第1310話 勝ちを取りに
簡単に巨大レンコンと呼んでいた、エリアボスの『オオヤドレンコン』の撃破は完了! どこが取るか博打にはなったトドメだけど、なんとか灰の群集が取れたみたいで一安心。
どの辺が宿要素なのかはよく分からないままだったけど、まぁ雑魚敵のレンコンが元々いたっぽいから、その辺なのかも? 暴れてたインクアイリーの一部が、その辺は全滅させてたっぽいしなー。
その辺はいいとして、残すところはミズキをあの場へ連れて行くのみ! 色々と喜ぶのは、それを成し遂げてからだ!
『……ここは? っ!? どこだ、ここは!?』
あ、ミズキが正気に戻ったみたいで話し始めたよ。なるほど、占拠が可能になった状態で正常化していれば、こういう反応をするようになるんだな。今はすぐ近くだから分かるけど、距離が離れている時にボスが倒せたかどうかの目安がこの反応なのかも?
「ミズキ、正気に戻ったか?」
『……誰だ? あぁ、味方の者か。……この暗闇は一体?』
「悪いが、正気を失ってる間に俺らの方で運搬させてもらってるぜ。この暗さは味方の仕業だから、心配はいらん」
『……知らないうちに、また色々と迷惑をかけたようだな』
「気にするな。これから、浄化の要所へ連れていく。占拠は頼むぞ」
『あぁ、それは任されよう。それこそ私がやるべき仕事だ』
すぐ側でミズキを物理的に支えているジンベエさんが対応してくれてるみたいだから、ここは任せようっと。下手に他の人がそっちに意識を割ける状態でもないしね。
それにしても、ヨッシさんと富岳さんの2重の覆いがある中でミズキの声が届くのはちょっと不思議だな。……まぁ運んでいる近くの人へ声が届かないと困るから、ゲーム的な都合での会話なんだ――
「チャージ、完了なのさー!」
「こっちもいけるぞ! 方向はこっちだな!」
「ケイ、いつでもいけるかな!」
「待ってました! ソウさん達は海流の操作を解除! 浄化班、浄化魔法をぶっ放せ!」
「みんな、一斉に! せーの!」
「「「『ピュリフィケイション・アクア』!」」」
「『ピュリフィケイション・ウィンド』!」
「『ピュリフィケイション・アース』!」
「「『ピュリフィケイション・エレクトロ』!」」
属性はみんなバラバラだな! まぁそりゃこの為に集めた訳じゃないんだし、バラバラで当然か。
ともかくこれで相殺の状態で拮抗させていた海流の操作が乱れたところへ、盛大に強力な魔法を大量に叩き込めている状況にはなった。よし、いい感じで海流が乱れまくってる!
ははっ、俺らを閉じ込めて外を見れないようにしたつもりだろうけど、逆に中で俺らが何をやってるかを把握出来なくしたのは悪手だろうよ! 正確な声までは聞き取れないけど、外で騒めき出したのは聞こえてきたしな!
「サヤ、ぶった斬れ! 風音さん、スチームエクスプロージョン!」
「分かったかな!」
「……うん! 『並列制御』『ファイアクリエイト』『共生指示:登録1』!」
よし、盛大な爆発音を上げて、乱れまくってる海流へと突っ込み始めた。さぁ、ここから一気に行くぞ!
「ハーレさん、アル!」
「いっくよー! えいや!」
「これで突破だ!」
サヤが飛ばした風の刃が目の前の海流の繋がりを少し断ち切り、ハーレさんの爆発する投擲でそれを広げ、アルのクジラでの突撃で完全に海流を押し退けていく。
よし、抜けた! 風音さんのスチームエクスプロージョンでの勢いもあるだろうけど、強行突破は成功だ!
「げっ!? 灰の暴走種が出てきたぞ!?」
「そんなのは想定内だろ! 急いでミズキを潰せ!」
「ちょ、どんだけの勢いで!?」
「ミズキはどこだよ!?」
「ケイさん達、ここは任せて行ってこい! お前ら、ここは抑え込むぞ! 『シーウォータークリエイト』『海流の操作』!」
「海エリアだからって、海水しか使えねぇ訳じゃねぇのを見せてやる! 『エレクトロインパクト』!」
「ぶっ飛べ! 『白の刻印:剛力』『連衝・重突撃』!」
「わっはっは! 『白の刻印:増加』『連閃』!」
声が遠くなっていってるけど、ソウさん達が足止めに回ってくれているのは分かった! そっちは任せるぞ、俺らの守りをしてくれてた海エリアの人達!
「やはり、出てきましたか! 『アブソーブ・アース』!」
「……へぇ、面白い対策をしてるじゃないかい?」
「はっ! 今度こそぶった斬って……ちっ!」
「ふん、やらせる訳がないだろう」
「スリム!」
「ホホウ! 『アースクリエイト』『土の操作』!」
「それをさせると思うのかい? 『アブソーブ・アース』!」
「くっ! 邪魔をしますか、シュウさん!」
「あはははははははは! そうでなくっちゃね!」
「行かせないからね、弥生!」
ちょ!? 巨大レンコンがいなくなった跡地でベスタとレナさん、ジェイさんと斬雨さん、シュウさんと弥生さんが盛大に戦ってる真っ最中!? とんでもない乱戦状態じゃん!?
でも、この勢いだとすぐに地面だし、そこを気にしてる場合じゃ――
「皆さんはそのまま突っ込んで下さい! 『ミアズマ・ウィンド』!」
「オリガミさん!?」
「我らも行くぞ、疾風の!」
「この為に急いで回復したからな、迅雷の!」
「「受けるがいい! 『ミアズマ・エレクトロ』!」」
横に凄い勢いで飛んできた3人の龍がいたと思ったら、纏瘴を使って瘴気魔法をぶっ放した!? ははっ、ここでそういう攻撃をしてくるか、オリガミさん!
よし、流石にこのタイミングでこの攻撃なら纏浄で対抗も間に合わない! このまま、巨大レンコンがいた場所に突っ込む……訳にもいかないから、俺の水の操作を前面に最大量で展開! 少しでも衝撃を殺しつつ、不時着する!
「みんな、衝撃に備え――」
「それで、いいのかい?」
「げっ!?」
ヤバっ!? 衝撃を殺す為に水の操作を使ったら、シュウさんが剥き出しになった固定の岩の操作を狙ってきて、アブソーブ・アースで消滅させられた!?
しかも弥生さんがシュウさんを連れてきて跳び移って……って、水の操作まで剥奪して、すぐに離れていった!? くっ、この状況で無茶な――
「……どうにか……しないと!?」
「ハーレ、風の昇華魔法かな!」
「はっ!」
おわっ!? 地面にぶつかる寸前に、真下から荒れ狂う暴風が吹き乱れて、その勢いで衝撃の勢いが弱まったか! 思考操作でストームを使ったな、ハーレさん! 俺らの固定は崩れてバラバラに吹っ飛んでる最中だけど、体勢が大きく崩れたのはアルのクジラの上にいたメンバーだけ!
ジンベエさん達の方は、アルにまだしっかりと固定されてるから、この状況でもバラバラにはなってない! よし、これならまだいける!
「無茶するな、ハーレさん!? だけど、助かったぜ!」
「サヤ、ハーレさん、ナイス判断! ジンベエさん、ミズキを解放しろ! ミズキ、占拠は任せる!」
「ヨッシさん、解除せずにこのまま防御に回すぞ!」
「了解、富岳さん!」
「まったく、無茶苦茶だな!? 行ってこい、ミズキ!」
『あぁ、任せておけ!』
俺も含めてみんなが空中に吹っ飛んでる状況だけど、ミズキが下に降りたのはギリギリ目視で確認! ここまで来れば、後は占拠が始まるまで防衛し切ればいいだけ!
よし、ミズキが地面に根を下ろし始めたから、占拠が開始になったな! これ、どの段階まで妨害が可能なのかは分からないけど――
「会話が始まるまでなら、まだ妨害は可能です! 『並列制御』『共生指示――」
「……させない……よ? ……『アブソーブ・ファイア』」
あ、風音さんが乱れ舞う風の中から抜け出して、おそらくスチームエクスプロージョンを使おうとしてるジェイさんの牽制に動いてる。よし、これは俺もしとこ。
<行動値上限を10使用して『アブソーブ・アクア』を発動します> 行動値 94/122 → 94/112(上限値使用:11)
これでジェイさんの使える爆発的な推進力を持つ魔法は使えないはず。でも、ストームの荒れ狂う風で空を吹っ飛ばされてる状態で牽制になるのか、これ? ハーレさん自身も自分を吹っ飛ばしてる状態だけど、自分が発動した分ならキャンセルにはならないか。
「……やってくれますね! ハーレさんに下手に攻撃も出来ませんか……」
「もう間も無く演出は始まる。ここから、この人数差を覆すか?」
「えぇ、最後まで悪足掻きはさせていただきます、ベスタさん! 斬雨、いきますよ! 『アースクラスター』!」
「……仕方ねぇな、最後まで付き合ってやるよ! 『連閃』!」
「弥生、僕らはどうする?」
「んー、まぁ結構暴れたし、もういいかなー? ミズキをここで排除しても、後が無理でしょ?」
「それもそうだね。レンコンのトドメは取れなかったし、ここからの巻き返しはキツいのは確かだからね」
赤の群集はもう勝ちがないとして戦闘はやめたけど、ジェイさんと斬雨さんはまだ戦意を失ってないのかよ! 青の群集だってカズキの確保が出来てない状況だろうけど……ここは2人の意地なんだろうな。まぁその気持ちは分かる!
もう何もかも、あるだけ使い切っても問題ないし、全力で演出が始まるまでの時間を稼ぐ! 避けられず、それでいて味方の邪魔になりにくい手段となれば……これだ! あ、ハーレさんのストームが切れて落下が始まったけど、まぁいいや!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値8と魔力値24消費して『水魔法Lv8:アクアディヒュース』は並列発動の待機になります> 行動値 88/112(上限値使用:11): 魔力値 276/306
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値14と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』は並列発動の待機になります> 行動値 74/112(上限値使用:11): 魔力値 255/306
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
灰の群集と、その傭兵以外はこの場から強制的に離す! 俺を中心の、付与魔法で強化した拡散魔法の水の膜で吹っ飛んでしまえ!
「くっ!? ここで水の拡散魔法!? 皆さん、一斉攻撃で!」
「こんな水の膜、一緒に全部斬り飛ばして――」
「させる訳がないだろう!」
「ちっ! 相変わらず、無茶な移動のオオカミだな!?」
「皆さん、やるので! 『土の操作』『アースクリエイト』!」
「「「『シーウォータークリエイト』『海流の操作』!」」」」
「ケイさん、演出が始まるまで連発しちゃって! よっ、ほっ、えいや!」
「ほいよっと!」
乱戦で動いていた青の群集の人達が一斉に攻撃に動き出してきたけど、あと少しはここで食い止める! 墜落してるアルの背中の上に着地して戻ってこれたし、レナさんの言う通りの手段が最善だろ!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値8と魔力値24消費して『水魔法Lv8:アクアディヒュース』は並列発動の待機になります> 行動値 68/112(上限値使用:11): 魔力値 221/306
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値14と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』は並列発動の待機になります> 行動値 54/112(上限値使用:11): 魔力値 200/306
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
ミズキはもう完全に根は張っている状態に移行してるし、もうそろそろ演出が始まるよな。そうなれば勝ちは確定だし、青の群集の攻勢も流石に収まってくれるはず。
「……随分と青の群集は悪足掻きをするのですね? あぁ、そういえば今回はまともな勝ちを1つも得ていないのですか」
「喧嘩を売っているのですか、あなたは!?」
「ジェイ! 瘴気汚染で動けなくなってる奴を相手にしている場合じゃないだろ!」
「くっ!」
「喧嘩を売っていた訳ではありませんが……余計な事を言いましたね。今のは申し訳ありません」
「……どうせ否定は出来ない事実なので、構いませんよ」
あー、そうか。オリガミさんが何気なく言ったけど、青の群集としては新エリアで勝ち取ったと誇れるエリアはないのか。青の群集としてはサバンナエリアを手に入れたけど、あれは赤の群集が譲ったようなものだしな。
この最後の攻勢の激しさは……2回目の開催の競争クエストで勝ち取る最後の機会だからか。まぁだからといって、ここで譲る訳にもいかないしな!
俺らだって青の群集にジャングルでボスのトドメを取られたり、峡谷エリアでは赤の群集に負けたりしてるんだ。少なからず悔しさがあるのは、こっちも同じ!
「つくづくやってくれますね、ケイさん!」
「俺らだって負ける訳にはいかないからな、ジェイさん! まだやるなら、徹底的に相手になるけど?」
『……これが、浄化と瘴気の関係性か。ただ、そこに在るだけでは歪みが生じるからこそ、循環させていくもの。引き出せる力が増してきたからこそ、把握出来る事か』
あ、ミズキが1人でだけど話し始めた。これは演出が始まったって事か! でもジャングルの時は、この段階でもまだ戦闘はしてたからな。まだ油断は禁物――
「……全力で相手をしたいところですが、流石に時間切れのようなので諦めますよ。最後まで悪足掻きはしても、もう可能性が0になってから見苦しい真似をするのはごめんですからね」
「……へ?」
「なんですか、その間抜けな反応は? ……そういえばケイさんは、妙に情報の偏りがある事がありましたね。話し始めた時点で、もう勝利演出が開始です。なので、ここまで進めばどうやっても覆す事は出来ませんよ!」
「あ、そうなのか!」
地味に知らなかったわ、その話! 新エリアでの競争クエストのボス戦への参加は、最初のジャングル以来だから知らなかったのかも。という事は、俺ら灰の群集で勝ちは決定だ!
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