第1309話 巨大レンコン、討伐戦 その10
あと少しでエリアボスの巨大レンコンを撃破というところで、予想通りに赤の群集と青の群集がトドメを狙いに仕掛けてきた。なんとかベスタ達を筆頭に妨害班が上手く動いてくれてるけど、可能な限り早く巨大レンコンを倒した方が良い状況ではあるね。
「オリガミさん、統率個体のレンコン4体はどうなってる?」
「あれがいい感じに、他の群集の動きを邪魔している状況ですね。本体と違って、かなり攻撃的な様子です。……かなり動きは単調ですが」
「……なるほど」
最後の最後で出てきた特性『統率』の要素だけど、状況を掻き乱す役割は果たしているんだね。出てくる可能性は想定していたとしても、実際にどう動くかは出てきてみるまで分からないんだしな。
「ケイさん、やるなら早くやってくれ! こっちに人が集まってきてるぞ!」
「……みたいだな」
焦った声を上げてきたソウさんだけど、俺らを覆ってる海流の操作の数がさっきよりも増えているっぽい。ちっ、完全に周りを覆われて、外の様子が全然見えなくなったか。
外の音も聞こえにくくなってきてるから、俺らの話し声はまともに外には届いてないかも。そこだけは利点だけど、最後の作戦会議が出来る僅かな猶予が今だな。……時間はないから、急がないと!
「みんな、万が一にでも何かが抜けてきたら対処は任せる!」
「おう! ケイはさっさとエリアボスの方を片付けてこい!」
「任せてかな! 何が飛んできても、叩き切るよ!」
「なら、俺は殴り落としていくか」
「意地でも、ミズキとアルさんとジンベエさんは守り切るのです!」
「風音さん、私達はジンベエさんの前に回ろう?」
「……うん! ……魔法で……守る!」
「俺は動ける状況じゃねぇし、任せるぜ!」
「シリウス、僕らも頑張るよ!」
「当然だっての、フーリエ!」
「頑張るっすよ、みんな!」
「ここが最後の正念場だもんね!」
「頑張る以外の選択肢はないっての!」
みんなの気合いが入っているし、今の状況の対処は任せよう。それにしても、俺らを下手に倒すんじゃなくて、ミズキごと封じ込めるようにしてくるとは少し予想外だったな。
これ以上状況が悪化する前に巨大レンコンは仕留めて、この包囲を突破する手段を考えないと。その為にも、まず巨大レンコンを片付ける!
「あー、もう状況的に仕方ないか。オリガミさん、俺らはタイミングが取れないから作戦開始の合図を頼みたい」
「……それは構いませんが、どういう作戦ですか?」
「今から手早く説明する。桜花さん、話し終えたらみんなへ通達を頼む」
「おう、任せとけ! 話し終えるのを待たずに同時に書き込んでいくのでもいいよな?」
「時間の猶予もないし、それで問題なし!」
「了解だ! で、具体的な内容は?」
ここまで必死で弱らせてきたから、本音を言えばやりたくない手段だけど……この状況で大事なのはトドメを取る事じゃないからな。それに一時でも攻撃が届かない状況が作れたんだし、これからする事は少なからず意表を突く事は出来るはず!
「最初にみんなには謝ってたって言っておいてくれ。この作戦、どこがトドメを取るかは分からなくなるけど……最優先はそこじゃないからな。海エリア勢には海水の追加生成でレンコンと海水を繋げてもらってくれ。その上で、電気魔法班が可能な限り一斉にサンダーボルト発動して、それで仕留め切る!」
「……今の状況ですと、運が悪ければ他の群集の電気魔法がトドメになりかねない作戦ですね」
「だから、初めに謝罪って事か。おし、とりあえず作戦は書き込んどいたぜ」
「そうなるけど……重要なのは、自分達でトドメを取る事じゃないからさ」
気分的にはここまで俺ら灰の群集で弱らせてきたんだから、他の群集にトドメは取らせたくはない。だけど、そこで意地を張って負けたんじゃ意味がない!
これでもし、みんなから反発を受けたら……キッツイなー。でも、その状況になってしまったら、流石に強行も難しい。
「おし、了承の返事は続々ときてるぞ! 合図があれば、即座に実行可能だ!」
「……桜花さん、確認。今の作戦、反対意見は出てない?」
「あー、全くない訳じゃないが、そこは気にしなくていい範囲だと思うぜ? 代案が出る訳でもないし、出ている反応の大半は賛成に回ってる」
「……なるほど」
少なからず反対している人はいるにはいるっぽいけど……そういう人まで配慮しての作戦の実行は無理だよな。賛成が多いなら、それで十分って判断するしかない!
「ケイさん、何をやっても否定してくる人はいるものです。全く気にするなとまでは言いませんが、指揮権を預かる者として少数意見を切り捨てる覚悟は持っておいて下さい。そうでなければ、実行には移せませんからね」
「というか、ケイはこれまでの指揮でその辺は特に気にしてなかっただろ? 単純に、前にトドメを取られたのを気にし過ぎてるだけじゃねぇか?」
「そう言われると……そうかも?」
トドメを取るのにこだわってたのは、誰よりも俺自身だったって事か。あー、自分の事って分かってるようで分かりにくいな! ……よし、もう迷いはしない!
「オリガミさん、合図になりそうな派手な手段は何かある? 攻撃は風雷コンビのサンダーボルトでいいとしても、海エリア勢に海水を繋げてもらうタイミングは合わせたいんだけど……外の今の状況が見えないからさ」
「……今の状況で分かりやすい合図ですか。かなりの乱戦になってますので下手に合図を出すより、競争クエスト情報板で……いえ、これは流石にタイミングがズレますね。かといって、ケイさんの声が直接届く状況でもないですし……」
「流石に難しい?」
「今も攻撃を躱しながらの会話ですからね。赤の群集も青の群集もトドメを取る以外に、人数を減らす狙いがあるようですよ。どさくさに紛れて、積極的に私を攻撃してくる知り合いも多いですし……」
「そういう状況!? あー、それだと合図を出してもらうのは厳しいか……」
「我らも追われている状態だ! なぁ、疾風の!」
「どれも当たっちゃいないが、すげぇ乱戦状態だぜ! なぁ、迅雷の!」
群集の足並みは乱さないようには動くけど、オリガミさんと戦いたがっている人達がいるって話はしてたもんな。そういう動きを躱しつつ、外の情報を伝えてくれているのは……流石だね。風雷コンビも下手に暴れまくらずに、回避に徹してくれている状況にはなってるんだな。
それに、赤の群集や青の群集が巨大レンコンのトドメ以外にも攻撃を仕掛けてくる事自体は不思議ではない流れではあるか。どうやったって自分達の味方以外は邪魔にしかならないんだから、排除に動くのは当然だしさ。
「先ほどの作戦、実行に移すのであればもうそう猶予はありませんよ。海エリアの方々の連携が完全に崩される前に、終わらせるべきです」
「ですよねー!」
赤の群集と青の群集だけで盛大に潰し合いが発生してくれてると助かるけど……流石に、そこまで細かい状況まで把握してる場合じゃないし、期待するにしても都合が良過ぎる内容か。不確定要素に頼るのはなしで、自力で切り抜けないと……よし、これでいくか!
「もう多少の無駄が出ても仕方ない! 桜花さん、全体に伝達を頼む! 順番がちょっとおかしくはなるけど、風雷コンビのサンダーボルトの発動を巨大レンコンに海水を繋げる合図にする! 海水が繋がったかどうかの確認をしてる間はないだろうから、電気魔法班に昇華魔法も含めた電気魔法をありったけ叩き込むようにも伝えてくれ!」
「おう、了解だ!」
「「では、やる――」」
「通達が終わるくらいまでは待ちましょうか?」
「「そ、それもそうだな!」」
ちょっと待った!? 今のオリガミさんと風雷コンビのやり取り、ベスタが風雷コンビに怒って押さえつけた時の雰囲気を彷彿とさせていたんだけど、今のは言葉だけだったのか!?
まさか風雷コンビを実力で押さえ込めるのか、オリガミさん!? ……いや、今はそれを気にしている場合じゃない! とにかく、桜花さんの通達が終わるのを待って――
「ケイさん、通達はある程度は届いたぜ! 全員に行き渡るのを待ってる余裕はないし、全ての海水が繋がってなくてもどうにか流れるはずだけど……すぐに始めるか?」
「いや、ちょっとだけ待ってくれ! 俺らの動きを決めてからで! まだ抜け出す準備が出来てない!」
「あー、倒して終わりじゃないから、そっちも重要だよな。おし、それじゃ開始が可能になったら、もう直接合図の指示を出してくれ!」
「ほいよっと!」
時間の猶予はほぼないけど、今の状況をどうやって突破して、ミズキを空いた浄化の要所まで届けるか……。俺らの周囲は完全に複数の海流の操作で覆われてるし、どうやってこれを抜けていくかが問題だよな。
慌てず、それでいて急いで手段を考えろ! ここが突破出来なきゃ、巨大レンコンを仕留めたところで意味はないぞ。今は海流の操作で相殺してもらってる状況だけど……それを時間切れの解除覚悟で強めてもらうか? いや、それだけじゃ多分この状況から抜け出すには足りないな。
威力自体はそうないし、あえて敵の方に流されて途中で海流から脱出? まぁ出来なくはないとは思うけど、簡単に脱出させてくれるとも思えないから、そこで強引な突破力が必要だよな。だったら、初めから強引に突破してしまうのがいいか。だとすると……。
「おし、ここはみんなで強行突破するぞ!」
「強行突破!? え、マジで言ってるのか、ケイさん!?」
「冗談を言ってる場合じゃないっての、ソウさん! 海流の操作の相殺は、そのまま続けといてくれ! 準備が出来たら、解除して相手を油断させてくれ!」
「……考えなしで言う訳もないか。よし、その指示に従って動くぞ!」
「「「「「おう!」」」」」
よし、とりあえずこの場にいる海エリア勢の動きはそれで確定。相手側は拮抗させている海流の状態から急に解除になれば、それだけ操作は乱れるはずだから、狙うのはそこ!
その為の準備はこれからやっていく! 急げ、急げ、急げ! 外の状況が俺らがコントロール出来る間に、準備を済ませておかないと!
「風音さん、小型化してスチームエクスプロージョンの準備! ヨッシさんと富岳さんで、連携して下側にいるジンベエさん達とミズキの保護をしてくれ! 俺はアルの上のみんなの固定をしつつ、シュウさんとジェイさんのアブソーブ・アースの妨害に動く!」
「……分かった! ……『小型化』」
「了解! 富岳さん、表面を私の氷で覆うようにするね!」
「ここからそのまま突っ込む気かよ!? てか、そういうアブソーブ・アース対策か! あー、考えてる時間が無駄だし了解だ! 『並列制御』『アースクリエイト』『アースクリエイト』『並列制御』『岩の操作』『岩の操作』!」
「『並列制御』『アイスクリエイト』『アイスクリエイト』『並列制御』『氷塊の操作』『氷塊の操作』!」
「おい、富岳さん!? 周囲が全く見えないんだが!?」
「悪い、ジンベエさん! そこまで配慮してる余裕はねぇ!」
「……流石にそこは仕方ねぇか」
よし、俺の位置からは見えないけど、富岳さんの岩での固定をヨッシさんの氷で覆って吸収対策はしてくれてるな。俺の方でもその辺の対策は取るけど、2属性での2重保護ならミズキの保護にはかなり有効だろ!
今いるメンバーならこんな無茶な強行突破の手段でも下手に躊躇されるようなこともないか。他にみんなにも、可能な限り突破する為の手段を――
「シリウス! それに他のみんなは僕のコケの中に! 『増殖』『増殖』『増殖』『増殖』『増殖』! 『巻きつき』!」
「フーリエのコケのヘビなら中に入れるから、俺らはそこから顔を出して浄化魔法をぶっ放して強行突破を助けるぞ!」
「そんなのが出来るんっすか!? やるっすよ、レイン、ミドリ!」
「当然だっての!」
「みんなで浄化魔法をぶっ放せー!」
「「「「「おー!」」」」」
フーリエさんのヘビと融合したコケってそういう事が出来るんかい! ここからの強行突破をするには可能な限り同時攻撃が多い方がいいから、そういう手段が取れるのなら助かる!
「……状況が状況だし、とことん威力を上げて盛大に突っ切るまでだ! 『魔力集中』『白の刻印:剛力』『砲弾重突撃』!」
「アルさんの言う通り、思いっきりいくのです! 『魔力集中』『爆散投擲』!」
「直接当てられそうにないから、私はこれでいくかな! 『略:ウィンドクリエイト』『操作属性付与』『白の刻印:剛力』『断刀・風』!」
「アルもサヤもハーレさんもやる気だな! とりあえず可動範囲を邪魔しない程度に固定はしとくぞ!」
指揮をしてた俺以外は、基本的に周囲を警戒してたばかりの状況だったから、ここで気合が入るのは当然か! 最後の最後の大舞台、ここで全力を出さずしていつ出すかって話だしな!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 121/122(上限値使用:1): 魔力値 303/306
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 119/122(上限値使用:1): 魔力値 300/306
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
外の状況が分からないけど、オリガミさんが何も言ってきてないならまだ大丈夫か? とにかく、急いで岩での固定と、妨害用の水球を用意しよう!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』は並列発動の待機になります> 行動値 100/122(上限値使用:1)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を6消費して『水の操作Lv7』は並列発動の待機になります> 行動値 94/122(上限値使用:1)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
よし、今回の岩での固定は本当に落ちない程度の最小限の範囲に留めておいて、表面には4つまで同時に操作出来る水の1つをコーティングするように展開。残り3つは水球にして、近付いてくる相手がいたら叩き落とせるように――
「ケイさん、これ以上は無理です! やるなら、すぐに実行して下さい!」
「げっ、もう猶予なしか!? まだ中途半端だけど……風雷コンビ、サンダーボルトを発動!」
「「了解だ! 『エレクトロクリエイト』!」」
「私は昇華魔法のキャンセルを防ぎます! 『並列制御』『ウィンドクリエイト』『ウィンドクリエイト』『並列制御』『強風の操作』『強風の操作』!」
まだみんなのチャージが終わってないけど、そうも言ってられないしな。でももう、外から雷鳴が次々と轟き始めたから、ここからは討伐まで一直線に進むだけ!
多分、今の合図に合わせて他の群集も電気魔法を放ちまくるだろうから、トドメがどこになるかは分からないけど、今はそれで――
<規定条件を達成しましたので、競争クエスト『未開の地を占拠せよ:未開の霧の森』が進行します>
<エリアボスの討伐ボーナスとして、『オオヤドレンコン』は灰の群集所属の群集支援種になり種族を変更した後にランダムリスポーンとなります>
<規定条件を満たしましたので、称号『オオヤドレンコンを討ち倒すモノ』を取得しました>
<『刻印石』を1個獲得しました>
<規定条件を満たしましたので、称号『オオヤドレンコンを討ち倒すモノ』を取得しました>
<『刻印石』を1個獲得しました>
あ、巨大レンコンの撃破のアナウンスが出たけど……倒した群集はどこになった!? ……よし! 撃破したのは灰の群集になってるし、称号も『オオヤドレンコンを討ち倒すモノ』だから、トドメは取れた!
「トドメは取れたし、このまま続けて勝ちも取るぞ!」
「「「「「おー!」」」」」
「……うん!」
他の人達の歓声も聞こえてきているけど、今はその喜びはまだ飲み込んでおく! さぁ、最後の大仕事をやっていこうじゃん!
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