第1311話 勝利の演出へ


 ミズキが喋り始めた事で演出が始まって、灰の群集の勝利は確定! でも、ミズキの声音は沈んだ感じだったけど……まぁ続きを話し出すのを待つか。

 妙に少し間があるのは、今のうちに戦闘を止めろって事なのかもね。まぁ今回の競争クエストには『往路の実』も『復路の実』もないから、この場にいないとリアルタイムでは見れないけども。


 というか、最後の乱戦では死んでる人が地味に少ない気がする? 少なくとも、戦闘不能な状態で地面に落ちてる風雷コンビやオリガミさんやフーリエさん達を含めて、俺らの側で仕留められた人はいなさそう。

 上にも海エリア勢が揃ってるし……おぉ、いつの間にやら他の群集の人達も大量にいて、戦闘は収まっていっている。別にいがみ合ってる訳じゃないから、勝敗がほぼ確定段階になった時点で気が抜けてるっぽいね。


「皆さん、戦闘は終わりです。まったく……中々、灰の群集には勝てないですね」

「ケイさん達の封じ込めが、ああも簡単に破られるのは想定外だったしな。途中まではジェイの作戦が上手くいっていたと思ったんだが……」

「突破と占拠、同時に狙ってくるとは思いませんでしたよ……」

「……ホホウ、勝負は勝負。負けは負けで仕方ないので……」


 青の群集はジェイさんや斬雨さんやスリムさんを筆頭に残念そうな様子の人が多いなー。まぁ勝ちは譲れないんだし、勝負は勝負なんだから、この結果でどうこういう事はない!


「ウィルさん、こっちはもう演出に入ったよ。そっちの状態は……あぁ、もうカズキは解放するのかい。まぁこれ以上は意味自体がないから、それが妥当だろうね」

「あ、シュウさん、ウィルさんの方も片付け? 異形のサツキは放置でいい感じ?」

「あぁ、僕らがあれを倒す必要もなくなったね。思った以上に青の群集の守りが固かったし、上手くはいかなかったけども……」

「およ!? チラホラと意識が逸れてるとは思ってたけど、シュウさんも弥生も、そっちを狙ってたの!?」

「状況に合わせて、ボスかミズキかサツキのどれかを仕留める予定だったんだけどねー?」

「……今回は暴走してないと思ったら、暴走してたら出来ない事をしてたよ!?」

「ふふーん! 私がいつまでも、ああいう状況になるとは思わない事だね!」


 うっわ、シュウさんと弥生さん……というか、この場にいる赤の群集の人達って狙ってる部分が3ヶ所もあったのかよ! 何気に青の群集のカズキを乗っ取っていたのは赤の群集の仕業で確定みたいだし、凄い状況だったんだな。


 あー、今回の総力戦は初めて3つの群集が入り混じって時間を決めて始めた競争クエストだったし、インクアイリーの大々的な動きもあって、本当に疲れた! 戦況の移り変わりが激し過ぎたわ!

 でも、今回は悔いを残すような事はなく、完全にやりきったぞ! さーて、後は占拠をしていく演出を見ていきますか! 今回のはどんな風な演出になるんだろうね? そろそろ続きがある頃だと思うけど……。


『……前回といい、今回といい、また迷惑をかけてしまったか。皆の力となる為に動くと決めたのに、我ながら不甲斐ない』

[そんなものは、何度でもあるものだ。それでも尚、先に進んでいくものではないのか?]

『……クオーツ、不甲斐ない私を笑いにきたか?』

[そんな事はしないとも。我とて、失敗作と捨て置かれ、その後にも汝らに迷惑をかけた存在だ。それでも尚、先へと進む力をくれたのは汝らであろう? それとも其方は、ここで歩みを止めるか?]

『……いいや、それだけはごめんだな。今の私の力が及ばぬのなら、及ぶところまで力を引き出していくまでだ』


 ふむふむ、暴走していた事を不甲斐なく思うミズキか。演出としての役割だから仕方ないんだろうけど、2度目となればそういうのを感じるのかもなー。


『それに……2度の暴走を体験したからこそ、分かった事もある。クオーツ、これがお前が長い間、扱い続けてきたものか』

[我とて、不完全な扱いしか出来ておらんがな。まぁその話は今はいいだろう。エンからの預かり物だ、受け取るがいい]

『これは『浄化の実』……いや、以前のものとは少し違うな。一体どういう手を加えた? そもそも私達の争いには介入しないという立ち位置だったと記憶しているが?』

[我とて、汝らと出会う以前とは違うという事だ。それに、その『浄化の実』はそれぞれの勢力から預かっている1つに過ぎん。手の加え方は伝えたがな]

『……傍観者という名の審判役か。これは……なるほど、僅かにだが瘴気も内包しているな?』

[対となるものを扱うのに、片方のみで制御しようとするから歪みが出る。今は我もだが、汝ら精神生命体は瘴気とは真逆の力になるな]

『だからこその、この地での暴走……いや、自然な形への回帰の副作用か』


 ん? なんかジャングルでのマサキの時よりも、かなり重要っぽい話をしてない? 瘴気と浄化は対になっていて、循環させるものって話はあったけど……精神生命体は瘴気とは真逆の力? それって、精神生命体が浄化の力そのものって事か?

 あー、殺しても器の肉体が壊れるだけで本体の精神生命体は死なないんだから、確かに滅びをもたらす瘴気とは真逆の存在になるよな。うーん、この辺はなんとなく分かるけど……後々重要になってくる設定だったりする?


[以前よりも遥かに進展は出てきたが、この星の完全な再生にはまだまだ時間はかかる。我は汝らの内輪揉めには加わらんが……その過程で、意図せず誕生しているモノが気になるな。他の地でも同様の存在は多数確認してはいるが……]

『……私は難を逃れられたが、あの場にいるモノか。あれに支配されているのは、赤の群集の者か?』

[あぁ、そうなるな。あれには、我と同じ歩みを感じるが……内包する力が歪で、正しい形を成していない。いや、正しい姿を新たに作り出そうとしている最中か]


 ん? この会話で指し示しているのって、もしかしてあの赤の群集の群集支援種であるサツキを乗っ取ってるツタの事か! 正しい姿を新たに作り出そうとしているって……あれはあれで、プレイヤーとは違う新たな進化の1つ?


『クオーツ、その内容は私だけでは手に余る。後ほど、他の群集も交えて改めて話す機会を設けてもらう事は可能か?』

[何か意思らしきものの誕生も感じているし、この件についてはその方がいいであろうな。それは我から、グレイ、セキ、サイアンの3名へ改めて連絡をしよう]

『あぁ、よろしく頼む』

[さて、あまり同胞達を待たせてやるな。この地での勝者は、灰の群集の者達だ]

『あぁ、そうだな。皆も、ヤナギも、待たせてしまっているし、すぐにこの地の浄化を始めよう。……いや、浄化ではないな。在るべき循環の形へと流れを正そう!』


 明らかに次に何かあるのを匂わせた状態で途切れるんかい! その会話の内容、明らかにあの異形なゾンビやスケルトンの話だよな! あと、無所属が受けてた『乱入クエスト』や黒の統率種が受けてた『簒奪クエスト』の発生元!

 あー、もしかして次の共闘イベントの敵はその辺になるのか。これからクオーツを経由して全群集に話が通って、そこから調査の為に共闘開始というのはあり得るのかも。


 まぁそれは後でいい! 今は浄化の実を使って……あ、何気にこの周囲は巨大レンコンが居なくなってから瘴気が溢れ出てたのか。オリガミさんや風雷コンビの瘴気魔法や、ハーレさんのストームの影響で溢れ出てた瘴気に地味に気付かなかったよ。これなら、既に安全圏に妨害のボスも出現してるか。


 その溢れていた瘴気は、ミズキの木の幹へと埋まっていく浄化の実と共に根の方から吸われていっている? ジャングルのマサキの時は消えていってるように見えたけど……今の様子も意識しなければ消えていくようには見えるかも?

 今って、マサキの時よりも近いもんな。アルが墜落してる目の前だしね、この演出の光景。


『この地の流れは把握した。制御をする為の力を解放し、その為に進化を始める!』


 そのミズキの言葉と同時に、木そのものを包む光の柱が上がっていく。ははっ、ここまでの流れはマサキの時とは違うけど、進化そのものの演出は同じっぽいね。


『……異形のモノは、この場からは退場を願おうか』

[今はそれがよかろう]


 おっと、そんな声と共に異形のサツキとツタの姿が粒子のように崩れて、東の方へと飛んでいったね。まぁ今ので安全圏に戻ったのは、正常化したサツキなんだろうな。……ツタは消滅したか? いや、なんか復活してきそうな予感。

 その排除の演出が終われば、光の柱の中の木のシルエットがどんどん大きくなって……って、なんか地面が盛り上がってきた!? あ、そういえばここって湖の底なんだった!?


「ちょ、これってこのままここにいても大丈夫なやつか!?」

「わー!? 分かりません!」

「落ち着け、ケイ、ハーレ。進化の規模が思った以上に広そうだが、それでプレイヤーを仕留めるなんて演出にはしないだろう」

「ベスタさんの言う通りですね。これで仕留められるようであれば……運営に苦情でも叩きつけに行きましょうか」

「あー、それもそうか」

「はっ!? 確かに!?」


 なんだかジェイさんの物騒な一言で一気に冷静になったよ。うん、勝敗がこの時点でもう決まってるのに、負けた人達がその演出の中で攻撃されたら堪らんわ!


 あ、光が収まってきた……って、なんか大量に根が地面から出てきて湖の底部分を覆ってる!? 木の大きさは極端に大きくはなってないけど、その分だけ根が凄い事になってるな!? これが成熟体の不動種の姿……いや、演出だからこそ特別凄くなってる感じもあるね。

 マサキの時みたいに鳥居が出来たりはしてないけど、ミズキそのものが神秘的な状況だし……これ、元々あった水が戻ったりしてくる?


『ふむ、思った以上にこれは凄いな。この地に水を戻すのは……まぁ後にしようか』

『あらあら、まぁ? これはまた凄い状態になっているわね、ミズキ』

『経路の確立は無事に済んだようだな、ヤナギ』


 おー、どこからともなくヤナギさんが転移してきたね。安全圏にいたヤナギさんだけど、ミズキが占拠を終えたのを確認しにきたんだな。


 てか、やっぱりここに水を戻して湖になるのか。ちょいちょい高い位置まで伸びてる根があるけど、その辺は水面からでも出て見えそう。

 そうか、湖の中に生えている木になるんだな。……なんだか最初に見たミズキが半覚醒の敵のミズウメだった頃の状況を大規模にした感じになありそうだね。


『えぇ、そこは無事に済みましたよ。今回もご苦労さまです』

『いや、それは皆の協力があってこそだ。途中からまともに意識も無かった私のした事など、最後の整理だけに過ぎん』

『あら? それも簡単な事はないのですけどね?』

『そうだとしてもだ。皆、今後も何かあれば力を貸してもらいたい』


<競争クエスト『未開の地を占拠せよ:未開の霧の森』が完了しました>

<『未開の霧の森』を灰の群集の『群集支援種:ミズキ』が占拠しました>

<他の群集のプレイヤーへの攻撃は通常仕様に戻ります>

<『競争クエスト情報板』が使用不可になりました>

<『群集支援種:ヤナギ』を介して『群集支援種:ミズキ』が『群集拠点種:エン』とのネットワークの構築を完了しました。『群集拠点種:エン』への転移が可能になります>

<参加ボーナスとして経験値を獲得しました>

<参加ボーナスとして情報ポイントを200獲得しました>

<勝利ボーナスとして情報ポイントを500獲得しました>


<ケイがLv10に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>


<ケイ2ndがLv10に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>


 おし、全部終わってLvも上がった! あー、本当に疲れたけど、これで一区切り! 今、何時になってる? あちこちで色々な状況になってたから、感覚がさっぱり分からん!

 えーと、現時刻が……もう23時が近いじゃん!? あー、でも命名クエストの完了を待つだけの時間は残ってるか。投票時間は30分だから、今日中にはなんとか終わりそうだね。この辺に来ている人達は俺らも含めて疲れ果ててる感じだから、のんびり寛ぎながらになりそうだなー。


「さて、それでは青の群集、引き上げますよ!」

「ここからは、勝者の特権だからな! 残って騒ぎたい奴は、ちゃんと灰の群集に許可は取れよ!」

「青の群集は引き上げるみたいだけど、弥生、僕らはどうする?」

「んー、まぁここは邪魔しちゃ悪いだろうし引き上げちゃおう! 流石に疲れちゃった……」

「僕も確かに疲れたし、今日は早めに寝ようか。ケイさん、例の件はまた今度改めてって事でいいかい?」

「あ、それは問題なし! 弥生さん、シュウさん、お疲れ様! 斬雨さんとジェイさんも――」

「……例の件? やはり、ケイさん、何か赤の群集と検証をしていましたね!? 何かあるとは思っていましたが、おそらく『刻瘴石』に関するものですね!?」

「ちょ、近い、近い、近い!?」


 岩に乗って迫ってくるジェイさんの動きが怖いわ! 競争クエストが終わったから隠す必要もないって思って軽く答えたら、こういう事になるんかい!


「……おーい、落ち着けよ、ジェイ?」

「ごほん! 今のは失礼しました。……その検証、私達も参加してもよろしいでしょうか?」

「別に駄目な理由はないよね、シュウさん?」

「まぁそうだね。僕は構わないけど……ケイさん達はどうだい?」


 そこで決定をこっちに委ねてくるの、シュウさん!? いやまぁ、俺らとしても断る理由はないし……みんなも頷いているから、問題はなさそうだな。むしろ、ここで断った方が厄介な事になりそうな予感。


「おし! それなら全群集で一緒に検証をやっていくか!」

「えぇ、それでよろしくお願いします」

「それで決まりでいいみたいだね。日程についてはまた改めて――」


<ワールドクエスト《地域の命名・降り立った地》を開始します>


 ……え? 命名クエストじゃなくて、ワールドクエストが始まった!? ちょ、『地域の命名』って何!? これ、今までに一度も見たことがないやつだよな!? そもそも普通の命名クエストはどうなった!?




【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:同調激魔ゴケ

 所属:灰の群集


 レベル 9 → 10

 進化階位:成熟体・同調激魔種

 属性:水、土

 特性:複合適応、同調、魔力強化、魔法耐性、属性強化


 群体数 524/11400 → 524/11650

 魔力値 260/306 → 260/310

 行動値 80/123 → 80/125


 攻撃 115 → 117

 防御 197 → 200

 俊敏 142 → 144

 知識 332 → 338

 器用 388 → 396

 魔力 487 → 496



 名前:ケイ2nd

 種族:同調激強ロブスター

 所属:灰の群集


 レベル 9 → 10

 進化階位:成熟体・同調激強種

 属性:なし

 特性:打撃、斬撃、強靭、堅牢、同調


 HP 15650/15650 → 15650/16100

 魔力値 146/146 → 146/148

 行動値 113/113 → 113/115


 攻撃 480 → 488

 防御 440 → 448

 俊敏 374 → 381

 知識 110 → 112

 器用 147 → 150

 魔力 74 → 75


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