第1314話 掲示板その46


「兄貴ー! 起きろー!」


 ちょ、なんか耳元でうるさい……! まだ眠いのに――


「私が遅刻したら、兄貴の責任なのさー!」

「いや、そこは晴香の責任だろ! ……って、あれ?」

「おぉ、やっと起きたのさー!」


 ……え? 朝日が射し込んでるし……そういや、昨日ってギリギリログアウトしたけど、その後ほぼ寝落ち!? ヤバっ!? これ、遅刻――


「時間的には大丈夫! それより兄貴、朝ご飯!」

「……あー、よく考えたら、晴香が遅刻になってない時点でセーフか」


 寝起きで全然頭が働いてないな、これ。晴香が遅刻する時間になっていれば連帯責任でもう既にVR機器の没収は確定だし、晴香が大丈夫なら俺が遅刻する余地はない。


「……晴香、起こしてくれて助かった」

「えっへん! おやつにアイスを希望します!」

「あー、まぁそれくらいなら許容範囲だな。おし、任せとけ」

「やったー!」


 晴香に起こされるとは本気で不覚を取ったけど、それで助かったのは間違いないしなー。……あー、風呂も入らずにそのまま寝落ちしてるから、地味に汗が気持ち悪い。朝飯を食ったら、軽く汗だけ流してくるか。


「とりあえず朝飯にするか」

「今日はピザトーストなのさー! 今回は兄貴の方がアウトだったけど!」

「……2日連続でか」


 それだけ母さんに遅刻を警戒されたって事なんだろうけど……流石に昨日のは疲れ過ぎたっぽいな。……あれだけ色々とやってたら当然ではあるか。


「その割には晴香は元気だな?」

「一昨日よりは気が抜けたので、比較すれば楽だったのです!」

「え、マジで? あー、俺は指揮してたからか」

「うん、そうだと思う!」


 晴香には警戒はしてもらってたとはいえ、青の群集の総力戦の時みたいなずっと欠片の警戒が緩められない状況ではなかったもんな。その反面、俺は終盤にずっと指揮をしてて気が緩められなかったから……その分だけ疲労に差が出てたのか。まぁ2人揃って寝坊にならなくて、マジでセーフだな。


「とにかく、今は朝ご飯なのさー! お腹空いた!」

「ほいよ」


 とりあえず、さっさと朝飯の準備をしてしまおう。その後、軽くシャワーを浴びて汗を流して、高校まで行きますか。今日はまだ火曜日だから、週末まで長いな……。来週末になれば夏休みだし……まぁあと少し、頑張ろう!



 ◇ ◇ ◇



 寝坊防止メニューのピザトーストを食べ終え、軽く汗を流してから登校中。……汗を流した意味が正直あったのか、ものすごい怪しい。


「……暑いわ!」


 朝から照りつける強い日差しのせいで、次々と汗が出てきている。夏だから仕方ないとはいえ、暑過ぎるわ! あー、校舎内に入れば涼めるから、早く高校まで辿り着け! もう校門までは来てるんだから、あと少しだ!


「あ、吉崎くん、おはよう」

「あー、相沢さんか。おはようさん」


 なんかばったりと校門で遭遇したけど、自転車から降りて隣を歩いてきた……そういや、シャワーを浴びた分だけ、普段よりは出るのが遅くなったのか。道理で他の人が多い気がしたよ。

 んー、ヨッシさんが相沢さんの弟と色々あったみたいな話は聞いたけど、相沢さん自身が何かした訳ではないしなー。ここで変に突っぱねるのも、かなり失礼になるか。それに夏のアルバイトも一緒になった訳だし……。


「いやー、昨日は凄かったね! 吉崎くんはあんな感じに慣れてるの?」

「あんな感じ……あー、まぁそうなるか? そういう相沢さんも色々やってたじゃん?」

「あはは、まぁねー! 思い切って大担に動くのも気持ちいいもんだよ!」

「確かにああいう動き方をするとは思ってなかったしなー。あれはあり!」

「でしょ? 結構自信あったんだー!」


 昨日の競争クエストの件では相沢さんもアイルとして、大暴れしてたっぽいもんな。具体的な光景はほぼ見てないけど、未成体以下の人達を率いて大々的に妨害してたんだから大したもんだ。実際、他の群集はそれで結構混乱してたみたいだしさ。


 ……それにしても、妙に視線を感じるのは気のせいか? なんか俺の方を見てヒソヒソ話をしてるっぽい人が結構いるのも気のせい!? なんか落ち着かないし、教室へ急げ!



 ◇ ◇ ◇



 少し急いで教室まで移動したけども……教室に入った途端、一気に注目を集めたのはなんで!? おいこら、一部で睨みつけてくる奴がいるのはなんでだよ!?


「おっ、来たな、圭吾!」

「……なんかある意味、慎也の反応がホッとするわ。……俺、なんかした?」


 冷房が入っているから気温的には快適にはなったけど、雰囲気的には快適には程遠い。なんでこんな風にコソコソと喋りながら変なものを見るような視線を浴びなきゃいかん!? ……それ以上に敵意が向いるのが謎なんだけど。

 

「あー、ほら? 昨日の下駄箱での件が噂になってるっぽい?」

「昨日の下駄箱……って、あれか!? 痴話喧嘩と勘違いされてたやつか!」

「そう、それ! なんか圭吾と相沢さん、付き合ってる的な話が出てきてるぜ?」

「……うっわ、マジか」

「さっき入った最新のだと、昨日2人して凄かったって話してたらしいな! そこも変な誤解が発生してるぜ!」

「……はい? え、どういう誤解?」

「そりゃ痴話喧嘩をしてた恋人2人が、朝に校門前で並んで仲良く話してて、昨日が凄かったなんて話をしてたらなぁ? 普通はゲームでの話とは思わないぞ?」

「……ちょ、それってそういう誤解!? いや待て、いくら何でも勝手な誤解過ぎねぇ!?」


 ただのゲームの話題なのに、男女の行為に勘違いされてるんかい! あー、この敵意の多量に含んだ視線の理由が分かった気がする。相沢さん、何気に人気あるのか。


「で、圭吾、どうすんの?」

「……むしろ、どうしろと? 誤解だと言って、納得してくれそうな雰囲気でもないんだけど……」

「俺にもさっぱり分からん!」


 ただ校門前でバッタリ会って、昨日の競争クエストの話をほんの少ししただけなのに、何がどうしてこうなった!? というか、ついさっきの話なのに、広まるの自体が早くねぇ!?

 些細な会話の盗み聞きをして変な誤解を招く情報を広めるくらいなら、隠してないこの慎也との会話から誤解を解いて回ってくれません? あー、面倒くさい状況……。


 よし、見なかった事にしよう! 今からどうにかしようとしたって、それほど時間もない。……現実逃避、現実逃避。とりあえず総合スレでも見ていこう!



【第2回競争クエスト】総合情報スレ その34【全て終了!】


1:通りすがりのモンスター

 ここは総合情報スレになります。

 各種エリア、新種族、クエスト情報など総合的に扱っています。


 深く掘り下げたい場合は各種情報の専用スレにお願いします。


 前スレ

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2:通りすがりのモンスター

 第2回競争クエストの勝敗結果のまとめ。


【新規エリアでの開催】

 『未開のジャングル』 灰の群集が占拠。

 『未開の峡谷』 赤の群集が占拠。

 『未開のサバンナ』 青の群集が占拠。

 『未開の霧の森』 灰の群集が占拠。

 『未開の海溝』 赤の群集が占拠。


【既存エリアでの再戦】

 『カズキの森林(赤の群集の森林深部と青の群集の森林)』 青の群集が防衛成功。

 『ミヤ・マサの森林(青の群集の森林深部と灰の群集の森林)』 灰の群集が防衛成功。

 『ナギの海原(赤の群集の海原と灰の群集の海原)』 赤の群集が奪取に成功。


3:通りすがりのモンスター

 勝敗にまとめを見る限りでは、まぁバランス良く勝ち負けが決まってるな。


4:通りすがりのモンスター

 前ほど、灰の群集の一強感は薄まったのは間違いない。


5:通りすがりのモンスター

 競争クエスト、お疲れ様ー!

 あー、最後の総力戦は疲れたー!


6:通りすがりのモンスター

 昨日は灰の群集に負けたが、俺は赤の群集と戦った覚えしかねぇ!?


7:通りすがりのモンスター

 あー、人によってはそういう事もある?

 誰と遭遇するかは運次第なとこはあるし。


8:通りすがりのモンスター

 赤の群集は嫌がらせ的な害虫集団をやめろ!

 単体では平気でも、群れられると流石に嫌悪感が酷いわ!


9:通りすがりのモンスター

 わっはっは!

 効果があると分かっていて、なぜ止める必要がある!?


10:通りすがりのモンスター

 分かっててやってるのが、地味に厄介過ぎる!


11:通りすがりのモンスター

 嬉々としてやってるもんな、あの集団。


12:通りすがりのモンスター

 規約的には何の問題もないのが……。


13:通りすがりのモンスター

 システム的に使用可能な種族が集まってるだけだからなー。

 あれを規制しようと思ったら……同じ系統の種族のプレイヤーが集まれなくなりそうな……。


14:通りすがりのモンスター

 害虫集団は、もう平気な人で対処するしかない。

 それ以外は離れろ!


15:通りすがりのモンスター

 あそこは味方にすらダメージを与える集団だから!

 動きがあると分かったら、あそこには絶対近付かない!


16:通りすがりのモンスター

 味方にも避けられる害虫集団よ……。


17:通りすがりのモンスター

 集団といえば……結局、あのインクアイリーって何だったんだ?

 知らないうちに壊滅になってて、共闘が解除になってたけど……。


18:通りすがりのモンスター

 あー、インクアイリーか。

 あれ、各群集の主戦力が共同で拠点にしてた場所をぶっ潰したからなー。

 その後はバラバラで、それほど脅威ではなくなってたっぽい。


19:通りすがりのモンスター

 そんな事があったんだ!?

 結局、あれって何がしたかったの?


20:通りすがりのモンスター

 チラホラ話題に出たのは聞いたけど、話半分で。

 狙い自体は黒の統率種での、無所属による占拠を狙ってたんだと。


21:通りすがりのモンスター

 群集内部にいたら実行出来ないって事で、外に出て試そうとしてたらしいね。


22:通りすがりのモンスター

 あ、そういう内容なのか。

 見事に群集に目論みは潰された訳か!


23:通りすがりのモンスター

 あれ?

 悪名のある連中が、好き勝手に暴れてるって話じゃなかった?


24:通りすがりのモンスター

 俺はインクアイリーって集団の内輪揉めだと聞いたが……。


25:通りすがりのモンスター

 次の大型アップデートで新規サーバーが追加になるから、その前の鬱憤晴らしって聞いたけど……。


26:通りすがりのモンスター

 情報が錯綜してんな!? どれが事実だよ!?


27:通りすがりのモンスター

 結局、どれがインクアイリーの目的になるの?

 かなり引っ掻き回されたよね?


28:通りすがりのモンスター

 うーん、どうだろな?

 黒の統率種での占拠狙いなら、無所属の乱入勢も結構いたからなー。


29:通りすがりのモンスター

 なんか結局、傭兵に来てない無所属は倒すしかなかったよね?

 インクアイリーとか関係なくさ。


30:通りすがりのモンスター

 まぁ黒の統率種は何人か見かけたが、会話出来なかったしなー。

 ……容赦なく殺されたし、どこのどいつか分からんのが悔しい!


31:通りすがりのモンスター

 目的がよく分からん集団はどっちでもいいわ!

 赤の群集も、青の群集も、最後のボス戦は押し付け過ぎだろ!


32:通りすがりのモンスター

 だって、そういう作戦だし?


33:通りすがりのモンスター

 ボスは自分達で倒せとは言われていない!


34:通りすがりのモンスター

 まぁ結局、トドメを持っていったのは灰の群集だけどねー。


35:通りすがりのモンスター

 いやいや、あれはどこがトドメでもおかしくなかったぞ?


36:通りすがりのモンスター

 見てないから分からん!

 というか、エリアボスって何だったんだ?


37:通りすがりのモンスター

 クジラ以上にデカい、不動種の巨大なレンコン。


38:通りすがりのモンスター

 巨大なレンコン!? しかも不動種!?


39:通りすがりのモンスター

 あー、倒すの面倒そう。


40:通りすがりのモンスター

 ボスの討伐の時に何度か動きは止まってたし、実際面倒だったんだろうねー。



 あー、メインの話題はやっぱり最後の総力戦か。そりゃそうなるよなー。それにしても……掲示板だと、インクアイリーに関する正確な情報は不明な状態なんだな。まぁオリガミさんから直接聞いたから俺は分かるけど、そうでなければ明確な目的のはっきりしない相手ではあるよなー。

 この辺の書き込みは総力戦が終わってすぐくらいだし、命名クエストの話題はもう少し後か? あ、でももう時間切れっぽい。


「おーい、圭吾?」

「ん? どうした、慎也」

「あ、やっと返事したな。……この状況を総スルーってのもすげぇな」

「……何が? あぁ、この敵意の視線?」

「まぁなー。俺の居心地まで最悪なんだけど、どうしてくれんの?」

「俺のせいじゃないから、文句なら勝手な誤解で敵意を向けてくる奴に言ってくれ」

「それ、本人達に言ってやってくんない?」

「……面倒くさい」


 同じクラスってだけで普段はろくに交流もないのに、こんな状況で一方的に敵意を向けられても知るか! そもそも誤解だろうが、誤解じゃなかろうか、根本的に敵意を向けられる筋合いはない! なんでそんなのを相手にしなきゃならん!


「おー、授業を始め……なんだ、この妙に殺気立ってる雰囲気? まぁいい、授業を始めんぞー!」


 この雰囲気をサラッと流したな、担任の教師!? いや、完全に無視を決め込んでる俺が言うのもなんだけど、少しはその辺を気にしてもらえない!? ……それはそれで面倒そうな気はするけども、イジメとかだったらどうすんの!?



 ◇ ◇ ◇



 なんとも居心地の悪い状況が続き、昼休みになった。あー、今日は教室じゃなくて、どこか他の場所に移って昼飯に――


「あ、飲み物を忘れた! 悪い、ちょっと買ってくるわ!」

「……おー」


 鞄の中に見えている中身がまだ入ってるお茶は一体なんだ? あー、少しの間だけど、逃げたな。まぁ今回のは変に巻き込んでる状態だし、流石に文句も言えないか。


「……吉崎くん、助けてー」

「……相沢さん、なんか疲弊し切ってない?」

「だって、朝から『誰も相手にしてなかったのに、遂に彼氏が出来た』だの『どこまでいった』だの、質問攻めなんだもん……。否定しても『照れるなー!』って全然信じてくれない……ここにいたら、妙に視線が痛いんだけど? 私のクラスよりも酷いよ!?」

「あー、そりゃそうだろうなー」


 それこそ、その質問攻めの内容の相手が俺になるんだろうし……どう考えても、相沢さんはモテてるだろ。自覚はあんまりなさそうだけど、さっきの台詞から考えるとフリまくってそうな感じはする。


「あれ? そういえば佐山くんは?」

「飲み物を買いに行った」

「……そこにお茶がある気がするのは気のせい?」

「見ての通りだなー。まぁ単純に逃げたんだろうなー」

「3人でなら避難場所になると思ったのに!?」

「いや、俺に言われてもそれは知らんがな……」


 むしろ、相沢さんが俺の元に来た時点で状況が更に悪化したような気もする。……変な誤解を強化するような真似をしてどうする……って、そもそもいつもこっちの教室まで弁当を持ってきて食べてるっぽいから、そこまで変な行動でもないのか?


「そういや、いつも一緒に食べてる相手は?」

「……体調崩して、休み。というか、吉崎くんはクラスメイトだよね?」

「誰が誰と一緒に食べてるかまで、把握してないっての!」

「……それもそうでした。今のはごめん」


 なんか今ので、更に視線が痛くなった気がするんだけど……この状況って悪化しかしてなくね!? くっ、確かに今日は1人休みだったっぽいけど、そこが唯一の誤解を解く鍵になる人だった気がするぞ!?


 あー、この状況は面倒だけど、それがずっと続くのは余計に面倒くさいな。勝手な誤解の噂程度なら俺だけなら放っておくけど、相手がいるとなると放置って訳にもいかないか。どうせなら殺気立ってる奴が大々的に聞いてきて、キッパリと否定出来た方が早いんだけど……。


「奏ちゃーん! 彼氏が出来て、やる事やったってー? 流石に、不純異性交遊は認めないよ?」

「してないし、出来てないよ! いきなりやってきて、姉さんは何を言ってるの!?」


 ん? 姉さん? この人、確か去年の英語の担当教師だった気がするけど……苗字は相沢ではなかったような? 確か喜多山先生……あ、そういや既婚者だっけか。え、喜多山先生と相沢さんって姉妹なの?


「まぁ奏ちゃんなら、そうだと思ったよ。昨日家にずっといたのは確認したしねー。という事で、変な誤解でギスギスした空気を作るのはやめなさーい! はい、そこ! 変に睨まない!」


 えーと、騒めきが広がってるけど、これは何がどうしてこうなった? 変な空気は霧散したけど……とりあえずは教師の介入で変な誤解は解けたか? ……滅茶苦茶、顔を真っ赤にして蹲ってる人が1名ほどいるけども。


「……姉さん、後で覚悟しといて!」

「えー、いいのかなー? 助けてあげたのに?」

「他に何か方法はあった……あったかな? 否定しても、信じてくれてなかったし……」

「うんうん、そういう事! あ、吉崎くんも変な形で巻き込んじゃってごめんね。部活の勧誘の件も、変にやっちゃってたみたいだしさ」

「……へ?」

「姉さん!?」

「学校じゃ喜多山先生ね、相沢さん?」

「……はい」


 思いっきり先生の方が相沢さんの下の名前で呼んでた気もするけど……部活の件? なんで、そこでその話が出てくる? って、シレッと慎也が戻ってきてるな。


「ふぅ、これで平和になる!」

「……慎也、飲み物は?」

「ん? あ、買うの忘れた。まぁ離れる口実だったから別にいいや」

「……喜多山先生を呼んできたの、慎也か?」

「正解! あの先生、eスポーツ部の顧問だし、姉妹だってのはこの前行った時に聞いたからな!」

「あー、そういう繋がりか!」


 慎也にしては、ナイス行動! 当事者である相沢さんの言葉は照れ隠しとして聞き入れてもらえない状態になってたんだし……もの凄い赤っ恥をかいた相沢さんには悪いけど、今のが効果的だったのは間違いない。

 なんだかんだで教師の言葉の影響は大きいし、身内としての発言でもあれば……事実ならあんな風には言わないな。少なくとも、俺への事実関係の確認はあったはず。


「それじゃ相沢さん、もう大丈夫ね?」

「……釈然としないけど、とりあえずは大丈夫だとは思う」

「はいはい、今日の夜にはちょっと実家に顔を出すから、その時に文句を聞きましょう!」

「そうさせてもらうからね! もう、喜多山先生は行った、行った!」

「わっ! 押しちゃ駄目だって!?」


 とりあえず変な誤解騒動はこれで終わりか? えーと、俺に変な敵意を向けてきてた奴らは……あ、思いっきりバツが悪そうに目を逸らしまくってる。

 コソコソ話と視線はまだ続いて入るけど……これなら、放課後までには鎮静化してるかもね。ふぅ、完全ではないけど、やっと普段の状況に戻った。


「慎也、割と大真面目に今回は助かった」

「おう、感謝しまくってくれていいぜ! 何か奢ってくれても構わんぞ!」

「……そう言われると、途端に感謝したくなくなるんだよなー」

「なにおう!?」

「あ、それはそうとして……昨日はどこにいたんだ? 水月さんはチラッと見たけど、慎也はいなかっただろ?」

「あー、それか! そりゃ安全圏で情報整理の方をしてたんだから、会う訳ねぇな!」

「……なるほど。そりゃ会う訳ないか」


 予想外のとこで動いてたよ、慎也!? でもまぁそういう後方支援も大事ではあるし、赤のサファリ同盟で鍛えられてたなら、そういう動きも出来るか。


「え、佐山くんはそういう風に動いてたんだ? あ、一緒に食べてもいい? ここで断られたら、今日は1人になっちゃうし」

「おう、いいぞー! なんだかんだで、俺だって赤のサファリ同盟の一員だしな」

「ありがと。おっ、それはちょっと意外! 赤のサファリ同盟って、赤の群集で強いとこだよね?」

「そうそう! 競争クエストには参加してない人の方が多いんだけど、とんでもない人が多くてなー!」

「その話、ちょっと気になる! 言える範囲でいいから教えてもらえない?」

「おう、いいぜ!」


 なんか自然な流れで一緒に弁当を食べ始めたけど、まぁいいか。なんか慎也との会話が盛り上がってるし、今のうちにちょっと掲示板でも見ておくか。というか、この内容は俺がガッツリ聞いたら駄目な気もするしなー。

 とりあえず総合スレの続きを見ていくかー。命名クエスト辺りの反応も気になるところだしね。



【第2回競争クエスト】総合情報スレ その34【全て終了!】


1:通りすがりのモンスター

 ここは総合情報スレになります。

 各種エリア、新種族、クエスト情報など総合的に扱っています。


 深く掘り下げたい場合は各種情報の専用スレにお願いします。


 前スレ

 http://*************


132:通りすがりのモンスター

 ワールドクエストから発生した命名クエスト、終わったぞ!


133:通りすがりのモンスター

 ……ワールドクエストから発生した命名クエスト?

 え、何の話?


134:通りすがりのモンスター

 ん? あれの発生を見てない人か?


135:通りすがりのモンスター

 あー、投票してからログアウトした訳じゃない人もいるのか。

 案内は出しといた方がよかったか?


136:通りすがりのモンスター

 そういや、誰もその手の話題はしてなかったな。


137:通りすがりのモンスター

 大半はまだログイン中だろうしなー。


138:通りすがりのモンスター

 そりゃそうだ。

 ログイン出来る状態なら終わるまでログアウトする理由がねぇしな。

 今ログアウトしてる奴は、これ以上は出来ない奴だよなー。


139:通りすがりのモンスター

 結局どういうものなの!?


140:通りすがりのモンスター

 単純に言えば、新規エリアではない既存エリア全体の地域名の命名クエスト。

 参加資格は、ログイン中の全てのプレイヤー!


141:通りすがりのモンスター

 選択肢は確か、こうだったか?


 1:黎明の地

 2:トライデント・フロウ

 3:ルオーゴ・イニーツィオ

 4:トリコロール・ケイブシステム


142:通りすがりのモンスター

 そうそう、その4つ。


143:通りすがりのモンスター

 そんな命名クエストがあったの!?

 うぅ、でも教えてもらっても参加は出来なかった……。

 夜勤の仕事中……。


144:通りすがりのモンスター

 まぁ今この場にいる時点で、ログインが出来る状況じゃないだろうからなー。

 さて、風呂の用意も出来たし、入ってくるか。


145:通りすがりのモンスター

 夜でも仕事、お疲れ様です!


146:通りすがりのモンスター

 結局、どれになったんだ?


147:通りすがりのモンスター

 1つ目の『黎明の地』だな。

 まぁ分かりやすい名前にはなった。


148:通りすがりのモンスター

 呼びやすくはあるな!

 呼ぶ事があるかは分からんが……。


149:通りすがりのモンスター

 NPCやシステムの方で必要になる呼び名なんじゃね? 


150:通りすがりのモンスター

 あー、それはありそう。

 そうそう、ゾンビやスケルトンの方にも正式に名前が付いたぞ。


151:通りすがりのモンスター

 そうなんだ!?

 なんて名前? 


152:通りすがりのモンスター

 そのまま、ゾンビとスケルトンだな!


153:通りすがりのモンスター

 おいこら、サラッと嘘を流すな!

 本当は『黒の異業種』だ!


154:通りすがりのモンスター

 おーい、思いっきり誤字ってるぞ。


155:通りすがりのモンスター

 ……すまん。

 『黒の異業種』じゃなくて『黒の異形種』だ。

 くそっ、予測変換め!


156:通りすがりのモンスター

 『黒の異形種』かー。

 割とそのままな名前だね?


157:通りすがりのモンスター

 まぁ仮の名前みたいだけどなー。

 もしかすると、ここの名前は変わるかもしれん! 


158:通りすがりのモンスター

 え、そうなの!?

 演出で何かあったりする感じ?


159:通りすがりのモンスター

 まぁなー。

 その辺は多分、追憶の実で見れるだろうから自分で確認するのを推奨だぞ!


160:通りすがりのモンスター

 そういう事なら、そうするね!


161:通りすがりのモンスター

 さて……次はどうなるか?


162:通りすがりのモンスター

 前の順番通りに行くなら、次は共闘イベント?

 でも、まだ開催アナウンスもプロモーションビデオもないよな。


163:通りすがりのモンスター

 今回は、少し合間が空くのかもね?

 結構な激戦続きだったしさ。 


164:通りすがりのモンスター

 あー、それは確かにな。

 新エリアも増えたんだし、のんびりと探索期間も欲しいとこだ!



 新エリアでの探索期間が欲しいのには思いっきり同意! 色々と検証する事もあるし、成熟体での育成も進めていきたいし、次が共闘イベントでも少し間が欲しいのは確実だよね。

 でも、次のイベントがどうなるかっていうのも純粋に気になるところでもあるし……まぁその辺は続報待ちか。


「へぇ! 群集同士で協力して検証なんて事もするんだね?」

「まぁな! あ、圭吾! 今日、検証に俺も行ってもいいか? ちょっとやりたい事があるんだよ!」

「ん? やりたい事ってなんだ? 邪魔するなら来なくていいけど――」

「『共闘殲滅を行うモノ』の称号を取りたいんだよ! って、初めから邪魔者扱いは酷くね!?」

「あー、あれか。その辺はシュウさんとジェイさんと要相談だな」

「おう、頼んだぜ! さてと、さっさと食わないと時間が無くなっちまう!」

「あはは、なんだか慌ただしいねー!」


 確かに『共闘殲滅を行うモノ』は他の群集の人の協力が必要な上に、得られるスキルが『魔力値増加Ⅱ』だもんなー。慎也が共同での検証に参加したいって理由は分かるけど……それは希望者向けに別枠で用意した方がいい気もする。

 まぁその辺は冗談抜きで相談してみるとして、昼休みもあと少しだからさっさと弁当を食べ終えないとなー。あんまり掲示板は見れなかったけど、状況的にそれは仕方ない。


 それにしても、また微妙に敵意を感じる視線が戻ってきてる気がするけど……根本的に相沢さんが一緒に食べてるからだろうね。これはもう完全に無視でいいわ! 勝手な嫉妬まで相手にしてられるか!



――――――――


第35章、終了です!

少し前にお知らせは書いていましたが、これにて今年の更新分は終了でお休みに入ります。

設定資料集はちょっと更新分を作る時間がなかったので、後日更新とさせてください。

詳細は近況ノートにて!


第36章の開始については電子書籍の次の巻の作成の進行具合にもよるので、確定し次第、Twitterと近況ノートでお知らせします。

Twitterで作業の進捗状態とかは呟いているので、そこが最速の伝達にはなるかな?

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