第1316話 夕方の合流
変なところで妙に疲れた1日だったけど、夏休みが近いのが救いかも……。来週の月曜日は海の日で休みだし、来週末からは夏休みに入るからなー。
さてと、いつまでもリビングにいても仕方ないし、そろそろ自分の部屋に……おっと、そういやこれってどうなってるんだろ?
「晴香、そろそろサヤやヨッシさんのとこに遊びに行く日程は決まったのか?」
「うん、大体決まったよー! 24日の出発して、28日には帰ってくるのです! 4泊5日の日程なのさー!」
えーと、そうパッと言われても曜日が分からん。カレンダー、カレンダー……ふむふむ、そういう日程か。今日が11日だから、2週間もないくらいだな。
「24日が月曜で、28日は金曜か。……平日なのは、わざと?」
「休日は地味に新幹線の予約が取れませんでした! 泊まるのはサヤの家で、広いそうだから問題ないのです!」
「あー、そういう……」
なるほど、単純に予約が取れなかったとこが問題か。まぁ夏休みになったとこだし、休日は予約が取りにくいってのはありそうではあるよな。
「そういう関係で、私のアルバイトは8月からなのさー!」
「まぁ8月からの人手が厳しいって話だし、そこからなら問題ないかー」
7月末で辞める人の後任が見つかってないって話だったから、そこさえ何人かの学生バイトで埋まればどうにかなるんだろうしさ。ある意味、晴香にとっては理想な日程なのかも。
確かヨッシさんの誕生日にも合わせてるって言ってたし、日にちとしては26日だったっけ? そういう意味でもいいタイミングなんだな。
「それまでに、色々とやりたい事はやっておくのです! という事で、兄貴、脱線はここまで!」
「ほいよっと。それじゃログインしてきますか」
「うん! アイス、ご馳走様でした!」
「どういたしましてっと」
地味に気になってた部分だけど、着々と準備は進んでいるようで何より。その期間中は……そういや、普通に夜はゲームをやるって話だったか。家に晴香がいないだけで、それ以外は大して変わらなさそうだな。
まぁその辺はいいとして……とりあえず自室に戻って続きをやっていきますか! 俺のログインが遅めにはなったけど、その分すぐに全員集合が出来る状態だろ。
◇ ◇ ◇
そうして、いつものようにいったんのいるログイン場面にやってきた。えーと、今回の胴体部分は『トーナメント戦の報酬変更に関するお知らせ』……って、え? ……これ、なんだか少し嫌な予感。細々とした変更はここには出てこないのに、ここでお知らせされる内容となれば大掛かりな内容になるよな!?
「いったん、お知らせの内容を教えてくれ! 何がどう変更になる!?」
「……気が進まないけど、お知らせしないといけないので伝えていくね〜。トーナメント戦での最高報酬の『スキル強化の種』は撤廃となりました〜」
「……マジで?」
「嘘に出来ればよかったんだけどね〜」
俺はその手段でスキル強化の種を手に入れた事はないけど、風音さんとか紅焔さんとか富岳さんはそれで手に入れてたよな!? 他の人もそれで手に入れてる人が結構いると思うけど……うっわ、これって今掲示板を見たらすごい荒れてそう。
というか、普通にログインしても荒れてそうな下方修正だけど……これ、大丈夫か? ん? でも、削除になる場合もあるって聞いた覚えもあるような……? それってどういう場合だっけ?
「あ、思い出した。八百長があれば削除の可能性もあるんだっけか」
「そうなります〜。そして、実際に多数の八百長が確認出来た為、今回の撤廃の決定となりました〜。八百長が確認された人の分は、既に没収済みとなっています〜」
「……あー、もの凄く迷惑な話だな」
どこの誰だよ、そんな八百長をして入手手段を潰した奴! いや、1人では八百長は出来ないから、奴らか! しかも結構な人数がいないと実行出来ないよな? 待てよ、もしかしてインクアイリーの中にもスキルLv10持ちの人が結構いたし――
「昨日の霧の森での競争クエストの大規模な動きに触発されて、つい魔が刺したという自白を受けています〜。ですが、競争クエストで実際に使われたスキルの取得に八百長による『スキル強化の種』の使用は確認していないので、その辺はご理解ください〜」
つまり、インクアイリーが使ってきたLv10に至ったスキルは真っ当な手段で得た物って事か。あ、よく考えたら、俺もLv10のスキルは持ってるし、取得経緯を知らなければ疑われかねないよな!?
しまったな、インクアイリーの一部が好き勝手に動きまくってたからって、それで変な疑惑をかけるのは無しだろ。今の疑惑は大真面目に反省で……。
「……もしかして、その説明が出てくるって事は結構疑念が出てた?」
「そうなるね〜。でも、それに関しては不正な行動はないから、変な疑いはかけないようにお願いします〜」
「……ほいよっと」
ぶっちゃけ、その疑いをやりかけたからこの言葉は痛いな……。そもそも、暴れてたインクアイリーの一部のやり方は群集から反発があるものではあっても、違反行為ではないもんな。違反行為なら、とっくの昔に運営から処罰が下っているだろうし……。
「それで……もう報酬の変更はされた後?」
「もう反映済みになるね〜。ちなみに複数の八百長が確認されたのは、日付が変わった辺りから今日のお昼頃にかけてになります〜」
「……マジかー」
俺がどうやってもログインしない時間帯だけど……その間にそんな事があったとは。しかも複数の八百長って、本当にとんでもない事をしでかしてくれたな!?
どこの群集の連中だよ、それ! トーナメント戦って群集の機能……その上、結構大きな共同体が実行して初めて出来る事だよな!? あっ、ちょっと嫌な可能性を思いついた……。
「……それって、いくつかは『スキル強化の種』は手に入れてはいたんだよな? それでスキルのLv10到達時の効果の情報を得てる可能性ってある?」
「当然の心配だけど、それはないよ〜」
「え、言い切れるのか」
「八百長だって事は分かってて、それを実行して、実際に『スキル強化の種』を取得した時点で没収してるからね〜。使う余地はないよ〜」
「あ、なるほど」
そもそも、トーナメント戦をやってる段階で既に八百長だと判明してるのか。まぁそりゃ元々の勝敗を決めてやってるのが八百長なんだし、行動が分かる運営からすれば、その辺はどうとでも判断出来るのか。
「ただ、ゲーム外で口裏を合わせて巧妙化されると対処し切れないという判断になって、今回の処置となりました〜」
「……ですよねー」
うん、この辺は実装時から元々想定してたような感じだったと思うし……やらかした奴が出たせいで、おかしな事になってしまった訳か。あー、どこかでトーナメント戦で入手を狙おうとか思ってたのに、完全に出来なくなったじゃん!
どうしてくれる、今回の決定の原因になった連中!? ……いったんに聞いても、多分、どこの群集のプレイヤーかは教えてくれないんだろうな。今話している内容も、事情説明の為の最小限の情報開示だろうし……。
「ただ、今回の件は急な変更になる為、お詫びとして全プレイヤーに『スキル強化の種』を1個進呈します〜」
「え、マジで!?」
「本当に急な話にはなるからね〜。あ、でも、八百長に関与したプレイヤー達には渡していないのでご心配なく〜」
「あー、まぁそりゃそうだ」
ここでやらかした連中にも配ってるって言われたら、それこそキレるわ! でも、これで結果的には大量のスキル強化の種が出回る訳か。
ふむふむ、これは色々な検証が捗るのでは? というか、実質的には得してる人の方が遥かに多くね? うーん、中々複雑な心境……。
「という事で、必要な時は『スキル強化の種』をインベントリに送るから僕に言ってね〜」
「今送ってもらっといていいか? いつ使うか分からないしさ」
「はいはい〜。そういう事なら、今日のログインボーナスと一緒に送っておくね〜」
「サンキュー!」
使うとしたらコケのスキル一択だろうし、送っておいて問題なし! インベントリの枠は全然余裕があるし、入れておいても大丈夫だろ。
それにしても、3rdの作成は解放されたものの作る時間の余裕がないもんだなー。アルは3rdでフクロウを作ったとか聞いたけど、それも見れてないままか。
その辺は流石に夏休みに入ってからじゃないと厳しいか。むしろ、テスト期間の間は不在だったのに、大きな差が出来てなくて助かったくらいだしなー。その間に3rdの育成とかは進んでたみたいだけど……。
「あ、スクショの承諾は来てる?」
「結構来てるけど……今確認していく〜? お知らせで時間を取らせちゃってるけど〜」
「あー、そういやそうか」
予定外のお知らせで時間をかけまくってる状態だし、サヤ達との合流もあるからなんとも言えないとこだな。スクショの承諾は後でも出来るんだから、今は変に待たせる状況にするより合流を優先しよう!
「悪い、スクショの承諾はまた後で! コケでログインをよろしく!」
「はいはい〜! 今日も楽しんでいってね〜! それと急な変更は申し訳ありませんでした〜!」
「まぁそこは運営的には仕方ないだろ!」
悪いのは八百長をした連中だし、そもそもそういう事があれば報酬の中から削除もあり得るとは言われてたんだ。……決して気分は良いとは言えないけど、運営へ文句を言うのも筋違い。
運営からは急な変更に対する補填として『スキル強化の種』が1個配られたんだから、これで我慢しよう。ちょっとトーナメント戦の人気が落ちそうだけど……まぁまだ『空白の称号』とか有用なアイテムもあるし、大丈夫か。
◇ ◇ ◇
そんな事を考えている間に、ゲーム内へと移動完了。昨日、ログアウトしたのは霧の森のミズキの近くだけど……全然霧で視界が悪いって事はないな!?
「おー、湖にミズキが映り込んでるじゃん!」
湖の真ん中にいるミズキが薄らと光っているし、その様子が湖面へと反射している状況。ははっ、群雄の密林にある川に出来たマサキのいる鳥居も神秘的だけど、これもまた神秘的だ。
「こりゃ、サファリ系プレイヤーが気に入りそうな光景だな」
「あはは、確かにそれはそうかな!」
「だよなー! って、サヤか!?」
「え、気付いて言ってたんじゃないの?」
「あー、今のは完全に独り言……」
癖で出た声でもなく、独り言の自覚がある独り言としか言いようがない! いや、つい周辺を確認する前に漏れ出てしまったもんで……。
「……相変わらず、言い訳みたいな時はダダ漏れかな?」
「だー!? この悪癖、なんとかならねー!?」
「あはは、そのままでもいいと思うけどね。そういうところ、ケイらしくて嫌いじゃないかな!」
「……そういうもんか?」
俺としては何とかしたいと思ってる悪癖だけど……俺らしいと言われるとは思わなかったな。忌々しいけど、これも個性の1つって事か? うーん、なんとも言えない心境!
「それにしても……霧の森でも、霧らしさは皆無かな? あ、でも遠くはそうでもないみたい?」
「見え方自体は、灰の刻印がある時と同じ感じだなー。上は……空すら見えん!」
「これ、今の状態で上から見たらどうなるのかな?」
「あー、試してみないとなんとも?」
灰の刻印と同じ効果なら、上空過ぎなければそのまま下まで見下ろせそうだけど……その辺はどうなんだろうな? 上空まで霧で満たされてたらあれだけど、どこかで霧を抜ければ雲海の中の森みたいに見えるのかも?
「あ、そういやハーレさんとヨッシさんは?」
「それほど時間帯は変わらないはずだけど……まだ来てないかな? あ、2人共ログインはして……あ、いた! ヨッシ、ハーレ、こっち!」
「あぅ!? バレたのさー!?」
「……流石にサヤ相手だと隠れ切れないね」
ヨッシさんもハーレさんも、ちょっと離れた位置の木の影に隠れてるようにいたけど……なんで隠れてた? サヤ相手に、かくれんぼか?
てか、昨日の命名クエストで待ってる時点でもそこそこ回復はしてたけど、今2人が隠れてた木って破壊して足場にしてたやつだよなー。うん、クエスト関係で壊したものは再生が早いもんだね。
「お待たせなのです! 色々と衝撃なお知らせにビックリなのさー!」
「あ、確かにあれはビックリかな!」
「……あはは、八百長が出ちゃうとはね。まぁそれで『スキル強化の種』が貰えたのも予想外だけど……」
「だよなー。まったく、本当に迷惑な事をしてくれる!」
でも、『スキル強化の種』が全員に配られた部分だけは迷惑とも言い難いから微妙に反応に困るとこでもあるんだよな……。
「でも、トーナメント戦での入手って大半の人は無縁だよね。そういう意味では感謝してる人もいそうかも?」
「確かにいそうだけど、それはそれで何か違う気がするのです!?」
「……その辺は難しいところかな」
「あー、そういう考え方もあるのか」
言われてみれば縁がない人にはとことん縁がないだろうし、純粋に補填で貰えた『スキル強化の種』を喜んでる人は普通に結構いそう。実力者であっても、気軽に取れる訳じゃないのがトーナメント戦での入手なのは間違いないしね。
「あ、ごめん! すっかり忘れてるけど、ログインボーナスを貰っておかないと忘れそうかな!?」
「俺も忘れてた!?」
「あ、そういえばそうだったのさー!?」
「……みんなして忘れてたみたいだね」
進化ポイントは結構余っているけど、それでも急に大量に必要になる可能性だってあるから、ちゃんとログインしている時にはしっかりと貰っておかないと!
<ケイが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
<ケイ2ndが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
よし、これで今日の分はしっかりと確保完了! てか、全員忘れてるとは思わなかったよ!
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