと峡谷の安全圏がゾンビで、サバンナと海溝の安全圏がスケルトンって話だったよね。どっちでも不思議じゃないし……うーん、スケルトンで!」
「判断材料がないな!? あー、それならゾンビにしとく」
「おぉ!? 2票ずつに分かれたのさー!」
「ところで、これって正解したら何かあるのか?」
「特に何もないよー?」
「ないんかい!」
聞いた意味はどこに!? いや、まぁ別に正解した時に何かなければ聞いてはいけないなんて理由もないけども……。てか、どっちかの数が少なければ予想もしやすいけど、ここまでの情報に偏りが出てないから、判断するのが難しいな。
「それじゃ折角だし、当てた側にカキ氷でも――」
「絶対に当てるのさー!」
「……反応、早いな」
「まぁハーレらしいかな?」
「あはは、確かにね」
「とにかく、急いで見に行くのです!」
「へいへいっと。それじゃ手早く、安全圏まで転移していくぞ!」
「「「「おー!」」」」
ミズキから転移先のヤナギさんを指定して、転移開始! まず安全圏まで移動して、妨害ボスの種族と種類を確認だな。そこからまたここを目指す感じで進んでくるのでもいいかもね。
<『五里霧林』から『五里霧林・灰の群集の安全圏』に移動しました>
安全圏へサクッと転移完了。ふむふむ、ミズキの周辺には結構人の姿が見えてたけど、安全圏の方はそうでもないな。まぁ占有エリアになった場所の安全圏だと、わざわざ来るのは妨害ボスの撃破狙いくらいか。
「おー! もう周回PTが出来てるっぽいのです!」
「今は、倒されていないみたいかな?」
「どうもそうっぽいなー。地味にタイミングの悪い……」
「あはは、まぁそういう事もあるよ」
その姿を確認するのが目的なのに、肝心の対象が死んでいない時とはなー。まぁ少し待てば復活してくるだろうから……ん? なんか地面を這うようにツタが伸びてきたような? でも、ツタの割に葉っぱは全くない? そのツタとの戦闘が始まったし……
「なるほど、ツタがここのボスか! ……あれ、ゾンビとスケルトン、どっち?」
「ツタは枯れて葉っぱがない感じだから、スケルトンかな?」
「……何のツタか次第じゃない? イモとかなら、そっちを見ない判断出来ない気がするよ?」
「腐ってるイモという可能性はありそうなのさー!?」
「あー、それは確かに……」
むしろ、両方の特徴を合わせ持ってても不思議じゃないくらいだよ! まぁ燃やせばもの凄く倒しやすそうではあるけども……。
「これ、どっちが正解になるのかな? ツタは枯れてるからスケルトンっぽいけど、今出てきたサツマイモのイモの部分は腐ってるみたいだよ?」
「……ここのボスはサツマイモかー」
周回PTの動きを見る限り、まずはイモ部分を掘り出すのが真っ先にやるみたいだね。葉のないツタを攻撃しても大してHPが減ってなかったし、これの本体部分はイモの方か。
ツタ系種族でもアサガオとかスイカだと、本体部分が無かったりするからなー。まぁ明確な本体がない分だけ、どこでも攻撃しても通じるのはありがたいけどさ。
「どっちなのか、切実な問題なのさー!?」
「んー、これは本当にどっちになるんだろ?」
「植物系の異形種は謎過ぎる……」
「それは同感なのです! あぅ……どっちなのさー!?」
カキ氷が出るかどうかがかかってるから、ハーレさんがなんだか必死だな!? 頭を抱え込んでまで悩まなくてもいいと思うけど……この辺はハーレさんらしい反応でもあるか。とはいえ、これじゃ先に進めないから……。
「ヨッシさん、ハーレさんにカキ氷は出してやってくれ。間違ってるとも言い難し、このままじゃ変に足止めになりそうだしさ」
「あはは、まぁそれもそうだね。それじゃ、みんなの分を出しちゃおっか。それで移動しながら食べちゃおう」
「え、ヨッシ、いいの!?」
「うん、多めに補充はしておいたけど、昨日の終盤では殆ど弱ってないから余っているしね」
「確かに、戦闘自体は少なかったかな?」
「大変じゃなかった訳でもないけどなー!」
終盤での戦闘が控えめだったのは、指揮をする為にガッツリと戦闘をしてる場合じゃなかっただけだしね。……あそこで思いっきり回復させる必要がある状況になってたら、相当キツかっただろうなー。うん、ベスタとレナさんを筆頭に、色々と抑えてくれたみんなに感謝!
「そういえば、ケイさんは昨日も食べてるのです!?」
「それは切実に魔力値の回復に必要だったやつだからな!? 文句を言われる筋合いはないぞ!」
「文句じゃないのさー! ヨッシ、はちみつレモンのを下さいなー! あれが食べたくなったのです!」
「ただの味を選ぶ基準かよ!」
「まぁ魔力値を大きく削る事もあるとは思ってたし、一番そこは用意してたから数はあるし、大丈夫だよ。はい、ハーレ、どうぞ」
「やったー!」
なるほど、確かに昇華魔法を使うのは当たり前な戦闘にはなってきてるんだし、魔力値の割合回復20%のはちみつレモンのカキ氷を用意してない訳がないか。その辺、ヨッシさんに任せっぱなしだけど、しっかりと確保してくれてたんだね。
「サヤとケイさんは何にする?」
「他に数が余ってるのは何になるのかな?」
「んー、単純に数が多いのははちみつレモンと蜜柑果汁の2種類だね。基本的な材料が、ほぼ自前で手に入るしさ」
「それなら蜜柑果汁でお願いかな!」
「俺もそれで! 折角だから、昨日とは違う味が食べたいし」
「了解! はい、2人ともどうぞ」
「ありがとうかな!」
「サンキュー!」
ヨッシさんから竹の器に入ったカキ氷を受け取り完了。竹を間違っても斬らないように加減してハサミで挟みつつ、移動しながら食べていきますか。
「ヨッシは何味にするのー!?」
「んー、色々と失敗した試作品があるし、その辺を消費するのもありかも? 味が薄くて失敗って結構あるんだよね」
「なるほど、そういうのもあるんだなー」
「うん、色々とあるよ。まぁ失敗作だから、あんまり人には食べさせたくはないけどね」
「はい! そういう味見なら、いくらでもします!」
「……失敗作だし、あんまり美味しくないよ?」
「それでもなのさー! という事で、そっちをおかわりなのです!」
「……あはは、まぁそこまで言ってくれるならお言葉に甘えさせてもらおうっと。はい、これね」
「おぉ! 真っ赤な果汁がかかってるのさー! いただきまーす!」
もうはちみつレモンのカキ氷を食い終わってたんかい! てか、完全に動きが止まってしまってるんだけど……まぁいいか。競争クエストが終わってのんびりと出来るタイミングなんだし、バタバタと動かずにまったりしてても問題ないよなー。
「これは……確かに失敗なのさー! 味が薄いけど、スイカの果汁ですか?」
「うん、正解。これの場合、スイカは果汁にするんじゃなくて、スイカそのものを凍らして削る方がいいのかも? そこにはちみつをかければいける?」
「おぉ!? それは良さそうなのです!」
「ヨッシはケイとハーレがいない時の合間でやってただけだし、本格的にやるのはここからかな?」
「あはは、そうなるかも?」
なるほど、ヨッシさんのその辺の作業時間って俺らが晩飯を食ってる間なんだな。俺やハーレさんも、サヤとヨッシさんがいない時には色々やってるけど、その逆があるのも当たり前な話か。……実際にそういう時の光景を見る事は今後もないんだろうなー。タイミング的にどうしようもない事だしさ。
そうやって話している間に、俺もカキ氷は食い終わり! ハサミで掬って食べるのはリアルで食べるより食べ難いけど、まぁ慣れてきたら食べれない事もないな。あと、カキ氷を急いで食べても頭が痛くならないのは大きい!
「さて、そろそろ目的を再開していくぞー! 次は新しい群集支援種の確認……って言いたいけど、どこにいるんだ?」
「分かりません!」
「……食べながらずっと探してたけど、安全圏にはいなさそうかな?」
「全然それっぽいのは見当たらないよね?」
うーん、みんな食べながらでもしっかり周囲の状況は確認してたっぽいけど……ヤナギさんの姿は見えても、それ以外の群集支援種の姿は見当たらない。てっきり安全圏にいるものだと思ってたけど、そうじゃないのか?
「これ、もしかして五里霧林の中にいるのかな?」
「はっ!? ヤナギさんみたいに徘徊してるのかもしれないのさー!」
「それはありそうだね? もしそうなら、レアアイテムのトレードが出来るかも?」
「確かにその可能性はあるか。なら、元巨大レンコンの群集支援種を探すを目的に入れるのもありだな」
どっちにしても、元々の目標自体が五里霧林の中の探索だ。その中に探すものが1つ追加になったところで問題ないし、むしろ明確な目標が出来ていいだろ!
運が良ければ、そこで『スキル強化の種』をトレード出来る可能性だってある! ……トーナメント戦の報酬からは無くなったけど、流石にそっちのトレードのラインナップから消えたりはしてないよな?
「ふっふっふ、それなら探索しながら新たな群集支援種を見つけるさー!」
「どういう種族になってるかも気になるところだね? 元々の種族とは違うって話だったっけ?」
「うん、そうなるかな! ジャングルでの城塞ガメは、青の群集の安全圏でヤドカリになってたしね」
「だなー。他の群集のプレイヤーでは取引は出来ない仕様になってたっけ」
あ、そうか。新しい群集支援種が安全圏にいると思ってたのは、あの光景を見てたからなんだな。地味に撃破したエリアボスの群集支援種化と、そのエリアの占有化の両方が成立したのはここが初めてか。
「おし、それじゃここからミズキのいる湖まで進んでいくのでいいか?」
「……え? あ、そういう手段もありかな!? ……普通にミズキまで転移して、そこから進む気になってたかな」
「あー、いや、別にそっちでもいいぞ? どっちから進むかってだけで、特に決まってる訳でもないし……」
なんかサヤが少ししょんぼりしちゃってるんだけど、これはどうすればいい!? 本当にただの気分の問題で、効率とか何も関係ないんだけど!
「それじゃ多数決を取ります! ここから、ミズキに向けて進むのがいい人!」
「私はこれにしておくね」
「私もこれがいいと思うかな!」
「同じくなのさー! ケイさんの発案だし、これで満場一致で決定なのです!」
「それもそうだな! おし、それで決定で!」
「「「おー!」」」
半ば強引にハーレさんが押し切った感じになったなー。しょんぼりしてたサヤ自身が救いの手を取るみたいに飛びついてたし、流れを強引に変えてくれたのは純粋に助かった!
普段はマイペースで好きに動いているようにも見えるけど、こういうところはしっかりと周囲の様子を見てるよな、ハーレさん。意図的に使い分けてるっぽいし、我が妹ながらその辺は何気に油断ならないんだよなー。
「ケイさん、どうかしたのー?」
「いや、なんでもない。さーて、本当に巨大レンコンは何になったのやら? その辺の予想でもしてみる?」
「乗ったのさー! えーと……私の予想はカエルにしておきます!」
「カエルで剥奪を使ってきてたからかな?」
「ふっふっふ、そうなのです! みんなの予想はどうですか!?」
「私は東洋系のドラゴンにしておこうかな?」
「あ、そういうのもあり得そうではあるよね。私は……うーん、完全に当てずっぽうにはなるけど、オオカミで!」
「カエルに、東洋系のドラゴンに、オオカミかー。共通点がまるでないな!?」
「お遊びだから、これくらいでいいのさー! ケイさんはどうですか?」
まぁこの予想が何か意味がある訳でもないしなー。検証とか分析ならしっかりと考える必要はあるけど、今は気軽に思い付いたのを言えばいいだけか。思いついた種族……よし、これでいいや。
「それじゃ俺はコケで!」
「自分の種族を言ってきたのさー!?」
「いやいや、いないとは限らないだろ?」
「それもそうでした!?」
本当にただの思いつきで言ったけど、可能性としては0じゃない。まぁかなり低そうな可能性な気がするけどなー。うん、実際にどういう種族なのかは見つけてからのお楽しみって事で! ……まぁ見つかればだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます